ほかにも弟分ともいえるTCG「デュエル・マスターズ」(以下,デュエマ)や,テーブルトークRPGの始祖たる「ダンジョンズ&ドラゴンズ」(以下,D&D)を擁し,アナログゲームの世界では巨人として知られる存在でもある。
またデジタルゲームの世界でも,デジタルTCGである「マジック:ザ・ギャザリング アリーナ」(PC / iOS / Android)などに触れたことのある読者も多いのではないだろうか。
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そんな同社の社長,John Hight氏の来日の報を受け,今回4Gamerはインタビューの機会を得ることができた。
視察やミーティングの合間を縫っての取材だったため,短い時間ではあったものの,とくに日本ではあまり表に出てくることのない人物だけに,これは貴重な機会である。日本のファンとして,さまざまな疑問をぶつけてみたので,同社のタイトルに興味のある人は,ぜひご一読いただきたい。
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すべてのタイトルを手のひらに――Wizards社長・John Hight氏インタビュー
4Gamer:
本日はお時間をいただき,ありがとうございます。まずは今回の来日の目的について,お聞かせいただけますか。
John Hight氏(以下,Hight氏):
目的は二つあります。まずは日本オフィスを初めて訪れて,デュエマを作っているチームと,マジックのサポートチームに会うこと。そして二つ目は,日本のプレイヤーや店舗のオーナーに実際に会ってみて,“東京でのTCG”を体験することです。
4Gamer:
では,都内のカードショップに実際に足を運ばれたのですか。
Hight氏:
渋谷で何軒か。それに今日もこのあと,秋葉原に行ってみる予定です。レトロゲームを扱う店やゲームセンターは訪れたことがあるのですが,秋葉原のTCGショップは初めてなので,今からとてもワクワクしています。
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4Gamer:
ご自身もマジックをプレイされるのですね。
Hight氏:
もちろん大好きです。日本に来てチーム内の“スタープレイヤー”たちともプレイしましたけど,まあまあ悪くない戦いができましたよ。
4Gamer:
Wizards日本支部のスタッフと対戦したということですか?
Hight氏:
そうです。うちの社員には元プロプレイヤーもいますから,「社長を倒した」という称号を得ようと,皆一生懸命でした(笑)。
ただなんというか……皆さん,非常に抑制的なプレイをするんですよね。これは日本のTCGコミュニティに実際に接してみて,気づかされたことの一つです。競争心に富みながらも,勝者となっても配慮を忘れない。だから「もう1回,この人とプレイしたい」と思えるんですね。
4Gamer:
日本以外では,そうではないと?
Hight氏:
マジック自体は,おおよそフレンドリーなゲームだと思いますよ。
私はさまざまなボードゲームやビデオゲームをプレイしますが,中には「環境そのものが有毒」なタイトルも存在していると考えています。例えば勝ち負けがハッキリしていて,負けた側の気分が下がってしまう,というような。
ですがマジックは,そうあってほしくありません。楽しく遊ぶために作られ,コミュニティの中で進化を遂げてきたゲームなんですから。それを最もよく体現しているのが,私は日本のプレイヤーの皆さんだと思うのです。
4Gamer:
そう思っていただけるのはうれしいですが……ちょっと買いかぶりのようにも思えます(笑)。
Hight氏:
そんなことはありません。たとえ負けても気持ちがいいというか。例えばプレイの後に「こうすれば勝てたんじゃないか」なんて教えられたり,プレイ中も「1ターン巻き戻してもいいですよ」って言ってもらえたりね。これはアメリカではあまり見られない,珍しい経験でした。
4Gamer:
ああ,なるほど。それぐらいなら,あるかもしれません。
Hight氏:
これが非常に重要なポイントなんです。なにせ我が社のモットーは「Bring People Together」,そして「Bring joy through Play」ですから。人々をつなぎ,ゲームプレイを通じて喜びを届けることが何より大切なのです。
4Gamer:
Hightさんはデジタルゲームの世界でキャリアを積んだあと,2024年にWizardsの社長に就任されたと伺っています。これまでとは違いアナログゲームを中心としたWizardsにおいて,今現在ご自身が取り組んでいるミッションを教えていただけますか。
Hight氏:
まず一つ訂正したいのは,私はWizardsの社長であるだけでなく,親会社であるHasbroのデジタルゲーム事業についても統括する立場にあります。
そのうえで重視しているのは,我々の製品をスマートフォンやデスクトップPCでも遊べるようにすること。そして現代に寄り添ったゲームを作り,進化させ続けること。これが私のミッションだと考えています。
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4Gamer:
つまり「マジック:ザ・ギャザリング アリーナ」のように,スマホやPCでほかのゲームを快適に遊べるようにする,ということでしょうか。
Hight氏:
そうですね。地下鉄での移動中はスマホで,そして自宅ではPCやコンソールゲーム機でプレイできる。もちろん店舗や友達の家でなら,テーブルを使って遊ぶのもいいでしょう。そうしたすべての場面に対応していきたいと考えています。
とくにモバイル端末の場合は,アナログの環境をそのまま移すだけでは難しいでしょう。現代のゲームに求められる水準を満たせませんからね。
4Gamer:
なるほど。
Hight氏:
そしてもちろん,デュエマやマジックが今後さらに20年,30年,それ以上に続いていくようにするのも私の使命の一つです。強調しておきたいのは,カードの印刷を止めるつもりはないということです。30年前に集めたカードで,この先もずっとプレイできることが重要なんですから。あなたはお若いので,あまりそういう経験はないかもしれませんが(笑)。
4Gamer:
そんなに若くはないのですけど(苦笑)。しかし紙のカードの重要性はよく理解できます。では,日本の市場についてはどのようにお考えですか。Wizardsにとっての位置づけをお聞かせください。
Hight氏:
これは私見ですが,日本は強固なゲーム文化を持った国だと思います。子供から大人までゲームをプレイしますし,それが自身のアイデンティティにも結びついている。普段着るTシャツの柄や,どんな交友関係を築くかといったことにまで,ゲームが関わっているのです。
ですので私たちは,まずは日本のゲーム文化をよく理解することが重要だと考えています。なぜTCGは人気があるのか,どのように楽しまれているのか,持続していくには何が必要なのかを理解し,その知見をしっかり取り入れていくつもりです。
4Gamer:
それはつまり,日本市場向けの製品を投入していくということですか?
Hight氏:
ちょっと違います。私たちのゲームは,基本的にグローバルで楽しめるように設計されています。しかし,地域に根ざしたアートやフレーバーテキストを取り込むことも忘れてはいません。例えばD&Dでは,日本のプレイヤーに響くよう,日本ローカルの神話や物語を取り入れる動きがあります。
また昨年コラボレーションした「マジック:ザ・ギャザリング――FINAL FANTASY」は,日本だけでなく世界的にも人気を博しました。ユニバースビヨンド※のこれまでの作品群は,世界と比較して相対的に日本での人気が低いものもありましたが,この事例は,今後のコラボレーションの一番の手本になると思います。
※ユニバースビヨンド……他社IPを扱うマジックのコラボレーションシリーズ。これまでに「Fallout」や「ストリートファイター」シリーズ,マーベル作品などとの多数のコラボが行われている。
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4Gamer:
確かに,ファイナルファンタジーとのコラボは日本でも話題になりました。
Hight氏:
それからパートナーシップも非常に重要です。ファイナルファンタジーのコラボにおいて,スクウェア・エニックスは16もの作品から,どのキャラクターをどんなカードとして組み込めば魅力的になるかを,マジックをしっかりと理解したうえで考えてくれました。また私たちも,彼らのゲームの世界観,登場人物,武器,キャラクター同士の関係性などを,できるだけ理解するよう努めました。
4Gamer:
はい。コラボカードの出来は非常に素晴らしいものでした。
Hight氏:
そうして1枚1枚,丁寧に考えていった結果として生まれたのが,「マジック:ザ・ギャザリング――FINAL FANTASY」でした。これは両者に「プレイヤーに素晴らしい体験を提供したい」というパッションがあったからこその奇跡的な成功だったのです。
ちなみにこのパッションは,Wizardsのハロウィンパーティーにも見ることができます。けっこうな割合で,ファイナルファンタジーのコスプレをした社員がいて,私自身も(FFXVIの)クライヴ・ロズフィールドの恰好をしたんですよ。まあ,あんまり出来は良くなかったですけどね(笑)。
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4Gamer:
限られた時間の中で恐縮ですが,D&Dについても少し聞かせてください。日本では,D&Dの新製品が長らく発表されておらず,事実上,展開が止まっている状態となっています。日本のファンたちは,これに不安を感じているのですが,この理由についてお話いただくことはできますか。
Hight氏:
そうですね……詳細は申し上げられませんが,まず製品のローカライズについて判断するのは,私ではなくグローバルプレイの責任者です。彼はプレイヤーの人口や需要を踏まえながら,どう展開するのが最もよいかを分析し,合理的に判断を下します。つまり,これはビジネス上の意思決定なのです。
とはいえ今現在,日本版の展開が止まっているからと言って,今後も永遠にそのままというわけではありません。彼は今年また市場評価を行うでしょうし,その結果次第では状況が変わることもあるでしょう。
4Gamer:
よく分かるお話です。
Hight氏:
ご存じのことと思いますが,D&Dのローカライズは非常に難しい作業です。ルールの量もクラスの数も多くて,それらが複雑に入り混じっているものですから。とはいえ,私たちは経済的な合理性を保ちながら,他言語に対応できる解決策を継続的に探り続けています。今はまだ,その答えを用意できていませんが,いつかたどりつけると信じています。
4Gamer:
ビジネス上の問題だというのは分かりました。例えば先ほど話題に上ったデジタル化の先に,回答が見つかる可能性はありませんか。日本のD&Dファンの一人として,D&D Beyond※が日本語に対応してくれるととても嬉しいのですが。
※D&D Beyond……北米で展開されているD&Dのデジタルプラットフォーム。購入したすべてのルールブックがオンラインで閲覧できるほか,キャラクタービルダーなどの便利なサービスも充実している。
Hight氏:
ご意見ありがとうございます。日本からの要望として持ち帰らせてもらいます。先にもお伝えしたように,私たちはあらゆる人がD&Dをプレイできる世界を目指しています。なので,今の要望も肝に銘じておくようにします。
4Gamer:
ではマジックと同様に,D&Dでも日本のIPとコラボレーションが実現する可能性はありませんか。日本のファンはもちろん,海外のファンにとってもうれしいサプライズになると思うのですが。
Hight氏:
それには完全に同意します。実際そういったアイデアは,内部で話題に上ったことがあるんですよ。
4Gamer:
ああ,それは楽しみです。いつか実現する日を期待して待ちたいと思います。このあとの秋葉原散策を,ぜひ楽しんでください!
アナログとデジタルの両立を推し進め,日本のゲーム文化を理解すべく努めると語るHight氏。だがその裏には,当たり前ではあるが合理的な判断に基づいたビジネスマンの視線が感じられるインタビューであった。
とくにマジックでは,氏が大成功と評するファイナルファンタジーとの大型コラボレーションを踏まえ,今後の展開にも期待が持てる。実際,この開発には5年もかかったようなので,そう簡単に連発できるようなものではないだろうが,マジックのプレイヤーは次なる展開を楽しみに待ちたいところだ。
一方,D&Dの日本展開については,なにか具体的な情報が得られたわけではなかったが,氏の言葉を信じるならば,今後に動きがある可能性も残されている。マジックでの成功体験が,D&Dにも良い化学変化をもたらしてくれることを願うばかりだ。
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