インタビュー
RazerのPRディレクター,Wang氏にメールでいろいろ聞いてみた
今回は,そんなRazerのPRディレクターにメールインタビューを試みたので,マウスを中心に気になるポイントをいろいろ聞いてみた。回答してくれたのは,Razer USAの広報部門ディレクターであるGeorge Wang氏(PR Director, Razer USA)だ。DeathAdderの話題を中心に,サポート体制などに関しても質問をぶつけてみたので,DeathAdderが気になる人はもちろん,Razerの動向が気になる人も,ぜひチェックしてほしい。
DeathAdderが採用する「3G Infrated Sensor」(第3世代赤外線センサー)について,技術的な詳細を教えてください。
George Wang(ジョージ・ワン)氏:
3G Infrated Sensorは,「Razer Diamondback」(以下Diamondback)で採用した赤外線センサーから,いくつかのポイントを改善したものです。例えば,ソフトウェア的に補間したわけではなく,“本当に”最高解像度を200dpiアップ(※編注:DeathAdderが採用するセンサーの最高解像度は1800dpiで,Diamondbackの同1600dpiよりも200dpi上がっている)させていたり。これらは,ファームウェアの進化によってもたらされています。
DeathAdderでは,マウスを持ち上げて移動させるときにセンサーが反応してしまう距離を最小にしたと謳われていますが,これはどのようにして実現されていますか?
George Wang氏:
Razer独自の技術によるものであり,残念ながら情報の開示はできません。
4Gamer.net:
DeathAdderでは,トラッキングスピード(≒操作への追従性)が強くアピールされ,実際にHabuが45ips(ips:inches per second,マウスを1秒間に最大何インチ動かしたときまで操作に追従できるかを示した値)なのに対し,DeathAdderでは60ipsを実現したとされています。では,Razerのほかのマウスは何ipsなのでしょうか? また,競合製品や一般的なマウス製品は,どれくらいなのですか?
Diamondbackはおよそ40ipsになります。一般的なマウスだと,12ipsを超えることはないでしょう。しかし,マウスパッドの表面の違いや模様,色やそのほかの要素によって影響を受けるため,多くのマウスメーカーは,ips性能を明らかにはしないと思います。
我々が,我々のマウスについて60ipsなどと述べるときには,著名なゲーマー向けマウスパッドのすべてを横断的にテストして,値に問題がないことを確認しています。
4Gamer.net:
DeathAdderでは,秒間30×30ピクセルのイメージサイズを持つとされています。では,Habu以前のRazer製マウスではいくつだったのでしょうか?
George Wang氏:
DeathAdderと同じく,すべてのRazer製マウスは秒間30×30ピクセルの読み取りが可能です。
4Gamer.net:
なぜDeathAdderでは,Habuや「Razer Copperhead」(以下Copperhead)における特徴の一つで,大々的にアピールされたレーザーセンサーを採用しなかったのでしょうか?
レーザーセンサーと光学センサーにはそれぞれ異なるメリットがあります。
Copperheadが採用するレーザーセンサーは,より高い解像度で動作させられるため,高速で正確な動作が可能になります。マウスの解像度設定を高くして,マウスをあまり動かさないプレイスタイル(※編注:いわゆるハイセンシでマウスを使うユーザー)向けです。また,硬くて光沢のあるサーフェスに向くという特徴がありますね。
一方,DeathAdderが採用する3G Infrated Sensorは,低解像度でマウスを動かすプレイスタイルのユーザーに向いています。
いわゆるローセンシを好むゲーマーは,広いサーフェス上で大きく,素早くマウスを動かすことになるわけですが,そういう人達に向いているということです。赤外線センサーは,レーザーセンサーと比べて,布製マウスパッドに向くというのもあります。
3G Infrated Sensorに関しては,「マウスを持ち上げて動かすとき,マウスのセンサーが反応してしまう距離(※編注:原文は「the lift off distance」)は,サーフェスの色によって変わる」ことを,指摘する必要があります。この距離は,黒いサーフェスよりも白いそれのほうが短くなります。
3G Infrated Sensorは,たいていのサーフェスにおいて,マウスを2.1mm持ち上げるとセンサーの追跡を停止するようになりました。旧世代の赤外線センサーは,最低でも2.4mm以上離さないと,センサーが停止しなくならないのに対して,です。これら2点の改良により,(DeathAdderは)ローセンシで高速にマウスを動かすユーザーに向くというわけですね。
しかし,ローセンシ設定は,視点を変更しながら移動したり,目標を切り替えたりするとき,マウスを大きく動かさねばならないということでもあります。
Habuにおいて,レーザーセンサーはマウスボタンから遠いところにありますが,これはなぜなのでしょう?
George Wang氏:
我々の研究では,センサーの場所はマウスに有意な影響を――ポジティブかネガティブかに関わりなく――与えなかったからです。また,Habuにおいては,メカニカルデザイン的に,あの場所に置かれる必要がありました。
4Gamer.net:
Razer製マウスの動作には,ファームウェアとドライバソフトウェアが必要になりますが,それぞれ,マウスの動作のどういった部分を担当しているのでしょうか?
George Wang氏:
ファームウェアとドライバは,共同してマウスの機能を制御します。ドライバソフトウェアから,ファームウェアを制御して解像度設定を変更したり,マウス本体に内蔵されたLEDの点灯を止めたり,といった感じです。
4Gamer.net:
ファームウェアの更新作業は,面倒過ぎるように感じますが,何か理由はあるのでしょうか?
George Wang氏:
そうでしょうか。少なくともRazer製マウスのファームウェアアップデートは,基本的にワンクリックで行えますが。
Barracuda AC-1が搭載するサウンドチップ「Razer Fidelity」に関しては,C-Media Electronics製チップ「CMI 8788」と非常に関係深いものだと考えています。まったく同じものなのでしょうか?
George Wang氏:
Razer Fidelityでは,我々の「Razer ESP」技術によって,ゲームプレイ時に音の深みや定位感が増すよう,機能拡張されています。
4Gamer.net:
現在,Barracuda AC-1は,その最大の特徴であるDolby Digital LiveやDTS Interactiveの各機能を「Windows Vista」環境で利用できません。DirectSound 3Dベースのゲームサウンドをアナログマルチチャネル出力することもできませんが,こういった課題への取り組みロードマップを教えてください。
Razerは,Barracuda AC-1だけでなく,マウスに関しても,Windows Vistaで正常動作するよう,作業を進めています。一部はすでにサポートサイト「Razer Support」から対応ドライバを入手可能で,現在のところ入手できないドライバも,近い将来にアップロードされるでしょう。
……Q&A形式のメールインタビューゆえに,どうしても踏み込みきれない部分があり,結果として“かわされて”しまったポイントが少なくないのは残念だが,RazerがDeathAdderにかなり力を入れていることと,同社がそれをどういったユーザーに向けて訴求していこうとしているのかがはっきり分かったのは収穫だった。
一方で気になったのは,エンドユーザーの実感と非常に近い部分と,逆にかなり離れた部分が混在している印象を受けた点だ。とくに,Habuのセンサーの位置に関する言及と,(その難度についてはひとまず置いておくとして)ファームウェアやドライバのアップデートの面倒くささに関する認識は,少なくとも日本のユーザーとRazerの間に,かなりのズレがあるように感じた。日本に支社なり事務所なりが存在しない周辺機器メーカーの限界なのかもしれない。
ただ,とくに新製品発表のタイミングでもないこの時期に,PRディレクターという“かなり偉い人”がインタビューを受けてくれた以上,Razerは決して,日本市場を軽視しているわけではないだろう。新製品が発表されてもなかなか店頭に並ばなかったり,ドライバやファームウェア周りの問題がついて回ったりしがちなRazer製品だが,今後も注目し,見守るだけの価値があるのは,間違いなさそうだ。(佐々山薫郁)
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