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印刷2007/05/25 17:14

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東方Project第10弾「東方風神録」の体験版を遊んでみた

 縦スクロールシューティング(以下,縦シュー)は,一定の書式に沿った安定感と目新しさが求められつつ,アーケードを中心にコアなプレイヤーから支えられ続けている。PCにおいては,商業作品の数が少ないため,必ずしもアーケードと同じ文脈では語れないが,個人やサークルにおける創作活動の成果としてフリーウェアやシェアウェア,同人ソフトといった形で複数のタイトルが公開されており,なかには一定の水準をクリアし,多くのファンを抱えるに至るものも少なくない。
 今回採り上げる「東方風神録 〜Mountain of Faith.」(以下,東方風神録)は,そんなPC用縦シューにあって,おそらく最もプレイヤー数が多いものの一つであり,カテゴリとしては同人ソフトに属する「東方Project」の第10弾に当たる新作だ。正確を期すと,今回採り上げるのは東方風神録の体験版である。

 ちなみに,4Gamerでは第9弾「東方花映塚 〜Phantasmagoria of Flower View.」のリリース後に,制作者である上海アリス幻樂団のZUN氏にインタビューを行い,氏の思想やビジョンに触れているという経緯がある。氏の語った内容が,約2年振りとなる完全新作でどのように結実しようとしているのか,ぜひこの目で確かめたいということもあって,まずは体験版に触れてみた次第だ。



■体験版は(いつもどおり)3面まで
■スコアシステムの奥に見える哲学


体験版では「EXTRA START」「PRACTICE」が選択できなくなっている
 さて,タイトル画面の選択肢を見る限り,ゲームの構成はこれまでの東方Projectから大きく逸脱していないようである。体験版では3ステージを順にクリアして,そこで終了となるが,正式リリース時には6ステージ+エクストラステージをプレイでき,さらに(ステージごとか,ボス単位かなど詳細は不明だが)プラクティスモードも利用できるようになると思われる。なお,体験版でも難度は4パターンすべてを選択可能だ。

 東方Projectに共通しているので説明不要かもしれないが,自機はキャラクターそのもの。東方風神録では2名から選択し,さらに1名ごとに3種類の攻撃スタイルが用意されているため,自機は6種類用意されていると考えるべきだろう。

東方Projectを通じてのメインキャラ「博麗霊夢」(はくれいれいむ)は,もちろん自機として選択可能。選択後,さらに攻撃方法を選ぶことになる。なお,もう一人の自機は「霧雨魔理沙」(きりさめまりさ)で,こちらもファンにはお馴染みだ
 基本的な操作方法も,従来どおりというか,縦シューとしてクセのないものになっている。自機の移動には方向キーを用い,攻撃には自動連射となる通常ショット,そして「霊撃」と呼ばれる特殊攻撃(=ボム)の2種類。もう一つ,押しているときだけ自機の移動を遅くするトリガも用意されているため,合計で3個のキーを使って自機を操ることになる。……もっとも,ほとんどの人が3ボタン以上を備えたゲームパッドを使ってプレイするだろうが。
 基本ルールは単純明快で,攻撃をかわしつつ敵を倒すだけ。敵の攻撃に接触すると1ミスになるが,スコアや1UPアイテムによる残機(=ミス許容回数)の追加が可能になっている。ゲームオーバー時にはコンティニューが可能だが,その場合は最後にミスした場所ではなく,ステージの最初からやり直す仕様なのは注意が必要だ。

オプションによっては,自機の後をついてくるようなものもある。オプションはパワー4.00で最大の4個になるので,パワー5.00の状態だと,オプションを失うことなく霊撃を発動できる
 パワーアップ要素は用意されているが,通常ショットの破壊力が増していくのではなく,一定条件を満たすごとにオプション(ビット)の数が増えていくタイプ。具体的には,敵を倒したときに放出される「パワーアップアイテム」を集めていくと,一定数ごとにオプションの数が4個まで増えるというものだ。自機に対するオプションの追随方法や攻撃方法は通常移動時とスロー移動時には変わってくるので,“スロー&オプションの使い方”が,攻略のカギになるだろう。オプションの使い方といえば,霊撃の発動がパワー1.00と引き替えになる点も特徴といえる。

 ただ,東方風神録のゲームシステムで最も興味深いのは,実はスコア周りだ。東方風神録において,ただ敵を倒すだけでは高いスコアは狙えない。敵を倒したときに放出される「得点アイテム」を効率よく回収しなければならないのである。
 しかも,得点アイテムを回収したときの得点は,別途用意される「信仰ポイント」という“素点”と,自機が得点アイテムを回収したときの縦座標によって決定される。信仰ポイントを上げる「信仰アイテム」は,やはり敵を倒すと放出されるので,信仰アイテムを効率よく回収し,さらになるべく画面の上のほうで得点アイテムを回収。これが理想の流れということになる。
 画面の上側に自機を移動させると,画面内のアイテムをすべて吸い込めるのは,こうした流れから生まれた,自然なフィーチャーと見て取れよう。

左:ゲーム開始直後に数秒間表示される“アイテム自動回収ゾーン”の境界線。これより上に自機を移動させると,アイテムを自動回収できる。自機の縦座標もスコアの伸び具合へ直接関わってくるので,これを憶えるのは非常に重要だ
右:敵を一掃したら,すかさず画面上でアイテムを自動回収。その繰り返しが道中の基本になる。信仰ポイントは時間とともに減少するが,敵にショットを当てたり,信仰アイテム以外のアイテムを回収することでそのスピードを下げられる。またフルパワー状態になると,パワーアップアイテムの代わりに信仰アイテムが出るようになるといった駆け引きの要素もある


体験版に付属する「custom.exe」から,信仰ポイントの表示位置を変更できる
 しかし,この「リスクを信仰ポイント,そしてスコアに置き換えるための仕組み」が“信仰システム”の本質なのかというと,その点について筆者は懐疑的だ。
 おそらく注目すべきはむしろ,プレイ画面内に信仰ポイントが常に表示されている点である。残機数やパワーアップ状態のインジケータがプレイフィールドの右外へ“押しやられている”にもかかわらず,信仰ポイントだけは画面左下の見やすい位置に置かれているのだ。さらに付属の設定ツール「custom.exe」から指定すると,信仰ポイントの減少が始まるまでの時間を示したメーターを,自機の周囲に配することすら可能。これは取りも直さず,東方風神録において,スコア稼ぎというものが,シンボリックに据えられていることの証拠と解釈できる。

 2005年末に行ったZUN氏へのインタビューで,氏が「ゲーム性の原点はスコア」と述べていたのを憶えているだろうか。それを踏まえて上海アリス幻樂団のサイトにある東方風神録の紹介文を見ると,そこには「もの凄くストレートな弾幕シューティング」(※原文ママ)とある。
 氏の考えるゲーム性が,ストレートに表現されているのが,今回の信仰ポイントシステムであり,画面配置一つを取ってもその信念が垣間見えてくるように思えてならないわけだが,それは筆者の考えすぎだろうか。

custom.exeから「信仰減少カウンタをプレイヤーの近くに表示する」を選択すると,信仰ポイントの減少が始まるまでの時間を示した白いメーター「信仰減少カウンタ」を自機の上に表示できるようになる。スコアを重視する場合にはかなりありがたい


■見えてきそうな未来と
■感じられる可能性


ボスの特徴的な攻撃が「スペルカード」として分類&命名されているのは,敵キャラクターをゲームの流れの中で際立たせる,東方Projectならではの演出である
 今回入手したバージョンは「0.01a」。あくまで体験版であり,「ゲームの仕様,ノリ,諸々は,何の予告もなく大変更する事もあります」(※原文ママ)とも断られているので,再調整や仕様変更があることは予想の範疇だ。ただ,それでもひととおりプレイしてみると,「東方」の名を冠するだけのクオリティや緻密さといったものはすでに実装済みであると,割とすぐに実感できる。複雑そうな気配のあったスコアシステムも,複雑になり過ぎないようにきちんと設定されている。
 先に挙げたインタビュー記事のなかでZUN氏は「プレイヤーが“分かっている”ことに甘えない」「(東方の新作は前作の続編ではないから)パワーアップしているわけじゃない」と述べていたが,なるほど,“東方として整理されている”ように感じられた。

左:通常難度となる「NORMAL」の1面ボスでも,このぐらいの攻撃は平然とぶつけてくる。隙間は確実にあり,弾が速いわけでもないが,きちんと避けないと思わぬミスをする感じ
右:余裕があるなら,スペルカードの名前にも注目すると面白い。「その名前はちょっとどうだろう」と思うだけでも,弾幕のイメージはグンと頭に入りやすくなる


痛々しい「Caution!」の文字。「ここで被弾した」ことが分かりやすい
 また,純然たるゲームシステムとは別に,ヒント機能というものが実装されている点には,とくに注目しておきたい。
 体験版においては,「AUTO」設定にしておくと,過去のプレイでミスした場面において「Caution!」というメッセージが画面に表示される。データはテキストファイルに蓄積されていく方式が採用されているので,その気になりさえすれば,現状のままでも“ヒントファイル”を手作業で編集して,好みのメッセージを表示させられる。

 詳しい説明や解説が一切されていないため,正式発表時にどういった仕様になるのかは想像――妄想?――するほかないのだが,「特定のリプレイデータに紐付けて攻略ムービーを作る」などといったことは,ツールさえ公開されれば,比較的簡単にできそうだ。公開されたリプレイに対するさまざまなコメントを一つのヒントファイルに集約できれば,「ニコニコ動画」的なインタラクティビティを獲得することも,そう難しくないだろう。

体験版に収録されているのは本編の前半なので,少なくとも難度「HARD」以下では,ボスや中ボス以外で圧力や厳しさを感じる場面はほとんどない。むしろそうした心の余裕を作り,稼ぎを自発的に考えるよう,プレイヤーを誘っている可能性もある
 また件のインタビューを引き合いに出すが,氏はプレイそのものを媒体としたコミュニケーションを実現する“ネットゲーセン構想”の可能性について言及していた。「誰かがプレイしている状態を,いつでも自由に見られる」「プレイしている人にメッセージを送ることができる」「すごいプレイに対しては,“ネットギャラリーの人だかりができる」といったあたりがポイントだったわけだが,今回のヒント機能は,そんな構想に向けたアプローチの一環と読み解くことも不可能ではない。ゲームをプレイする以外の方法で,ゲーム画面に干渉できる手法の確立は,今ここで想像する以上に,桁違いの可能性をゲームにもたらすかもしれないのだ。


 ……さて,そういう理屈や分析,観測を取り払い,単純にプレイヤーとして本体験版を見ると,やはりプレイに当たってある程度の集中力,精神力を要求されることが印象深い。攻略情報も少ないなかで,縦シューに慣れ親しんだ身でも,初見では「どうすればいいんだ」と呟きたくなる場面にも遭遇した。体験版とはいえ,決してヌルいゲームではないのだ。小さくても構わないから,しっかりした覚悟を持って画面に向かう必要がある。その意志さえあれば,東方風神録は今の時点でも,かなり満足度の高い縦シューと言えるだろう。本気に堪えるシューティングとして,今から夏の完成が待ち遠しい。

「東方」をキャラクターゲームの範疇に辛うじて踏みとどまらせている,ボスキャラとの掛け合い。どことなくズレた,独特のテンポの会話も「東方」ならではの味だ


体験版CD-ROM。まあ要するに,一般参加で並んで買ってきたのである
 なお,最後に大事なことを一つ。2007年5月25日5:00PM現在,体験版は(オンラインでは)公開されていない。体験版は,5月20日に東京都の池袋で開催された,東方Project関連のみが対象の同人アイテム即売会「博麗神社例大祭4」で頒布されただけなので,実際に入手できた人は多くても2〜3千人といったところではなかろうか。ただ,プラットフォームがWindowsに移行した第6弾以降第9弾まで,すべて体験版はオンラインで配布されてきたので,確証はないが,そう遠くない将来,配布が始まるものと思われる。
 いずれにせよ2007年8月の正式リリースに向け,続報は上海アリス幻樂団のWebサイトに逐次掲載されるはず。興味を持った人は訪れてみるといいだろう。(ライター・八重垣那智)

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