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[GC 2006#93]「Guild Wars」最強ギルド決定戦「GWFC」決勝大会。接戦のすえ優勝は韓国リージョン「War Machine」の手に
これまでにも何度か記事にしているが,GWFCは同作を象徴する対人戦モードの,「ギルドバトル」(GvG)を用いた世界大会。GvGの結果は毎回ラダーランキングとして反映され,約1か月単位の“シーズン”で,上位の成績を収めたギルドがポイントを獲得する。今年3月から7月までの間に計3回のシーズンが行われており,これらを通したトータルポイント数で上位5ギルドと,敗者復活戦を勝ち抜いた1ギルドが,このたびGC 2006会場であるライプチヒに集結した,というわけだ。なお,GWFCの詳細なルールに関しては,公式サイトを参照してほしい。
このような対人戦イベントは,ほかの作品でもよく催されるが,GWFCが特徴的なのはこれが一過性のイベントではなく,通常プレイのGvGの延長戦上にある点だ。見方を変えると、GWFCは今年の3月から5か月間,えんえんと予選が繰り広げられていたわけで,そこを勝ち抜いたギルドはまさしく正真正銘の精鋭揃いといってよい。
しかもGvGの対戦相手は世界共通であるため,実際にGvGを楽しむプレイヤーならば,これらギルドの強さは身をもって知っており,ある意味身近な存在といえる。こういった超有名ギルドが一堂に会し,最終決戦を繰り広げるのだから,盛り上がらないはずがない。
■優勝候補「The Last Pride」,準決勝でまさかの敗退
準決勝はどの試合も長時間にわたる激戦だったのだが,筆者にとってとくに印象深かったのが上記カードの第3試合だ。基本戦術面から見ていくと,「The Last Pride」は8人中5人がメインまたはサブジョブにアサシンを選び,人員配置を分けることで相手のかく乱を狙う。対するIdiot Savantsは奇策を弄さず,どっしり本陣を構えてさまざまな事態に対応するやり方だ。
試合開始早々,The Last Prideは猛ダッシュで進撃し,3分が経過した時点でIdiot Savantsの本陣は,The Last Prideによって完全に包囲された。本陣での守りに入ると,マップ中央にあるフラッグタワーも確保できないため,士気の面を含め,これはかなり分が悪い。このままじわじわと押し込まれてしまうのか? と多くの観戦者は思ったはずだが,ここからのIdiot Savantsの粘りが凄かった。本陣の守りが固く,Idiot Savantsの選手どころか,NPCすらほとんど倒されないのだ。
じっくり試合を見ていくと,その理由が少しずつ分かってきた。今回の試合マップは,本陣へと続く2か所の出入口の幅がとても狭い。このため,The Last Prideお得意のヒット&アウェイが,その機動力を生かしきれないのだ。そして,隘路をめぐる混戦の真っ最中に,「ロッドゴート インバケイション」などといった範囲魔法が,容赦なく降り注ぐのだからたまらない。また,本陣の裏側からチクチクと攻めかかる別働隊の動きを,レンジャーのトラップできっちりと封じていたのも印象的であった。
どうやら今回のThe Last Prdeは,こうして陣地に篭もった相手を切り崩すケースを想定していなかったようだ。一見するとIdiot Savantsの本陣は包囲下にあって,士気も奪われ続けているものの,実際の兵士数は減っていない。The Last Prdeは果敢に攻めるものの,試合時間は30分を経過する。そうして,砦を防衛していたNPCもことごとく出撃する最終決戦「ビクトリー オア デス」へと突入することになった。
これまで温存してきたNPC勢力と共に一丸となって動き,別働隊にも惑わされなかったIdiot Savantsは堅固で,最終的にThe Last Prideのギルドロードを倒して勝利した。Idiot Savantsの“逆転勝利”といえる展開だっただけに,作戦が見事に効を奏した選手達の喜びも,ひとしおだったろう。
戦術にトレードオフ要素がつきまとうのがGuild WarsのGvGの持つ大きな特徴である。例えば待ちに徹した場合,逆襲に転ずる手段に事欠いたり,味方の士気が急激に下がったりといったデメリットを同時に抱えてしまう。そこであえて偏った戦術を選んだIdiot Savantsは,相手のビルドの弱点を明確に見抜いたうえで対処したということにほかならない。
ただし,こうした作戦面で大きな不利を強いられながらも個人戦闘においてほとんど一歩も退かぬ展開を続けていた,The Last Pride各人のテクニックも,賞賛に値しよう。
■予想だにしない展開,最終勝者は「War Machine」
その第3試合の内容だが,まず画面でIdiot SavantsのProfession構成をよく見ていただきたい。なんと5人ものメンバーが,メインジョブにモンクを選んでいる。いまさらいうまでもないが,モンクは基本的に回復を得意とするジョブだ。そればかり5人も集めて一体何をしようというのか。観戦用のモニターには両ギルドのジョブ構成が一覧表示されるが,対するWar Machineにしてみると,一体何がなんだかさっぱり理解できなかっただろう。
そして,このようなメンバー構成をベースにIdiot Savantsが採った戦術も,かなりのインパクトのあるものだった。試合が始まるやいなやIdiot Savantsは防御面をいっさい捨てて,8人全員でWar Machineの本陣へと突撃したのだ。ご存じのとおりmGvGが開始された直後は,ギルドロードの防御力が非常に高い。しかも8人中5人がモンクという攻撃力の弱い編成で,どれほどの勝算があるのか。このような不安と疑問が渦巻くなか,試合開始後1分そこそこで,War Machineの本陣では大混戦が繰り広げられていた。
大半の観戦者は,モンクばかりを集めて一体何ができるのだ? と思っただろう。筆者もそうだ。しかし,Idiot Savantsのモンク一人一人をじっくり見ていくと,どうやら全員が回復能力重視というわけではないようだ。GvGで用いられることはマレだが,モンクは「ホーリー」と呼ばれる,敵にダメージを与えるスキル群を習得できる。Idiot Savantsのモンクのうち2名は,このホーリー面にスキルを特化させていたのだ。これはGWFC決勝戦という大舞台を逆手に取った,奇策中の奇策といってよい。
恐らくIdiot Savantsの狙いとしては,最初の突撃で本陣にいるNPC数名を倒し,後のビクトリー オア デスなどの展開を有利に持っていきたかったのだろう。仮に,War Machineが得意とする別働隊を最初から繰り出してきた場合は,人手が減る分だけ確かにその可能性があった。だがWar Machineは,あまりの奇策に驚いたのか,普段と違って本陣の守りをがっちり固めてしまったのだ。
結果,Idiot Savantsは一人残らず全滅。NPCもほとんど倒せなかった。じきにIdiot Savantsのメンバーは復活するが,迷うことなく再度突撃する。しかしWar Machine今度という今度こそそれを完全に予測しており,彼らを完膚なきまでに叩きのめす……。まさしく,鬼気迫る何かであった。
猛攻をしのいだWar Machineは,カウンターに転ずる。2度の全滅でデスペナルティが積み重なったIdiot Savantsは,一転して厳しい戦いを強いられることになった。Idiot Savants側の城門を挟んだ攻防がしばらく続くが,ここで一気に決着をつけようと思ったのか,War Machineがカタパルトを発射。しかし運が悪いことに,その弾は味方数名を下敷きにしてしまう。
Idiot Savantsはチャンス到来と見,城門を越えて再び攻めに転ずる。……と,ここで再び発射されたWar Machineのカタパルトが,今度は見事Idiot Savants陣営に命中。自陣近くで一気に6名を失ったIdiot Savantsは,そのままWar Machineに押し込まれて敗退した。かくして世界最強の栄誉と賞金10万ドルはWar Machineの手に渡り,前回のWorld Championshipで二位に甘んじた雪辱を見事に果たした。
……繰り返すが,これは一発ネタ狙いのGvGではなく,10万ドルもの賞金が掛かった試合である。世界中が注目する大舞台で,このような奇策を繰り出すIdiot Savantsの度胸たるや見上げたものだが,それより驚くべきは,誰もが思いもよらぬ奇策の余地がいまだに眠っており,それで勝てる可能性が多少なりとも残されたGuild Warsという作品の奥深さではないだろうか。この決勝戦第3試合はまさしくドラマティックだった。そして,このような感動を与えてくれたGWFCの参加ギルドのメンバー達に,心から敬意を表したい。(ライター:川崎 政一郎)
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