インタビュー
8年間,悲喜こもごもいろいろなことがありました。「ラグナロクオンライン」8周年特別企画,RO歴代関係者に集まってもらい座談会を開いてみました
国を越えたアップデートの難しさ
バグ発見報告は日本からが一番多い?
4Gamer:
ほかには,当時どんなことが印象に残ってますか?
廣瀬氏:
2003年末にアマツが実装されたのですが……,当時の資料があったので持ってきました。全然,今のアマツじゃないんですけどね。アマツという国にツクモという町があるという設定で,Gravityに資料を提出したのですが,上がってきたものには,なぜか城が建っていました。そういう要望は出してなかったんですけどね(笑)。モンスターもユニークなものに変わっていて,ウチから出したのは,普通の忍者だったんですが……,カブキが混ざって戻ってきました。ダンジョンも鍾乳洞を指定していたのですが……。
4Gamer:
気が付けば畳だったわけですね(笑)。アマツを作るというのは,こちらからの提案だったのですか?
岩田氏:
いえ,Gravityからの依頼です。今後,各国で展開していくにあたり,ローカルマップを作っていきたいということで,廣瀬と一緒に企画を練っていた覚えがあります。
廣瀬氏:
まったく違う物が出てきましたけど(笑)。
4Gamer:
どの作品でもそうだと思いますが,国境を越えると,もしくは国をまたいでの意見のやりとりって大変でしょうね(笑)。では,2004年あたりはどうでしたか。
廣瀬氏:
えーと,2004年はニブルヘイムなどが人気でしたね。
いや,2004年と言えば,やっぱりアニメでしょう(笑)。
4Gamer:
そういえばありましたね! 千葉氏がアニメ担当だったんですか?
千葉氏:
アニメの連動イベント,通称,語り部オンラインの担当でした。最初の3話は別の者が作っていたのですが,その後は私が作るようになりました。台本を堀から受け取って,内容に合わせて召喚されるモンスターなどの企画を立てて,語り部がどんなセリフを語るかというのを決めて岩田のところに持っていくんですが……「こんなんじゃだめだ!」と言われて(笑)。
夜勤の時間までかけて必死に作っていたのを思い出しますね。あのアニメって深夜放送だったじゃないですか。あのころはGMイベントは手動だったので,アニメの展開に合わせてプロンテラに時計塔管理者を召喚したりしてました。
廣瀬氏:
そうそう,堀さんから電話かかってきてたんだよね。
千葉氏:
「いまだ!(堀氏)」「はいっ!(千葉氏)」みたいな感じで(笑)。
一同:(笑)。
畠山氏:
あれって,会社のテレビを見ながらやってたんじゃないんだ。
いや,当時は会社にテレビがなかったから。なかなかマゾいイベントでしたよ。でも,毎回毎回召喚するのも芸がないということで,ちょっとずつ手を変え品を変えノウハウを蓄積し,最終的にはNPCでダンジョンをつないでみようかな,とかいろいろやりました。当時はGMグループでまだスクリプトを書いていなかったので,廣瀬の担当部署に「アニメの第○話なんですけど,こういうNPC作ってください」って持っていくと,「ローカライズで必死なのに,そんなことできませんよ!」って言われちゃうんですよ。こんなNPCすら作れないのか! なんて喧嘩もしましたね(笑)。
廣瀬氏:
いや,そこまでは言ってないよ(笑)。
4Gamer:
それを最後までやり通したんですか?
千葉氏:
やり通しましたよ! 2クールだったかな? 企画書全部とってありますよ。あと2004年で一番大きいのは,韓国でRWCが開催されたことじゃなかったかな?
4Gamer:
2004年は,日本ギルドは参加したんでしたっけ。
廣瀬氏:
ええ,参加しましたよ。たしかアニメの年だったので,有明の東京ビッグサイトで日本代表ギルドの決定戦をやりました。あのころはまだ手探り状態だったので,いまほど選手のみなさんへのフォローができていなかったという反省がありますね。我々もギルドのみなさんも初めての経験で,さらにトラブルも発生するなどいろんなことがありました。
岩田氏:
何もかもがぶっつけ本番みたいな感じで。あれ,リハとかしないの? って心配になりましたね。案の定,本番でトラブルが起こりました。
廣瀬氏:
試合直前に日本の選手がトラブルを発見して手を挙げたのですが,受理されずに試合が始まってしまったんですよ。その試合は最後までそのまま進んで決着が付いてしまった。選手は納得がいかなくて憤ってるし,当時,GMマネージャーだった岩田がものすごい剣幕でGravityのスタッフに詰め寄っていたのを覚えています(笑)。
岩田氏:
私は審判員という形で参加してまして,自分の担当するチームの全員の準備が整ったら手を挙げて,両チームの審判員の手が挙がったらOK,試合開始ですよ,というルールが一応あったんです。しかし,トラブルがあって,10分から20分ぐらい対応していたのですが,それが収まったと思ったのか,私が手を上げてないのにスタートしちゃったんですよ。結局そのトラブルのあった選手は満足にキャラが扱えないまま試合に負けて納得いかない。ああ,こういうトラブルのときのために,私が呼ばれたんだろうなと思って,ステージ裏でガーッとやってたら,当時のGravity キム会長の鶴の一声で再試合になったんです。
廣瀬氏:
そうとう怒鳴ってましたから,よく覚えてます。
4Gamer:
その1回目に参加してどのような収穫が得られましたか?
廣瀬氏:
重要なのは運営スタッフも含めた場慣れをするということと,本番に近い環境で練習しないとダメだと分かったことでしょうか。
その辺りは,先日の中村さんの講演で,しっかり勉強しましたよ(笑)。
一同:(笑)。
4Gamer:
その後の印象的な出来事となりますと,転生実装でしょうか。プレイヤーの期待が,ものすごく高かったと思います。
廣瀬氏:
しばらくレベル99までのゲームでしたが,ある意味レベルキャップが外れるということですからね。職業名を決めるのがなかなか難しかった思い出がありますね。
4Gamer:
名前は韓国側が決めたものじゃないんですか?
たしか東京ゲームショウ(以下,TGS)で話したことがあると思うのですが,韓国からはストーカーという名前が届いていたのですが,日本ではチェイサーに変更しました。なぜか,3次職は最初からシャドーチェイサーで届きましたけど(笑)。
4Gamer:
たしかにストーカーというと,悪いイメージですね。
廣瀬氏:
そうです,とくに当時は,ストーカー事件などで話題になっていたので,この言葉に非常に悪いイメージがありました。ジプシーという名称もそうですし,ブラックスミスの上がホワイトスミスになってる部分もそうですが,人種差別につながりかねない表現に敏感な国では,そういう名称を変えているところもあるみたいですね。
4Gamer:
たしかにグローバル展開では,日本人であれば普通はあまり気にしない単語が引っかかることも,少なくはなさそうですね。ちなみに,転生の実装が一度延期されたのは,どういう理由があったのでしょうか。
廣瀬氏:
単純にクオリティアップの問題だったと思います。スキルのバランスだったり,日本に実装が決まった段階でも2-2次職の上位二次職のグラフィックが未到着だったりとかしましたので,開発クオリティが公開できる状態じゃなかったからだと記憶しています。
岩田氏:
あと検証課ができて,外部検証をするようになったのっていつ頃だっけ?
4Gamer:
検証って内部でやっているんじゃないんですか?
千葉氏:
全部が内部というわけじゃないんですよ。
岩田氏:
ボリュームが一定以上に増えたタイミングと,ウチがテストサーバーを完全に管理できるようになってからは,外部のデバッグ会社さんに協力を仰ぐこともあります。いわゆる全チェックってタスクが重すぎるんです。新規のものは仕様を把握するためにスタッフが内部で行なうんですが,先祖返りじゃないですが,直したバグが元に戻ってるといったことが結構あるので。そこで,一通り全部のチェックを外注にお願いするようになった時期があるんです。
岩田氏:
それまでは,大きいパッチがドカン! と実装されるというのが,あまりなかったんです。届いて内部でローカライズしながらGMがチェックしてという感じでした。
でも,それでは担いきれなくなってきたので,がっちり検証だけやるチームを作って外注さんにも協力を仰いだんですが,そこで初めてスケジュールの管理という意識が出てきたような気がします。
それまでは,届いたプログラムのローカライズにスケジュールをあわせて,デバッグを同時進行という状態でした。それが,まず完璧にローカライズしてテストサーバーで動かす。そして検証期間をしっかりと取らなければならないというシステムになったのが,この頃だと思います。
4Gamer:
その辺りまでは,メンテナンスの終了時間にズレがある,いわゆるガンホー時間と言われていたこともありましたね。
岩田氏:
検証で見つかったバグを,Gravityに渡して直してもらってということをやっていたので,もしかするとほかの国よりも,適用するまでの時間はかかっていたかもしれません。
畠山氏:
でも,Gravity的にはガンホーはバグを見つける率が高い! って言ってましたよ。ガンホーが日本実装用にデバッグして見つけたバグをGravityに報告したら,ワールドワイドでバグが解消した,ということが多々あったみたいです(笑)。
廣瀬氏:
お互いに助け合って,プレイヤーにとって益になれば良いので深く言及するつもりはないのですが,日本が発見したバグを報告したときに,日本で修正されるのには時間がかかったりするじゃないですか。そうして,翌週に韓国のパッチ情報でバグ修正がありましたというのが流れると,時間が掛かる事情も理解してはいるのですが,切ない気分にはなりました。
4Gamer:
それで,日本ではいつ適用されるの? っていうのが結構ありますよね。
千葉氏:
世界共通で発生しているバグがあった場合,日本が報告したとしても,まず韓国のサーバーで修正してからというのがGravityのスタンスなので,日本のプレイヤーのみなさんには,先に韓国からの情報だけが流れるといった状況ですね。
畠山氏:
マスターである韓国のサーバーを先に直す,といった感覚なんだと思います。
廣瀬氏:
ローカライズと言えば,僕自身が担当していたこともあって,2次職の転職試験を全部訳したりしたことを覚えています。
4Gamer:
2次職の試験というのは2-2次職ですか?
廣瀬氏:
そうですね,ダンサーの転職試験などは非常に苦労したのを覚えています。どのパネルに乗るのかというところで,それを示す斜めの矢印が日本語のフォントになかったので,どうしたらいいか悩んだ覚えがあります。そのころからローカライズ関連では苦労しましたね。
また,今でも結構あることなんですが,NPCのセリフだけ先に届いて,そこから日本語に直していくときなど,ストーリー的には女性と思って女性の話言葉にしていたら,男みたいなイメージイラストが届いて。男の言葉に置き換えながらふと,男に見えるけど実は女性かもしれないという疑問がわいて「男性のキャラですか」と質問を投げるといったこともあります。
4Gamer:
たしかに,テキストだけでは……とくに言葉が違うと,性別までを判断するのは難しそうです。
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