企画記事
La MirageのAmie氏とROBINのまんがコーナーのROBIN氏を招いた座談会「MMO今昔物語」。「UO」「EQ」「WoW」……MMOの黄金時代を駆け抜けたプレイヤーたち
UOとは違う怖さがあったEverQuest
原田氏:
UOの次に遊んだのは「EverQuest」だったなぁ。
徳岡氏:
EQでMMOの方向性が変わった気がします。
原田氏:
EQはハマり方が全然違いました。UOとは全然違う楽しみがあるなって思いましたね。あれは物欲と達成欲が凄いんですよ。
UOでは,PKがいつ起こるか分からないこともあって「人の意識」の存在が,世界に現実感と恐ろしさをもたらしてた。
EQは3Dの主観視点になったことで,個人的には死角とか暗闇が凄く怖くて,初めてやったときは世界ってこんなに怖いんだって思いがあったんですけど,それって他に人がいるからっていう怖さじゃないんですよね。 慣れてくると死角も暗闇も怖くなくなって,良い装備が欲しいってなる。1人用のRPGをCo-opで遊んでる感じが近いかな。
それでも遠くに旅をしたときは凄く苦労したし,死んで装備を失うリスクもあったから,怖かったことは怖かったんですけど,UOとは別次元の怖さと面白さでしたね。
でも原田くんの日記を見る限りだと,EQでは物欲的な遊び方してなかったよね。
原田氏:
あの……。ええ……そうなんですよ。
(一同笑)
違うんです! そりゃ良いアイテムっていうのは欲しかったんですけど,社会人には無理なことが多すぎて! 当時のゲーム開発職の忙しさも,ほら,みんなわかりますよね?
4Gamer:
選ばれし者しか手に入れられなかった。
原田氏:
そう。手に入れられなかった。自分も人間なんで,本来ならみんなと同じくらい物欲はあったはずですよ。
ただ,La Mirageのサイトはアンチテーゼ的なことも意識してたんですよ。EQのみんなが物欲に支配されている感じがすごかったんで,UOの面白さと半々にできないのかなと思ってて。僕もゲーム開発者なので,半々なシステムなんてのは机上の空論であって,プレイヤーのモチベーションを引っ張る仕組みを構築するのは難しいと分かってましたが。
ただ,もっとプレイヤーみんなの力で面白くできないかなって思ってたんです。アイテムを手に入れるだけじゃなくて,こういう遊び方もあるんじゃないって提示したかった。変な話ですが,EQで人の死ぬ様ってすごく面白いじゃないですか。それを横目にダンジョンに挑戦するんじゃなくて,助けたりとか,話を聞いた方が面白いんじゃないかと思って,ああいうことをやり始めたんですよ。
4Gamer:
なるほど,物欲のアンチテーゼだったと。
少なくとも僕はそういう意識でやってました。大勢でゲームをやっている以上,承認欲求はあって,多くのプレイヤーは強大なレイドボスを倒したり,凄いアイテムを手に入れることで,多くの人はそれを満たしてたと思うんです。
ただ,それだけじゃない面白さをどう発信すればいいかなあと。当時からゲーム開発者としてメディアインタビューに出ることも多かったのですが,そこで語るのもおかしいし,じゃあその思いをどこにぶつければ良いか悩んだ末に作ったのがLa Mirageのサイトでした。
EQってゲーム自体が面白いから,それをちゃんと伝えることが面白いと思ってわざとやってたんですよ。
4Gamer:
僕はトップギルドでやってて,たぶん,羨ましがられる側にいたんですけど,物欲はあまりなかったですね。どちらかというと,とにかく先に行きたいって気持ちの方が強かった。
原田氏:
ディスカバーしたいってことですよね。あとはシンプルに倒してみたいっていうのと。
4Gamer:
僕らは新しいあいつを倒したい! っていうただそれだけでした。
徳岡氏:
世界初への挑戦ですよね。
4Gamer:
この先に何がいるのか見たい! っていうだけで,毎日20時間くらい付き合わされるわけです(笑)。
ROBIN氏:
EQは3Dになって冒険しがいのある素晴らしい遊び場が作られたんですよね。NPCの数も多くて,クエストもいっぱいあった。
徳岡氏:
クエストは山のようにありましたね。
ROBIN氏:
日本人は英語が苦手な人が多いから,クエストの始め方がややこしいこともあって,積極的にやってる人は少なかったんじゃないかなぁ。
原田氏:
たしかに。
ROBIN氏:
単語をチャットで入力したら返事が返ってくるっていう,今でも珍しいシステムですよね。
原田氏:
大半の人は物語を意識してなかったんじゃないかな。
ROBIN氏:
何かのアイテムが欲しいからクエストをやって,ストーリーはあまり見てないというか。攻略サイトを読んでその通りになぞっていく感じ。EQの開発者たちは素晴らしい世界を作ったんだけど,用意したご褒美自体がプレイヤーの目的になっちゃって,主流がそっち側に行っちゃった。
原田氏:
あのゲームはストーリーが意外に面白かった。誰だれに裏切られてこうなったとか,NPCにもちゃんと背景がある。カエルの王国のGukとか,会社の先輩たちとすごく興味を持ちましたね。
4Gamer:
Upper GukとLower Gukに分かれてて敵対したカエルが住んでるダンジョンですよね。もとはひとつのカエル王国だった。
原田氏:
そうなんですよ。片方はGhoulになったんですけど,かつては仲間だった。僕は単純にどっちのボスが強いのかっていうのが気になって,戦わせてみたんです。その話を書いたのがLa Mirageのサイトを始めるきっかけだったんですけど。
ROBIN氏:
それからWebサイトが面白いなって思って本格的に始めたの?
原田氏:
その前からサイト自体は立ち上げてたんですけどね。最初にみんなにウケたのがアレでした。それがきっかけで僕もEQのストーリーをしっかり読むようになって,いろいろなところに見に行きましたね。
ROBIN氏:
EQってNPCがしっかり演技してくれるよね。
徳岡氏:
フィールドを歩いてると敵対してる勢力のNPCが戦ってたりしますし,敵が自分に気づいたときもセリフをしゃべったりしてました。NPCの行動ひとつひとつがアトラクションになっていた気がします。
原田氏:
EQって,自分の信じる神様とか,種族とかで勢力が分かれるシステムがあったじゃないですか。なんでしたっけ? Faction?
徳岡氏:
Factionですね。
原田氏:
そのシステムがあったおかげでジレンマも起きて面白かったんですよね。
ROBIN氏:
ね!
原田氏:
ダークエルフの後輩とクエストやろうとしたら「僕はそのクエスト,手が出せません!」とか。
ROBIN氏:
逆に泣きながら手伝ってくれたりね。
原田氏:
そういうのもあってロールプレイする土壌が出来てたんですよね。僕はドルイドだったんで,動物を殺すのが嫌だった。どうしても倒さないといけないときは「このオオカミだけ……っ!」って思いでやってました。ドルイドやってるとロールプレイの行動のせいか脳に刷り込みが起きて,動物に対する愛情が高まるんですよね。
4Gamer:
わかります(笑)。
ROBIN氏:
でもマンガを描くうえでUOの方がネタはいっぱいあった。EQもすごく面白くて,この気持ちをマンガにしたいとは思ってたんだけど「アイテムを手に入れてやったー!」って,描き辛かったんですよね。
原田氏:
失敗談の方がネタになりますよね。
ROBIN氏:
EQでマンガにしやすかったのは,GoodとEvilの対立関係でしたね。世界観では敵対してるけど,プレイヤーは個人の意思で,例えばハイエルフとダークエルフが仲良くしたっていい。故郷の街に入れなくなるかもしれないけど,ダークエルフを助けてもいい。
「ロミオとジュリエット」みたいな,障害を越えて友だちになるっていう方がドラマになるんで,そっちの方が面白く描けましたね。今後にも活かしたいなと思えたし。
徳岡氏:
僕がEQで受けた印象はUOとは大小関係が逆なんだなってことですね。EQは冒険がメインでそれを面白くするために社会があった。UOは逆で社会があってそこで冒険するっていう世界だった。
例えるならEQは壮大なテーマパークで,UOはいろんな道具が使える砂場って感じでした。
原田氏:
だから,多くの人にとってはEQの方が分かりやすかったんです。目的があったし。
ROBIN氏:
UOを薦めても「何やればいいか分かんない」ってやめちゃった人がたくさんいたもん。
徳岡氏:
典型的なUOをやめるパターンですね(笑)。
原田氏:
そういう人多いですよね。EQは大体の人がハマれる要素があった。
ROBIN氏:
EQは世界がすごく広くてダンジョンも多かったから,僕らみたいな弱小ギルドでも,ちゃんと攻略の楽しみがあったんですよね。
原田氏:
そうですね。僕らは強豪ギルドがやらないような攻略の仕方をしてましたよ。海外でもMirageギルドは知名度があったので,トップギルドの人たちがレイドの時間まで「お前らのパーティに入れてくれ」とか言ってきて,パーティに参加することもあったんです。そしたら大体の人がビックリする。
ROBIN氏:
連携に?
原田氏:
そう。「え!? ちょっとまて,これお前らで倒せんの!?」って。
ROBIN氏:
変則的な攻略するもんね(笑)。
原田氏:
ヘイトコントロールのノウハウが凄くて(笑)。敵を間に入れて座りあって,右往左往させたりとか,その間に魔法撃って倒したり。「これがタンクがいないときの倒し方だよ!」って(笑)。後々普通の攻略になっていくんですが,当時はかなり斬新な攻略だったので,驚く人が多かったんですよ。
ROBIN氏:
Tankがチャームした花とかね。
原田氏:
そうそう。こいつをあるアイテムでTankがチャームして連れて行けばこのメンバーでも実はアレに勝てるとか,ハイエンド装備のパーティやトップギルドならやらなくても倒せるんですけど,そういう“変なノウハウやテクニック”がいっぱいあった。そういう意味でも攻略は面白かったですね。
それの拡大版を強豪ギルドはレイドでやってたんだろうなと。
4Gamer:
レイドのときは立ち位置が決められたりしてましたね。CCHもギルマスが今日の人数聞いて,その人数によって「52の3ね」とか言って「わかりましたー!」ってマクロを書き換えてました。
原田氏:
トップギルドの人たちは装備が良いのでマナの回復もすごく速いんですよね。「Mirageもレイドに来てよ!」って言われて,大規模レイドのCCHに組み込まれるんですけど,僕らはマナ回復が遅いんですよ。「NEXT Amie!」って言われるんですけど,マナ回復が全然追いついてなくて。
(一同笑)
原田氏:
とりあえずやってる振りをする(笑)。アイテムで青色のキラキラが出るやつを使いながらヒールっぽいジェスチャーを見せて「NEXT ○○!」って言って,「ふぅ! バレなかった!」ってのを全員でやってました(笑)。チェット履歴が高速で消えるように謎のマクロメッセージを出しながらね。
ROBIN氏:
死んじゃっても誰のせいかよくわからないしね(笑)。
原田氏:
「回復,間に合ってないよ!」ってレイドリーダー達に言われるんですけど,「絶対俺らのせいだー! 俺らなんかをレイドに呼ぶから!」とか思いながら。
4Gamer:
日常的にレイドやってるギルドは装備が違いますからね。マナ回復の速さは重要でした。
原田氏:
そうなんですよ! それを考慮してくれない。たまに装備覗かれて「ひょっとしてマナの回復ほとんど間に合ってなくない?」って言われるんですけど,「見ないでください! レイド装備は死体に残ってます!」って誤魔化したり(笑)。
徳岡氏:
EQは装備で強くなっていくタイプのMMORPGでしたけど,そこから生まれる嫉妬や憧れもゲームのスパイスになってましたね。そこもUOとは全然違うところでした。
原田氏:
あとEQは3Dだったから視覚的な面白さがあったんですよね。氷のダンジョンみたいなところもあった。ギミックもちゃんとあって氷で滑るんで,移動がリスクになった。
ROBIN氏:
あー! 滑った滑った!
原田氏:
そんな滑るところをレイドだと100人とかで移動するんですよ。Mirageのメンバーはそういう場所に慣れてないから,「怖い! 怖い!」って言いながら進むんですけど,慣れてる人たちは早く行けって感じで押してくる(笑)。
仲間の奥さんが女ノームでやってたんですけど,「押さないで! 押さないで!」って言ってるのに,小さいから見えないのもあってみんなにすごい押されて。ツルツルって滑って通路から押し出されて,崖から落ちちゃったんです。
落ちてもギリギリ生きてたんですけど,その後が壮絶で。落ちた穴の全方向から黒い蜘蛛が出てきて喰われ始めて,奥さんが「やだああー!」って言ってるんですけど,助けに行けないから見てることしかできない(笑)。
ROBIN氏:
押さないでって言ったのに(笑)。
原田氏:
でも,それをボーっと見てられないんですよ。その奥さんが死んだら,その後に大変なことになることが分かってたんで,「○○さんが落ちたぞー!」って叫んで,みんなで一斉にログアウトする。ログアウトでヘイトリストを切るのとか,EQが発祥ですよね。
4Gamer:
ログアウトは基本ですね(笑)。
ROBIN氏:
見えない床とかもあったよね。荷物を置いてみて道があるかどうか調べながら進むの。
原田氏:
そういうの,Mirageは落ちるんですけどね(笑)。やっぱり視覚的な面白さはありましたよね。
何の事前情報もなくゲームを始めたときの話ですけど,Roって砂漠があったじゃないですか。
一同:
ありましたね。
原田氏:
そこで座ってたんですよ。「うわー砂漠だねぇ! 夕日超きれー」って。そしたら砂丘の先に超でかい頭が見えて「NPCバグってるねー。でかくない? あれ」って,みんなで言ってたんですよね。
(一同笑)
原田氏:
そしたらそれがドーンドーンドーンって歩いてくる。ジャイアントに初めて遭遇したときはホントに衝撃でした。
徳岡氏:
大きい敵は衝撃でしたねー。
原田氏:
なんじゃこりゃー! って。レベル50になるとどうやら1人で倒せるらしいとかいう話を聞いて,「そんなことできるの!?」って思いましたね。
ROBIN氏:
各ゾーンに適正レベルよりも強くてパニックを起こすような敵がいるんだよね。
原田氏:
そうそう。ヘイトの範囲もおかしくて大暴れするやつですよね。
それで爆笑したことあって。サザエさんのエンディングのシルエットみたいに外人のパーティが地平線を走ってて,その後ろをジャイアントが追いかけてるんですよ。パーティの最後尾から1人ずつ殴り倒されていくのを遠くから見て,みんなで爆笑してたら,こっちに向かって来て(笑)。
ROBIN氏:
パーティメンバーがヒールしちゃったりね。
原田氏:
そう。「助けんじゃねえ! こっちに来るだろ!」って。そういう光景がすごく面白いんですよね。召喚したスケルトンがネクロマンサーの後ろをつけて行ってて,それがまずバラバラに崩れる(笑)。
ROBIN氏:
遠くに見える光景の滑稽さはあったよね。
原田氏:
ジャイアントが暴れて,ドンドン死んでいってさっきまで賑わっていたゾーンに誰もいなくなったり,みんなで大きい鳥に追いかけられたり(笑)。
4Gamer:
グリフォンですね。
原田氏:
みんなが強くなってくると,そういうやつが掃除されるようになったけど,初期の頃は誰も倒せないから大変だった。
徳岡氏:
自分は60人とか70人とかいう規模で団体行動するのがすごく新鮮でしたね。それまでって,せいぜい8人とかが限界だったじゃないですか。UOでも諸般の事情で20人くらいが限度だった。EQって普通に60人くらいでレイドできた。全然統制が取れないんですけど(笑)。
ROBIN氏:
チームプレイを念頭に置いたのはEQが最初じゃないかな。
徳岡氏:
EQが最初でしょうね。何とか1人で遊べるクラスもありましたけど,パーティを組まないとほとんど何もできないゲーム性だったんで,UOとは別の形でコミュニティが形成されましたね。半ば強制に近かったかもしれません。
でもそういうシステムのおかげで,仲間と協力して強敵を倒したり,ダンジョンを攻略するっていう楽しさがフォーカスされましたよね。それがプレイヤーに受けて,結果的にEQのゲーム性を継承するものが多く登場することになりました。
ROBIN氏:
僕は商売が好きでUOでは鍛冶屋をしてたんだけど,EQではなかなか商売ができなかったんだよね。それでも初期の頃にやってたのが「10スロットバッグ」の商売だったんですよね。
原田氏:
10スロットバッグ販売は一時期盛り上がりましたね。大きいバッグはたくさん戦利品を拾うために必要で,需要があったんですよね。
ROBIN氏:
そうそう。それで裁縫スキルを上げて,人が大勢集まる大都会の……なんだっけあそこ……F……。
一同:
Freeport?
ROBIN氏:
そう! Freeportに行って――
原田氏:
Freeportを大都会っていうのも今考えるとなんだか悲しいですね(笑)。現代に照らし合わせると片田舎の港町で,そんなに大きい街でもなかったんですけど,みんなが集まってくるから意識としては都会なんですよね。
4Gamer:
QeynosかFreeportかって感じでした。
ROBIN氏:
クマを狩ってる人から材料仕入れてバッグを作って売る,っていうのが楽しかった。しょぼい装備着たままで商売してたらギルドに拾われて,徐々にダンジョンに挑戦していく遊びに変わっていったんです。
原田氏:
僕もそうだったんですけど,ROBINさんはドルイドをやってたから幸せだったんですよ。
ROBIN氏:
たしかにそうかも。
原田氏:
ウォリアーだと1人で遊べないからパーティを組まざるを得ない。でもドルイドは1人でも遊べちゃうんですよね。今思えばあのゲームはドルイドゲーだったんですよ(笑)。
4Gamer:
僕もドルイドでしたよ(笑)。
原田氏:
ほら! ドルイドはできること多すぎるんですよね。
4Gamer:
ペットも出せて,DoTもあったし,足も速い。
ROBIN氏:
ソロできるもん。
原田氏:
ドルイドは超面白かった。
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