連載
男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第260回「『信長の野望』の完成形」
例えば,「スターフォックス」。スーパーファミコンで発売されたとき,あれはあれで普通に楽しくプレイしていたわ。でも,NINTENDO64用の「スターフォックス64」をプレイした瞬間に,痛いゲイムファンの私は「スターフォックスが,ついに今,完成した!」と思っちゃったのね。オリジナルのスターフォックスも味はあったけど,やはり完成形は64版だったのかな,と。
それはきっと,ハードのスペックや制作技術の向上とか,いろんな要素がそうさせるんだと思うわ。モノを作るって,基本的には妥協の部分もあるから,100%理想通りってことはないはずなのよ。よく「理想的なゲイムができました」的な制作者のコメントを聞くんだけど,それってたいていの場合,「現実的に理想的なゲイムができました」の,「現実的に」という部分を略しているんだと思うの。
だって,ゲイムってどこかで発売しなきゃいけないわけじゃない。開発期間が短ければ短いほど,コストもかからない。だから1か月で作ったものが売れれば,それに越したことはない。でも,現実的にはそうもいかない。数年単位でスケジュールを立てて,何十人,何百人ものスタッフが作っていくことになるわけ。
作り手の立場からしたら,自分の作品なんだからできるだけいいものを作りたいわけですよ。手をかける場所はいくらでもあるし,こだわりはどんどん反映させたくなる。でも,経営する立場からすると,お金を使って作っている商品は,なるべく早く発売してお金を回収したいはず。極論すると,売れる数が変わらないのであれば,最低限の内容があればいい。だから,どこかで開発期間やクオリティの線引きをしなければいけない。
ホラ,我々,ただプレイするだけのゲイマーはのんきに「面白いゲイムを早くプレイしたい」って思うじゃない。でもそれって難しくて,面白いものを作るには作り込みが不可欠だし,それには時間がかかるわけ。時間がかかるということは,作る会社にとってお金がかかるってこと。
作り手は時間が欲しいし,売り手は時間が惜しい。同じ会社でも,そのジレンマってあると思うのよ。だから大事なのは,面白いものを作るのにかけていい時間を正確に見極めること。そしてその売り手と作り手の妥協点を正確に出すのが,いわゆるプロデューサーのお仕事なわけです。だから,ゲイム作りに限ったことではないと思うんだけど,“モノ作りとは,うまく妥協すること”が最重要なわけね。もちろん,クリエイターである以上は,みんな妥協はしたくないはずなんだけどね。
話が若干ずれるけど,プロデューサーとディレクターの何が違うのか,というありがちな疑問に対しては,妥協点を作る人がプロデューサー,妥協点に向かって妥協なく進行させるのがディレクター……と,私は勝手に認識してるのね。違うかもしれないけど。
ええと,なので何が言いたいかというと,「ゲイム作りの根本は妥協だ」ってこと。イヤ,ゲイム作ったことないから分かんないんだけど,予想ね。
妥協ってことは,イメージ通りにいかないことが多いわけで,例に出したスターフォックスの場合だと,お金や時間ではなく表現できる環境に妥協してたわけで,ハードがNINTENDO64になってようやく制作者のイメージに環境が追いついた。プレイしていて,そんな感じがしたわけね。
で,NINTENDO64に関しては,もう15年以上も前の話だけど,それから時間が経って,ゲイム機自体のスペックがますます上がってる今,ほとんどの世界観がゲイムで表現できるようになったと思うの。だから,時間やお金に関してはともかく,マシンパワーに関して言えば妥協するでもなく,クリエイターが思ったとおりのゲイムを作ることができる時代だろう,と。そう思っていたわけです。
そもそもこの連載で罪悪感を持ったことなどないけどな。グエッヘヘヘ! ボンビラス星では前フリの長さなんて関係ないのだ! サイコロ10個振って出た目の数だけ前フリ書いてやる! それはそれで面倒くさいのでやめておきます。
で,信長の野望・創造をプレイしたんだけど,まず抱いた感想が「ああ,このシリーズはこういうゲイムにしたかったのね」だったの。「信長の野望」シリーズは,言わずと知れた日本の戦国時代を描いたシミュレーションゲイム。日本史好きにとっては,このシリーズを好きになる要素がいっぱいで,逆説的にだけどこのシリーズが好きな人は日本史好きである可能性も高いと思ってる。
だからってわけでもないだろうけど,このシリーズ自体の歴史もまた,客観的に見ると面白いのよ。一番最初「信長の野望」が出たのは1983年。30年も歴史があるわけね。その30年の間に,10作を超えるシリーズ作品がリリースされて,作品ごとに特徴もあるの。
最初のほうは,国取りゲイムの要素が強かったわ。でも途中から,国というよりも城ごとの攻防が描かれ始めた。これって,要はハードのスペック向上に伴って扱えるデータが増えたってことでもあるのよね。
そして,自分の領地内に好きな施設を立てて内政を行う箱庭ゲイムにまで発展した。その間もハードや技術が向上して,処理速度や容量が増えて,ついにはゲイムの進行もターン制からリアルタイム制になった。おそらく,「戦国時代を好きなようにシミュレートしてみろ」っていう制作者からのメッセージなんでしょうね。
そして今回の,信長の野望・創造。前情報では,戦国時代の武将の人間ドラマに焦点が当てられてるんだ,と思っていたのね。実際に遊んでみたら,それは決して間違いではないものの,根本的に大きな勘違いをしていたことに気付いたのよ,私ったら。
おそらく今作のテーマである “人間ドラマ”は,この時代の切り取り方の一つにすぎないの。遊んでいると,「戦国時代の日本をまるまる用意したから,プレイヤーは戦国大名になってかつての日本を生きろ」っていうメッセージが,ガンガンに届いてくるわけ。そういうこともあって,「これが信長シリーズの一つの完成形だ」と思えたのよね。
何一つブレてない。より,戦国時代の日本列島を表現できている。ヤれることは増えているし,月のコマンドを選択してしまえば,そのコマンドの実行はどの大名も同時に行われるという,半リアルタイム進行だから,状況も刻一刻と変わっていく。すなわち,変わっていく状況を判断しなきゃいけない楽しさもある。
かといって,難しいってわけではないわ。初心者には目標を指示してくれるから,それを参考にプレイしていけばいい。要は,面白いってことなのよ。
“戦国時代をシミュレートする”という,信長の野望の当初からのコンセプトが,ここにきて圧倒的なリアリティをもってして花開いた感じがするの。いやあ,恐れ入った。全然関係ないけど,来年発売される「Winning Post 8」(PC / PlayStation 3 / PlayStation Vita)にも期待させていただくとするわ。
それぐらい,シミュレーションゲイム好きのテンションが上がるゲイムなんです,今回の信長は。恐らく,妥協点を非常に高いところに設定して,ひたすら妥協なき開発をしたんだろうなあ。日本に対する愛が感じられるわ。気になる信長のやぼラーはプレイしといたほうがいいわよ。
そんな感じで,今年も残すところあと少し。良いことも悪いこともあったでしょうなあ。物事も人間もみんな同じ。良い部分もあれば,悪い部分もある。私は,こうやって連載をいただいて「ゲイムヒヒョー」なんてタイトルで書かせてもらってるんだけどね,批評するなんてとんでもない。
基本的には,プレイしたゲイムのいい点をなるべく紹介したい気持ちでヤっとるのです。けっこうな年月,この連載をヤらせていただいてますがね,情報というよりも,肩の力を抜いて「そういう見方もあるんだー。ふーん」ってぐらいのスタンスで読んでいただければこれ幸いでございます。
シリーズもののゲイムよろしく「こういう連載にしたかったんだ」ってのが,いつか読者に伝わればいいなあと思いつつ,今週はこの辺で。なんだかきれいめにまとまったね。ではまた来年。
今週のハマりゲイム
(文字通りゲイムスロットにハマっているゲイム)
PlayStation 3:「信長の野望・創造」
PlayStation Vita:「サカつく プロサッカークラブをつくろう!」
PSP:「サモンナイト5」
Wii U:「The Wonderful 101」
Wii:「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン」
ニンテンドー3DS:「パズドラZ」
Xbox 360:「Minecraft:Xbox 360 Edition」
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