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そうだ アニメ,見よう:第220回は一年戦争の東欧を舞台にした「機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム」。“連邦の白い悪魔”が怖すぎる
初代「機動戦士ガンダム」の舞台となった宇宙世紀0079年の戦い“一年戦争”。ガンダムシリーズの原点とも言えるこの戦争の,ヨーロッパ戦線にフォーカスを当てた新作オリジナルアニメ「機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム(英題:Gundam: Requiem for Vengeance)」が,2024年10月にNetflixで世界同時配信された。
というわけで,「そうだ アニメ,見よう」第220回のタイトルは「機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム」。制作はサンライズ(バンダイナムコフィルムワークス),脚本は「Tekken: Bloodline」や「トランスフォーマー サイバーバース」のギャビン・ハイナイト氏が担当。監督は,ドイツ出身の新進気鋭のエラスマス・ブロスダウ氏が務めている。
「機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム」
そして,開戦から11か月後,東ヨーロッパのジオン軍占領下にある基地のひとつが連邦軍に奪取される。その奪還に向かう混成大隊の中に,宇宙から降りてきたばかりのMS小隊,イリヤ・ソラリ大尉(CV:シリア・マッシンガム/森 なな子)率いる「レッド・ウルフ隊」の姿もあった。
4機のザクII F型で構成された「レッド・ウルフ隊」は待ち伏せを撃破し,基地を無事に取り戻した。しかしその夜,再び連邦軍の襲撃を受ける。今度もイリヤたちの活躍で撃退できたかに見えたが,そこに連邦軍の白いMS,ガンダムEXが現れる。
高い機動力とザクII F型を一撃で倒すビーム兵器,ザクマシンガンでは傷ひとつ与えられない装甲の前になすすべがない「レッド・ウルフ隊」。ニーランド・ルショーン(CV:ラバンス/石毛翔弥)を残して部隊は壊滅してしまう。
ルショーンを助け出したイリヤは,数人の生存者と共に旅団本部を目指すが,そこは既に全滅していた。安全地帯を求める一同は,一縷の期待を込めて「リサイクル・センター」に向かうのだった。
ジオン軍の女性パイロットの視点
一年戦争をジオン軍サイドの視点で描いているのが,本作「機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム」だ。これまでにもOVA「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」やPS2用ソフト「ジオニックフロント 機動戦士ガンダム0079」など,数々の作品でジオン兵たちの物語が描かれてきたが,イリヤ・ソラリ大尉のような女性パイロットが主人公になるのは珍しい。
イリヤは,かつて有名なヴァイオリニストであり,一人息子を両親に預けて従軍している。責任感が強く,常に息子の安否を気に掛ける気丈な女性だ。ルウム戦役で活躍後,最前線であるヨーロッパ戦線に配置されたわけだが,そのイリヤの視点で追い詰められたジオン兵たちの“現実”を,全6エピソード(30分×6話)で描いている。
監督のエラスマス・ブロスダウ氏は,「機動戦士Vガンダム」のヴィクトリーガンダムをはじめガンプラが大好きという,根っからのガンダムファンだ。今回の作品を作るにあたって,OVA「機動戦士ガンダム 第08MS小隊」に影響を受けていると語っている。同作品からは,ヨーロッパ方面軍の師団長ユーリ・ケラーネも登場し,随所でオマージュらしき部分も見られた。
また,ガンダム作品以外に,さまざまな戦記物の映画からもインスパイアを受けているとか。言われてみると,第二次世界大戦の“ダンケルク大撤退”を彷彿させるシーンが作中に登場していた。名作戦争映画を見ている気分も味わえるというわけだ。
そんなミリタリー色強めの本作では,地球において戦いに疲れた兵士たち,疲弊していながらも義務を負っている人々の物語が軸になっているという。
英語版の声優がモーションを担当
本作は,バンダイナムコフィルムワークスとCG映像スタジオのSAFEHOUSEがタッグを組み,Unreal Engine 5を使用した3DCGで制作されている。こだわって作り込まれた映像では,巨大なMSの質感や戦場の土煙り,レーザー兵器の脅威などがリアルな迫力を伴って,戦場の空気を視聴者に伝えてくれる。
そして,イリヤをはじめとしたキャラクターの動きは,モーションキャプチャを採用しているそうだ。しかもスーツアクターではなく,英語版の声優がキャラクターを演じるという,珍しい手法をとっている。モーションとセリフはかなり密接な関係にあるので,同じ役者が演じることで,微妙な表情の変化などのリアリティを表現しているのだとか。
MSの活躍に目が行きがちな本作だが,そうしたキャラクター同士による人間ドラマも見逃せないポイントとなるだろう。
本作オリジナルのMS「ガンダムEX」
登場するMSは,ジオン側はザクII F型やグフカスタム,連邦軍側は61式戦車やジムなど,一年戦争時のものがメインとなっている。その中でも本作オリジナルとなっているのが,連邦軍の最新鋭MSであるガンダムEXだ。
正式名称は「RX-78(G)E ガンダムEX」。(G)と付くということは,陸戦型ガンダムの一種なのだろうが,ガンダムの部品の寄せ集めである陸戦型ガンダムとはまるで次元の違う機動性や武装を持つ,まさに“白い悪魔”だ。
本作では,兵士の視点から見て,兵器や戦争が本当に恐ろしいものとして描かれている。その中でも最も怖い強敵,ガンダムに敵対するジオン兵がどんな心情で対峙していくかが見どころになる。
ガンダムEXへの絶望感がスゴイ
全6エピソードを一気に見てしまった筆者の雑感としては,まず「ガンダム怖い」と「ザグかっこいい」ということに尽きる。ガンダムと対峙したジオン軍兵士の絶望感と,ザグの持つ兵器のたくましさが,“男心”を打つ作品だった。
“世界に向けたガンダム”として制作された本作は,人間ドラマはもちろん,MS同士の戦闘シーンもリアルさを追求しているという。泥臭い陸上戦も楽しめたが,今度はこのクオリティで宇宙戦も見てみたいものだ。ぜひ続編を制作してほしい。
Access Accepted第807回:「機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム」の楽曲を手掛けた気鋭のアメリカ人作曲家
東京ゲームショウ2024にて,ゲーム音楽の作曲家として注目され,「機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム」にも携わったウィルバート・ロジェ2世氏にお話を聞く機会があった。今年だけでも「Helldrivers 2」「Pacific Drive」などさまざまな参加タイトルが発売されている多忙なロジェ氏だが,今回の来日理由は少し意外なものだった。
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- ライター:奥谷海人
- 奥谷海人のAccess Accepted
「機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム」公式サイト
「機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム」公式X
放映データ |
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2024年10月17日〜 |
Netflixで世界同時配信 |
キャスト | |
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イリヤ・ソラリ: シリア・マッシンガム/森 なな子 | |
ニーランド・ルショーン: ラバンス/石毛翔弥 | |
リード・ゲルフィ(チャブス): ジェイムズ・ワット/真木駿一 | |
ケイル・ザヴァレタ: ダニエル・ウィッシーズ/綿貫竜之介 | |
アンダー・ヒートン: アンドリュー・ウォールナー/原 良丞 | |
オニー・カスガ: マックスウェル・パワーズ/大塚剛央 | |
ヘイリー・アーフン: ジェシカ・スパイス/河瀬茉希 | |
アルフィー・ザイドス(ギアヘッド): モリス・シェルトン/中 博史 |
スタッフ | |
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企画: バンダイナムコフィルムワークス | |
制作: サンライズ | |
共同制作: SAFEHOUSE | |
監督: エラスマス・ブロスダウ | |
エグゼクティブプロデューサー: 浅沼 誠/小形尚弘/櫻井大樹/ギャビン・ハイナイト | |
アニメーションプロデューサー/音響監督: 由良浩明 | |
プロデューサー: 彌富健一 | |
脚本: ギャビン・ハイナイト | |
キャラクターデザイン: マヌエル・アウグスト・ディシンジャー・モウラ | |
メカニカルスーパーバイザー: 山根公利 | |
ディレクター・オブ・フォトグラフィ: 笠岡淳平 | |
音楽: ウィルバート・ロジェ II | |
製作:バンダイナムコフィルムワークス | |
(C)創通・サンライズ |
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