［プレイレポ］「DAMON and BABY」はアークシステムワークスの新境地を拓く。魔王と子どもが旅をする，正統派な見下ろし型ガンアクションアドベンチャー

　アークシステムワークスが2026年初頭に発売を予定している新作「DAMON and BABY」（PC / PS5 / Switch / PS4）は，同社を代表するゲームクリエイターの石渡太輔氏がゲームデザインを手掛けた，見下ろし型ガンアクションアドベンチャーゲームだ。


　イベントでの情報公開や，トレイラーのインゲームシーンなどで少しずつゲーム内容が判明してきたが，いまだその全容は見えない。キャッチーな要素としては，「石渡太輔氏がゲームデザインを手掛ける」「GUILTY GEARのキャラクターがゲーム内に登場する」といったところだ。

　この2つの要素から，「アークシステムワークスらしい，エッジの利いた，新しいアクションゲームなのでは？」という印象を受けた人も多いことだろう。筆者もそのひとりだった。

　今回，4Gamerはシナリオの一部パートを先行して体験する機会を得た。実際にプレイして分かったのは，本作が先ほどの印象とは対照的に，幅広い層がカジュアルに楽しめる正統派なガンアクションシューティングであることだ。

魔王と子どもが旅をする，伝統的で正統派なガンアクションシューティング

　「DAMON and BABY」の主人公は，地獄の魔王・デイモンだ。大魔王になるという野望を持つ彼だが，親友である神父の死の間際，謎の子どもを預けられてしまった。どうやらこの子どもはただ者ではないようで，謎の集団に狙われている。オマケになんの呪いか，デイモンはその子どもと離れられなくなってしまった。

　デイモンは，神父の遺言を果たすため，子どもを聖地に送り届けることに。「魔王と子ども」という奇妙なコンビの旅が始まったのだ。なお，前述したように，道中で「GUILTY GEAR」のキャラクターに出会うこともあるが，あくまでもゲスト的な出演であり，同作を知らなくてもまったく問題なく遊べるとのことだ。


　今回プレイできた範囲は，物語では序盤のパートとなる「領主の館」の探索とボス戦だ。館のマップはけっこう広く，二段ジャンプや壁はりつき，空中から急降下しつつの踏みつけといった移動アクションを使い分けて探索する必要があった。

　基本となるアクションは移動とジャンプ，射撃の3つとなる。射撃は右スティックで射線を決める，いわゆるツインスティックシューター形式で，近接攻撃と射撃を組み合わせるコンビネーションがあったり，射撃に使う銃の種類が多く用意されていたりと，遊びの幅は広い。

　なかでも重要なアクションになったのが「ベイビージャンプ」だ。前方へ子供が飛び出すアクションで，デイモンは子どもと離れられないため，子どもの場所へとワープすることになる。ジャンプと組み合わせることで任意の方向にワープしたり，障害物などを避けつつ移動できたりする便利なアクションだ。うまく使うことで，L字の軌道を描いて飛ぶようなこともできて気持ちがいい。

背負われた子どもが前方に飛び出して……（上写真），その後デイモンが子どもの場所へとワープする（下写真）。クールタイムは短く，気軽に使っていける

　館内にはアスレチック的なステージもあり，一面に針が敷き詰められた場所を，動く足場や障害物を避けつつ飛び渡っていかなければならない。足場が動く周期や速度をしっかり観察し，適切なタイミングを計って移動していく。二段ジャンプやベイビージャンプをうまく活用して移動していくのは，伝統的なジャンプアクションらしい小気味いいプレイフィールだ。見下ろし視点でのジャンプアクションは着地位置が分かりづらくなることもあるが，本作ではデイモンの足元にマーカーが出ているので遊びやすいのも好印象である。


　館内は寄り道も多く，収集アイテムにファストトラベルのポイント，そしてアイテムや武器が手に入るロッカーや冷蔵庫，引き出しといったご褒美が置かれている。アイテムの中には食材もあり，マップ内で台所を見つければハンバーガーやプリンといった料理も作れる。食べるとHPが回復するうえに攻撃力アップなど，さまざまなバフも得られるため，食材やレシピ探しも重要になりそうだ。個人的にはハンバーガーの種類が多彩なところも興味深い。


　マップ上には見た目もさまざまな敵が配置されており，子どもを奪うために襲い掛かってくる。石渡氏がキャラクターデザインを手掛けており，ちょっと怖いけど可愛らしいというさじ加減が面白い。どの敵にもゲーム的な一工夫があるのもポイントだろう。

　例えば，クローゼットの前を通りがかったところ，いきなり扉が開いて中から飛び出してきた腕に襲われることがあった。クローゼットには，宝箱に擬態するミミックのような敵が潜んでいたのである。しかも，この敵は扉を閉めた状態だとダメージを与えられない。わざと近寄って攻撃を誘い，扉を開けさせて中を叩かなければならないのだ。

クローゼットの中には，怪物が潜んでいる。扉を閉めているうちはロクにダメージを与えられないのが厄介である

　また，手掛かりを求めてショーケースに近寄ったら，飾られていた人形が四つん這いになって弾をばら撒いてきたこともあった。なんとか撃退したはずだが，なぜか何度も復活する。よく見ると，身体を壊したあとに首が転がるため，これを破壊しないとトドメを刺せない仕組みになっていたのだ。

　今回話を聞いたところ，本作の敵は色違いなどでかさ増しすることなく，80種類以上の敵が登場するという。ボスの数も多く，それらほとんどが石渡氏のデザインということで，どんな敵が出てくるのかにも注目したいところだ。

右上のショーケースに陳列された可愛らしい人形に注目（上写真）。デイモンが近づくと本性を現し，四つん這いの化け物になって襲ってくる（下写真）。身体を破壊したあと，落ちた首にトドメを刺さないと，何度でも復活してくる

バトルを彩る多彩なガンアクション。アクションとの組み合わせで活路を拓く

　デイモンは銃器と近接攻撃を使って戦う。銃器はスタンダードなハンドガン，連射に優れたマシンガン，扇状に弾を撃つショットガン，攻撃力の高いRPG（ロケットランチャー）の4枠を装備でき，それぞれのカテゴリに性能違いの武器が複数用意されている。

　例えば，マシンガンひとつとっても，攻撃力の高い「玄人のマシンガン」，敵が凍る「ライトマシンガン」，火力は低いが構え時に防御力が上がる「アサルトシールドマシンガン」，敵を倒した際にたくさんのお金が手に入る「リッチマン マシンガン」などが用意されている。攻撃のバリエーションも違ったりするので，今後どんな武器が出てくるのかも楽しみだ。

敵を凍らせる効果が付与されていた「ライトマシンガン」。武器は特定の棚に入っているほか，敵からドロップすることもある。中には「＋」「＋＋」といった補正がかかった武器もあり，それだけ強力だ強力だ

　ハンドガン以外の武器は，敵がドロップしたり探索で手に入ったりする弾薬が必要で，むやみに撃ちまくっていると肝心なところで弾切れを起こしてしまうことも。状況に応じた使い分けが重要になりそうだ。近接攻撃のパンチは無限に使えるが，敵に接近しなければならないのが弱点である。

　とはいえ，単なる補助用ではなく，銃器や能力とシナジーがあるのが面白いところ。ハンドガンは距離が近いほど連射速度が上がるし，ベイビージャンプを使えば敵弾をかいくぐって一撃を叩き込むこともできる。戦闘では，射撃とほかのアクションのコンビネーションで，いろいろと工夫ができそうだ。

打撃は近くの敵にしか届かない。しかし，打撃を当てた相手をロックオンし，狙いやすくなる特殊な効果がある。ベイビージャンプで近づき，打撃でロックオンし，近距離で連射速度が上がるハンドガンを撃ち込むといった連係も可能だ

屋敷では謎解きも楽しめる。意味深なマークが刻まれたこの仕掛けは，どんな働きをするのだろう？

　館のボス「ヨトゥンエッガ」は雲つくような巨体の悪魔で，身体を撃ってもダメージを与えられない。弱点は頭上に輝く光輪で，ここに攻撃するにはヨトゥンエッガが召喚する「アッシーヴァ」を撃って気絶させ，足場としなければならないのだ。

ヨトゥンエッガ

　ヨトゥンエッガが激しく攻撃する中，フラフラ動くアッシーヴァを撃ち，その上に乗ってより高い位置のアッシーヴァを撃ち……と登っていき高さを確保する。一定時間が経つとアッシーヴァが消えてしまい，デイモンは地面に落ちてやり直しとなってしまう。限られた時間で正確に操作しなければならないわけだ。

　今回のボスに限った話かもしれないが，ヨトゥンエッガ戦は立ち回りとギミックへの理解が求められる，いわゆるギミック系ボスだ。光輪への攻撃も数度当てるだけでよく，序盤のボスということもあり，難度は抑えめであった。本作には趣向を凝らしたたくさんのボスが登場するそうで，どんな戦いとなるのか非常に楽しみだ。

弱点である光輪は，地上から撃つことはできない（上写真）。平たい敵のアッシーヴァを撃って足場にし，高い所から狙わなければならない（下写真）。もちろん，アッシーヴァを撃つ前に触れるとダメージを食らってしまう

ハードボイルドで魅力溢れるデイモン。キーパーソンとなる子どもの正体とは……

　デイモンのキャラクター性も魅力的だ。魔王なのに神父が親友というのもユニークであるし，彼との約束を果たすために戦い続けるという義理堅い人物で，ハードボイルドなセリフ回しもカッコよく，彼の活躍が楽しみに感じられた。

デイモンはなぜか神父を親友にしている。死にかけている神父は，ふつうの悪魔であれば魂を奪えるカモだが，デイモンは神父の身を案じる。2人の過去に何があったのだろうか？

魔界におけるヒエラルキー。デイモンはかなり下の方に位置するが，いつかは大魔王になるのが夢だという。本作の世界観はなかなかにコミカル

　そして本作のキーパーソンになるであろう子どもの正体も気になるところ。デイモンに背負われ，角に手を伸ばしたり，眠そうにしたりと動きも可愛らしく，セーブ時にアップになったときなどはずっと眺めていたくなった。

デイモンの横に子どもが寝転ぶ。いろいろな動きをするのが可愛らしい

　また，本作はマルチプレイに対応しており，そのときはデイモンの相棒である「犬」をもうひとりのプレイヤーが操作することになる。射撃アクションはできないが，近接攻撃やアイテムの確保，敵の注意を引き付けるなど，さまざまなかたちでデイモンの補佐をできる。デイモンと距離が離れると，きりもみ突進で近づいてくるのがコミカルで，本作の雰囲気を象徴しているキャラクターであるとも感じられた。

サポートキャラクターの犬。なお，本作のマルチプレイはオフラインのみ対応となっている

　今回遊べた範囲は，序盤のアクションパートを切り取った部分で，本作のキモとなる爽快なアクションやステージを攻略するギミック，特徴のあるボス戦という一連の流れを体験できた。たった1ステージでありながら，探索する要素やオマケ的な要素も多く，遊びのボリュームを感じさせるものであった。

　本作は，これまでのアークシステムワークス作品とはまた違った，良い意味で遊びやすい作風となっており，そこに石渡氏のエッセンスが加えられ，独特のゲームの雰囲気やプレイフィールが演出されている。世界観のデザインも全体的にポップなものに仕上がっており，幅広い層が楽しめそうだ。今後の情報露出も含めて，2026年初頭の発売日を楽しみに待ちたい。

デイモンのセリフ回しはハードボイルドで粋だ