インタビュー
[G-Star 2019]「EVE Online」日本語版のリスタートの可能性は? CCP GamesとPearl Abyss日本支社のトップに聞いてみた
4Gamerでも以前お伝えしているが,Pearl Abyssは2018年9月にCCP Gamesの買収を行っている。その後,EVE Onlinの韓国語版のローカライズ作業が行われ,G-Star 2019のタイミングで正式サービスを迎えたという。
Pearl AbyssはG-Star 2019で新作タイトルを4作品紹介し(関連記事),ブースにはEVE Onlineも出展している。「Pearl Abyss=黒い砂漠のゲームメーカー」という認識をなんとなく持つ4Gamer読者も多いかもしれないが,筆者は今回のG-Starの取材を通じて,同社のパブリッシャとしての存在感が大きく高まった。
今回は,EVE Onlineのブースを訪れていたCCP GamesのCEO,Hilmar Veigar Petursson氏にインタビューを実施。EVE Onlineの韓国のゲームファンに向けてのアプローチや,Pearl Abyss傘下になったことによる影響,そして,EVE Online日本語版のリスタートの可能性など,さまざまな話を聞いてみた。Pearl Abyss JP(日本支社)のCEOである李正攝氏も同席してくれたインタビューの内容をお伝えしよう。
G-Star 2019で「EVE Online」韓国語版をアピール
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
今回のG-Starで,EVE Onlineの韓国語版が大々的に出展されていますが,来場客の反応を見て,感想はいかがですか。
韓国語版のローカライズ作業に着手する前に,この国におけるゲームマーケットを詳しく調査しました。韓国は昔からPCゲームが広く親しまれており,またMMORPGも「風の王国」に始まる,非常に長い歴史があります。EVE Onlineには長年培った運営ノウハウがあり,韓国のゲームファンとの相性も良いと信じています。
4Gamer:
韓国,といいますかアジア圏におけるSFに対する認識度において,不安のようなものはありましたか。
Petursson氏:
そこに関しては,とくに不安視はしていません。MMORPGでもっとも大事なのはゲームシステムやバランス,そしてコミュニティですから。
SFという世界観は確かに少し珍しいかもしれませんが,むしろ,それが新鮮な印象を与えることにもつながります。ですので,今回のイベント出展を通じて,EVE Onlineの魅力を多くの人に向けてアピールしたいですね。
4Gamer:
CCP Gamesは世界各地でオフラインイベントを頻繁に開催していますよね。ここまでイベントに注力する狙いについて,あらためて教えてください。
Petursson氏:
EVE Onlineのサービスを始めてから16年が経過しました。今も非常に多くのプレイヤーが楽しんでくれていますが,そのもっとも大きな理由のひとつは,ゲーム内で培ったコミュニティにあると思うんです。ですので,EVE Onlineのコミュニティをもっと深く満喫するために,我々に何ができるのかを常に考えています。その答えのひとつが,オフラインイベントなんです。
4Gamer:
そのことを感じていても,ワールドツアーの規模になると,相当な費用が掛かるでしょうし,二の足を踏んでしまうメーカーも多そうです。
Petursson氏:
確かにそうかもしれません。費用のほかにも,ゲームのアップデートも両立せねばなりませんからね。「オフラインイベントにかまけてないで,もっとゲーム内のアップデートに専念してくれ!」と言われてへこむこともありますし,イベントを開催することにプレッシャーも感じています。しかし,それでも私たちはオフラインイベントを続けたいんですよ。
Pearl Abyssによる買収から1年が経過
4Gamer:
2018年9月にCCP GamesがPearl Abyssに傘下に加わりました。どういった点が決め手になって,Pearl Abyssを選ばれたのでしょうか。
Petursson氏:
当時,CCP Gamesに協力してくれるさまざまな会社を調べていました。ですが,オンラインゲームやMMORPGに対して真剣に考えるところって,それほど多くないんですよ。そういったなか,韓国にPearl Abyssという会社があることを知りました。
Pearl Abyssは若い会社ですが,MMORPGのマーケットに精通し,非常に高い技術力を持ち,ワールドワイド展開を重視しています。このようなメーカーの存在は世界的に見ても,すごく珍しいです。この会社であれば,タッグを組むことで双方がシナジーを得られると考えたのが決め手になりました。
4Gamer:
Pearl Abyssの傘下に入ってから1年が経過しましたが,それによって開発体制などに大きな変化はありましたか。
Petursson氏:
いえ,それはまったくないですね。
4Gamer:
あらためて,CCP Gamesから見たPearl Abyssという会社に対する印象をお聞かせください。
Petursson氏:
Pearl Abyssはスタッフが若くエネルギッシュで,そしてMMORPGで成功しています。その姿は,かつてCCP Gamesを設立した頃に近いものがありますね。そのためか,個人的には彼らと一緒に仕事をすることで,自分も若返ったような気分になれるんですよ(笑)。それによって,もっとEVE Onlineの開発をがんばろう! と奮起することもありますし,彼らのことはリスペクトしています。
EVE Onlineに関連した複数のタイトルを開発中
4Gamer:
CCP Gamesの新作タイトルについて,開発状況などを聞かせてください。
まず,今年5月に発表された「EVE:Echoes」について,あらためての紹介をお願いします。
「EVE Online」のIPを使った「EVE:Echoes」の続報や,「風ノ旅ビト」開発会社の新作も登場。NetEaseのカンファレンスレポート
NetEaseは,2019年5月20日中国・広州でカンファレンスを開催し,約50タイトルを一挙に紹介した。同社はアジア向けだけでなく,グローバル向けの展開も積極的に行っているのだが,本稿では,その方向性に沿った作品を3本,ピックアップして紹介しよう。
Petursson氏:
EVE:Echoesは,EVE Onlineのスマートフォン版ともいうべきゲームです。これまで約3年をかけて開発しており,今年の12月に中国を皮切りにソフトローンチする予定です。
また,かなり大規模なゲーム内容となっていることから,スマホ以外のプラットフォームにも展開できないか,検討しているところです。
4Gamer:
そのほかには,「EVE Aether Wars」という作品もありますね。
Petursson氏:
EVE:Aether Warsは,社内で研究しているさまざまな技術を,とりあえず形にしてみたプロジェクトです。従来だと,最多で同時6000人のバトルを行えていたのですが,EVE:Aether Warsによって1万人を目指せるようになっています。
ただ,これはゲームというよりプロトタイプと呼ぶべきもので,アプリとしてのリリース予定は今のところありません。
4Gamer:
では,「War of Ascension」の状況はいかがでしょうか。
Petursson氏:
War of Ascensionに関しては,その開発リソースをEVE Onlineに集中させるべく,現在は一時停止しています。プロジェクトが終わったわけではなく,再開する可能性おありますが,今のところはなんとも言えないですね。
4Gamer:
「Project Nova」なんてのもありますよね。
Petursson氏:
それは,SF系のMMOゲームとして新規開発中のタイトルです。いま話せる情報はこれだけです(笑)
EVE Online日本語版のリスタートの可能性は?
4Gamer:
日本のメディアとしては,EVE Online日本語版についても聞かねばなりません。
EVE Online日本語版は,Nexonが2012年から2017年までサービスを行っていましたが,現在は終了しています。日本の熱心ファンは,いまも再開を心待ちにしていると思います。
Petursson氏:
そうですよね。CCP Gamesとしては前向きに考えています。
今回,EVE Online韓国語版をローンチしたことがきっかけで,状況が好転してくれることに期待したいですね。
4Gamer:
Pearl Abyssは今後,日本支社に力を入れる構えだと聞いています。ですが,現在同社が展開しているタイトルは「黒い砂漠MOBILE」と「黒い砂漠」PS4版のみと,それほど多くはありません。また,「Pearl Abyss Connect」では4タイトルが発表されていますが,これらが仮に日本でローンチされるとしても,まだまだ先の話になりそうです。
そういったなか,EVE Onlineはゲームとして完成されており,過去には日本展開された実績もあります。開発会社と運営会社の双方にとって,サービスの手間が大きくかからないように見えますが。
Petursson氏:
(隣に座っているPearl Abyss JPのCEOに向かって)この考え方には私も同感なんだけど,どう思います?
李正攝氏:
いまの時点で断言はできませんが,これから検討しますよ。
今回,EVE Online韓国語版のローンチが行われますが,韓国のゲーマーがどのように受け入れるのか,Pearl Abyss日本支社としても注視しています。
おっしゃるようにEVE Onlineは非常に長い期間サービスが行われており,SF MMORPGとしてオンリーワンといえる存在です。私の一存で決められるわけではないものの,もしこのようなタイトルを担当できたらとても光栄ですね。
Petursson氏:
嬉しいこと言ってくれるね! 一緒に写真を撮ろう!(笑)
4Gamer:
撮りますよ〜。はい,チーズ!
4Gamer:
というわけで,そろそろお時間のようなので,最後にEVE Universeのビジョンを聞かせてください。
Petursson氏:
EVE Onlineのサービスを永遠に続けたいですね!
4Gamer:
そのためにも,Pearl Abyss JPによるリスタートに期待したいですね。
本日はありがとうございました。
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Copyright (C) CCP 1997-2017
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- EVE ONLINE(R) ゲームタイムカード 50
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