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極私的コンシューマゲームセレクション:第15回「The Darkness」
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印刷2007/09/25 21:50

noguchi

極私的コンシューマゲームセレクション:第15回「The Darkness」


» 今回の「極私的コンシューマゲームセレクション」は,本連載の原稿〆切と,E3 Summit 2007とか東京ゲームショウ2007とかゲームショウイベントが偶然にもぶつかりまくる星の下に生まれたnoguchiが,PLAYSTATION 3の「The Darkness」を紹介する。



※編集部で試した限りでは,The Darknessは国内版のプレイステーション3で動作したが,メーカー,4Gamer編集部および筆者は動作を保証しかねるので,あらかじめご了承いただきたい。また本作は英語版のソフトであり,ゲーム画面や各種メッセージ,マニュアルなどはすべて英語なので,注意してほしい。


主人公のJackie Estacado。叔父であるPaulieの仁義を無視したやり方に反抗的だっために疎まれ,命を狙われることになる
画像集#005のサムネイル/極私的コンシューマゲームセレクション:第15回「The Darkness」
 「The Darkness」は,2007年6月にPLAYSTATION 3とXbox 360版が北米で発売された,ニューヨークが舞台のFPSだ。主人公はマフィアのヒットマン“Jackie Estacado”。本作は,一本道のストーリーに沿って進行するタイプのゲームで,街中を自由に移動したり,車を奪ったり,罪のない一般市民を撃ち殺したりはできない。場面によっては,攻撃をしかけてこない人を撃つことや,メインストーリーに関係のない場所へ行くこともできるが,そういった遊び方は想定されていないようで,あまりムチャをすると,ヒントがもらえなくなったり,なんのイベントも起きなかったりで,トボトボと元の場所へ帰ることになることもある。
 と,しょっぱなからこんな書き方をすると,なんだか退屈なゲームだと思われそうだが,「そんなことはない」と言っておこう。まあ,もう少し読み進めていただきたい。

 本作の特徴であり,ゲームを面白くしているのは,タイトル名にもなっている“Darkness”の存在だ。DarknessはJackieを宿主にしている悪魔みたいなもので,不思議な力をJackieに与える。どんな能力を発揮するのかは後述するが,強すぎるのでは? と思えるほどのパワーを発揮してくれて頼もしい。FPSとしては,ゲーム全体を通して弾薬が不足気味なので,むやみやたらと撃ちまくる爽快感が得られるタイプのゲームではないが,その代わりにDarknessパワーを存分に振るい暴れ回れるのが気持ちがいい。

 また,ゲーム全体を支配する,どことなく救いようのない閉塞感と,それを強調する影やコントラストを強調したグラフィックス(雨と夜が似合う)が雰囲気を盛り上げる。そのほか,ローディング中に主人公が登場する語りのシーンや,街を行き交う人々のセリフが洒落ている。
 ジャンルも作風もまったく違うが,映画「パルプフィクション」でジョン・トラボルタとサミュエル・L・ジャクソンが車中で交わす会話や,映画「レザボアドックス」の朝食シーンなど,筆者にとっては,見ているだけでぐっと来る格好良さ,そんなものをThe Darknessからも感じたのである。まあ,英語版タイトルなので,英語が苦手な人にはストーリーの把握は難しいかもしれないのだが(ちなみにオプションで英語字幕は出せる)。

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ローディング中に橋田壽賀子もビックリの長セリフで,ストーリーや関連情報をしゃべるJackie。ちなみに声は,「Band of Brothers」や「DINNER RUSH」などに出演していたKirk Acevedo
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ゲーム内のテレビではTo Kill a Mockingbird(アラバマ物語),FLASH GORDONなどが見られる。少しだけというわけではなく,頭から最後まで全部見られるらしいが,さすがに試してはいない

若干反則気味のパワーを駆使して戦うダークヒーロー


 Jackieは叔父のPaulieが経営(?)する組織のヒットマンなのだが,ゲームのオープニングでいきなり裏切られ,命を狙われることになる。しかも誕生日に。それと同時にDarknessという謎の存在が現れて彼に取り憑くことになり,Jackieは不思議なパワーを使えるようになる。Darknessのおかげで,とりあえず危機を乗り切れるというか,乗り切るのがプレイヤーの役目。Jackieはやられっぱなしですむわけがなく(主人公だし),復讐を企てるのだが,復讐されたくないPaulieも再び命を狙ってくる。

仲間二人とオープンカーに乗っていたところ,警察に追われるシーンからゲームは始まる。運転は仲間が行うので,適当に撃っているとステージが終わり話が進む
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 Darknessは殺した人間の心臓を食べるとパワーアップしていく。強くなってくれるのは嬉しいが,しだいに宿主であるJackieを乗っ取ろうしてくるので,そうなる前にコントロールする術を身につけるというのも,JackieがJackieであるためにこなさなければならないもう一つの仕事(?)だ。つまり,命を狙ってくるPaulieを,殺される前に殺し,Darknessをどうにかするというのがゲームの大まかな流れとなっている。

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 Darknessは,暗闇では不気味な光を発して視界を確保してくれるほか,銃弾すら弾くシールドとしての機能があり,Jackieの身を守ってくれる。この二つの能力は使おうとしなくても自然に有効になり,Darknessを呼び出しさえすれば機能する。
 こう書くと,一見無敵にも思えるDarknessだが,ゲームとして成立させる以上,当然無敵ではない。というのも,Darknessは明るい場所が苦手で,明るい場所では召喚しているだけでパワーを消耗してしまい,その能力が使えなくなってしまうのだ。Darknessは,暗闇に入ったり,心臓を食べさせると回復する。つまり,単にDarknessという異形のクリーチャーを操りつつ敵を倒しまくるだけでなく,光と影という要素を意識することも重要になってくるわけだ。
 そのほか,Darknessを呼び出したときに使える,四つのパワーが存在する。さすがにゲームの最初から使えるわけではないが,Darknessに食べさせた心臓が一定数に達すると,新しいパワーを習得するという仕組みだ。

・Creeping Dark
 Darknessを直接コントロールできるパワー。蛇のようなDarknessを使い,Jackieが入れないような場所に入ったり,敵の後ろに回り込ませてパクリと食いつかせたりできる。自分は安全な場所に身を隠したまま,遮蔽物の裏に潜んでいる敵を倒せる,非常に便利なパワーだ。また,場合によっては通気口からドアの反対側に回り込ませ,ドアの鍵を開けるといった芸当もできる。Creeping Dark発動中はJackieを操作できない,攻撃を受けると一目散にJackieのところに戻ってきてしまう,といった欠点もあるが,それがないとゲームとして成立しないくらい便利で強い。

・Demon Arm
 Darknessを自分の腕のように使え,障害物をどかしたり,直接敵を突き殺したりできるという,分かりやすい武闘系のパワー。Creeping Darkとは違い,Darknessと同時にJackieも動かせるので,銃を撃ちつつDemon Armで攻撃することも可能だ。しかもJackieでは持ち上げられない重い物も動かせるので,車をぶん投げるなんてこともできてしまう。

・Ancient Weapons
 Darknessの力を弾丸として使えるパワー。これで弾切れも安心。通常の弾丸ではとどめをさせないゾンビも,このAncient Weaponsを使えばイチコロだ。ニューヨークが舞台で戦う相手がマフィアなのに,なぜゾンビが出てくるのかは,ストーリーを延々とネタバレ全開で説明する必要があるので,ここでは割愛。まあ,主人公がこんな反則気味のパワーを使えるのだし,ゾンビくらい出てきてもおかしくはないだろうということで。

・Black Hole
 その名の通りといえばそれまでだが,小さなブラックホールを作り出す能力だ。数秒で消滅してしまうが,周りにある物体を飲み込み,近くにいた人は(ゾンビも)全滅してしまう。とにかくなんでも飲み込んでしまうのだが,発動終了後になぜか亡骸が降ってくる。

敵の背後から迫るCreeping Dark(左)と周辺のものをなんでも吸い込むBlack Hole(右)
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 これだけでも十分強力な気もするが,さらにDarklingと呼ばれる小悪魔を4種類召喚できる。召喚にはマップ内に時折出現する“Summon Gateway”が必要で,さすがにいつでもどこでも呼べるわけではない。
 ゲームを開始して最初に呼べるようになるのが,「Berserker」。これは,フィールド上にあるものなどを使って敵を攻撃してくれる。ゲームを進めていくと専用の武器を増やせ,多種多様な方法で敵を倒すようになるので,Berserkerがどうやって敵を倒すのかを見るのも楽しい。
 次に召喚できるようになるのが「Gunner」で,銃撃戦用の小悪魔だ。呼び出すと指定した位置でひたすら銃を撃ち続ける。自分の背後を取られたくないときなどは,後ろに配置しておくと便利。
 三つめは,Kamikazeという名前なのだが,説明の必要がないくらいにそのまんまだ。まあ,多くの人が想像するとおり,敵に特攻して自爆するのがその特徴である。
 最後に召喚できるようになる「Light Killer」は,フィールド上に現れる街灯などの光源を片っ端から壊してくれる。Darknessは光が嫌い,というか明るい場所ではほとんど行動できないので,暗闇作り要員として重宝する。

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亡骸で遊ぶBerserker
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背中に背負った銃を使うGunner
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とりあえず敵につっこみ自爆するKamikaze
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律儀に明かりを消すLight Killer

 とまあ本作では,これら特殊能力と小悪魔達を使いこなしつつ,敵を倒していく。ストーリーは基本的に一本道だが,車に乗っての銃撃戦シーンがあったかと思えば,Creeping Darkを使って建物内に潜入しなければならないといった場面もあり,プレイヤーが飽きを感じないように工夫されている。
 Darknessという反則気味の存在がいるが,明るい場所では使えないという設定がうまく生かされており,街灯や照明を壊して暗闇を作り出し,そこに敵をおびき寄せるといった戦い方も求められる。場合によってはうまく暗闇を作り出せなかったり,おびき寄せられなかったりして「暗ければこんな奴ら一瞬で黙らせられるのに」とストレスが溜まることもあるが,その一方で暗闇に大量の敵が現れ,敵がかわいそうになるくらいにDarknessパワー全開であっという間に倒せるといったシーンもあり,ストーリー展開ともどもメリハリが利いている。
 本作は,アメリカではMATURE指定になっており,17歳以上でないと購入不可だ。それなりに血が出るし,残酷な表現,品の悪い言葉,暴力シーンなどが含まれており,誰にでもお勧めできるわけではない。
 とはいえ,音楽やセリフなど,演出部分への力の入れ具合とそのクオリティは傑出していると筆者は感じた。ゲーム自体の難度もそれほど高くないので,テンポよくストーリーを楽しめ,ゲームの世界に入り込める。
 難度的な歯応えをゲームに求める人には向かないかもしれないが,雰囲気や,ストーリー,独特な世界観など高水準でまとまった,良作なのは間違いない。より多くの大人なゲーマー達に楽しんでもらえるよう,日本語版が出てほしいと感じたタイトルである。

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■■noguchi(4Gamer編集部)■■
海外のゲームショウを取材するときは,幸か不幸か派遣メンバーにたいてい名を連ねる,4Gamerでは数少ない英語が堪能なスタッフ。スポーツゲーム好きなのだが,外見は体育会系とはかけ離れておりインドア派っぽい。いい人っぽい見かけのために,しょっちゅう無理難題を押しつけられるなど,体育会系縦社会の変なところだけは体現しているようだ。


The Darkness
対応機種:プレイステーション3
メーカー:2K Games
発売日:2007年6月25日(※北米版)
価格:59.99ドル(※約7200円)
CEROレーティング:−(※北米版は17歳以上対象)
公式サイト:http://www.2kgames.com/thedarkness/
  • 関連タイトル:

    The Darkness

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