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[SPIEL’16]キャプチャー・ザ・フラッグ戦を制せ。スポーツ系FPSのテイストを感じる「SHOOT」のレポートと,その意外な制作意図
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印刷2016/10/19 00:00

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[SPIEL’16]キャプチャー・ザ・フラッグ戦を制せ。スポーツ系FPSのテイストを感じる「SHOOT」のレポートと,その意外な制作意図

 フィギュアを使ったゲームは最近,SPIELの会場で非常に多く見られるようになった。かつては制作コストの確保が難しかったが,Kickstarterなどのクラウドファンディングの普及により,こうした「見栄えの良いゲーム」を作る資金を調達する道が開け,これに伴って,フィギュア制作者の名前がゲームにクレジットされるケースも増えてきた。
 そんな中,「フィギュアは使うが,どんなフィギュアでも構わない」という,ある意味で侠気あふれる作品「SHOOT card game」(以下「SHOOT」)が出展されていたので,その内容をレポートしたい。ちなみにデザイナーも超個性的な人物で,独自のデザインノウハウについての話も聞けたので,合わせて紹介しよう。

分かりづらいかも知れないが,「SHOOT」をプレイ中
画像集 No.001のサムネイル画像 / [SPIEL’16]キャプチャー・ザ・フラッグ戦を制せ。スポーツ系FPSのテイストを感じる「SHOOT」のレポートと,その意外な制作意図

「SHOOT card game」公式サイト

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FPSにインスパイアされた作品


サンタクロース,出撃!
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 「SHOOT」はPCのFPSに強くインスパイアされた作品だ。タイトルこそカードゲームとあるが,実際にはフィギュアを使って机の上でプレイするタイプの作品である。

 プレイヤーは,キャラクターの1人を担当するのだが,ゲームの目的はただ1つで,マップ中央(実は中央でなくてもいいのだが,なるべく中央がいいだろう)に置かれたフラッグを獲得し,リスポーン地点に戻ること。つまり,キャプチャー・ザ・フラッグ戦である。
 ちなみに本作ではフィギュアを用いるが,上記のとおり使用するフィギュアはなんでもいいし,大きさも(良識の範囲内において)自由だ。

 ゲームの手順は以下のようになる。

  • カードを山札から1枚ドローし,そのカードが示す回数だけ移動
  • 敵が射線上にいて,攻撃したいなら,攻撃する

 この繰り返しとなる。

 まずは移動だが,「SHOOT」では,とくにグリッドもない机の上を自由に移動し,移動距離は専用カードを使って測定する。カードの長辺をフィギュアの足元に当て,その距離だけ移動できるというわけだ(カードは曲げても構わない)。この移動を,そのターンで山札から引いたカードが示す移動回数だけ繰り返す。

移動1回で,カードの長辺1つぶんの移動ができる
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このフィギュアのサイズなら,石の左側面に回り込むことで,追加移動力なしに登れる
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 マップ上には,障害物が置かれている可能性もある(このマップデザインはプレイヤーが好きに行う)。障害物は写真が示すとおり,ティーポットや石,ティッシュの箱など,なんでもよい。というより,デザイナーは「そういう,生活感のある空間での銃撃戦がしたかった」とのことなので,凝った障害物はむしろ不要だ。

 こうした障害物を乗り越えて移動する場合,移動回数を1つ,完全に消費する。ただし,その障害物の高さが,使用しているフィギュアの半分以下であれば,とくに追加のコストなく移動可能だ。
 つまり,大きなフィギュアはその大きさゆえに的になりやすいが,その一方で,移動は有利というわけだ。


いかにもスポーツ系FPS的なダメージとアイテム


 移動が終わったらいよいよ射撃である。攻撃力は持っている武器によって異なり,武器の中には,距離によって与えるダメージが異なるものもある。

武器カード。中央に見えるアサルトライフルは,距離1(カード1枚の距離)なら2ダメージを与える
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 ダメージの判定は,移動時に使った山札と同じものを使用する。武器の威力と同じ枚数,山札からカードを引き,そこに示されている数値がダメージになるシステムだ。
 問題は,自分が移動していると命中しにくい,という点。カードには,「移動中に命中したときの与ダメージ」と「移動せずに命中したときの与ダメージ」の2種類があり,デザイナーによれば移動中に射撃すると与ダメージはだいたい半減するという。

 ダメージレートとしては,立ち止まって射撃する相手の攻撃を受けると,ほぼ即死という感じになっており,即死でなくても。ダメージが10を超えるとそのキャラクターは死亡する。死亡すると,持っていたアイテム(武器や,まきびしなどの特殊アイテム,フラッグ)はその場に落ち,プレイヤーはリスポーンする。
 そのため戦闘では,遮蔽物の確保が非常に重要になるが,そもそも本作はキャプチャー・ザ・フラッグ戦であり,相手を撃ち倒しても直接,勝ちには結びつかないことにも注意したい。

(左)フラッグを持ってリスポーンポイントを目指す右下の黒いフィギュアに対し,4回移動で走り込んできた左上の黄色いフィギュアが射撃。(右)合計10ダメージで死亡。ついでにカードの効果でノックバック(うしろにのけぞること)が発生。ノックバックしても死んでるから一緒? いいえ,アイテムが落ちる位置が変わります
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 マップ上にはやられたプレイヤーが落としたもの以外,減ったHPを回復できるヘルスパックなどのアイテムも落ちている。武器や特殊アイテムはカードによってランダムに供給されるので,超強力な武器を拾って一発逆転という可能性もあるわけだ。このあたりはガチなスポーツ系FPSというよりは,若干カジュアル寄りのルールになっている。

中央のカードの右下に注目。「NO」の表示がある
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 ちなみに,「カード1枚ぶんの移動」「フィギュア半分の高さ」といった,割と曖昧な判定に関して,それでゲームになるのか? と思う人もいるかもしれない。だがフィギュアを使って,グリッドのないマップでプレイするゲームは,だいたいこのような曖昧さを含んでいるし,それで問題なくプレイできる場合がほとんどだ。
 そのうえで,もし「この障害物の高さは,フィギュアの半分だ」「いや違う」といった揉め事が起こったときは,カードを1枚引き,そこに示された「Yes/No」で決定する。


ほかのゲームを見てばかりじゃダメだ


 最後に,「SHOOT」を作ったゲームデザイナーのErik Atzen氏に話を聞いたので,以下に掲載しよう。ここまでスポーツ系FPSっぽいゲームを作ったからには,よほどのFPSプレイヤーに違いないと思ったのだが,本人はもっと個性的な人物だった。

4Gamer
 「SHOOT」はFPSを強く意識した作品ですが,普段はどんなタイトルをプレイしているんですか。

Erik Atzen氏(以下,Atzen氏)
 私は,FPSのようなゲームを遊んだことがありません。というか,私はゲームを作るのは大好きですが,遊ぶのはそれほどでもなくて。ほかのゲームを遊ぶと,その影響を受けすぎて,自分が作ろうとしているゲームが混乱してしまうんです。

4Gamer
 それは驚きです。ではいったい,どういう意図で「SHOOT」をデザインしたんですか。

Atzen氏
 ゲームの内側に入って,自分がゲームの一部になってしまうような感覚のある作品が作りたかったんです。プレイヤーが持っている日用品を使ってマップを構成するというのも,それが目的ですね。また,ルールはなるべく少なくしました。ルールが多いと,どうしても没入感が得られにくくなるので。

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4Gamer
 制作にはどれくらい時間がかかりましたか。

Atzen氏
 プロトタイプが完成するまで1年,ブラッシュアップに1年というところです。

4Gamer
 テストプレイはどうしたんですか。

Atzen氏
 テストプレイは自分でします。ゲームを遊ぶのが好きじゃないというより,ほかのゲームの影響を受けるのが嫌なだけなので,自分のゲームをテストするのは大丈夫です。
 私は,アイデアの引き出しみたいなのをたくさん持っていて,それらをゲームにしたいと考えています。でも,あまりいろんなゲームを遊んで影響を受けしまうと,せっかくのアイデアが形にならないまま終わってしまうことがあり,それは絶対に避けたいですね。
 実際,SPIELの会場に来るには来たけど,会場にあるゲームはどれ1つとして遊んでいません。

偶数人数でチーム戦にしても楽しい
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4Gamer
 徹底していますね。ところで「SHOOT」は言語依存性の低いゲームですので,マニュアルを多言語対応すれば世界中で販売できると思います。そのような計画はありますか。

Atzen氏
 今のところ,フランス,カナダ,アメリカ,そしてベルギーで売る予定です。もちろん,拡張セットを作る計画もありますよ。

4Gamer
 「SHOOT」以外でデザイン中のゲームはありますか。

Atzen氏
 サッカーゲームを作っていて,来年のSPIELには持ってこれそうです。1人対1人でプレイするもので,カードだけで遊べて短時間で勝負がつく,とても簡単で楽しいゲームです。今のところ,「Five Card Football」というタイトルをつけようと思っています。

4Gamer
デザイナーのErik Atzen氏。デンマーク在住で,現地の道場で剣道を楽しんでいるとのこと
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 では,最後になりますが,「自分もゲームを作ってみたい」という人に向けて,メッセージをお願いします。

Atzen氏
 そうですね,私としては「ほかのゲームを見てばかりじゃあダメだ」と言いたいですね。例えば,今デザインしているサッカーゲームでは,「ボールを蹴るゲーム」として考えていた頃は,なんだかどうもしっくりこなかったんですが,それを「ボールを受け取るゲーム」として考え直したとき,全体像がスッキリとまとまりました。
 こんな感じで,まずは自分のアイデアを,できるだけ多方向から見つめることが重要だと思います。解決法をほかのゲームに探しにいくんじゃなくて。

4Gamer
 どうもありがとうございました。

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