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Monolakeはネクソンの“コンテキスト資本”。AI時代に向けた全社データ基盤の構築と「AI Readyなデータ」への進化[NDC26]
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印刷2026/06/18 09:20

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Monolakeはネクソンの“コンテキスト資本”。AI時代に向けた全社データ基盤の構築と「AI Readyなデータ」への進化[NDC26]

 NEXON Koreaのカンファレンスイベント「Nexon Developers Conference 26(NDC26)」では,ネクソン内外の開発者による実務セッションが多数行われている。本稿で取り上げるのは,「AI時代にネクソンはデータで何を準備しているのか」をテーマにした対談セッションだ。モデレーターはTRS Insight 最高経営責任者のハン・ウンヒ氏,パネリストはネクソンコリア技術本部長リュ・チョンフン氏,プラットフォーム本部長ペ・ジュニョン氏,そしてSnowflake Korea ゼネラルマネージャーのイム・ジンシク氏の3名である。

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 AIがあらゆるものをのみ込む時代に,なぜあえて「データ」を語るのか。リュ氏はまず,現場で得た実感を共有した。「多くの人は,AIがすべて解決してくれるからデータは自然について来ると考えますが,現実はまったく逆でした」。あるレポートでは企業の約57%が,自社のデータはまだAIに対応できる状態ではないと回答しているという。
 「モデルは急速にコモディティ化していますが,私たちのゲームやサービスの文脈が反映されたデータは決して代替できません。ネクソンで最も大きな変化を生んだのは,モデルの入れ替えではなく,データパイプラインとオントロジーの整備でした」。

 ペ氏も「LLMがアップデートされるたびに,社内プロジェクトやスタートアップが次々と頓挫していくのを見てきた」と振り返り,「急速に変化するAI時代に,外部には決して代替できないものは何か――それがデータであり,文脈に必要なコンテキストデータの構築だった」と語る。イム氏は「LLMは平気で嘘もつくモデル。意味のある成果を出すには,データの正確性に加え,意味論的・抽象的なレイヤーでの文脈をどれだけ正確に把握しているかが極めて重要だ」と,ベンダーの立場から補足した。

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 では,その答えとして築かれたMonolakeとは何か。リュ氏は「一言で言えば,ネクソンのあらゆるゲームデータが一つに集約された“湖”」と定義する。Snowflakeを基盤としたデータレイクだが,重要なのは技術スタックではなく,ネクソンの役職員全員が同じ場所のデータレイクを使っているという点だ。ゲームプレイのデータベースから業務で蓄積される構造化・非構造化データまでを一つの空間に載せ,単一のビューとして活用する。
 その下支えとして堅牢なデータパイプラインが組まれている。Snowflakeについてイム氏は「DW・データマート・データレイクをAWS/Azure/GCP上で提供し,単一のデータ・シングルプレーンビューを実現する,データAIクラウドプラットフォーム」と説明した。

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 Monolake 1.0の目標は「誰もがデータを簡単に活用できるようにすること」だった。当時の課題は,重要なデータが多くの場所に分散し,基準もバラバラで,入手には管轄組織に問い合わせて長く待つ必要があった,という点だ。

 だが統合ストレージを作るだけではデータサイロは消えない。リュ氏は,それを実際に解消できた決定的要因を3つ挙げた。第一に,分散していたDBをSnowflakeという単一プラットフォームに統合するという経営陣の大胆な意思決定。第二に,標準化されたデータパイプラインと統合ガバナンス。第三に,コストを25%削減し,性能を17倍以上向上させたという成果を数値で示し,多様な活用事例を体験してもらうことで自発的な参加を促したこと。結果として全社員がデータにアクセスできるようになった。

 イム氏は外部の視点から,ネクソンの違いを「スタート地点」に見る。「多くの企業はチームや部門単位でソリューション導入に苦労しますが,ネクソンはリーダーシップの強力なスポンサーシップのもと“全部集約する”と決め,チェンジマネジメントまで一体で進めた。さらに,集めたデータをどう活用させるか,供給者として利用者にプロダクトとしてどう提供するかまで考え抜いていた」。

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 効果を象徴する事例としてペ氏が挙げたのが,運営・CS組織だ。従来はデータアクセス権限が細かく分かれ,依頼ベースでしか抽出できず,顧客対応が遅延していた。だがアクセス性とリテラシーが高まると,ドメインの専門家であるCS担当者自身が直接データを扱えるようになり,応答速度が大きく向上。「ユーザーからは“ネクソンが本気で動き始めた”という反応もあった」という。イム氏は,現場が想像を超える形でMonolakeを活用したと明かす。

 SQLを知らない担当者が「Cortex(コルテックス)」を使い,自然言語の質問をSQLに変換する“バイブコーディング”でデータを扱い,ハッカソンや社内トレーニングを通じて活用が全社に広がった。

 一方でコストやガバナンスの懸念も率直に語られた。リュ氏は,データの出所や蓄積経路といったメタデータを管理し,権限を持つ人だけがアクセスできるガバナンス体制を敷いていると説明。過負荷なクエリは事前検知してアラートを出す好循環を構築したという。ペ氏は「少しでもコストを多く使うと,技術本部から毎日のようにレシートのようなメールが飛んでくる」と笑いを誘った。

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 ここからが本題のMonolake 2.0だ。核心的価値は「AIと人間が共に利用できるシステム」,すなわちAIが文脈を理解できるよう整えた「AI Readyなデータ」である。リュ氏はその定義を3点に整理した。第一に,AIがデータに容易にアクセスできる環境(人には便利なOTPやSSO認証も,AIには障壁になる)。

 第二に,意味の標準化とデータの信頼性(売上とは何か,DAUをどう算出するかを明確に定義し,品質を保証する)。第三に,データ同士の関連性が確立され文脈を解釈できること。この第二・第三の作業,すなわち用語の意味を定義し関係性と判断基準を付与していく作業を「オントロジー」と呼ぶ。

 そのための全社タスクが「オントロジー・ファクトリー」だ。最も重視するのは,現場の担当者がどんな判断をしているか。「現場の判断基準はほとんどが経験的な暗黙知で,ベテランでも明確なルールに言語化するのは難しい。

 この暗黙知をいかに引き出し構造化するかが,最終的にAIの品質を左右する」とリュ氏。技術チームと現場が協業し,現場のノウハウを収集→AIに反映→現場が検証→誤りをフィードバックして再学習,というループを回しているという。

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 その成果物の一つが,すでに社内公開されている「AIサーチ」だ。自然言語で質問するとレポートを自動生成し,分析を依頼すれば結果を出してくれる。「今日の売上はどう?」「今日は雨だけど売上に影響はある?」といった問いに答え,誤りがあれば強化学習で改善していく。最初は『メイプルストーリーM』に適用し,半信半疑だったが,今ではネクソン全体のゲームへ拡大中だという。

 さらに,人が指標を見るのではなくAIが先に異常を検知して知らせるアクティブ型のAIエージェント(ブリーフィングサービス)や,一人ひとりのプレイヤー・キャラクターの行動,どのボスをクリアできていないかまで把握する“超パーソナライゼーション”のレイクも社内テスト中で,精度も高くユーザーケアに有効だとした。

 こうした変化は,データ部門の役割そのものも変えた。「以前はビジネス部門から課題を与えられて解く“問題解決者”でしたが,今は自らインサイトを得て課題を発掘・定義し,解決策まで提供する“トータルソリューションプロバイダー”へ。デザインシステムもMarkdownで参照情報を提供するなど,実装そのものよりEnabler(実現支援者)としての役割が強まっている」とペ氏。イム氏は「データを扱う人のマインドセットが大きく変わった」と評した。

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 ゲーム事業との接続では,Monolake 2.0で生まれた機能を,ゲームのローンチと運営に必要な要素を束ねるサービス「Gamescale」に搭載し,いずれは外部にも提供できる形へ発展させる構想も語られた。

 小規模・中規模企業へのアドバイスとしてイム氏は,「予算がなければ,まず売上に大きく効くデータを1〜2種選び,小さく始めて拡張する。データ収集の段階から標準化とガバナンスを並行させることが何より重要」と助言。成長率3%と10%のどちらが優れているかは“ベースライン”という文脈次第だ,という例で,標準化とオントロジーの両輪が肝だと強調した。

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 モデレーターのハン氏は,同日朝のネクソンコリア カン・デヒョン氏の基調講演に触れ,「代表はAIを“蓄積された知能”と呼び,ネクソンが30年間蓄積してきた文脈こそが競争力だとして“コンテキスト資本”と表現していた。Monolakeもまた,その30年分のコンテキスト資本だと感じた」と締めくくった。

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