［EVO2012］「STREET FIGHTER X 鉄拳」の追加キャラクター配信は2012年7月31日から。新作「MARVEL VS. CAPCOM ORIGINS」も発表されたCapcomブースレポート

　現在ラスベガスで開催中の格闘ゲームイベント「Evolution 2012」（以下，EVO2012）は，当然ながらトーナメントがメインではあるものの，ほかにもゲームメーカー各社が会場にブースを設けて新作タイトルなどのアピールを行ったり，カンファレンス会場でプレゼンテーションを行ったりしている。ここでは，その中からCapcomブースの模様と，カプコンが行ったプレゼンテーションを紹介していこう。

公式トーナメントの優勝者に贈られるという「STREET FIGHTER FR-S」

「STREET FIGHTER X 鉄拳」公式サイト

「ULTIMATE MARVEL VS. CAPCOM 3」公式サイト

PlayStation 3/Xbox 360版ストクロ，
追加キャラクターは7月31日配信

　多くのカプコンファン達が集まったプレゼンテーションは，PlayStation Vita版「STREET FIGHTER X 鉄拳」（以下，ストクロ）の1枚のイラストからスタートした。最初にスライドに映し出されたのは，2012年6月29日に開催された「CAPCOM SUMMER JAM〜カプコン サマージャム〜」で発表された日本語版ストクロのパッケージイラストだが，北米版のイラストも決定したので，まずはそれを紹介したいというわけだ。本作のプロデューサーである綾野智章氏の，そんな前フリを受けて登場したのが，以下のイラストだ。

色合いがおかしくて申し訳ないが，このイラスト

　……これはカプコン サマージャム（関連記事）の会場でも行われたネタで，早い話，ジョークなのだが，海外のファンはまずバカウケ。次の瞬間，ジョークだと分かって，会場にガッカリのため息が漏れるという忙しいことになっていた。ちなみに本物の北米版パッケージイラストは，アメリカのサンディエゴにて2012年7月11日から開催される予定のイベント「COMIC-CON INTERNATIONAL」で発表される予定とのことだ。

左から順に，プロデューサーの綾野智章氏，通訳のDan Pantumhinhai氏，コミュニティマネージャーのDavid Hinds氏

Capcomブースに展示中のVita版ストクロ

　気を取り直し（？），プレゼンテーションはVita版ストクロの本当の新情報に移っていった。
　まず最初の新情報は「DLC Sharing」で，これは，発売中のPlayStation 3版ストクロと，2012年秋の発売が予定されているVita版ストクロで，DLCを共有できるというもの。PlayStation 3版ですでに購入済みのDLCや今後発売されるDLCが，Vita版でも使えるようになるほか，Vita版を購入すれば，12名の新キャラクターや，北米の初回購入特典である追加コスチューム（ALTERNATE COSTUME）がPlayStation 3版でも使えるようになるという。

50名以上のアーティストによる，ストリートファイターシリーズのアートギャラリー「SF25 Art Exhibition」は，ロサンゼルスで2012年8月3日に始まる

　2つめの情報は，その12人の新キャラクターの配信日について。こちらは2012年7月31日が予定されているそうで，PlayStation 3版が20ドル，Xbox 350版が1600マイクロソフトポイントになるとのこと（ただし，あくまで北米の話）。

　新情報の3つめは，追加キャラクターに合わせて配信されるゲームバランス修正についてだ。具体的な例としては，リュウ/ケン/豪鬼の竜巻旋風脚のヒットボックスとフレーム修正が挙げられていたが，そのほかにも，さまざまな修正（ロレントの弱P連打や，レイヴンのしゃがみ大Pループといった，強すぎる攻撃の弱体化）などが予定されている。

Capcomブースに展示されていた「SF25 Collector's Set」。ストリートファイターシリーズ25周年を記念して，北米でリリースされるものだが，残念ながら日本での発売は予定されていない

名作2タイトルを収録した
「MARVEL VS. CAPCOM ORIGINS」が新発表

　続いて，プロデューサーの新妻良太氏が登壇して行われた，MARVEL VS. CAPCOMシリーズのプレゼンテーションについてお伝えしよう。まずは，トーナメント会場のCapcomブースでプレイアブルバージョンが出展されている新タイトル，「MARVEL VS. CAPCOM ORIGINS」のムービーが上映された。


　MARVEL VS. CAPCOM ORIGINSは，1990年代の名作アーケードタイトル「MARVEL VS. CAPCOM」と「MARVEL SUPER HEROS」を合わせて収録したダウンロード専用タイトルで，両作をベースにさまざまな新要素が追加されている。
　新要素としては，150種類以上の表示モードを選べるグラフィックスや，対戦などで溜まるポイントを使ったアンロック，GGPOネットコードを使ったオンライン対戦などがあるとのこと。こちらはPlayStation 3とXbox 360向けに，北米では2012年9月の発売が予定されている。日本での予定については，下に掲載したミニインタビューを参照してほしい。

Capcomブースでプレイアブル出展されていた「MARVEL VS. CAPCOM ORIGINS」

　その後，話題は北米時間の明日（7月7日）にトーナメントが予定されている「ULTIMATE MARBEL VS. CAPCOM 3」（PlayStation 3/Xbox 360/PS Vita）に移った。新妻氏は「噂になってるような新発表などはありませんが」と前置きしつつ，同作の現状についてコメントした。同氏によれば，現在プレイヤーの間で話題となっている案件についてカプコンで協議した結果，とくに手を加えることはしないとのことだった。
　ここで新妻氏の言う「案件」とは，先頃発見された特定のキャラクターでの永久コンボについての対応だと思われるが，その理由として，修正を加えることで，ゲームバランスが大きく変わってしまうことへの配慮や，また開発チームのメンバーが，すでにそれぞれ別のタイトルの開発に移っていて，迅速な対応が難しいことなどが挙げられた。
　これを聞いた会場の反応は，とくに大きな拍手もブーイングもなく，かなり冷静に受け止めていたようだった。

左から順に，プロデューサーのDerek Neal氏と新妻良太氏，通訳のJeff Windham氏

　新妻氏はこのあと，「この発表だけでは寂しいので」と前置きし，同作で検討していたシステムの没ネタについて明らかにした。例えば「Clash Idea」と名付けられたスライドでは，ハイパーコンボ同士がかち合ったときに，お互いの攻撃を相殺するというシステムが説明されていた。このときディレイドハイパーコンボなどで，一方が複数のハイパーコンボを放てば，相殺を押し返せる。これは，一見するとすごくカッコイイ演出なのだが，バランス調整が難しく，ボツになったそうだ。

「Tag Battle＋Support Character Idea」は，2人のキャラクターをそれぞれ別のプレイヤーが操作するというシステム案。結局実現しなかったが，同じコンセプトのシステムを，ストクロのタッグバトルに見ることができる

「New Air Combo Idea」は，相手を上だけでなく，横や下にも吹き飛ばして追撃できるというエリアルレイブの発展形。別に日本の有名なマンガを参考したわけではない，と新妻氏は語った

　プレゼンテーションの後には質問タイムが設けられ，綾野氏や新妻氏が会場の質問に答えた。「Darkstalkers」（日本では「ヴァンパイア」）の新作について聞かれた綾野氏が，「それはクラシックなヴァンパイアが欲しいのか，まったく新しいヴァンパイアが欲しいのか，どっちでしょう」と会場に問いかけたところ，帰ってきた答えは「All!!」。つまり，どっちも欲しいということだった。

カプコン綾野氏＆新妻氏 ミニインタビュー

　プレゼンテーションの終了後，綾野氏と新妻氏に短い時間ながら話を聞くことが出来たので，その内容をお届けしよう。

4Gamer：
　プレゼンテーション，お疲れ様でした。さっそくですが，あのストクロのイラストは，このネタのためだけに用意されたものなんですか？

綾野氏：
　このためだけです（笑）。でも実は，ああいう別テイストのものがプレイヤーの皆さんにどう受け止められるか，ちょっと試してみたかったというのもあるんですよ。

4Gamer：
　なるほど。今日の反応を見ると，なかなかウケが良かったですね。

新妻氏：
　ウケてたね。良かったです。

綾野氏：
　もっとブーイングがくると覚悟してたんだけど，意外とウケましたね。

新妻氏：
　日本だと，ちょっと悪かったよね。

綾野氏：
　まあ，この評判がここだけのものなのか，それとも世界でウケるのかは，もうちょっと吟味が必要です（笑）。

プレゼンテーションの模様

4Gamer：
　ストクロに関して，いくつか新しい情報が発表されましたね。

綾野氏：
　そうですね。追加キャラクターの配信日を発表させてもらいました。それに合わせて，バランス調整も行われるので，7月31日には新しいストクロの展開が始まると思っています。

4Gamer：
　EVOのトーナメント参加者には，DLCがプレゼントされるという発表もありました。あれは日本でも使えるんですか？

綾野氏：
　もちろん使えます。EVOに参加するような人は，ストクロの最大のファンだと思っているので，それくらいはプレゼントしたいじゃないですか。今日はアメリカのイベントなので，Vita版の予約特典の話なども北米向けのものですが，これから日本のファンに向けた発表を随時行っていきますので，楽しみにしていてください。

4Gamer：
　ちなみに……ストリートファイター25周年記念のCollector's Setって，なぜ日本ではリリースされないんでしょうか？

綾野氏：
　うーん。あれは一番リクエストが大きかった北米のプレイヤーへ，何かしなきゃということで出てきた企画なんです。欲しいというファンの方が日本にいるのも分かるんですが，日本は日本で何か違うことをやりたいと思っていますので，ご理解いただければと。

4Gamer：
　分かりました。では新妻さんにお聞きしますが，スピーチはかなり言葉を選んだものだったという印象を受けました。何も手を加えないというのも，かなり思い切った決断ですね。

新妻氏：
　そうかもしれません。大会に向けて選手の皆さんがプレイを詰めてきたところで発覚したことでもあり，どう対応するかを考えたのですが，今回は現状のままでいかせてもらうことにしました。

4Gamer：
　プレイヤーからは，やはり調整してほしいという意見が多かったのではないかと思いますが，どうでしょうか。

新妻氏：
　そういう意見もたくさん寄せられているのですが，意外に日米の両方から「このままで良い」という声も挙がっていたんです。むしろ大会前だから変にいじらないでほしい，と。今回のような決定になったのは，もちろん，ほかにもいろいろな事情があるんですが，VS.シリーズのゲームデザインや，そのほかのさまざまな事柄を現実的に見積もった結果，今のままがベストという結論になりました。

4Gamer：
　分かりました。ではもう一つ，「MARVEL VS. CAPCOM ORIGINS」が発表されましたが，日本で出る予定などはありますか。

新妻氏：
　日本では……ちょっと難しいと思います。今のところ予定はないですね。

4Gamer：
　ああ，やっぱり。でもVS.シリーズといえばアメリカが本場ですし，仕方ないですね。とはいえ「ストリートファイターIII 3rd STRIKE ONLINE EDITION」（PlayStation 3/Xbox 360）のときは，日本からの声で，国内でも発売されることになりましたよね。その可能性に期待することはできますか。

新妻氏：
　いや，それはあり得ると思いますよ。というか，日本でも出してほしいという人は，ぜひ声をあげていただければと。

4Gamer：
　分かりました。国内のファンのがんばりに期待したいと思います。では最後に，ストリーミングでEVOを観戦しているカプコンファンに向けて，メッセージをお願いします。

綾野氏（左）と新妻氏（右）

新妻氏：
　はい。ではまず僕から。今年のEVOは日本からのプレイヤーも多いうえに，実力も拮抗していて，観戦していてもすごく面白いと思います。日本のプレイヤーが世界で活躍してくれると，格闘ゲームがもっと盛り上がると思うので，ぜひそうなってほしいですね。格闘ゲームとカプコンの応援を，今後ともよろしくお願いします。

綾野氏：
　まず「ストリートファイターIV アーケードエディション Ver.2012」（以下，ストIV AE）の初EVOとなる今回，Ver.2012での世界一が，初めて決まります。

4Gamer：
　そういえばそうですね。去年のウメハラさんはユンでしたし。

綾野氏：
　そう。これはつまり，僕らが調整したVer.2012のゲームバランスが本当に正しかったのか，初めて結論が出るということでもあると思うんです。そんな集大成のようなイベントでもありますので，僕自身も，決勝戦を楽しみにしたいです。

4Gamer：
　なるほど，ストクロについてはどうでしょう？

綾野氏：
　ストクロはストIV AEとは逆に，進化を続けていく途中での大会ということになるわけです。ストクロの決勝戦ももちろん楽しみなんですが，結論を出すという意味では，まだちょっと早い。だからストクロに関しては，プレイヤーの皆さんも見ただけで結論を出さないで，どんどん新しくなるストクロに，引き続き注目していただけると嬉しいです。

4Gamer：
　分かりました。本日はどうもありがとうございました。