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印刷2008/04/01 17:15

連載

EU3 その時歴史は動いた…り,動かなかったり敦
第7回:二百年ほど早い華南革命論(南明)

 

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ゲーム的に南明の開幕は1646年の1月1日。今回は指導者/宮廷顧問/将軍と,すべてヒストリカルセッティングである

 殷,周,春秋・戦国……という中国王朝数え歌は,高校で世界史を選択した人なら必ず通った道だと思う。とはいえ,当然といえば当然なのだが,「ここからここまでがA王朝,次の日からB王朝」という具合にサクッと王朝が切り替わるわけではない。もちろん皇帝の死と皇統の断絶を以て王朝の交代とするのは便宜的に正しい見解だが,なんのかんので最後の最後まで頑張る人は必ずいるものだ。
 明王朝もまた,元,明,清という流れの中で,満州族の王朝である清に取って代わられる運命にあったが,その権力交代は段階的に進み,まずは長江以北を占拠され,しかる後に「南明」が短期間継続,これが吸収されることで清が本格的に成立した。

 こういった移行期間がある以上,EU3ならその期間を選ぶことで,南明でもプレイ可能となる。いったい何ができるやらはなはだ疑問であるが,なんにせよ壮絶なサバイバルレースは期待できそうだ――そしてサバイバルレースこそ,EU3の最も得意とする分野といってよい。
 というわけで今回は南明である。でもこれ,本当に何ができるんだろう……?

 

 

南京政権? 北伐? でもその前に

 

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月間45ダカット前後という経済規模は,決して低くはない水準。アジアゆえ,技術開発コストは天文学的だが

 ゲームの開始時期だが,歴史的には南明が滅亡した年の正月スタートにするか,それとも南明が成立した直後にするかの二択といってよい。
 実は両方とも試してみたのだが,前者は一見すると絶望的に思えるものの,経済価値の高いエリアを清に譲渡したあとにひたすら献金を繰り返すと,あら不思議,清から同盟を求めてくるようになる。5年間の停戦期間のうちに金策に励み,あとは御利益を祈りながら献金するだけで,未来は安定してしまう。拍子抜けといえば拍子抜けだ。
 というわけで,やるべきことと結論が変わらないなら振れ幅の大きいほうを優先して,南明が成立した直後からプレイを開始する。ここらへん,国別AIがないことでプレイの幅が広がることもあれば,逆にプレイのバリエーションが減ることもあるというのは,なかなか奥が深い。

 

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史実どおり,この時期の皇帝はめまぐるしく入れ替わる。そも,20年もたなかった国なわけで……

 システム上の課題はともかく,ゲーム上の課題は明白で,まずは生き延びることだ。もちろん,長期的な課題は滅満興漢である。1911年の辛亥革命を待つことなく,中国を少数者の支配から解放するのだ。

 南明開始,すなわち1644年前後でゲームをスタートする場合,清(ゲーム的にも史実的にも未だ「満州」だが,以後便宜上「清」としておく)との付き合い方には二つの可能性がある。
 一つはいうまでもなく,平身低頭,清に尽くす方向性。貢納貢納また貢納で好感度を上げて,ゆくゆくは同盟を狙うという方法論だ。そんなムシのよい話があるかと思うかもしれないが,これはこれで可能である。

 だがもちろん,この方法がすべてではない。もう一つ別のアプローチがあり得て,こちらを選べば清に貢納することなく同盟に持ち込める。
 そんな魔法のような方法が本当にあるのか? あるのだ。倫理とか国際正義とか全部抜きで議論してよいなら。

 

 

華南へ。そしてさらに南へ

 

 まずは軽く兵力を増強,歩兵を中心とした1万の軍を二つ組織して,それぞれに指揮官を充当する。南明最後の指揮官達は非常に優秀で,戦場を支配する力が十分にある。

 合計2万の軍勢が向かう先は東南アジアである。正当な理由も何もなく,とりあえず「あなたのほうが私より弱いから」という理由だけで戦争をふっかける。その際,なるべく小国の同盟集団を狙いたい。1回の宣戦で複数を相手にできるため,一気に複数国家を平らげられるからだ。
 明の絞りカスのような国といえども,東南アジアの小国と比べれば国力の差は歴然だ。密林や山岳といった東南アジアの険阻かつ劣悪な環境が,軍事行動の大きな障害となるものの,それは相手も同じこと。いろんなものが足りない南明だが,人的資源だけは十分にあるので,多少の行軍損耗は気にせず,突っ込むことにする。

 

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なるべく一度に多くの国を相手にしたい。画面は3国を同時に相手にしているところ

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3対1でも勝負にならないのが悲しい現実。まずは1国脱落させる。何事も大義のためだ

 

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東南アジアに急速な拡張をしていたのが評価されたのか,清から同盟の申し出が。ありがたく受諾

 まずはトンキンを一蹴,一発併合まではできないので領土割譲+属国化で手を打つ。将来的に外交併合で勘定を合わせればよいだろう。
 続いて,山岳に足をとられつつもタウングから大幅に領土を切り取る。切り取ったところで果てしない不毛の土地だが,ないよりはあったほうがいい。なにしろ南明にとって数少ない優位点である人的資源にしても,しめて3万弱しかないというのが正直なところなので,たとえほかに何一つ生み出さないにしても,人的資源の供給源はどんどん確保したい。

 だいたいこれくらい領土を広げた段階で,おもむろに清から同盟のオファーが入った。清は西方でカザフスタンやペルシアといった国との戦争にもつれ込みつつあり,その観点からすると南方で赫々たる戦果を挙げ,急速に国力を増大させている南明は,パートナーとして望ましいという判断が下されたのだ。「強きを助け,弱きを挫く」――これこそが国際政治の本道なのである。

 

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国姓爺登場! 世界クラスの名将なのだけれど,いかんせん海軍提督……海戦はめったにないわけでして

 

 人として微妙な断言をしたところで,弱きを挫く作業に戻るとしよう。すべては清に勝てる国力をつけるため,南蛮国家のみなさんには,漢民族王朝復興の礎となっていただく。

 

 

香辛料貿易に吸着して革命資金を

 

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タウングから領土を切り取る。経済的な旨みはほとんどなきに等しいが,この道の先には商都マラッカがある

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儒教のペナルティ,国税修正−50%。考え方の違いだけで半減って……改宗できたらなあ

 南明は,中国本土のCoTをすでに清に奪われており,経済的にかなり問題がある。これを解決する方法は二つ。CoTを自作するか,奪い取るかである。幸いといっていいのかどうか微妙だが,インドシナ半島をどんどん南下して行けば,地域最大のCoTであるマラッカが転がっている。ここを占領できれば,南明の経済状態は大きく改善されるだろう。

 もっとも南明の国教は儒教で,税収に−50%のペナルティがついてくる。期待するほどの収益は上がらないかもしれないが……。

 ともあれ,再びタウングにならず者戦争をふっかけ,のこのこついてきたタウング属国のシャンを踏み潰し,正義の戦いと勇んで参戦してきたアラカン軍は叩き潰して属国化する。なんとも効率が良くて助かる。
 だが,ここらへんでちょっと国際的悪評が高まりすぎたので,やむなくシャンを再独立させ,タウングを併合する。タウングは経済価値が高い地域を持っているだけでなく,マラッカへの回廊も押さえている。取るなら断然こっちである。

 

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タウングとシャンのタッグを一網打尽。だがこの後にすさまじい罠が……

 

 ここでタウングを併合した瞬間,「タウングを再独立させるか,安定度−3か」の選択イベントが……。後者は絶対にあり得ないので,泣く泣くタウングを再独立させる。人生ままならないものだ。とはいえマラッカへの回廊が南明支配に留まったのが,不幸中の幸いといえよう。

 

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これまた3対1以上での戦闘。トンキンが意外と大活躍している

 タウング/シャン問題がおおむね解決したところで,次はアユタヤ攻略を開始する。忠実な属国が増えていることもあって,南明軍はアユタヤ本土に直行,周囲に漏れるアユタヤ軍は属国軍に処理させることにした。結果,トンキンが思いがけず大活躍してアユタヤの半分近くをもぎとっていったが,将来的にトンキンは外交併合する予定なのでよしとしよう。どうせ自分で占領しても,人的資源以外はほとんど利益にならないのだし。

 アユタヤを実質無力化して側面の脅威を絶ったところで,ついに本命マラッカに突撃を開始する。マラッカとの間には小国が1国挟まっているのだが,軍の通行許可を要請したらあっさりと飲んだので,これ幸いとスルーを決め込む。この国,国土の一部がスマトラ島にあるせいで,まともに戦争して領土割譲要求を出すと,かなり面倒なことになるという事情もあった。

 マラッカはそこそこの兵力を備えていたが,衆寡敵せずあっさり陥落。東南アジア最大の商業地域を南明が手に入れることとなった。
 これによって,南明の財政はこころもち上向く。これがキリスト教圏やイスラム教圏ならもっと……とも思うが,儒教国家というアイデンティティは変えられないとあって,やむをえない。

 

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鄭成功が死んだ,のと同時に皇帝に。そしてものすごい速度で次の皇帝に。プレイ上何の意味もないが,歴史観の表明なのかバグなのか

 

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東南アジアでひたすら弱いものいじめに精を出す南明。自分より弱い者を叩くのはEU3の基本。アジアローカルで,全然近代につながらない“帝国主義”が切ない

 

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電撃的にマラッカを攻略。CoTを押さえたことには極めて大きな意味がある

 

 

南方中華圏の形成

 

 マラッカを支配したあとは,東南アジアの残敵掃討を行う。戦闘そのものよりも,地形効果と占領後の反乱処理のほうが厄介というあたり,いつのベトナムなんだろうと思わなくもないが,戦っている地域が本当にベトナム+ラオスなのでやむをえない。ベトナムのようだ,ではなく,ここは現にベトナムなのだ。

 

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ついにここまで領土拡張に成功。ええまあ,負ける可能性のない戦争ばかりを選んできましたとも

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ヨーロッパではスコットランドが大活躍中の様子。まったく他人事だがイングランドは何をやってるやら

 

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こんな国策が明で何の役に立つのかと……。造船技術は陸軍国にとってとりあえず無意味だし,商人+1だけあっても,まず活かせない

 また,このあたりで国家のリフォームにも着手する。南明の国策は3スロット。うまくいけば4スロットめを狙えるものの,途方もなく時間がかかるのは間違いない。当面3スロットで国家を運営することになるのだが,これがなかなか難しい。

 まず,最初から持っている「国民皆兵」は,やはり外したくない。この地域の国家はおおむねどこも国民皆兵持ちで,必然的に戦争は万単位の軍隊のぶつかり合いになる。南明の規模からすれば,東南アジアの掃除くらいは国民皆兵なしでもいけそうだが,そこから先を考えると,必須項目といってよいだろう。
 そうなると残るは二つ。初期状態では海戦関係と,年間の商人数+1という,不要不急もいいところのセットである。商人が増えたところで,交易効率+10%&商人の競争力+10%国策がなければ無意味だし,明はバリバリの陸戦国家である。このままではよろしくない。

 CoTを押さえたいま,交易国家に転身するのは魅力的であり,商人の数の問題が出るものの,交易2点セットを取るという方向性はあり得る――しかし,南明はいかんせん図体が大きすぎ,また戦争を前提としすぎている。商売に必要なのは安定度であって,安定しないことが確定している国で交易に乗り出すのは下策だ。

 

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毎年たった2名の商人で交易国家を目指すのは,さすがに無理があるだろう。鄭和はもういない

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まずは一つ目の国策を変更。安定度ペナルティは痛いが,一人前の国になるための必要経費だ

 

 戦争重視ということにすると,やはり「主の御心のままに!」は捨て難い。なにしろこちとら,儒教なんていうマイナーな国教である。同一国教の相手と骨肉相食む事態などめったに起きない。

 また,軍隊の維持可能規模を拡大するという観点からは,大陸軍……ではなく,中央銀行を取っておきたい。統治が23レベルあたりになると中央銀行は実質無意味になるのだが,そんな高いレベルまでたどり着くことがあり得ない以上,銀行のインフレ低減効果によってもたらされる財貨は非常に大きい。結局,軍隊を雇うのにも金がかかれば,維持するのにも金がかかるのだから。社会制度に根ざす兵数上限を伸ばすよりも先に,維持できる財政的な上限をなんとかしなければならない。

 

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お茶の積出港といえば華南方面が正しいのだが,この手のイベントは清朝の林 則徐が担当ではなかろうか?

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確かに連戦連勝の陸軍だが,確実に勝てる相手を選んでいるのであって,あまり胸を張って言える事柄ではない

 

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遅まきながらトンキンを外交併合。これまでかなりの軍事的サポートをしてもらったが,もう大丈夫なので

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宣戦布告と同時にタコ殴りモード。戦争相手の規模が小さいので,小さな属国でも大活躍である

 

 かくして,なんだまたかという気もするが,国策は「国民皆兵」「中央銀行」「主の御心のままに!」の武闘派3点セットとあいなった。国策二つを変更すると安定度が都合−6される(−3×2回)わけで,安定度回復が遅い南明にとっては苦痛以外のなにものでもなかったが,痛みなくして改革はあり得ない。東南アジアを事実上統一する頃には,南明は十分に戦える国へと変貌を遂げたのである。

 

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東南アジア方面は,もはや戦後処理に近い戦争。正直言って反乱対策のほうが大変。戦闘も,反乱軍相手のほうがよほど苦戦する

 

 

ビルマロードを逆走する南明軍

 

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東南アジア世界新秩序。明にはとうてい見えませんが,れっきとした(自称)明です

 揚子江以南と東南アジアを支配下に置いた南明だが,清にリベンジするにはいろいろなものが足りない。人的資源も薄ければ,経済力も低すぎる。何かをドラスティックに変えない限り,大国の仲間入りは不可能だ。
 じっと考える。作戦は二つあり得る。

 一つめは日本侵攻作戦。日本は人的資源に恵まれており,経済的価値の高いプロヴィンスが多い。経済力と人的資源の両方を,一度に充たすことが可能だ。もちろん問題がないわけではなく,まず端的に日本はけっこう強いということ,そして,中継点にできる場所がない点もひっかかる。琉球を踏み台にできればよかったのだが,琉球はこの時点ですでに日本領になってしまっていたのだ。
 もう一つの作戦はインドへの進出である。とはいえムガールと戦ってなんとかなる可能性は皆無なので,インド南部の中小国連合を狙い撃ちする。インドもまた,経済力も人的資源も申し分ない。問題は,申し分なさすぎるせいで,中小国連合といえども侮れない力を持っていることだ。

 

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あまりにも悪評が高まりすぎたので,クメールを再独立させてみる。焼け石に水ともいうが

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理想を言えばここに武器工場を建てたいが,国境プロヴィンスへの投資はさすがに無謀だろう

 

 二つの作戦をいろいろ考えた結果,今回は後者を選ぶことにした。理由は簡単で,日本には神道が土着宗教となっているエリアがあるためだ。しかも飛び石として最適の沖縄はアミニズムである。
 東南アジアに進出した結果,南明は儒教/仏教/ヒンズー/イスラムという4宗教に対して寛容度を全開にしている。これに神道だのアミニズムだのが加わると,寛容化政策が限界を迎えてしまう。占領政策(すでに勝ったつもりでいるのもアレだが)にあまりに大きな悪影響が出てしまうことに鑑みて,日本は避けたというわけだ。

 

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思い立って首都をマラッカに移転してみる。最終的に清と殴りあう以上,工場疎開&首都移転は必須だろう

 

 狙いをインドに絞ったところで,準備に入る。中小国連合体は,正直言ってかなり厄介な相手ではあるが,連合ならではの弱点がある。カネに弱いのだ。まずは中央銀行経由で蓄財に励む。
 同時に船で南部インドの諸国を索敵。彼らの海軍力は侮れないレベルに達しているので,大型戦闘艦の準備を開始する。幸いマラッカには船の建造速度向上をもたらしてくれる施設があり,すべての船をマラッカで作ったほうが早いくらい,迅速な海軍建設が可能だ。
 加えて南部インド諸州の陸軍は,かなり騎兵偏重なことも分かった。騎兵1万に歩兵2千といった編成がザラだ。この手の軍隊に歩兵の群れだけで殴りかかるのは無謀の極みなので,こちらも騎兵の数を揃えることにする。

 陸軍も海軍も準備万端,国庫にも余裕を持ったところで,いよいよインド南部への進撃を開始する。

 

 

どちらにも嬉しくない南海遠征

 

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インド侵攻の第一歩として,まずはセイロンに上陸開始。台湾に逃げるよりは確実なんじゃないかとも,思ってみたりみなかったり

 最初の攻撃目標はセイロンである。セイロンはインド亜大陸のいずれの国とも同盟しておらず,簡単に排除可能だ。一発で併合まではできないが,ぶっちゃけ陸海軍が駐屯できるプロヴィンスが一つ出来ればよいだけなので,1プロヴィンス割譲+属国化で手を打つ。どうしても併合したいときは,将来的な外交併合を目指そう。

 セイロンを制圧したら,いよいよ本番である。攻撃目標はインド亜大陸南端のマドゥライ。マイソールと同盟しており,マイソールがマドゥライを二分するような形になっている。マドゥライから始めると全土の占領が大変で,マイソールから入れば上下から挟まれるという,非常に困った情勢である。
 一応,もう一つの攻撃目標としてゴンドワナがあって,こっちはいっさいの同盟関係を持たない外交弱者だったのだが,ムガールに隣接しているという問題を持っていたためパス。ゴンドワナ併合を問題視したムガールから警告(ムガールの隣国に宣戦すると,自動的にムガールが宣戦してくる)されてしまった日には詰んでしまう。

 

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上陸作戦と,それに伴う首都攻略の大激戦。騎兵は倍くらいインド側が有利だが,歩兵は明側が有利。非常にきわどいバランス

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なんとか勝利。北のマイソールと白紙講和していることもあって,損害だけ見れば明の圧勝という結果に

 上陸自体はあっさりしたものだったが,上陸後の戦闘は凄惨を極めた。なにしろ退路のない戦いである。しかもこちらは勝つために全兵力を叩き込まざるを得ず,全兵力が行ったということは,船の数より部隊の数のほうが多いわけで,戦闘に負けたら逃げられる人数は限られてくる。
 結局,上陸した部隊の半数が壊滅するという凄まじい消耗戦のすえ,マドゥライ軍とマイソール軍を退けることに成功。これによってマイソールに対する戦勝点がついたところで,マイソールとは痛み分けで講和。マドゥライだけを相手に戦争を継続し,なんとか南端2州を切り取ることに成功した。南明が,インドに領土を持った瞬間である。

 もちろん,こんな記念碑的成果で満足したりはしない。我々は,清に勝てる明を作るために,インドにやってきたのだ。
 そして実際,清に勝つためのインド侵略というお題目は,お題目以上の意味を発揮した。南明の騎兵(清の騎兵でもある)は,世界的に見て非常に遅れた騎兵システムだったが,インドの占領地で雇用できる騎兵は比べ物にもならない精強さを誇っていた。どうりで苦戦するはずだ……。南明の陸軍レベルがあと1レベル上がれば,そこで獲得できる騎兵のほうが優秀なのだが,それまでの30年ほどを戦うのに,インドの騎兵は極めて有用。というわけで,順次インド騎兵を雇用し,雇用した分だけアジアステップ騎兵を解雇する。

 

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南部3州を制圧,そのうち2州を割譲させることに成功。とはいえこの状態,占領州で反乱が起きて鎮圧に失敗すると,部隊の退却先がないので全滅という,恐ろしい状況

 

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北で戦争している。チャンス到来だ

 さて停戦期間が明け,騎兵の入れ替えも終わってやる気はマンマンだけど,占領地の反乱発生確率が高すぎるうちは攻勢には出られないかと思っていたところ,目の前でマドゥライ/マイソール軍が動き始めた。どうやらゴンドワナとの戦争が始まったらしい。
 これ以上のチャンスはあり得ないので,迷わずにマイソールに宣戦布告。自動的にマドゥライもついてきた。

 まずは1部隊でマドゥライがインド南端に持つ最後の1プロヴィンス(首都だったりする)を占拠,しかるのちにそこから,二つの部隊でマイソール領を駆け上がる。マイソールからは悲鳴に近い和平の申し出が来るものの,いまはマイソールの領土を切り取るのが目的ではない! 侵攻部隊はマイソールの戦意を挫きつつ,マイソール軍の残党にかまわず電撃的に北上,ついにマイソールの北に広がるマドゥライ領にまで到達した。この段階でマイソールとは講和し,いくつかの領土を勝ち取る。

 

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マイソールの南半分を切り取りつつ,主力は北上し続ける。強引な突撃を繰り返して時間を稼ぎ,南部でマドゥライが首都を奪還する暇を与えない

 

 北部マドゥライへ進撃した主力は,そのままマドゥライ領を席巻,やがてマドゥライは屈辱的な講和を飲む。領土を寸断されたマドゥライに再起の目はなく,南明インド派遣軍ももはやマドゥライを敵と見なしてはいなかった。むしろ次の目標であるゴンドワナとどう戦い,国境を接することとなるムガールとどう駆け引きを展開するかこそが,問題となってきたのである。

 

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マドゥライ北部を大幅に切り取る。占領地の連続性が保てていないが,反乱鎮圧の失敗が部隊全滅に直結する状況は克服

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いつの間にか世界のベスト8入り。いや入ったからって何かあるわけではないのだが。1位とどのくらい開いていることか

 

 

反清復明の旗は重く

 

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ゴンドワナに電撃逆侵攻。向こうから戦争を仕掛けてきてくれるのは,ある意味助かる

 さまざまな国際的リスクが急上昇したとはいえ,一度虎に騎った以上,途中で降りることはあり得ない。マドゥライ/マイソールの残党に宣戦布告し,これを属国化する過程で,ゴンドワナが南明に宣戦布告。南明軍主力はゴンドワナ軍の騎兵主力を川越え+丘陵地帯という鉄壁の布陣で待ち伏せし,最小限の被害で撃退する。敗走するゴンドワナ軍主力をもう1軍が追い,徹底した損害を与えたところで,ゴンドワナは音を上げた。

 半端な講和条件などいっさい無視してゴンドワナを完全制圧,このまま併合していってもよかったが,ゴンドワナ相手に時間をかけすぎると,ムガールを過剰に刺激する危険がある。そこで,ゴンドワナには現状を維持したまま南明の属国となってもらうことで和平を締結した――いまの南明にとって,時間が最大の敵なのである。

 

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ゴンドワナから領地を切り取っていってもよいが,いまは対ムガール政策を優先すべきタイミング。完全属国化で手を打つことにする。占領地が広くなりすぎて,反乱対策に追われるのは避けたい

 

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南部インド戦争の最終局面。優秀な騎兵を押し立てて激しく戦った2国だったが,明が占領地で彼らと同じ質の騎兵を徴募できるようになったことで,純粋な国力勝負になった。そうなれば結果は明白だ

 

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インド戦役終了時点における南明の支配領域。ぱっと見せられたら,もはやなんて国か分からない

 南インドが実質的に南明の支配下になったことで,南明の経済は大いに改善された。湧き出る財貨をムガールに投入すると,ムガールはあっさり軟化して,先方から同盟の打診が入る。願ったりかなったりなのでこれを受諾する。かくして南明を軸にした連合体は,清+南明+ムガールという形で東アジア/南アジアのほぼ全域をカバーする大同盟となったのである。

 1800年になるころには,南明が東アジア世界で最強の騎兵を開発。再び騎兵をすべて入れ替えた南明は,もはや数では勝てない壁があることを東アジア(主に島嶼部)に知らしめていった。

 いまや南明の経済力は年間200ダカットを稼ぎ出し,騎兵も歩兵も清を大幅に上回るスペック,人的資源はKで表示される領域に突入した。インドの反乱が治まるのを待ち,また高まりに高まった国際的悪評が低減するのを待ったうえで,大量の騎兵部隊をひきつれて清に宣戦したらどうなるか。ペルシアとの泥沼の戦争に疲弊した清では,南明とムガールによる挟撃に耐えられる可能性は低い。清が南明の騎兵に追いつくには陸軍レベルで2レベル差を克服しなくてはならず,アジアにおける2レベルは,へたをすると100年近い年月を意味する。要するに,清はすでに詰んでいる。

 

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明の外交が勝利した瞬間。東〜中央アジアは実質3か国による支配となった

 

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だがイングランドは技術レベル50前後で進行中。ええと,15とかで「地域最先端」なんですが。アジア突撃騎兵は対清戦における切り札になっているが,世界はそんなレベルじゃないらしい

 

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「良くない国だという評判です」「我が国の振る舞いをお手本にしています」。そして帝国主義がやってくる……。お手本にしないで。お願い

 だが,南明もまた詰んでいるといわざるを得ない。ヨーロッパ列強の技術レベルは50台後半から60台。アジアから見ればオーバーテクノロジーとしか言いようのない物体の群れである。彼らが本気になってアジア攻略に乗り出したら,南北に分裂したままの中国や,同じく南北に分裂したままのインドでは,相手をすることすらままならない。

 「産業化とナショナリズムに彩られた世界」は,このアジア世界では物理的にも時間的にも,どこまでも遠い存在だ。そして彼らが帝国主義という牙を剥いたとき,この世界のアジアは,おそらく史実よりもひどい脆さを示さざるを得ない……。

 それでも南明は清を打倒するため,揚子江沿いにきらびやかな騎兵を並べるだろう。そのために戦ってきたのだ。いまさら後に退けようか?

 

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とりあえず暫定世界1位。思いつく限り,世界最大/最強の亡命政権かもしれない

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清には勝てると思います。ええ。でもそこから先は……というか,たぶんその途中で……

 

■■徳岡正肇(アトリエサード)■■
時ならぬParadox Interactive製品ラッシュで,このところ妙に忙しいPCゲームライター。今回の勝因を一言でまとめるならば,「アジア通」だろうか? 大陸中国の映画,台湾の男性アイドルグループにも詳しいこの人は,それらを通して各国社会とその歴史を捉える感性を磨いてしまっているらしい。本当に,物事の面白さとは見方一つで変わるのだと,日々痛感させられる。
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    ヨーロッパ・ユニバーサリスIIIナポレオンの野望【完全日本語版】

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