広告企画
「アロッズっていまどうなってるの?」――読者から寄せられた「ALLODS ONLINE」についての疑問や意見を,運営プロデューサーに直接ぶつけてきた
今回の記事は,ゲームオンから届いた「ALLODSへの意見や要望をきちんと把握したい,その上で現状をプレイヤーに伝えるインタビューの場を設けたい」――といったある種の依頼から始まったものだ。4Gamerからゲームオンに提示したのは,都合いいことだけではなく,現状聞かれて厳しいこともお聞きしますよ,といった条件。これに基づき,生の声を集めるためにアンケートを行い(関連記事),そこで集めた意見・要望は取りまとめてゲームオンに手渡している。
インタビューに際しては,その中からとくに多くの人が指摘している内容をピックアップして,本作の運営プロデューサー 松田雄介氏に,正面からぶつけてきた。中にはもちろん厳しい意見もあったが,それもそのまま伝えて,しっかりと答えてもらっているので,アンケートに回答してくれた人はもちろん,それ以外の人にもぜひ読んでもらいたい。
「ALLODS ONLINE」公式サイト
ロシア開発陣のスタンスに影響を与えた日本におけるプレイヤー動向
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。ALLODSは,正式サービスの開始から約2か月が経とうとしていますが,状況はいかがでしょうか?
運営に関していうと“難しい”の一言に尽きます。日本の市場においては,いわゆる“洋ゲー”が,思った以上にコア層向けだったことがまず大きな問題ですね。私はいわゆる“洋ゲー”が好きで,日本におけるその市場規模も理解しているつもりでしたが,その規模感をいまあらためて痛感しています。
4Gamer:
どういったところが困難なのでしょう?
松田氏:
ALLODSのプレイヤーさんの大半は“コアゲーマー”の方々です。むろん私達も,この作品がそういう方々に興味を持ってもらえるタイトルであることは,初めから分かっていました。ライトなゲームにおいては見過ごされてしまうような部分にも「ちょっと待てよ」と気がつくような,鋭い方々ですね。ですが実際にサービスを始めてみると,その予想に甘い部分があったことに気がつきました。
4Gamer:
と,いいますと?
皆さんがオンラインゲームに対して求められる品質の水準は,我々の予想をはるかに上回っていました。社内にも「World of Warcraft」など,古くからMMORPGをプレイしている人間がいるから分かるのですが,皆さんゲームに対する指摘が非常に的確です。
そして,ALLODSをプレイしていただいているそのような皆さんのこだわるポイントが,私たちの想定していたものとは少なからず異なっていました。この点は困難,というより反省させられた部分です。
そしてもう一つ,欧米のプレイヤーとアジアのプレイヤーでは,プレイスタイルや文化が異なっている点にも苦労しました。そういったプレイヤー達に支えられてサービスを行ってきた開発元に,日本のプレイヤーさんから寄せられる要求を伝え,協議し理解してもらうことが難しかったです。
4Gamer:
以前にお話をうかがったときには,ロシアの開発側のポリシーとして,“ALLODSは世界各国で仕様を統一する”というのがあって,国ごとのバージョン違いは基本的に作らないということでしたね。
松田氏:
はい。それはサービスする国が多くなるにつれ,安定したバージョンを提供するためには正しい部分もあると思っています。その基本ポリシーは変わらないのですが,開発側の姿勢はこのところ柔軟になってきています。日本のプレイヤーの意見などを随時開発元に伝えることで,開発側が考えを改め始めているようなんです。とくに,メディアでの評価や外部の掲示板での議論などを伝えているのですが,その効果も大きいと思います。
4Gamer:
プレイヤーの生の声に触れて,開発元の考えも少しずつ変わってきた,と。
松田氏:
もちろん,日本からの要望が何でも通るわけではありませんが,私達の「日本ではこういう傾向があるから,こうしたほうがいい」という説明には,以前よりも,かなり耳を傾けてくれるようになりました。
またALLODSは,今までは北米など欧米のプレイヤー向けのサービスが主流でしたが,現在は,韓国/中国/台湾などのアジア圏でもサービス開始に向けた準備を行っています。その中でやはり各国のパブリッシャから,日本と同様の要望が開発に寄せられているようです。実際に先日,私がモスクワに行った際には,「日本のプレイヤーに喜んでもらうためにはどうすればいいだろう?」と素直に意見を求められました。
評価されたのは独特のストーリーと世界観。戦闘は細かい部分の改善を重ねてテンポのよいものに
4Gamer:
今回インタビューを行うにあたって,4Gamerでは読者から意見や要望を集めました。集まった結果は,先にお渡ししたとおりのものとなっています。ここからはその結果に沿ってインタビューを進めていきますので,回答のほう,よろしくお願いします。
まず「一番面白い(面白そう)と感じる部分は?」という質問からは,“独特な世界観やストーリー”“キャラクター”“戦闘システム”といった部分に興味を持っている人が多いことが分かりました。
これは狙いどおりです。ゲームの根本的な要素が受け入れられているので,嬉しいですね。とくに“世界観”に関しては,ほかにはないエッセンスが随所に散りばめられていますから,それがうまく伝わっているんじゃないかと思います。
その一方で,“戦闘システム”に関して私達に寄せられる意見には賛否両論あるんです。「戦略性が高い」と評価してくださる方もいれば,「単純で“クリゲー”とかわらない」という意見もあります。「ややこしくてよく分からない」という方もいます。
4Gamer:
そこはちょっと不思議ですね。複雑だという人と,単純だという人の,両方がいるんですね。
松田氏:
すべての人に完全に満足してもらうのは難しいと捉えています。とはいえ,なるべく多くの方に楽しんでいただけるような戦闘システムにしていかなければなりません。
4Gamer:
具体的に,何かする予定はありますか?
松田氏:
プレイヤーさんが抱く不満は,実は小さな不満の積み重ねであることが多いんです。インタフェースの変更だけで――もっというなら,スキルのショートカットの位置を変えただけで解消するケースもありますから。まずはそういった“快適さ”を上げていく方向で,リズムよくプレイできるような環境の構築を目指しています。
4Gamer:
なるほど。戦闘システムの根本を変えずとも,ある程度までの不満を取り除くことは可能であると。
松田氏:
ええ。また,戦闘システムの話ではないのですが,ALLODSにはミニマップがないんですよ。これは開発側のポリシーでそうなっているんですが,最近のMMORPGではミニマップがあるのが普通です。自分でアドオンを導入してミニマップを表示させているプレイヤーさんも少なくありません。そうした状況を踏まえて,要望を送った結果,開発元もミニマップ導入を前向きに検討してくれるようになりました。どうも,ほかの国からも同じ要望が挙がっていたようです。
そういったように細かいところを随時改善していくことで,全体的な印象も変えていけるでしょう。
4Gamer:
なるほど。そのほか,「面白い」と挙げられたポイントの中に,松田さんの印象に残ったものはありましたか?
「パーティを組んだときに各クラスの役割分担があるところ」を評価していただけているのは嬉しいですね。ALLODSでは,各クラスを揃えてそれぞれの役割を果たさないとなかなか先に進めないようになっています。最近,日本ではそういうタイトルは少なくなっていますからね。
4Gamer:
「必然的にPvPが発生するようにデザインされたマップの仕様」がよいとする意見もありますね。
松田氏:
PvPについては賛否両方の意見があることを把握しています。現状での大きな問題は,PvPをする目的が明確になっていない点です。そういったものをゲームに組み込めれば,評価はまた変わってくると思います。PvPは非常にデリケートな部分でもありますので,検討は慎重に進めていきます。
4Gamer:
アンケートでは注目されていないけれど,運営側としてここはぜひ見てほしいという部分はありますか?
松田氏:
実は,私達の一押しはプレイ終盤のコンテンツである「アストラルシップ」なんです。ですが残念ながら,まだそれを楽しむところまで到達しているプレイヤーさんがいないんですよ。もうシップの建造に着手している方はいるのですが,完成までにデフォルトで100日かかる設定になっているので,まだ誰もそれで遊べてはいないんですね。年が明けて少し経った頃に,シップが完成し始めるはずです。そこからでしょうね。
コミュニティシステム強化でパーティを組みやすくする。翻訳は随時修正中
4Gamer:
次に「改善,または強化してほしい点」についてです。まず“キャラクターの育成/成長関連”について不満を持っている人が多いようなのですが,これはALLODSが“パーティプレイ必須”であり,ソロでは思うようにレベルアップできないという点を,よく思っていない人が多いということではないでしょうか?
松田氏:
以前からお話ししていることですが,ALLODSは基本的にパーティプレイを楽しむタイトルで,そこを曲げてしまってはこの作品の存在意義が薄れてしまうと考えています。なので,その基本部分を変更する予定は今後もありません。
しかし,日本では「一人でも遊びたい」という方が多いのも事実ですから,そういったニーズに応える施策は必要になります。具体的にはまず,“どう考えても一人ではクリアできないクエストに対する救済策“や“報酬アイテムの強化”といった部分での支援が考えられます。実現に時間がかかる企画もありますが,可能な限り早く実現したいと思っています。
4Gamer:
なるほど。
松田氏:
そこでいま私達が注力していこうと考えているのが,“パーティを簡単に組めるようにする”といったような,コミュニティ関連システムの強化です。
いまゲーム内にパーティ募集掲示板があるのですが,これがうまく機能していません。現状のものは「自分をアピールして拾ってもらう」システムになっています。ロシアではこれでOKなようなのですが,日本では「○○ダンジョン行きメンバー募集」のようにリーダーが仲間を集めるのに掲示板的なものを使うのが普通ですよね。そういったシステムを作れないかと,いま提案しているところです。
4Gamer:
現状だと叫んで仲間を集めないといけないケースもあるみたいですから,そういったものはあったほうがよいかもしれません。
また日本では市場における“洋ゲー”シェアの問題もあって,プレイヤーの絶対数が少ないために,パーティが組みにくくなっています。私達はいかにしてプレイヤーを増やすかということにも取り組まなければなりません。
アンケート結果を見ると,応じてくれた皆さんの中には,現在プレイされている方だけでなく,すでにゲームを辞めてしまっている方も,同じくらいの数いるようですよね。“一度始めたのにやめてしまう人がいる”点は,いま開発側も非常に問題視している部分ですので,運営ともども一丸となって「辞めないゲームデザイン」を目指していきます。実際,このところはその作業に掛かりきりでした。具体的にはチュートリアルの仕様変更の提案や,ゲーム序盤のクエストの見直しといったことを行っています。
4Gamer:
分かりました。では“クエスト関連”についてはどうでしょう? ここにも不満が集まっていました。これは主にテキストの翻訳に関する部分で,「テキストが分かりにくい」「何をしていいのか分からない」というところに問題があるのではないかと思うのですが。
これは今の日本のALLODSにおいて,最も大きな課題の一つです。外注も含め,一時は運営スタッフより翻訳スタッフの方が多いくらいだったんですが,それでも満足のいくものには仕上げられませんでした。せっかくストーリーや世界観を評価していただいているのに,それを表現するテキストがダメでは元も子もありません。
原因の一つに,元々英語のテキストをゲームオンで受け取り,それを日本語に翻訳していたわけですが,その英語テキスト自体がロシア語から翻訳されたもので,どうしてもワンクッション置くことで誤訳などが含まれてしまっていました。今後は原文であるロシア語テキストを受け取り,そちらをベースに随時修正していきますので,大変申し訳ないのですが,もう少しお待ちいただけると幸いです。単なる“誤訳の修正”程度の認識ではなく,サービスの根幹に関わる重要な問題と捉えて,現在作業を進めています。
4Gamer:
この点を重視している人はかなり多い印象ですので,ぜひお願いします。
アンケート結果に戻ると,もっとイベントをやってほしいというプレイヤーが多いようです。
松田氏:
GMイベントは随時予定していますが,それだけでは絶対的に数が足りません。現在,システム的にイベントを開催できる仕組みを開発中ですので,今後はどんどん増えていきます。このシステムが導入されれば,クリスマスやバレンタインデーのような季節系のイベントも簡単に実施できるようになります。このシステムは次回の大型アップデートで導入される予定ですのでご期待ください。
またイベントのアイデアも随時募集していますので,面白いものがあればぜひ教えてください。
4Gamer:
そのほかには,プレイヤーを24時間大幅に強化する「インセンス」クエストを削除したことに関する批判が数多く集まっています。
これは非常に申し訳なく思っています。開発元からは「ほかのサービス国での限定的なイベントクエストが誤って日本のバージョンに入ってしまった。グローバルバージョンでのサービスをポリシーとしているため,特定の地域を除くすべての国のバージョンから該当のクエストを削除したい」と要請がありました。要請には11月10日,もしくは17日に削除させてほしいとありましたので,プレイヤーの皆さんへ事前告知を行う期間をとるため,17日に削除することにしました。
また,元々が誤りであったとはいえ,サービス当初から導入されていたものを削除する,ということに対しての懸念もありましたので,代替クエストで得られる強化効果の継続時間を2時間半から4時間に延ばすことをお願いしましたが,結果としてお客様に不十分な内容となってしまい,とても心苦しく感じています。
4Gamer:
批判の中には,有料アイテムであるインセンスを使用していないとパーティに参加できなくなるケースも生まれるのではないか? という懸念も含まれていますが。
松田氏:
ええ,重々承知しています。とはいえインセンスはどのサービス地域でも有料アイテムとして提供していますので,日本だけ無料にするのは難しいんです。そこで当面は,皆さんが比較的簡単に参加しやすいキャンペーンのプレゼントにするなど,入手しやすい状況を作っていきます。むろん,今後も抜本的な改善に向けて開発との交渉は続けていきます。
4Gamer:
あとは「ヒロイックダンジョンに1日一回しか挑戦できない」といった不満もあります。
松田氏:
現状ではゲームバランスを考慮した上でこういうデザインになっています。ですが要望が多いようであれば,改良の提案はもちろん行っていきます。
「頭装備の表示をオン/オフできるようにしてほしい」という要望もあります。日本では自分のキャラクターのルックスに愛着を持っている人が多いので,これは細かいようで重要なポイントだと思われますが。
松田氏:
これは当初から開発に要望しているのですが,技術的な問題ですぐには実現できないと言われています。ですが,アジア各国から同様の要望が出ているとのことで,開発はかなり前向きに検討していますね。
2011年春までに2回のアップデートを予定。そのあとは2〜3か月ごとに実施
4Gamer:
ゲーム自体とは少し離れた部分になりますが,「プレイヤー同士が議論する場がない」あるいは「公式ブログでコメントを受け付けていないのはなぜなのか」という意見も届いています。
松田氏:
公式ブログに関しては現在コメントを受け付けられるように,仕様を変更するつもりで動いてます。
また公式BBSについては企画が進行中です。現在,ルール策定などを行っていますので,もう少しお待ちください。またそれとは別に,匿名で投稿可能な“ひとこと掲示板”のようなものも準備中です。これは基本的には何を書いても構わないというものですので,忌憚のないご意見をお寄せください。
4Gamer:
「事実上,一つのサーバーにしか人が集まっていないのに,いつまで3サーバー体制を続けるのか」という意見もありました。
松田氏:
クローズドβテストから三つのサーバーを用意したのは,序盤のクエストの中に誰か一人が進行しているとほかのプレイヤーは受託できなくなってしまうものがあり,オープン直後,序盤エリアに人がたくさんいる状態で,そのようなボトルネックがあってはまずい――と考えたためです。今後のサーバー統合については,運営・開発ともども検討しています。技術的な問題がクリアされ次第行いたいとは思っています。
4Gamer:
もう一つ,アイテムにはめ込んだ“ルーン”を無傷で外すアイテムが,ほかの地域では売られているのに日本で売られていないのはなぜか?という質問についてはどうでしょう。
松田氏:
まさにいま,どういった形で導入するか開発側と協議している部分です。バランスブレイカーになりかねないアイテムですので,安易な販売は危険だと捉えています。私個人は,キャンペーンなどで少しずつ配布して,どのような影響が出るか確認して,そのあとどうするかを決めるという進め方を考えています。
4Gamer:
では最後に,今後の展開を教えてください。
2011年1月から2月上旬にかけて,正式サービス開始後初のアップデートを予定しています。大きなものでは,マップが自動生成されるダンジョンが実装される予定です。ロシアでは,月に1回という高頻度でアップデートをしているのですが,日本では品質管理の問題もあって2〜3か月に1回のペースで,まとめて実施していきます。
そして可能なら3月には,“バージョン2.0”の大型アップデートを行う予定です。ここでは「結婚システム」をはじめ,「ゲームオンLIVE 2010」で発表した「転生システム」「タイムトラベル」といったコンテンツが導入されます。“バージョン2.0”は開発に半年を以上かけた大規模なものになっていますので,どうかご期待ください。
4Gamer:
そのころにはアストラルシップを完成させているプレイヤーも出てくるでしょうから,ゲーム内が盛り上がることを期待しています。本日はありがとうございました。
松田氏をはじめとする本作の運営スタッフは,プレイヤーの指摘する問題点をきちんと認識し,改善しようと努力している。インタビューを通じて,その真摯な姿勢が感じ取れた。ロシアの開発スタッフとのやりとりは容易なものではないが,松田氏は可能な限り情報を収集し,「こういう形なら実現できるのではないか」という現実的な代替案を常に考えているという。ドラスティックではないが,少しずつ行われるALLODSの変化は,遊んでいるプレイヤー自身が案外強く感じとっていることかもしれない。
またALLODSという作品自体についてだが,ロシアでは毎月のペースでアップデートが行われているということを聞いて驚いた。オンラインゲームは,サービス開始当初は何かとコンテンツ不足に陥りがちなものだ。しかし,次から次へとアップデートがやってくるALLODSでは,いつでも新鮮なコンテンツを楽しむことができそうである。翻訳スタッフやQAスタッフは悲鳴を上げながらローカライズ作業に取り組んでいるそうで,その成果は年が明ければ我々の元に届けられるはずだ。
コンシューマゲームではジワジワ勢いを見せつつあるが,オンラインゲームではまだ弱い“洋ゲー”の市場を,自分達で切り開いていきたいという松田氏と,ALLODSのこれからに期待したい。
「ALLODS ONLINE」公式サイト
- 関連タイトル:
ALLODS ONLINE
- この記事のURL:
(C)Astrum Nival LLC, 2006-2010. All rights reserved. (C)2010 GameOn Co., Ltd. All Rights Reserved.