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[インタビュー]「マジック」で今,流行のコマンダーとは何か。人気の理由をWizardsの日本チームに聞いてみた
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印刷2026/07/13 13:00

インタビュー

[インタビュー]「マジック」で今,流行のコマンダーとは何か。人気の理由をWizardsの日本チームに聞いてみた

 「マジック:ザ・ギャザリング」(以下,マジック)には多種多様な遊び方があり,それらは「フォーマット」と呼ばれている。
 最も一般的なのは,最近発売されたカードのみでデッキを構築し,それを使って1対1で戦う「スタンダード」だ。しかし,今世界中で一番多くの人に親しまれているフォーマットは,スタンダードではない。「コマンダー」なのだ。

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 「EDH」「統率者戦」という呼び方でも知られるコマンダーは,スタンダードとは異なり,4人での対戦を基本としたフォーマットだ。
 プレイヤーはデッキの中心となる「統率者」カードを1枚選定し,それに合わせたカードで100枚のデッキを構築する。このデッキには,同じカードを複数枚入れることはできないが,過去に発売されたほぼすべてのカードが使用できる(ただし非推奨カードあり)。
 勝利条件は,自分1人が勝ち残ること。40点のライフがなくなるか,どれか1体の統率者から計21点以上のダメージを受けた者から脱落となる。

 この記事は,ボードゲームのようにカジュアルに遊ばれることもあれば,強力なデッキによるハイレベルな大会が開かれることもある,このコマンダーについて深掘りするものだ。
 後半にはWizards of the Coast(以下,Wizards)の「マジック:ザ・ギャザリング」日本チームへのインタビューもあるので,マジックのプレイシーンおよびコマンダーの現状について知りたい人は,ぜひ参考にしてもらいたい。

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コマンダーとは何か。その歴史から振り返る


 インタビューに入る前に,まず前提となる知識を共有しておこう。まずは歴史的経緯からだ。

 30年超の歴史を持つ「マジック」には,プレイヤーの間で生まれた非公式なフォーマットが無数に存在している。件のコマンダーも,元は2007年頃から広まったカジュアルな遊び方の1つにすぎなかった。
 当時は統率者にはお気に入りのエルダー・ドラゴンが据えられており,そのハイランダー(同一カードが1枚だけという意味)デッキを使うということから,「エルダー・ドラゴン・ハイランダー」を略して「EDH」と呼ばれていたものだ。

※エルダー・ドラゴン:有名なニコル・ボーラスをはじめとした,「マジック」の背景ストーリーに登場する古老ドラゴンたち

 その後,このフォーマットは大人気となり,日本では「統率者戦」として定着していった。
 そして2011年にはコマンダー用の構築済みデッキが初めて発売され,その後の2021年頃からは一部の製品にコマンダー用のカードが必ず含まれるようにもなっている。

 なお元々非公式フォーマットだったので,ルールの整備は一般団体が行っていたが,一般団体が扱うにはコミュニティの規模が大きくなりすぎたため,2024年にはWizards管理下となり,現在はコマンダー・フォーマット委員会が管理を行っている。
 それまではデッキパワーの分類もコミュニティごとにさまざまだったが,この委員会発足に合わせ,世界共通の5段階の指標としてブラケット(後述)も制定された。


火がつき始めた日本のコマンダー事情


 以上のように海外,とくに北米では以前から人気のフォーマットだったコマンダーだが,一方,日本ではあまり浸透しなかった。そのため,国内では見向きもされないようなカードが海外では大人気になる,といった現象が見られたほどである。

 日本でコマンダーが流行しなかった理由はさまざま考えられるが,大きなところでは「カードゲームに対する認識の違い」「競技的なプレイヤーが多いこと」が挙げられる。

 日本には「マジック」以外のカードゲームが多くあり,「カードゲームは1対1で対戦するもの」という認識が一般的だ。一方海外では,カードショップの多くがボードゲームショップを兼ねており,家族で遊ぶことも多いカードゲームは,ボードゲーム文化の延長線上にある。
 こうした文化の源流の違いが,日米におけるコマンダーの親和性の違いとして現れている。
 一方,日本における「マジック」は,ほかのカードゲームと比べて「賞金制大会があり,競技の仕組みが整備されている」のが強みであったため,その点を重視するプレイヤーが多かった。ゆえに「一般的なフォーマットであるスタンダードをプレイし,ショップなどで開催される大会に出る」という,競技的プレイスタイルのプレイヤー人口が多かったのだ。

 だが,それも今や昔。日本でもコマンダーをプレイする人は増えつつあり,Wizards側が把握している数字だけでも,プレイ人口はスタンダードよりコマンダーのほうがやや多いとのこと。もちろん重複してカウントされたものではあるが,その割合は分かっていないという。
 そもそも身内だけで遊ばれることの多いコマンダーなので,暗数も加えればさらに差は広がるに違いない。

幕張メッセなどで開かれる大型大会には,会場内に広い「コマンドゾーン」が必ず設けられ,1日あたり数千円の料金を払って1日中遊び続ける人で混み合う
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 では,なぜ今になって日本のコマンダー人気が上昇してきたのだろうか。
 これも理由はさまざまだが,1つには「コロナ禍における遊び方の変化」がある。店舗に集まることができないがゆえに,自宅や身近な範囲で遊べるフォーマットとして,コマンダーが注目されたという説である。事実,この時期には世界的にもコマンダー人口は増加しているとのこと。

 また「コマンダー用カードの浸透」「ユニバースビヨンド製品の人気」も,コマンダーの普及に一役買っていると思われる。
 「マジック」製品を幅広く買ううちに,望むと望まざるとにかかわらずコマンダー用のカードが増えていきがちなので,こうした資産を活用してみたいと思えばいつでも始められる。さらに昨今は,外部IPとのコラボシリーズである「ユニバースビヨンド」製品も人気を博しており,これもまたコマンダーと相性がよい。お気に入りのキャラクターを統率者に据え,それに特化したデッキが作れるからだ。

ユニバースビヨンドのカードたち。こうした推しキャラをどうしても使いたくてコマンダーを始めたという人は,実際よく見かける
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 ほかにも近年のカードセットの発売ペースと,それによる環境変化についていけず,一度デッキを用意すればずっと遊べるコマンダーに人が流れた説や,4人対戦なので新規プレイヤーを誘いやすいといった説もあり,実際はそういった複数の要因の相乗効果によって,コマンダーは今,一大ブームを迎えつつある。


マジックを年齢性別を問わず楽しめるゲームに――Wizards日本チーム インタビュー


 さて,そんなコマンダー人気にあやかってか,日本の「マジック」運営チームもコマンダーを強く押し出し始めている。
 2026年春にはフォーマットの呼び名が「統率者戦」から「コマンダー」に統一され,公式サイト内にコマンダーの特設サイトが設けられた。また人気YouTuberグループQuizKnockとのコラボ動画や,初心者向けの店舗イベント「コマンダー交流会」を定期開催するなど,マス向けのアピールにも余念がない。

 非公式フォーマットゆえに,また新しいカードを必要とせず,身内で遊ぶことの多いその性質から,Wizards公式やカードショップから半ば無視されていた十数年前とは隔世の感がある。
 なぜ今,公式でコマンダーを推し始めたのか,またコマンダーを取り巻く状況について,Wizardsの担当者らに話を聞いてみた。

社内のさまざまな担当領域からまんべんなく集まって結成された5人のチーム「ジャパン・コマンダーネクスト」。左から伊藤豪志氏,杉森健人氏,前野ジョナサン和志氏,金子真実氏,和田悠作氏。全員がほかの職務と兼任でコマンダーの仕事をしているという
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4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。「統率者戦」や「EDH」と呼ばれていたフォーマットの名称が,このたび「コマンダー」に統一されました。今になって,なぜなのでしょうか。

前野ジョナサン和志氏(以下,前野氏):
 統率者戦という呼び方は,「Commander」というフォーマットが昔アメリカで制定されたときに決めた日本語訳を,そのまま流用したものでした。
 しかし今回,コマンダーを推すにあたって,「そもそも統率者戦って名称は,ほかのフォーマットと命名の仕方が違うよね」となりまして。「スタンダード」とか「レガシー」とか,本国での呼び方をそのままカタカナにするのが通例なのに,「統率者戦」だけ違うんですよね。
 あとはコマンダーのほうが,漢字よりも親しみを込めて呼びやすいという意見もありましたし,いっそこのタイミングで思い切って変えたほうが,新規の方にも浸透しやすいのではないか。理由としては,そんなところですね。

金子真実氏(以下,金子氏):
 昔とは違い,今は弊社が公式にいろいろなコマンダーのイベントを開催しています。そうしたイベント名は本国に倣って「コマンドフェスト」とか「コマンダー・ナイト」なのに,フォーマットは「統率者戦」というのも変ですからね。

4Gamer:
 確かに,呼び方が2つあったら分かりにくいです。ではそもそも,この春からコマンダーを推し始めた理由は何ですか? 今まではスタンダードをメインに据えていたと思うのですが。

前野氏:
 これまでスタンダードがメインだったのは確かですが,それを止めたわけではありません。スタンダードもコマンダーも,両方推していきたいと思っています。
 ただ2,3年前頃から,「コマンダーが来始めてるよね」という話はありました。年に1回,来年の戦略を考える会議があるんですけど,そこで去年は「スタンダードを推す一方で,コマンダーもちょっと来てるから,両方バランスよく推してみようか」となり,今年は「さらにコマンダー人口が増えてきたから,もっとしっかりコマンダーを推そうよ」という感じになったんです。
 増えたプレイヤーの側もサポートを求めているだろうから,ちょうど双方の需要が合致したタイミングが今なんだと思います。

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4Gamer:
 なるほど。

前野氏:
 それに,日本における「マジック」の普及を長い目で考えたとき,コマンダーの存在は,ほかのTCGとの差別化にもつながると思うんです。
 1対1で戦って勝負を決めるゲームは,デッキやプレイの最適化を突き詰めるのが基本になります。それは「マジック」ももちろん同じなんですが,コマンダーとなると,それとはまったく違うところに遊びの軸が生まれてくる。勝ち負けはあれど,プレイの中での自己表現とか,このキャラクターを活躍させたいといった,いろんな軸で楽しめるのがコマンダーなのですから。

4Gamer:
 それをアピールすることが,「マジック」の独自性につながると。

和田悠作氏(以下,和田氏):
 そうですね。あとこれは個人的な意見ですが,「マジック」はカードデザインの自由度がかなり高くて,コラボセットのユニバースビヨンドでも分かるように,キャラクターの個性をカードで再現しやすいんですよね。それが強みになっている側面もあるんじゃないかと。

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4Gamer:
 ああ,確かに。

和田氏:
 タイミングとしては,2025年2月にブラケットが設定されたのも大きかったと思います。プレイスタイルによる住み分けが比較的簡単になって,普及させやすくなった。
 これまで日本では「10段階のデッキパワー分類」を公式側から提示していましたが,それだとまだマッチングの齟齬も起きやすかったんです。ブラケット制によって,それがだいぶ整理されました。

金子氏:
 これまではデッキパワーで分けていましたが,ブラケットは「どういう遊び方,どういう楽しみ方をしたいか」にポイントが置かれているので,マッチングミスが起こりにくいですね。

各ブラケットのゲーム指針


 ブラケットとは,求めるゲーム体験やデッキの強さにより,プレイヤーをマッチングするためのプレイ指針だ。ブラケット1から5までの5段階があり,それぞれに禁止/非推奨カードなどが定められている。公式サイトによる各ブラケットのプレイ指針は以下のとおり。

  • ブラケット1「エキシビション(展覧会)」:カードやプレイの強さを意識せず好きなテーマを披露する
  • ブラケット2「コア」:好きなカードと楽しいシナジー 勝つかは運しだい
  • ブラケット3「アップグレード」:勝利を目指した具体的なプランを搭載
  • ブラケット4「オプティマイズド(最適化)」:好きなコマンダーやアーキタイプで制限のない最良の構築とプレイを目指す
  • ブラケット5「cEDH(競技)」:競技としてのコマンダー



4Gamer:
 確かにブラケットは良い指標ですよね。これまでは10段階のうち,自分のデッキがどれに当てはまるかの判定が難しかったので。

前野氏:
 ブラケットが制定されたときに話題になって,コマンダーをやってなかった人たちからも注目された,という面もあるかもしれません。

和田氏:
 「なんかアメリカで人気の遊び方らしいぞ」ぐらいの認識だったのが,だいぶ身近になった気がします。

4Gamer:
 コマンダーが「マジック」の差別化につながる,とのお話でしたが,「マジック」の弟分である「デュエルマスターズ」(以下,デュエマ)でも,コマンダーと同様の遊び方「デュエパーティー」が定着してきていますよね。あれはWizards側から仕掛けたものなのですか。

デュエパーティーの様子
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前野氏:
 「デュエマ」には,多人数戦のルールが元々あったらしいんですよね。ただ最初期の話ということもあって,ちゃんとしたサポートは長い間されていなかったみたいです。
 そんな中,「デュエマ」でもカジュアルに遊べるイベントを増やしたい流れが運営側にあり。そこでファンの皆さんの遊び方を参考にしつつ,改めて整備したルールが「デュエパーティー」……だと聞いています。

4Gamer:
 となるとコマンダーやデュエパーティーの流行を追って,ほかのカードゲームでもそういった多人数戦の流れが来る可能性もありそうです。

前野氏:
 あり得るでしょうね。実際,多人数戦ができるカードゲームはほかにもありますし。ただ,その先駆けである「マジック」のコマンダーが,日本で普及するのに10年近くかかったことを考えると,フォーマット化はできても受け入れられるのには時間がかかると思います。

杉森健人氏(以下,杉森氏):
 でも「マジック」って,ほかのカードゲームから流れてくるプレイヤーも多いので,よそでそういう4人対戦が人気になったら,「あっちにもっとカードの種類が多くて,自分のやりたいことができそうなのがあるぞ!」って,なるかもしれませんよね。カードの種類の多さで言ったら,「マジック」に追いつくには30年かかりますから(笑)。

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4Gamer:
 分かりました。では次に,日本でコマンダーを普及させるWizardsの施策について伺わせてください。すでに全国のカードショップでコマンダー交流会を開いたり,CMを作ったりといったものは確認していますが,今後は何かお考えですか。

前野氏:
 直近としては,まずコマンダー交流会をしっかり継続していくことですね。何年も続く定番イベントにするべく,手厚くサポートしていきたいと考えています。開始以来,おかげさまで多くの店舗とプレイヤーの皆さんに参加していただいていますし。

伊藤氏:
 すでに夏以降のスケジュールも各店舗に出していただいていますが,ありがたいことに300以上の店舗が参加を表明してくれています。イベント数で言うなら1万くらいですね。

4Gamer:
 それはすごい。

伊藤氏:
 店舗で開催するコマンダーの公式常設イベントは,これまでありませんでした。年間通して遊べるコマンダー交流会は,この穴を埋めるものになると思います。

コマンダー交流会の様子。筆者自身が何度か参加してみたが,「今日初めてコマンダーをやります」という人が必ず1人はテーブルに混ざっている
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4Gamer:
 あれ,でも今実施している交流会でのスリーブなどの景品プレゼントって,夏頃にいったん終わりますよね?

伊藤氏:
 いえ,2026年末まで続く予定です。夏頃に各店舗で表彰式がありまして,一旦そこでプレゼントがあります。その後,12月まで同じ景品を配る予定です。それ以降も,また絵柄を変えて同様のプレゼント企画をやりたいですね。

4Gamer:
 ああ,プレゼントの仕組みから,コマンダー交流会は夏までだと勘違いしていました。一時的な施策ではなく,ずっと続いていくものなんですね。

伊藤氏:
 そうです。参加してくださる皆さん次第ではありますが。

4Gamer:
 交流会以外の施策は何か考えていますか。

前野氏:
 その辺りはまだまだこれからですが……お店に来ないプレイヤーさんの中にも,コマンダーを楽しまれている人が大勢いらっしゃるので,そういった皆さんをどうサポートしていくかは,考えていきたいと思っています。

金子氏:
 コマンダーは友達だったりグループだったり,いわゆるコミュニティの力が非常に重要な遊び方なので,そこにアプローチできる施策を今後増やしていきたいですね。私たちがこのプロジェクトを発表したときの声明にも,「皆さんと一緒に作り上げていきましょう」と書いてありますし。

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4Gamer:
 そもそもなんですが,コマンダーのプレイ人口が増えたとしても,カードショップやWizards側にはそんなにメリットがない気がするのですが……その点はいかがですか。家で遊ぶ人が多いですし,カードも大して買い足す必要がない。Wizardsがこれまで推してこなかったのも,その辺りに理由があるものと思っていたのですが。

杉森氏:
 そんなことはありません。私もコマンダーを始めたのは2年ぐらい前ですが,デッキを強化したり,こだわりを反映していく中で,やっぱり新しいカードは欲しくなるものです。だからカッコいいカードが入ったコレクター・ブースターパックなどは,コマンダーのプレイヤーからの需要も高いと思います。

※コレクター・ブースターパック:「プレイ・ブースターパック」と呼ばれる通常のパックと異なり,イラスト違いや特殊なフォイル仕様など,コレクション向きのカードが出てくる高額なパック。コマンダー専用のカードも必ず封入されている。

杉森氏:
 実際,構築済みデッキは売れていますし,そこにコレクター・ブースターのカードを加えてデッキをチューンナップしてもらえたら,そこでも売上が立つことになる。我々はそういう好循環が生まれることに期待しているのです。そうでなければプロジェクトが続けられないですからね。

4Gamer:
 確かにコマンダーは,カードやサプライにこだわる人が多い印象ですね。

前野氏:
 実際,商品が1番売れているのはコマンダーのプレイ人口が圧倒的に多いアメリカなんですから。コマンダーのプレイ人口と売上には,間違いなく相関があるわけです。

4Gamer:
 確かにコマンダーで「マジック」全体の裾野が広がれば,売上も自然と立つのかもしれません。コマンダーを入口にして,ほかのフォーマットに手を出す人もいるでしょうし。

前野氏:
 ええ,大いにあり得ると思います。「マジック」にはいろんな遊び方があって,その人のライフステージ,ライフスタイルに合わせられるのが魅力です。その入口にコマンダーがなってくれたらうれしいですね。

4Gamer:
 メーカー側の視点は分かりましたが,店舗側はどうなんでしょうか。

伊藤氏:
 コマンダーのイベントを店舗で行っているのは,まさしくそうした意味があるんです。その場で製品を購入していただくのもそうですが,来店の機会が増えれば,店舗を中心としたコミュニティに参加するきっかけにもなりますから。「もう1回遊びたい」となりやすいコマンダーは,まさにこれにうってつけです。

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4Gamer:
 ああ,「次こそは!」ってなりますからね。コマンダー交流会に「甘口」と「辛口」の2種類のテーブルがあるのも,そうした狙いからですか。

伊藤氏:
 そうです。やっぱり同じ温度感のプレイヤー同士のほうが,コミュニティは作りやすいですから。また交流会では,名前が書けるプレイヤーカードを配る施策も行っています。プレイ中に相手の名前が分からないようだと,交流は生まれにくいでしょうし。

交流会の参加者に1枚ずつ配られるプレイヤーカード
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名前を書き,統率者カードを置いて使うとこういう感じになる
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伊藤氏:
 プレイヤーカードや,フレーバーテキストのシールを配るのは,自然と会話が始まるようにという仕掛けなんですよ。店舗を訪れることで,居心地のいいコミュニティを見つけてもらいたい。

金子氏:
 シールは交換したりもできますからね。シール交換,今流行りだから(笑)。

交流会への参加1回につき1枚配られ,統率者に貼ったりして楽しめるシール。一覧と元ネタのカードは「こちら」
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4Gamer:
 コマンダー交流会の甘口と辛口は,5段階のブラケットで言うと前者がブラケット2,後者がブラケット4に相当するわけですよね。
 2と4ははっきり違うと思うのですが,中間のブラケット3はやや曖昧で,人によって認識がズレがちな問題があると思っています。自己申告ですから「そのデッキはブラケット3にしては強すぎる」といったようなことが起きやすい。公式として,こうした問題にはどう対処するおつもりでしょうか。

金子氏:
 その問題の根本的な解決は,本国のコマンダー・フォーマット委員会の仕事である,という前提でお話しするのですが,日本の運営チームとしては,先ほど話したとおり,ブラケットが「どういうプレイ体験をしたいか」にもとづく分け方である点を,できるだけ啓蒙していきたいと思っています。

和田氏:
 ブラケット3が論争を呼びがちなのは我々も認識しています。ですので交流会では,まず2に相当する甘口と,4に相当する辛口を用意したわけです。
 まずここでコマンダーを体験してもらって,自分がコマンダーに求めているプレイスタイルを意識してもらう。2と4ではプレイ感覚がまったく違いますからね。そこで自分の好みを理解できれば,以後のブラケット選択がスムーズになると思います。

4Gamer:
 私はブラケット2で遊ぶことが多いのですが,「好きなカードをたくさん展開できてうれしい」っていう感覚で楽しんでる気がします。ブラケット4は,どんな人に向いているのでしょうか。

金子氏:
 ブラケット4は,「今こいつを止めないと,俺らみんな死ぬぞ!」みたいな状況がよく発生するんですよ。それが繰り返されるので,「誰かなんとかできる?」「俺はこれならできるけどお前は?」みたいな交流が生まれやすい。そこが面白い(笑)。

4Gamer:
 なるほど。ある種の共闘感でしょうか。今からコマンダーを始める人は,その辺りを意識しながらプレイしてみると,いいかもしれません。ちなみに初心者は,辛口でなく甘口から始めたほうがいいですか。

金子氏:
 必ずしもそうとは言い切れないんですよね。「最近始めたばかりだけど,いつもブラケット5の友人と遊んでる」って人もいましたから。その人の統率者はFF14のエメトセルクだったんですけど,裏返ったらその瞬間勝つぐらいのデッキパワーでした。自分の好きなキャラクターを最強にしてあげたいって,プレイスタイルもあるんじゃないでしょうか。

4Gamer:
 最強のエメトセルクのためにすべてを注ぎ込む,その気持ちはよく分かります(笑)。

和田氏:
 甘口だったら好きなカードを好きに使って遊べばいいし,辛口だったら好きなカードを強く育てればいい。遊び方に幅があるのも,コマンダーのいいところです。

4Gamer:
 では今からコマンダーを始める人に向けたアドバイスを,皆さんそれぞれからいただけますか。

伊藤氏:
 まずはコマンダー交流会に,構築済みデッキ1個握りしめて参加してみてください。きっといいコミュニティが見つかって,また遊びたくなると思いますので。

杉森氏:
 店舗のイベントでなくとも,友達同士でもいいと思いますよ。構築済みデッキは本当にできがいいので,わざわざ1枚1枚デッキを組む必要はありません。ともあれそれで,一度プレイしてみてほしいですね。

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コマンダー用の構築済みデッキ。最新製品である「マーベル・スーパーヒーローズ」のほか,過去にはファイナルファンタジーや「Fallout」「バルダーズ・ゲート」「Warhammer 40,000」とのコラボも行われた
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金子氏:
 コマンダーって本当に自由でいろんなことができるので,ある種,自己表現に近いものがあります。社内で言うとよく気持ち悪がられるんですけど,自分はコマンダーは愛だと思ってます。感覚的には推し活に近いものがある。

4Gamer:
 ああ,そのデッキ用のグッズを作る人もいますよね。自分だけの特別なアイテムに凝るのも楽しそうです。

金子氏:
 そうそう。自作のトークンとか,統率者を置くスタンドとかね。そういうところも推し活に似ています。つまりコマンダーは愛なんですよ。自分の“好き”を足がかりに,気軽に楽しんでいただければと。

和田氏:
 日本での「マジック」は,1対1の競技性の高いカードゲームとして普及してきました。だから「コマンダーってカジュアルフォーマットでしょ? じゃあ,別にいいかな」って人がいるのもよく分かります。でも,そういった人たちにこそ,一度プレイしてもらいたい。ブラケットの整備が進んだ今,きっと求める体験がコマンダーにもあるはずです。食わず嫌いはもったいないと思います。

4Gamer:
 ブラケット5でガチバトルもできると?

和田氏:
 もちろんそういう側面もありますし,案外ブラケット2あたりでのんびりプレイするのが,息抜きになる可能性もある。ぜひ敬遠しないで,新しい楽しみ方を見つけてもらいたいですね。

前野氏:
 ……大体皆に言われちゃったんですけど,付け足すとしたら……コマンダーって1回だけでは分からない部分もあるので,できれば2回,3回と遊んでみてほしいですね。噛めば噛むほど新しい発見がありますので。 「自分にはこういう戦い方が合ってる」とか,「このキャラを使ってると楽しい」とか,逆に対戦相手のコンボを見て「自分もやってみたい」とか,「自分だったらこんな風にデッキ組むんだけどな」とかね。

4Gamer:
 毎回違う体験になりますから,繰り返しやったほうがより楽しいですよね。最後に,皆さんが思い描くプレイシーンの理想像を教えてもらえますか。

金子氏:
 それは先日出したブランドムービーを見てもらうのが一番じゃないかな。


前野氏:
 そうですね。年齢性別を問わず,いろんな人たちが向き合って自己表現を楽しむ風景が広がってくれたらと思います。「マジック」は一生遊べるゲームですし,それが可能なだけのフォーマットが揃っています。そして,それぞれライフスタイルに合わせてプレイできる環境こそが理想ですよね。それこそ,10年前に組んだデッキとかを引っ張り出してきてもいいわけですから。

4Gamer:
 家族麻雀みたいに,お正月におじいちゃんと孫が自分のデッキ持ってきて……みたいな。そういう風景が実現したらいいですよね。本日はありがとうございました。



 以上が,今回のインタビューの全貌である。
 自分の話で恐縮だが,筆者はこれまで“とくにコマンダーをやりたいとは思わない”側のプレイヤーの一人だった。4人でワイワイ遊びたいなら,それに適したボードゲームがいくらでもあるし,「マジック」は勝つのが楽しい遊びだと思っていた。対戦相手に気を遣い,「悪気はないんですけど,1番ライフが多いのであなたに攻撃しますね〜」と言いながら殴り合うなんて,正直面倒くさいではないか。

 転機となったのは,昨年のFFコラボだ。FF14のコマンダー用構築済みデッキを買ったのである。キャラクターや思い出のエピソードが再現されたカードたちは,眺めるだけでも楽しかった。

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 そこでコマンダー交流会が始まるということを知り,試しに行ってみることにした。そうしたら,SNSや仕事関係の知り合いから次々と声がかかるようになり,今は「だいぶ分かってきたから,そろそろ別のデッキに挑戦してみようかな?」などと,見事にコマンダー沼にハマりかかっている。
 食わず嫌いはやはりよくない。遅ればせながら手を出したコマンダーは,思いのほか楽しかったのだ。

 今のところ,ブラケット2で遊んでいる筆者だが,引いたカードによって毎回違う展開になるし,元ネタのファイナルファンタジーを知っていればこそ,エモいと感じられるシチュエーションが次々に現れる。対戦相手から知らないカードが無限に出てくるのも面白い。プレイ中の会話が多く,試合が長くてカードをたくさん並べられるから,競技的なゲームよりも満足度も高い気がする。
 高ブラケット帯で何が楽しいかはまだ分からないが,きっと“ならでは”の妙があるに違いない。

 もちろん,インタビュー中でも触れたように,課題がないではない。
 自己申告制のブラケットによるミスマッチングはその最たるものだし,過去のカードがほぼすべて使えることによるカードプールの広さが,逆にハードルになることもある。デッキ構築の煩雑さや,絶版カードを入手する難しさはいかんともし難いからだ。
 
 だが結局のところ,こうした問題は公式によるさらなる啓蒙活動や,まだベータ版であるブラケット制度の改善によって,徐々に解消されるはずである。プレイ人口の増加と共に整えられていくだろう,今後の環境整備に期待したい。

 公式側からのサポートを受け,ますます盛り上がりを見せるだろう日本のコマンダーシーン。この記事を読んでいるあなたも,この機会にその人気の理由を体験してみてはいかがだろうか。

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