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新しいシムズはこうなってしまった。EA,「The Sims 3」の詳細を発表
※エレクトロニック・アーツからの公式発表は「こちら」
The Sims 3は,2000年にMAXISから発売された「The Sims」(邦題 シムピープル),および2004年に発売された「The Sims 2」(邦題 ザ・シムズ2)に続くシリーズ最新作である。人々の生活ぶりをシミュレートしたThe Sims,人生シミュレーションになったThe Sims 2。今回は,それらをひっくるめたうえで「ご近所シミュレーション」となった(「ご近所」とは,おおむね街を意味するゲーム内用語。言わずもがなですか)。
ご存じのように,The Simsは「PCゲーム史上,最も売れたシリーズ」としてギネスブックにも載っており(また聞き),これまで22か国語にローカライズされ,シリーズ累計で9800万本というセールスを挙げているゲームだ。Playstation 2をはじめ,さまざまなプラットフォームに移植されているが,7割以上がPC版のセールスという,PCに大きく軸足を置いたタイトルである。
公式サイトに公開された家屋やキャラクターデータのダウンロードは,これまでに6000万件を記録。また,欧米ではマイクロトランザクション技術によるアイテム販売が行われているが,フォードをスポンサーにしたムスタングの販売では,100万台を売り切ったとのこと。(本物の)ムスタングは200万台ほど売れているので,EAはフォードのナンバー1ディーラーなのだそうだ。ゲームのアイテムだけど。
コミュニティも非常に活発で,関連ムービー約10万本がYouTubeにアップされているという,あらゆる意味でEAのドル箱スターと呼んで間違いないシリーズ。それだけに,新たなナンバーの付いた最新作には,世界中のファン/コミュニティからのホットな視点が集まっているのである。
- 「ご近所」を好きなように歩き回れる
- さまざまなシム人も作成できる
- ユニークな性格のシム人が多数いる
- あらゆるものがカスタマイズ可能
- 新しいプレイ感覚を提供する
最大の変更点は,やはりなんといっても「街の中を好きなように歩ける」ことだろう。開発に当たってスタッフはまずシンプルな問いを自らに発したという。つまり「What if you had to live your whole life in one location?」(もし一生を同じ場所で送らなければならないとすれば,どうだろう?)。ここから,シム人に完全な自由を与えるシステムの開発がスタートしたのである。
だが,このThe Sims 3では好きなときに家を出て,好きな場所に行けるようになったのだ。外を歩いて他人の家のドアを叩き,自己紹介したり,通りを下って公園をほっつき歩いたり,ウィンドウショッピングをしたり,小粋なビストロでランチを頼んだりできるのだ。あるいは,家族でピクニックに出かけて釣りに興じてもいいだろう。ご近所は完全にシームレスなので移動のときにデータロードは発生せず,前作のようにタクシー画面をじっと眺めて到着を待つ必要はない。
Bell氏が紹介した新しいご近所,“Pleasant Valley”は海と山に囲まれた美しい街で,そこには数百人のシム人が暮らしているとのこと。彼らはそれぞれ独自の願望や個性を持って街中を動き回っており,さまざまなアクティビティを楽しんでいる。プレイヤーは,ご近所のシム人達が行うそうした活動への参加も可能だ。さまざまな人々が生活している街に住み,そこを自由に移動できるのである。
バスや電車といった公共交通機関も今のところないようで,ページに掲載したスクリーンショットを見てもお分かりのように,車が一台も走っていない様子は非常に牧歌的である。ラッシュや交通事故なんか起きないのである。
さらに,街にはリアルタイムで時間が流れている。昼間から夜にかけて刻々とその表情を変えていく様子は美しく,さらに季節の導入も検討されている。ちなみに,グラフィックスエンジンは,PC用に新しく制作したものを使用しており,数多くのオブジェクトを一気に描画できるよう調整されている。とはいえ,ターゲットはあくまでミッドレンジのPCで,ハイエンドPCでなくとも軽快に動作するとのこと。そんなこと言って,今でこそそれほどでもないが,発売当時のThe Sims 2は結構重いゲームだったことをちょっと意地悪く思い出したりして。
このように,なんとなく最近話題のメタバースを思わせないでもないが,The Sims 3は基本的にシングルプレイ専用のゲームとして開発されており,マルチプレイは現在のところ用意されていない。ただ,従来作に比べてマルチプレイは作りやすいような気もするので,2008年2月に発表された「The Sims Online」の名称変更とリニューアルの実施(関連記事)もThe Sims 3の将来のマルチプレイ化をにらんでのことかもしれない,というのは個人的な感想。一からご近所とその住民を作り上げることもできるので,あなたの住んでいる街をすっかり再現,などという遊び方も可能だろうけど,すごい大変そう。
まず体型。シム人の体型については前作では「普通」と「太っている」の2種類しかなかったが,今回はスライドバーを使ってさまざまな段階の体型制作が可能になる。筋肉の量も加減でき,スレンダーな(痩せたというほどではない)シム人からマッチョなシム人,そして肥満したシム人まで思うがままだ。前作に比べてキャラクターのグラフィックスはより詳細になり,男女の白人,黒人,アジア人をテンプレートとして,さまざまなシム人を作り上げられる。髪型,服装なども豊富に用意される予定だ。グラフィックスについては好みの問題もあるだろうが,ある程度デフォルメされたThe Sims 2に比べると,リアリティが増した分,やや地味になった印象を受ける。まあ,このへんの感じ方には個人差があるだろう。
これまでは,「だらしない―きれい好き」「内気―社交的」といった五つのパラメータで決定されていたシム人の性格だが,The Sims 3にはそれに代わって「Trait」(特性)と呼ばれるシステムが導入される。ユーザーインタフェースは開発中だが,シムの作成画面において5種類のTraitを与えることで個人の性格が決定するのである。
「Dreamer」(夢見がち),「Hot-Heated」(怒りっぽい),「Workaholic」(仕事好き)などTraitは実に約80種類もあり,組み合わせはほぼ無限(だいたい7000万通りぐらいらしい)だ。一から考えるのが面倒な筆者のような人は,「図書館司書」や「ロックスター」などといったアーキタイプが用意されているので,それを使えばよろしいかと。
「寛容」でかつ「気むずかしい」などという相反するTraitでもそれなりに受け入れるようであり,人間の性格とは複雑なものである。こうした性格は職業選択や,人間関係にも影響を及ぼし,また前作のように代をまたいで遺伝していく。ぼんやりした性格のシム人と,短気なシム人が結婚した場合,どんな子供になるのか興味深いところだ。
さらにTraitは,環境によって変化したり,一定の年齢に達したところで選び直すことになるかもしれない。
このように,多彩なシム人制作が可能になったことで,ご近所に暮らすシム人は二人として同じ人はおらず,バラエティ豊かな街が再現されることになるとBell氏は語る。
前作では「空腹」「楽しさ」「心地よさ」といった八つの基本的な欲求があり,プレイヤーがあの手この手でそれらを満たしてやることで,気分メーターが高まって幸せになるというシステムだったが,その不満点として「おしっこ―睡眠―食事サイクル」が挙げられていた。基本的欲求を充足するための行為がルーチンワークに陥りやすく,それらに追われているうちにほかのことをするゆとりがなくなるというわけだ。The Sims 3ではそうした点を見直し,「そのシム人が今何をしたいか」が“ムード”として表示されることになった。要するに「眠たいムード」であればベッドに横になる,「空腹のムード」(変な語感だが)であれば食事をするという寸法で,細かい欲求の表示はなくなっている。またこのムードは,気分メーターも兼ねており,例えば最初のデートでキスをする,恋人にプロポーズする,子供ができるといった状況でぐぐっとムードが高まり,気分が高揚し,幸せ気分になるとのことだ。
さらに,追加された「ソーシャルウィンドウ」を開くことによって,相手の情報を得ることも可能。例えば恋人がベジタリアンなら,デートの場所にステーキハウスを選ぶのは考えものだということが分かる。このように,開発チームはシンプルな操作を開発目標の一つとして掲げており,実際,紹介されたゲーム画面に表示されるデータは少なめであり,より遊びやすい印象があった。まあ,もともと,そんなに難しいゲームではなかったですけど。
実際に見せてもらったのは,なんちゅうかまあ,ソファの柄を素早く変えるというものではあったのだが,用意されたるツールはこちらもシンプル操作で強力なものになる予定だ。まあ,基本的にはもともとあるものを“カスタマイズ”するわけだが,それぞれのオブジェクトのパーツが細いため,工夫次第でいろいろなものを“作り出せる”可能性もある。そんな強力なツールがあると,追加データセットが売れなくなっちゃうんじゃないかと心配だが,余計なお世話である。
とはいえ,The Sims 3には,シリーズ従来作でプロデューサーを務めた著名なゲームクリエイター,ウィル・ライト氏はほとんど関わっていない。聞くところによると,「キャラクターをもっとリアルにしよう」という意向はThe Sims 2のときにもあったが,ライト氏の反対で現在のようなデフォルメされた姿になったという。個人的にSimsシリーズの面白さは,リアリティと抽象化の絶妙なバランスにあるように思う。つまり,よりリアルになったシム人が「愛のバスタブ」につかったり,宇宙人にさらわれたりしていいのかしら,ということですわね。
いずれにせよ,遊び心を忘れず,どこにでもいる小市民の喜怒哀楽を面白おかしく描き出すゲーム性を変えることなく開発が進んでいくといいなあ,と熱心なプレイヤーとして思うわけだが,発売まで約1年,さまざまな情報も出てくるだろう。キャリアやストーリーモードについてなど,まだ未定の要素も多く,発売まで目が離せそうもない。
- 関連タイトル:
ザ・シムズ3
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