レビュー
パニック映画の脇役は,何もできないまま死ぬしかないのか? X360「レフト 4 デッド」の魅力をムービー付きで紹介
» 4Gamerスタッフ/ライターが,仕事抜きで個人的に楽しんでいるゲームを調査し,せっかくだから仕事をしてもらおうという主旨の不定期連載「極私的コンシューマゲームセレクション」。今回は,4Gamer初登場となるライター,Alexander服部氏が,日本語版の発売が待ちきれずにアジア版を購入し,遊び倒しているというXbox 360版「レフト 4 デッド」を紹介する。
ゾンビじゃなくて感染者です
ゲームの内容はというといたってシンプル。得体の知れないウイルスに感染しなかった4人を操作し,凶暴化した感染者の群と戦いつつ,脱出ポイントを目指すというFPSだ。ウィル・スミス主演で2007年末に公開された映画「アイ・アム・レジェンド」が,もっとも近い設定と言えるかもしれない。
この映画の感染者(扱い的にはゾンビ)はウイルスで凶暴化した人間であり,ものすごい勢いで獲物めがけて走ってくる。この手の“ゾンビもの”では,相手の動きが遅いはずだという先入観を持っていると非常に驚くものだが,L4Dも同様に,感染者が陸上選手なみの速度で,主人公達を狙ってまっすぐに走ってくる。しかもものすごい数で迫ってくるのだから恐ろしい。
そういえば,映画でウィル・スミスが所有していた武器がM16というアサルトライフルだったが,本作でも明らかにM16だと思われる武器を使うことができる。M16そのものがさまざまなゲームに登場するメジャーな銃器なだけに,映画の影響とは言い切れないが,まったく意識せずに作ったわけでもない気がする。
ゲームの詳細については,すでに4GamerでPC版のレビューを掲載しているので,そちらを参照していただきたい。本稿では,Xbox 360版L4D(日本語版)の発売日が待ちきれず,アジア版を購入してしまった筆者が,本作をどのようにエンジョイしているのかを,ゲームの見どころをまとめたムービーと共に紹介していきたい。
なお本作は,CEROレーティングZ(18歳以上のみ対象)のゲームである。刺激の強いスクリーンショット/ムービーが多いので,閲覧するときにはその点にご注意を。
※本稿で使用しているムービーは,筆者のフレンド達に許可を得て撮影/掲載したものです
本気のCo-opで絶叫
どうしてこのパーティが重要なのか。それは絶望的な状況だからとしかいいようがない。自分達以外はすべて敵。回復アイテムの数は限られており,持ち運びできる数はさらに少ない。弾丸も有限。この状況下でスタンドプレイをしようものなら,恐ろしい数で襲いかかってくる感染者にあっさりと殺されてしまう。味方との連携や助け合いがものすごく大事なゲームになっているのだ。たとえ難度イージーで遊んでいても,一つのシナリオをクリアするまでに平均で1300〜1600もの感染者を倒すことになるのだから,一人で何とかしようという発想を捨てるところからはじめなければならない。
しかも,感染者の中には4種類の特殊感染者がおり,特殊感染者に捕らえられた場合,味方に助けてもらわなければ基本的に死に至ることがほとんど。仲間が誰であろうと,助け合わなければ生き残れないのだ。
このようなゲームの状況のおかげで,オンラインCo-opの意味は非常に大きくなる。オンラインCo-opをオマケ程度に盛り込んだFPSが多い中,Co-opのために設計されたようなゲームデザインになっているから,とも言える。対戦は殺伐としているので苦手だという人も多いだろうが,このゲームは助け合いこそが必須。“気楽にオンラインプレイが楽しめる”という次世代機ならではの環境を,最大限に生かしているといえよう。正直なところ,L4D以上にオンラインプレイ必須の(オンライン専用ではない)FPSは思い当たらない。
話を仲間との連携に戻すと,このゲームではフレンド(見知らぬ人含む)と共にボイスチャットで連絡を取らないと,ゴールが見えにくくなってくるのだ。「スモーカー(特殊感染者)に捕まった,助けてくれ!」という一言がなければ,フレンドに気づかれないまま,自分だけが死亡してしまうかもしれないのだ。そうなるとチームメイトのクリアも遠のく。単独行動に走る者は,パニック映画の脇役のように,真っ先に舞台から降りることになることだけは肝に銘じておこう。
一緒にプレイする人によっては,大量の感染者に一度に襲い掛かられて,絶叫しか聞こえてこないことも多々あるのだが,そんなときは映画の主役気分で颯爽と助けてあげよう。
なおオンラインCo-opでは,必ずしも友人を3人集める必要はない。自分と友人の二人で遊ぶなら,残りの二人はNPCが担当してくれる。プレイヤーが3人ならNPCは一人。常にパーティメンバーの数は4人になる。それにしても,NPCは人間よりも冷静で頼りになるから困ってしまう。難度が低いときは,自分はほとんど何もしなくても,困難なシーンを乗り切ってくれたりするくらい優秀なのだ。
ボイチャがなければ連携できないわけじゃない
連携が何よりも大事なこのゲーム。Xbox 360ヘッドセットを持っていなければゲームとして成立しないのか? 英語を使わない外国人と一緒に遊ぶときにはどうなんだ? このような心配をする人も多いのではないかと思う。それについては,「成立する」と断言してもいい。L4Dでは自動的に,主人公達が映画の登場人物のように会話をするのだ。とはいえ,よくあるRPGやノベルズゲームのように話すわけではない。状況に応じて一言二言説明してくれるのだ。
弾丸を見つければ「Ammo here」
パイプボムを見つければ「Pipe bomb here」
特殊感染者のハンターを見つければ「I hear a hunter around here」
体力回復しているときの無防備な状態だと「Watch my behind」
階段を降りる必要があるときは「We have to use stairs down here」
などなど
このように自分がピンチになったときや,アイテムを発見したときなどには,キャラクターが自分に代わって声を出してくれるのだ。当然ながらNPCも声を出すので,音を消してのプレイは非常にもったいない。危険な特殊感染者が近くにいることだけでも教えてもらえれば,心の準備もできるというもの。映画の登場人物として考えるならば,出演者達の息遣いをしっかりと感じることで,生存確率が一気に上がってくるというわけだ。
対戦でも連携は必須
逆に感染者側のプレイでは,生存者を全滅させればスコアになる。問題は,特殊感染者プレイの連携に関してだ。このゲームでは,普通の感染者も特殊感染者も銃撃であっさり死ぬし,殴られるとしばらく動けなくなる。つまり,生存者側のパワーのほうが圧倒的に勝っているのだ。殺されようが何度でも登場することができるので,少しずつ生存者の体力を削っていけばいいのだが,正攻法ではまったく歯が立たない。そこでチーム戦術が必要になってくる。目潰しなどをして攻撃の起点を作る“ブーマー”,物陰や高所から敵を捕縛する“スモーカー”,ジャンプで距離をつめて一気に襲い掛かる“ハンター”。それぞれが役割を理解して,タイミングを合わせて襲い掛かれば,生存者達を一気に壊滅させられる可能性もあるのだ。
一例としてだが,よくある特殊感染者の戦法として,このようなものがある。
シナリオ上必ず通らなくてはならない通路で,生存者パーティーの最後方の人間をスモーカーが遠距離から捕縛。パーティが救助のために駆け寄ってくるところを,ブーマーが登場して目潰し。視界が悪くなり連携が取れなくなったところを,ハンターが体力の少ない一人を集中的に攻撃。こうやって人数と体力を削っていくのだが,これはかなり息が合っていないと上手くいかない。当然ながら生存者側も,危険な場所では注意深く行動するので,ある程度意表をつく必要も出てくる。これで対戦が面白くないわけがない。
もちろん,建物の上からブーマー落下→パーティー混乱→スモーカーとハンターで削る,というような戦法もある。見つかれば何もできないまま射殺されるしかない特殊感染者も,状況,地形,味方の動きなどを考慮すれば,できることが変化してくるのだ。
毎回変わるゲーム展開
しかし,L4Dのシナリオ(マップといってもいい)は,箱庭のようにある程度自由に動けるとはいえ,4種類しかない。それで飽きないのかという問題も出てくる。普通に遊ぶだけなら間違いなく飽きる。しかし,それを補うのがAIディレクターの存在だ。対戦であろうとCo-opであろうと,敵の配置は毎回異なる。これはプレイの状況に応じて,AIディレクターが敵を配置しなおすので,ゲームごとに敵の出現ポイントや数,アイテムの配置などが変わってくるのだ。
Co-opでフレンドと遊んでいれば,敵が出現するポイントやピンチになるポイントが違うというのは,かなり新鮮に感じるだろう。対戦であれば,生存者も特殊感染者も状況に応じて動かざるを得なくなるので,なおのことゲームプレイに幅が出る。
シルバー会員ではもったいない!
とくにL4Dのように,オンラインでほかのプレイヤーと遊ぶことに特化しているゲームを,骨の髄まで楽しむには,シルバー会員ではもったいない。そしてゴールド会員で楽しんでいる人には,本作をプレイしないなんてもったいないと断言してもいい。
Xbox 360ではほかにも,殺伐とした対戦や,愉快な協力プレイが楽しめるゲームがたくさんある。しかし,このゲームほどほかのプレイヤーとの関わりが重要視されているゲームは,FPSではそうそうない。
単純に“ゾンビパニック”系としての完成度が高いことはいうまでもないのだが,フレンドと一緒に購入してでも,ぜひヘッドセット越しの絶叫プレイの楽しさを味わってもらいたいものだ。
動画撮影機材:トムソン・カノープス HDRECS
動画編集用ソフト:トムソン・カノープス Edius Pro 5
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