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最大5GHz動作の8コアCPU「FX-9590」を搭載したG-TuneのゲームPC「MASTERPIECE a1500BA1」レビュー
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印刷2013/08/09 10:00

レビュー

G-Tuneから登場する「AMD史上最速システム」は誰のためのものなのか

G-Tune MASTERPIECE a1500BA1

Text by 宮崎真一


MASTERPIECE a1500BA1
メーカー&問い合わせ先:G-Tune(マウスコンピューター)
BTO標準構成価格:44万9800円(税込)
画像集#002のサムネイル/最大5GHz動作の8コアCPU「FX-9590」を搭載したG-TuneのゲームPC「MASTERPIECE a1500BA1」レビュー
 マウスコンピューターは,同社のゲーマー向けPCブランド「G-Tune」から,ハイエンドゲーマー向けデスクトップPCシリーズ「MASTERPIECE a1500BA1」を,2013年8月20日に発売する。世界で初めて最大5GHz動作を実現したx86プロセッサ「FX-9590」,そしてAMD未発表のデュアルGPUソリューション「Radeon HD 8990」(以下,HD 8990)を搭載するという,自作では手に入らない超ハイエンドAMDマシンだ。
 当初の予定だと8月上旬発売予定だったので(関連記事),少し遅れることになるが,再来週早々には販売が始まるわけである。

 4Gamerでは今回,このMASTERPIECE a1500BA1を試用する機会が得られたので,最大5GHz動作のAMD FXプロセッサがどれだけ速いのか,そしてHD 8990とは何なのかという話を交えつつ,史上最高スペックのAMDマシンの実力を明らかにしてみたい。


FX-8350の高クロック&高クロック版となるFX-9590

一方のHD 8990はHD 7990のリネーム品


本体前面には小さな吸気孔が並んでいる
画像集#003のサムネイル/最大5GHz動作の8コアCPU「FX-9590」を搭載したG-TuneのゲームPC「MASTERPIECE a1500BA1」レビュー
 G-TuneのMASTERPIECEシリーズは,マウスコンピューターとアビーのコラボレーションによるオリジナルのPCケースを採用するのが特徴だ。まったくの偶然ではあるのだが,BTO標準構成だと黒地に赤のラインなので,AMDの現行最上位スペックを収めるのに相応しい外観になっていると言えるかもしれない。
 筐体前面には計512個の小型吸気孔を持ち,向かって左側の側板にも,ちょうど拡張カード部のところに吸気孔が計304個設けられているので,これらが外気を取り入れるための口になっているという理解でいいだろう。

画像集#004のサムネイル/最大5GHz動作の8コアCPU「FX-9590」を搭載したG-TuneのゲームPC「MASTERPIECE a1500BA1」レビュー
本体向かって左側面は,ちょうど拡張スロット部の脇に当たるところに吸気孔がある
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本体向かって右側面は手前側にちょっとした空気孔あり。天板排気は行われない

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側板を外して中を覗いたところ。簡易液冷クーラーのラジエータとHD 8990カードが一直線に並ぶレイアウトになっている。ちなみにマザーボードはMSI製の「AMD 990FX」チップセット搭載モデル「990FXA-GD80 V2」だった
画像集#007のサムネイル/最大5GHz動作の8コアCPU「FX-9590」を搭載したG-TuneのゲームPC「MASTERPIECE a1500BA1」レビュー
ラジエータ部のファンとHD 8990カードの間にはわずか数mmの隙間しかない
 MASTERPIECE a1500BA1では,FX-9590の冷却にCooler Master製の簡易液冷クーラー「Seidon 120XL」を採用することがあらかじめ公表されていたが,では液冷クーラーはどうやって取り付けられているのか。それは側板を開けてみると分かる。ご覧のとおり,本体前面側の吸気パネル部裏に,120mm角対応のラジエータを2基の120mm角ファンで挟むような形で配されており,エアフロー的にはその“先”となる場所へ,HD 8990カードが取り付けられる格好になっている。内側の120mm角ファンとHD 8990カードとの間にあるクリアランスはわずか数mmであり,本当にギリギリである。

 天板部にラジエータを取り付けられたりするわけでもないなど,MASTERPIECEオリジナルPCケースは,必ずしも液冷や簡易液冷に最適化された筐体にはなっていない。それだけにG-Tuneでも,FX-9590を簡易液冷クーラーで冷却するにあたって,相当な苦労をしたことが窺えるレイアウトだ。
 ただ,このレイアウトだと,FX-9590の熱を冷却したエアフローがHD 8990カードへ直接向かう構造になってしまっており,ここは少々気になるところでもある。

 CPUソケット周りでは,Seidon 120XLのポンプを覆うような格好で120mm角ファンが斜めに取り付けられ,電源部を冷却しつつ,背面の120mm角ファンへのエアフローを作ろうとしているのが見て取れる。それだけ,FX-9590が持つ電源部への負荷は高いということなのだろう。

CPUソケット部の“上”には,電源部のヒートシンクへ風を送るような配置で120mmファンが置かれている。右はそのファンを取り外してみたところで,ファンが簡易液冷クーラーのポンプユニットと直接当たらないよう,ゴム板が貼られていた
画像集#008のサムネイル/最大5GHz動作の8コアCPU「FX-9590」を搭載したG-TuneのゲームPC「MASTERPIECE a1500BA1」レビュー 画像集#009のサムネイル/最大5GHz動作の8コアCPU「FX-9590」を搭載したG-TuneのゲームPC「MASTERPIECE a1500BA1」レビュー

FX-9590のCPUパッケージ。OPNは「FD9590FHW8KHK」だった
画像集#010のサムネイル/最大5GHz動作の8コアCPU「FX-9590」を搭載したG-TuneのゲームPC「MASTERPIECE a1500BA1」レビュー
 というわけでFX-9590とは何なのか,という話だが,これは第2世代Bulldozer(ブルドーザ)マイクロアーキテクチャ「Piledriver」(パイルドライバー)に基づいてGLOBALFOUNDRIESの32nm SOIプロセス技術で製造される,「Vishera」(ヴィシェラ)コアのCPUだ。2基の整数演算ユニットが1基の浮動小数点演算ユニットを共有し,さらに容量2MBのL2キャッシュと組み合わせられたモジュールを4基搭載した“8コア”モデルで,4基のモジュールによって共有されるL3キャッシュの容量は8MBとなっている。

Visheraコアのダイイメージ
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 と,ここで気づいた読者も多いだろうが,いま説明したFX-9590の基本スペックは,2012年10月にVisheraコアの最上位モデルとして発表されたCPU「FX-8350」とまったく同じである。
 FX-8350は,ベースクロック4.0GHzながら,自動クロックアップ機能「AMD Turbo CORE Technology」(以下,Turbo CORE)によって最大4.2GHzに到達する,TDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)125Wのプロセッサだったが,同じVisheraコアのなかから,より高い動作クロックとより高いTDP値を許容できる個体を選別したものが,FX-9590ということになるだろう。おそらく,製造開始から時間が経ったことで,少量ながらも最大5GHzに到達する個体が採れるようになったのではなかろうか。

FX-9590のCPUパッケージはAM3+
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 なお,FX-9590のベースクロックは4.7GHzTDPは衝撃の220Wだ。5GHzで回る個体を一定量確保しようとしたら220WのTDPを許容せざるを得なかったのか,TDP 220Wを許容したら,最大5GHzで回る個体が一定量採れたので,話題先行で製品化してみたのか,そこはなんとも言えないが,動作クロックやTDPだけで話題を集められるCPUというのは久しぶりのように思う。
 表1はそんなFX-9590のスペックを,FX-8350,そして競合の最新世代モデル「Core i7-4770K」(以下,i7-4770K)と比較したものである。

※「モジュール数/物理コア数」「整数演算ユニット数/論理コア数」は,いずれも「/」(スラッシュ)の前がAMD製プロセッサ,後ろがIntel製プロセッサ用の項目となる
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MASTERPIECE a1500BA1が搭載するHD 8990カード
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カード背面のシールには「AMD Radeon HD 7990」と書かれたシールが
 一方のHD 8990カードは,MSI製の「R8990-6GDR5」というカードだとされているが,実際に取り出してみると,AMDの「Radeon HD 7990」(以下,HD 7990)デュアルGPUソリューションそっくりなのが分かる。付け加えるなら,カード裏のシールにはご丁寧にも「AMD Radeon HD 7990」と書かれていたので,これはもう,リファレンスデザインを採用するHD 7990カードをベースとしたリネーム品で間違いないという理解でいいだろう。

 もっともAMDは,OEMとなるPCメーカーに向けて出荷するRadeon HD 8000シリーズがRadeon HD 7000シリーズのリネーム品であることをすでに認めているので(関連記事),とくに驚きがあるわけではない。

90mm角の薄型ファンを3基搭載し,カバーのように基板全体を覆うデザインは,HD 7990のリファレンスカードそのもの。PCI Express補助電源コネクタが8ピン×2というのもHD 7990と同じだ
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 念のため,HD 8990のスペックとHD 7990のスペックは表2にまとめたが,MASTERPIECE a1500BA1が搭載するHD 8990カードは,スペック,そして動作クロックを見ても,2048基のシェーダプロセッサを集積したGPUコアを2基搭載する「Malta」(マルタ,開発コードネーム)そのものだ。HD 7990との違いは,あるとしてもVBIOS上のGPU IDくらいという理解でいいのではなかろうか。

画像集#043のサムネイル/最大5GHz動作の8コアCPU「FX-9590」を搭載したG-TuneのゲームPC「MASTERPIECE a1500BA1」レビュー

 CPUとGPUにばかり目が行きがちだが,そのほかのスペックも確認しておこう。まず電源ユニットは,定格出力1200WのFSP TECHNOLOGY製「FSP1200-50TGM」Ecova Plug Load SolutionsのPC用電源ユニット認証プログラム「80 PLUS」から「80 PLUS Gold」認定を受けたモデルだ。
 ストレージは,システムドライブにSamsung Electronics製SSD「SSD 840 PRO」の容量256GBモデル,データドライブに東芝製で容量3TBのHDD「DT01ACA300」を搭載。ハイエンドのゲームPCとしては可もなし不可もなしといったところか。


FX-8350とi7-4770Kと比較

オーバークロックでは全コア5.2GHzに


Catalyst Control CenterからHD 8990のハードウェア情報を確認したところ
画像集#023のサムネイル/最大5GHz動作の8コアCPU「FX-9590」を搭載したG-TuneのゲームPC「MASTERPIECE a1500BA1」レビュー
 ここからはテストのセットアップに入るが,MASTERPIECE a1500BA1の検証では,確認しなければならないことが2つある。言うまでもないが,FX-9590の性能と,HD 8990の性能だ。
 まずFX-9590の性能検証にあたっては,比較対象として,表1でも取り上げたFX-8350とi7-4770Kを用意した。FX-8350のテストにあたっては,MASTERPIECE a1500BA1のCPUをそのまま変更することで,CPU以外のテスト環境を統一。一方,まったくプラットフォームの異なるi7-4770Kのテストでは,デスクトップPCをもう1台用意しつつ,MASTERPIECE a1500BA1からHD 8990カードを移設し,グラフィックスカードを統一することにした。

 次にHD 8990のテストでは,HD 7990カードを別途用意して比較対象とし,実際にはこれをHD 8990の代わりにMASTERPIECE a1500BA1へ差すことで,HD 8990の検証環境とシステムを統一している。つまり,FX-9590の検証ではGPU,HD 8990の検証ではGPU以外のシステムを完全に揃えたわけである。
 そのほかテスト環境は表3,表4のとおり。グラフィックスドライバは,テスト開始時の最新版だった「Catalyst 13.6 Beta2」となる。テスト開始後にCrossFire周りの挙動に対策が入った「Catalyst 13.8 Beta」がリリースされているが,今回は競合のGPUを比較対象として用いないため,Catalyst 13.6 Beta2のままでも問題はないと判断した次第だ。

画像集#044のサムネイル/最大5GHz動作の8コアCPU「FX-9590」を搭載したG-TuneのゲームPC「MASTERPIECE a1500BA1」レビュー
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 FX-9590のテスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション14.0準拠。ただし,CPU性能を見るべく,GPU性能依存になる「高負荷設定」のテストは行わず,「標準設定」およびそれに準じたテストのみを実施する。同様の理由からテスト解像度も1280×720ドットと1600×900ドット,1920×1080ドットの3つとした。
 また,FX-9590とFX-8350はTurbo COREを,i7-4770Kは「Intel Turbo Boost Technology」をそれぞれ有効化した状態のままテストを行う。

 一方のHD 8990は,HD 7990とほとんど変わらないスコアに落ち着くであろうことが予想できるため,ベンチマークレギュレーション14.0から,「3DMark」(Version 1.1.0)と「Far Cry 3」,それに「Crysis 3」「BioShock Infinite」の4タイトルのみテストを行うことにした。また,HD 8990とHD 7990のいずれもカード上でCrossFireが有効化されていることを考慮し,高負荷設定とそれに準じるテストのみを,解像度1920×180ドットおよび2560×1600ドットのみで実施することもお断りしておきたい。
 なお,3DMarkにおけるHD 8990のスコアは,FX-9590のテスト時に取得した結果とテスト条件が同じであるため,そのまま流用する。


OCテストでは全コア5.2GHzで安定動作

 と,ここで簡単にFX-9590のオーバークロックを試してみよう。AMD純正のオーバークロックツール「AMD OverDrive」(Version 4.2.6)がFX-9590をサポートしていたので,このAMD OverDriveからTurbo Coreの設定倍率を引き上げることで,動作クロックの引き上げを試してみたい。

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AMD OverDriveで全コアのブーストクロックを5.2GHzにしたところ
画像集#022のサムネイル/最大5GHz動作の8コアCPU「FX-9590」を搭載したG-TuneのゲームPC「MASTERPIECE a1500BA1」レビュー
アイドル時には,動作クロックが1.4GHz,CPUコア電圧が1.25Vまで下がった
 今回は,全8コアを同時に引き上げた状態で,AMD OverDriveに用意された「安定性テスト」で問題が報告されず,さらに,システムへ100%の負荷を与え続けるストレスツール「OCCT」(Version 4.4.0)を6時間実行しても問題がなく,さらに今回用意したすべてのテストが完走することをもって「安定動作した」と判断することにしたが,結論から言うと,26倍,全コアののブーストクロック5.2GHzが安定動作の限界だった。
 なお,CPUコア電圧(VID)は,AMD OverDrive上だと1.475Vが上限なのだが,FX-9590のCPUコア電圧は最初から上限いっぱいで,それ以上引き上げられなかった点は付記しておきたい。

 AMD OverDriveを見る限り,FX-9590は,動作クロックとTDPだけでなく,CPUコア電圧も高めた“オーバークロック状態”のCPUだ。それだけに,そこからの手動オーバークロックの伸びしろは,さすがにあまりないということなのだろう。
 なお以下,本文,グラフ中とも,全コアを5.2GHzで動作させたFX-9590を「FX-9590@5.2GHz」と表記し,工場出荷状態のFX-9590と区別する。

※注意
CPUのオーバークロック動作は,CPUやマザーボードメーカーの保証外となる行為です。最悪の場合,CPUやメモリモジュール,マザーボードなど構成部品の“寿命”を著しく縮めたり,壊してしまったりする危険がありますので,本稿の記載内容を試してみる場合には,あくまで読者自身の責任で行ってください。本稿を参考にしてオーバークロック動作を試みた結果,何か問題が発生したとしても,メーカー各社や販売代理店,販売店はもちろん,筆者,4Gamer編集部も一切の責任を負いません。


FX-8350比で10%前後の高速化を実現もi7-4770Kには届かず

HD 8990のスコアは予想どおりHD 7990と同じ


 順にスコアを見ていこう。
 グラフ1は3DMarkの総合スコアをまとめたもので,FX-9590は「Fire Strike」でFX-8350に対して約6%高いスコアを示している。対i7-4770Kだと,FX-8350が約82%のところ,FX-9590では約87%へとスコアを詰めているが,これを「確実に競合との差が詰まっている!」と解釈するか,「最大5GHz動作でこれかよ」と思うかは人によるだろう。
 なお,「Extreme」プリセットでスコアが“丸まる”のは,GPU負荷が高まるためだ。

 FX-9590@5.2GHzも,3DMarkではマルチスレッド処理が進み,Turbo Coreの有用な場面が生じないためか,FX-9590と大差ない結果に終わっている。

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 3DMarkの総合スコアから,「Bullet Physics」を用いたCPUテストのまとめとなる「Physics Score」の結果がグラフ2だ。全体的な傾向はグラフ1と同じ。Physics Testのグラフィックス設定はプリセットにかかわらず変わらないので,ここでFire StrikeとFire Strike(Extreme)の結果が同じなのは異常ではない。

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 ベンチマークテストよりもGPU依存のスコアが出やすいゲームタイトルから,Far Cry 3のスコアをまとめたものがグラフ3だ。AMD製プロセッサの力関係は3DMarkと変わらずで,FX-9590のスコアはFX-8350比で8〜10%高く,FX-9590@5.2GHzにおける上積みは期待薄となる。
 ……が,ここで最も目を引くのは,i7-4770Kのスコアが飛び抜けていることだ。Far Cry 3のゲームエンジン「Dunia Engine 2」が,Haswellマイクロアーキテクチャ(もしくはIntel製CPU)に最適化されているためか,Bulldozerマイクロアーキテクチャにまったく最適化されていないためなのかは分からないが,なかなか衝撃的なスコア差なのは確かだ。

画像集#026のサムネイル/最大5GHz動作の8コアCPU「FX-9590」を搭載したG-TuneのゲームPC「MASTERPIECE a1500BA1」レビュー

 一方,より描画負荷の高い「CryENGINE 3」を採用したCrysis 3だと,FX-9590とi7-4770Kのギャップは10%未満となった(グラフ4)。一見,GPU依存のスコアが出て,スコアが詰まったのかとも思ったが,FX-9590とFX-8350のスコア差は,1600×900ドットが最も大きく開き,1920×1080ドットで逆に詰まることからすると,1600×900ドットまではCPUの実力差が反映されていると述べてよさそうだ。
 Far Cry 3と逆で,CryENGINE 3のIntel製GPU最適化があまり進んでいないのか,AMD製CPUへの最適化が進んでいるのかは分からないが,いずれにせよ,Crysis 3であれば,FX-9590はi7-4770Kと比較できるレベルにある。

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 BioShock Infiniteの結果がグラフ5で,端的に述べると,結果はFar Cry 3と同じ感じだ。FX-9590は,FX-8350比で7〜8%高いスコアを示し,クロック引き上げの効果は確かに感じられる一方,対i7-4770Kでは74〜76%程度に沈んでいる。
 なお,FX-9590@5.2GHzのオーバークロック効果がほとんど見られないのは,ここまでと同じ傾向と述べていいだろう。

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 グラフ6の「The Elder Scrolls V: Skyrim」(以下,Skyrim)でもその傾向は変わらない。Skyrimはハイクラス以上のGPUにとってそれほど描画負荷が大きくないため,CPU性能差が出やすく,いきおいFX-9590はFX-8350比で10〜12%高いスコアを示せているのだが,i7-4770Kを前にすると70〜73%程度だ。

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 続いて「SimCity」のスコアがグラフ7となる。SimCityでは,Crysis 3とまではいかないものの,FX-9590は対i7-4770Kで85〜89%程度と,踏ん張りを見せた。一方,FX-9590@5.2GHzはFX-9590からわずかながらスコアを伸ばしているが,全体的に見れば誤差レベルで,有意なスコア差とは捉えにくい。
 解像度が高まるとスコアが落ちて行くのは,SimCityの場合,解像度が上がると,CPUで処理すべきオブジェクトの数が増えるためだろう。

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 FX-9590が最も振るわない結果となってしまったのが,グラフ8の「F1 2012」である。FX-9590は,FX-8350からのスコア向上率がわずかで,対i7-4770Kだと57〜59%程度。格の違いを見せつけられた印象だ。

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 念のため,ゲーム用途もチェックしておこう。PC総合ベンチマーク「PCMark」の総合スコア「Home score」をまとめたものがグラフ9だ。ここでの結果はCrysis 3に似た傾向と述べていいだろう。
 グラフ5はスコアの詳細だが,「Photo Editing」や「Video Chat / Video encoding」といった,マルチスレッド系テストで,FX-9590は,8基の整数演算ユニットを高クロックで“ぶん回す”効果を遺憾なく発揮している。一方,「Casual gaming」ではi7-4770Kの約69%に留まっており,このあたりの向き不向きの激しさが,ゲームアプリケーションベンチマークの浮き沈みに影響しているのではなかろうか。

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 続いてはHD 8990のテスト結果だが,これはもう,グラフ10からグラフ14まで一気に見てもらったほうが早そうだ。すべてのテストにおいて大きなスコア差はなく,また“勝ち負け”にも法則性が見られないため,HD 8990の仕様は,VBIOS上の細かな設定も含め,完全にHD 7990と同じものと結論付けて問題ない。

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FX-9590の消費電力は貫禄の「FX8350+115W」

i7-4770Kとのギャップが大きい


 前述のとおり,FX-9590のTDPは220Wである。FX-8350の同125Wも,従来型のCPUとしては決して低くない値なのだが,それをさらに100W近く上回っているわけで,その消費電力にはある意味で“期待が高まる”わけだが,実際はどうだろうか。また,HD 8990とHD 7990は,ここまでのテスト結果を見る限り,おそらく同程度だと思われるが,念のため実態を確認しておく必要がありそうだ。
 というわけで今回も,ログを取れるワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の消費電力を比較してみよう。

 FX-9590のテストにあたっては,OS起動後30分間放置した時点を「アイドル時」,システムに負荷をかけ続けるストレスツール「OCCT」を30分間実行し続けた時点を「高負荷時」としている。一方,HD 8990のテストではアイドル時に加えて,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時としている。

 まず,FX-9590のテスト結果がグラフ15となるが,FX-9550の消費電力は,アイドル時で14W,高負荷時で115W高くなった。本稿の中盤で,FX-9590では動作クロックだけでなくCPUコア電圧も引き上げられている点を紹介したが,さすがにその影響は甚大,といったところだ。
 また,マザーボードや電源ユニットが異なるため,スコア差のすべてがCPUによるものというわけではなく,あくまでも参考程度にしてほしいが,それでも,22nmプロセス技術を用いて製造されるi7-4770Kとは格が違う印象。アイドル時に30W以上,高負荷時に170W以上というスコア差は,やはりインパクトがある。

画像集#038のサムネイル/最大5GHz動作の8コアCPU「FX-9590」を搭載したG-TuneのゲームPC「MASTERPIECE a1500BA1」レビュー

 続いてHD 8990のテスト結果がグラフ16だ。タイトルによって数W程度の変動はあるものの,すでに結論が出ているとおり,HD 8990とHD 7990の間に有意な違いはない。

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 CPU温度とGPU温度もチェックしておこう。いずれもテスト時の室温は24℃とし,MASTERPIECE a1500BA1はそのまま,i7-4770K搭載システムはPCケースに組み込まない,いわゆるバラック状態で,いずれもテスト用の机に置いている。
 CPU温度の計測には「HWMonitor Pro」(version 1.16),GPU温度の計測には「GPU-Z」(Version 0.7.2)を利用。いずれも,CPUは全コアの平均値を,GPUは2コアそれぞれの値をスコアとして採用することにした。CPUの温度は前出のアイドル時と高負荷時,GPUの温度はアイドル時と,3DMarkを30分間連続実行した時点(以下,3DMark時)のものとなる。

 というわけでグラフ17はCPU温度のテスト結果だが,ご覧のとおり,HWMonitor Pro側の温度補正が正常に働いていないようで,AMD製CPUの温度は室温を大きく下回ったものが出てしまった。なので,i7-4770Kとはまったく比較にならない。
 そこで今回は,テスト条件が完全に同じFX-9590とFX-8350の間だけで相対評価を試みることになるが,高負荷時におけるFX-9590のCPU温度はFX-8350プラス8℃。消費電力の違いが大きい割に温度差は小さい印象で,これはすなわち,搭載される簡易液冷クーラーが,ポンプのモーターやファン回転数を適切に調整し,CPUをしっかり冷却できているということになりそうだ。

画像集#040のサムネイル/最大5GHz動作の8コアCPU「FX-9590」を搭載したG-TuneのゲームPC「MASTERPIECE a1500BA1」レビュー

 ちなみに,筆者の主観であることを断ったうえで述べると,CPU負荷が高まったときのMASTERPIECE a1500BA1は,とくにケース前面側に120mm角ファンが2連装となっていることもあって,決して静かではない。とはいえ,TDP 220WのCPUを冷却しているにしては,うるさすぎると目くじらを立てるレベルでもない印象である。密閉型のヘッドフォンやヘッドセットをしてゲームをプレイするなら,問題ない程度といったところだろうか。

画像集#019のサムネイル/最大5GHz動作の8コアCPU「FX-9590」を搭載したG-TuneのゲームPC「MASTERPIECE a1500BA1」レビュー
 ただ,MASTERPIECE a1500BA1の場合,より気になるのは,CPUの熱を思い切り受けることになるGPUのほうだ。その結果がグラフ18だが,バラック状態でテストを行ったHD 7990のレビュー時の3DMark時に1基めが72℃,2基めが75℃だったので,筐体に入り,かつCPUを冷却した後の空気を直接受ける条件では,さすがにスコアが高めに出ている。これはHD 8990,HD 7990に共通の傾向だ。
 ただ,ハイエンドGPUの温度としてはとくに問題ないレベルなのもまた確か。やはり主観を基に付け加えると,HD 7990のGPUクーラーは動作音が非常に静かなのだが,MASTERPIECE a1500BA1内で動作するHD 8990の動作音も,やはり静かに感じられたので,筐体内のレイアウトがちょっと苦しい件は,「GPUの冷却には多少不利ながら,そう大きな問題にはなっていない」とまとめられそうである。
 HD 8990のカードデザインはHD 7990とまったく同じであるため,冷却は,3連ファンで空気を吸い込み,それをヒートシンクに吹き付けて,カードの側面へ排出する形となっている。液冷クーラーからの熱による影響がゼロとはいえないものの,3連ファンは側面の吸気孔から外気を“拾える”ので,このクーラー配置でも,致命傷にはならないということではなかろうか。

画像集#041のサムネイル/最大5GHz動作の8コアCPU「FX-9590」を搭載したG-TuneのゲームPC「MASTERPIECE a1500BA1」レビュー


AMD FXはゲーム用途だとやはり厳しい

MASTERPIECE a1500BA1はAMDファン向けアイテムだ


画像集#020のサムネイル/最大5GHz動作の8コアCPU「FX-9590」を搭載したG-TuneのゲームPC「MASTERPIECE a1500BA1」レビュー
 以上の結果から言えることは,たとえ最大5GHzで動作したとしても,現行世代のAMD FXがゲーム用途でハイエンドを謳うのは厳しいということだ。Crysis 3やPCMark 8のテスト結果を見る限り,マルチスレッド処理能力が問われる局面では,i7-4770Kといい勝負ができる印象だが,大多数の「そうでない」タイトルを前にした場合,FX-9590は,i7-4770Kにはまったく歯が立たない。この点をまず押さえておく必要があるだろう。

 一方,MASTERPIECE a1500BA1という1台のゲームPCとして見た場合,HD 7990のリネーム品であるHD 8990を搭載しており,3D性能は十分に高くなっている。実スコア的にも「FX-9590がHD 8990の足を大きく引っ張っている」印象は受けないが,だからといって,BTO標準構成価格で44万9800円(税込)の価値があるかというと,残念ながら「ない」というのが,正直な感想である。
 というのも,同じMASTERPIECEブランドのラインナップで,i7-4770Kと「GeForce GTX TITAN」(以下,GTX TITAN)を搭載したマシン「MASTERPIECE i1430PA1」が,BTO標準構成27万9930円(税込)で用意されているからだ。同製品の場合,BTOでCPU用の簡易液冷クーラーと容量256GBのSSD 840 PROを追加し,HDDの容量を3TBに変更しても32万2770円(税込)。それを踏まえるに,「購入することで得られるもの」を前提としたMASTERPIECE a1500BA1の“適正BTO標準構成価格”は,30万円台前半かそれ以下のラインではなかろうかと思う。

 PC自作市場への投入予定が(少なくとも現時点では)存在しないFX-9590を,製品名はレアなHD 8990とセットで入手できるという,希少価値は間違いなくある。その意味でMASTERPIECE a1500BA1は,徹頭徹尾,AMDファン向けのコレクターズアイテムなのだとまとめておきたい。

画像集#021のサムネイル/最大5GHz動作の8コアCPU「FX-9590」を搭載したG-TuneのゲームPC「MASTERPIECE a1500BA1」レビュー

G-TuneのMASTERPIECE a1500BA1販売ページ(※20日から購入可能になる予定)

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