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Razerの新作アーケードスティック「Panthera Evo」レビュー。機能性と可搬性を兼ね備えた,トーナメントを勝ち抜くための1台
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印刷2019/01/25 00:00

レビュー

機能性と可搬性を兼ね備えた,トーナメントを勝ち抜くための1台

Razer Panthera Evo

Text by T田 コイチ

 RazerのPC/PS4向け新作アーケードスティック「Razer Panthera Evo」(以下,Panthera Evo)が,本日(2019年1月25日)に日本市場にて発売となる。世界市場およびRazer公式のストアサイトでは,2018年11月2日にすでに発売を開始している製品ではあるものの,それがようやく日本国内の量販店などでも買えるようになるわけだ。

Panthera Evo。対応プラットフォームはPCとPlayStation 4で,日本での流通価格は3万24円(税込)
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 世界で活躍するトッププレイヤー達の間でも使用率の高い現行製品「Razer Panthera」の後継機だけあって,新たに加わった機能の使い勝手や,実際のプレイフィールが気になる人も多いはず。そのPanthera Evoにいち早く触れる機会が得られたので,本稿ではレビューをお届けしてみたい。

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 日本時間の2018年11月2日に発売となったRazerの新作アーケードスティック「Razer Panthera Evo」が,EVO2018会場にて実機展示されていたので紹介しよう。また製品担当のMarkManことMark Julio(マーク・フリオ)氏に,気になる日本展開についても聞いてきたので,その模様も合わせてお届けする。

[2018/11/02 00:00]

Razer Panthera Evoの製品ページ



考え抜かれた,シンプルで無駄のない設計


 基本的な情報からおさらいしていこう。
 開封したPanthera Evoを触って,まず感じるのはその軽さだ。公称値による重さは2.1kgで,現行機であるRazer Pantheraと比べ,約1.3kgの軽量化が図られている。筐体サイズは約385(W)×260(D)×121(H)mmで,こちらも横幅で約6cm,縦幅で約5cmのサイズダウンだ。プロゲーマーなど,アーケードスティックを頻繁に持ち運ぶユーザーにとっては,かなりの負担減になることは間違いないだろう。

天面の開閉機構が省略されたことで,Razer Pantheraと比べてはるかに軽量,かつコンパクトになったPanthera Evo。片手でも簡単に持ち運べる。天板のゆるやかな傾斜も,手にフィットして心地よいと感じられた
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底面には幅広の滑り止めがついていて,激しいレバー操作でも滑りにくい。軽くなったことで安定性に疑問を持つ人もいるかもしれないが,この滑り止めのおかげで問題にはならない
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 インタフェースの面では,右側面手前側に(おそらく)4極の3.5mmのミニピン端子が追加された。ここにヘッドセットを接続することで,PCやPS4接続時にボイスチャットが簡単に使用できる。端子の位置が右側面ということもあって,膝置きしたときにケーブルが邪魔にならないのは好印象だ。

右側面にはヘッドセット接続用のミニピン端子のほか,[OPTION]ボタンと[SHARE]ボタンが並ぶ。両ボタンの配置はRazer Pantheraから変わらずだ
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 天面の上部には,中央から左に[PS]ボタン,タッチパッド,[L3]ボタン,[R3]ボタン,レバーの機能割り当てスイッチ(D-Padと左右のアナログスティックから選択),[OPTION]および[SHARE]ボタンのロックスイッチ,そして追加された音量調整ボタンとマイクミュートボタンが並ぶ。付け加えると,アーケードスティック自体から音量調整が可能な製品は,このPanthera Evoが初であろう。

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天面の音量ボタンを押すと,音量が順繰りに5段階に変化する。ただしインジケータ的なものはないので,現在の音量がどの段階であるかは聞いて判断するほかない
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タッチパッドは中指を伸ばしたすぐ先に配置されていて指を伸ばしやすく,ベストな配置と感じられた。むしろすべてのアーケードスティックで統一してほしいくらいだ。[L3][R3]と合わせ,昨今の格ゲー(のトレーニングモード)でよく使用する機能なのでとてもありがたい

 またケーブル周りについても多くの変更が見られる。Razer Pantheraでは着脱式だったものが,Panthera Evoでは背面の収納ボックスに収められる形となり,煩わしさが大きく改善された。

背面に用意された収納ボックス。従来製品でもよく見られる機能だが,Panthera Evoではフタをツメで固定するタイプではなく,バネの力で緩やかに閉まる機構が用いられている。地味ではあるが,高級感を感じるポイントだ
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 また収納ボックスの筐体本体側付近には,ケーブルを通すための小さめの穴が用意されていて,ここにケーブル端の留め具を引っかけることで,ケーブルを固定できるようになっている。
 あるいは収納ボックスのフタの上にも大きめ長方形の穴があり,こちらからケーブルを通せば,ケーブルのほとんどをボックス内に収納したまま,USB端子だけを外に出すこともできる。留め具もないので,この状態でケーブルを引っ張ればスルスルとコードが伸びていき,長さを微調整ができる仕組みだ。
 アーケードスティックの着脱に際してのケーブルの取り回しは,とくに大きなゲーム大会では試合のたびに発生するため,トラブルの元になりがちでもある。ここを少しでもスマートにしようという配慮が感じられる,プレイヤーフレンドリーな設計といえるだろう。

完全にケーブルを収納ボックスに入れてしまえば,このようにスッキリした外観にすることも
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 天面は透明なアクリルパネルに覆われており,このパネルと筐体本体との間にあるデザインシートを変更することで,天面デザインをカスタマイズできるようになった。シートは公式サイトにて,3パターンのデザインがpdf形式で配布されているのでこれを印刷して使うか,もしくは自作してもいい。テンプレート(ai,pdf,psd形式)が同じく公式サイトからダウンロードできるので活用するといいだろう。

公式サイトでは,3種類のデザインシートとテンプレートの配布が行われている
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 一方で,メンテナンス性の面では,Razer Pantheraにあった天面の開閉機構が省略されたこともあり,どうしても見劣りしてしまう。むしろ天面デザインを変更する機能が増えただけ,内部にアクセスするために回す必要のあるネジの数は大幅に増えており,他社製品と比べても煩雑であることは否めない。

 とはいえこれは考え方の問題であって,メンテナンスのためとはいえ,内部にアクセスしなければならない機会がどれほどあるのか,という話でもある。既報のとおり,レバーボールを締め直すだけなら,底面に用意されたメンテナンスホールを使えばよいし,ボタンやレバーを換装するにしても,最初の1度だけであることが多いはず。開閉機構を省略したことによるメリット/デメリットを考えれば,クレバーな選択だといえるのではないだろうか。

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内部にアクセスするには,まず底面のメンテナンスホールを塞ぐゴム栓を取り外し,レバーの軸にマイナスドライバーをあてがったうえで,レバーボールを完全に取り外す。このメンテンナンスホールは,反対に緩くなったレバーボールを締め直す用途にも便利である
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次にシャフトカバーの下にある小さなネジを外す。これを外しておかないとアクリルパネルが分離できないので注意

続いて底面のネジをすべて外すと,アクリルパネルが取り外せるようになる。なお,天面のデザインを変更するときは,この状態でアクリルパネル下のシートを差し替えればよい
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さらに内部にアクセスするには,アクリルパネルを外した状態から,天板部分にあるネジを回していく。天板部と底面部をつないでいるケーブルはかなり短いので,断線しないように注意
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完全に開いた状態。なお,ここからさらにボタンが据え付けられた鉄板部分を取り外すことができるが,ボタンやレバーの交換はこの状態で可能。なので,そこまで分解する機会はほぼないだろう
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ボタン部分とレバー部分。ボタンへの配線は,すべてファストン端子接続になっており,これまで通りの手順で換装が可能。一方,レバーは一般的な三和電子製「JLF-TP-8YT」だが,セイミツ工業製レバーの土台も用意されており,こちらも換装可能となっている
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ブラックボックス化されている基板部分を剥いてみると,こんな感じ。右側の大きなチップは,Panthera Evoのすべての機能を制御するマイクロコントローラ。中央下の中サイズのチップは,その制御下でオーディオ周りを司るハードウェアCODECのようだ。詳細は不明だが,そのほかにもさまざまなチップが搭載されている
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拡大したマイクロコントローラ。NXP製のLPC1765FBD100という表記が見える
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こちらはハードウェアCODEC。型番はNAU88C22とある


Razer Mechanical Switchの使い勝手は?


 ここからは,Panthera Evoを使って実際にプレイしてみた感想に移っていこう。
 既報のとおり,Panthera EvoはボタンにRazer独自のボタンユニット「Razer Mechanical Switch」を採用している。Razer Pantheraには三和電子製のボタンが使われていたので,ここは明確な違いとなる。当然,その使い勝手が気になるところだが……ほとんど違和感はなかった。強いて言えば,三和電子製と比べて押し心地がやや浅く,また操作時の打鍵音が高音であるため響きやすく感じられるが,気になるほどではない。

マークマン氏の話(関連記事)によれば,ボタン部はスイッチの反応が良くなり,耐久性も向上しているという。またボタンはRazer Mechanical Switchに置き換わったが,レバーは変わらず三和電子の「JLF-TP-8YT」を採用している。実際に触ってみても,とくに違いは感じられない
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Razer Mechanical Switchの底面部分。Razer Akemi Switchとの刻印がある。メイン基板部分にもRazer Akemi PCBとあったので,開発中のコードネームなのかもしれない
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 とはいえ,「違和感を感じない」というだけではレビューにならないので,次の様なテストを行ってみた。
 まず普段使いのアーケードスティック――今回は「Mad Catz Arcade FightStick Tournament Edition 2」(以下,TE2)を用意し,このボタンをPanthera Evoから取り外したRazer Mechanical Switchに換装しておく。この状態で“難しい操作”を何度か行ってみて,その成功率を通常の状態,つまり三和電子製のボタンを使用した場合と比べてみよう,というわけである。

Razer Mechanical SwitchをTE2に換装した状態がこちら。黒いボタンがRazer Mechanical Switchで,黄色いボタンが三和電子製のもの
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 さて,その“難しい操作”だが,今回は「GUILTY GEAR Xrd REV 2」の「MISSION」モードから,共通問題No.28「リバーサル必殺技」を用いることにした。これは起き上がりに3+HSを重ねてくるカイに対し,ソルのヴォルカニックヴァイパー(623+S)によるリバーサルを5回連続で成功させよ,というものだ。ちなみに同作のリバーサル受付け時間は2フレーム(約0.032秒)なので,このビタ押しというのは格闘ゲーマー的にも“けっこう難しい”部類である。これを10セット,都合50回挑戦して比較したのが以下の動画だ。


 結果はRazer Mechanical Switch(with TE2)の成功率が94%(47/50回)。TE2標準の三和ボタンが84%(42/50回)で,なんとRazer Mechanical Switchのほうが良い結果になってしまった。
 もちろん,こうした成功率は体調や環境による集中力の影響を受けやすく,また試行回数から考えても,この結果のみを持ってRazer Mechanical Switchのほうが優れているとは言えないが,少なくとも使い勝手の面で,三和電子製のボタンに引けをとるわけではないことは,分かってもらえるのではないだろうか。

三和ボタンでの結果に納得がいかず,もう10セット挑戦してみたのだが……結果はぴったり同じく84%だった。くやしい
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 というわけで,ほぼべた褒めのレビューとなってしまったPanthera Evoだが,不満がないわけではない。多くの人にとってハードルとなるのは,税込で3万24円という価格であろう。ハイエンドなアーケードスティック製品に共通する問題点とはいえ,これ1つでPS4本体と変わらない価格と考えると,万人にオススメすることは難しいと言わざるをえない。

 一方で,この価格に納得さえいくのであれば,Panthera Evoは“間違いなく買い”の製品ということになる。サイズ感や重量,コントロールパネルの位置に天板の傾斜,ケーブル周りと,そのすべてに格闘ゲーマー向けの配慮が感じられ,「これがベストなのでは?」と思わせる使い心地のよさがある。
 間違いなく,現時点におけるアーケードスティックの到達点の一つと言っていい製品なので,アーケードスティックを新調しようと考えているトーナメントコミュニティのプレイヤーにとっては有力な候補となるだろう。またPS4世代が続く限り使い続けられるものでもあるので,その辺りの費用対効果に納得がいくなら,カジュアルプレイヤーも「間違いのない選択肢」として考慮してみてはいかがだろうか。

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Panthera EvoをPCで使うには?


 Panthera EvoはPS4のみならず,PCにも対応したアーケードスティックなので,ここではその辺りについて補足しておきたい。PC(Windows10)とPanthera Evoを接続すると,デバイスマネージャー上では,オーディオデバイスとして,

  • ヘッドセット マイク(Razer Panthera Evo Arcade Stick for PS4)
  • ヘッドセット イヤフォン(Razer Panthera Evo Arcade Stick for PS4)

の2つが,そしてゲームコントローラとして,

  • Razer Panthera Evo Arcade Stick for PS4

が自動的に検出され,合計3つのデバイスとして認識される。
 一見するとプラグアンドプレイでドライバがインストールされたようにも見えるが,実はまだ不完全だ。この状態では古い規格であるDirectInputに対応したタイトルでしか使用できないため,XInputを用いた最新のゲームで遊ぶには,公式サイトからドライバをダウンロードしてくる必要がある。

Panthera Evoを接続した直後のデバイスマネージャ。DirectInputのみに対応し,ゲームコントローラーの設定では,3軸3回転14ボタンのPOV付コントローラして認識されている
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 なお公式サイトには「STEAM とのプラグ&プレイ対応」との記述があるが,Steam上のゲームを遊ぶにあたって,とくに変わった挙動は見られなかった。最新のゲームであっても,「ストリートファイターV アーケードエディション」「鉄拳7」などはDirectInputにも対応しているので問題ないが,それ以外のタイトルでは,ドライバをインストールしなければ使用できない(編集部ではSteam版の「LIMBO」で確認)ことに注意しておこう。

公式サイトから専用のドライバをインストールすると,XInputにも対応可能に。デバイスマネージャ上の名称は変わらないものの,XBOX 360 Controller for Windowsが新たに追加され,またゲームコントローラーの設定も,3軸2回転10ボタンのPOV付コントローラとなる
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