レビュー
箱庭アクションのスタンダードな文法に則った“遊べる”原作付きゲーム
ゴッドファーザー II
ニューヨークという箱庭と,マフィアという題材
箱庭アクションという部分に関しては,スクリーンショットや映像を見れば一目瞭然だろうが,その際にどうしても,ほかの同ジャンル作品と比較してしまうという人も多いのではないだろうか。アウトロー ニコ・ベリックを操り,リバティ・シティを舞台に自由度の高いゲームプレイが楽しめる「グランド・セフト・オートIV」(PC/Xbox 360/PLAYSTATION 3)や,ストリートギャングとして敵対勢力との抗争を繰り広げ,ギャングスタを目指すという「セインツ・ロウ 2」(PC/Xbox 360/PLAYSTATION 3)などが,真っ先に思い浮かぶタイトルだろう。
どちらもシステム的にはかなり似た雰囲気のゲームだが,ゴッドファーザー IIも一見すると,これらと似たタイプのゲームに見える。しかも題材が題材だけに,これら二つと比べられるのは当然のことだ。
GTAシリーズ,セインツ・ロウシリーズ共に完成度が高いゲームなので,比較される前提でゲームを作り込まないことには,酷評されてもしかたがないだろう。
さて,ゴッドファーザー IIは,その手の批評を葉巻片手に笑い飛ばすことができるのかどうか。本稿のテキスト,および画像/動画などから,ぜひとも判断してもらいたい。
なお,本稿を執筆するにあたってプレイしたのはXbox 360版だが,ゲームの基本的な内容は,PC版およびPLAYSTATION 3版も同様だ。
避けられないシステム比較
この手のゲームを語るうえで,同ジャンル作品との類似点を軸にアレコレ意見が交わされるのは,避けられないことだろう。しかし筆者個人としては,アクションゲームにおけるスーパーマリオブラザーズや,FPSにおけるHaloのように,“箱庭ゲームのスタンダードな文法”に忠実なタイトルなのだと思っている。
これを好意的に「操作方法が分かりやすくていい」と考えるか,批判的に「ゴッドファーザーの皮をかぶったセインツだ!」と考えるかで,本作の評価は真っ二つに分かれるだろう。個人的には,演出と雰囲気作りが非常に上手いと感じるし,映画を原作とするゲームならではの持ち味もあるしで,どちらかというと好意的に捉えている。
原作映画はあくまでも世界観のため?
これはロールプレイングを楽しむゲームである
実際にゲームをプレイしてみると,自分の意思でファミリーを増やし,テリトリーを拡大し,抗争に明け暮れるという“マフィアとしての没入感”が,かなり強く味わえる。一見するとおつかいをこなすだけの状況であっても,気分のノリが違ってくるわけだ。
たとえば,「○○を殴ってくれ,殺さない程度に」という歪んだ一般人の依頼を受けることがあるのだが,ここで殴りすぎて殺してしまってはダメだ。マフィアになりきり,意図的に手加減をするなど,世界観や状況に応じたロールプレイを楽しむのが,本作の正道と言えよう。
ちなみに,店舗への脅迫を行う際に,店主を殴りすぎてダウンさせてしまうと,店主が入院してしまい,しばらく襲撃に行くことすらできなくなるので,手加減のやり方はゲーム序盤のうちに覚えておいたほうがいい。
また,店舗への脅迫に関しては,内装を壊しまくって脅したり,殴りまくって怯えさせたりと,自分の好みの手段を用いることができる。効率よく脅迫を行うには,相手の嫌がることを調べ,それを実行すればいいのだが,店を荒らされるのが嫌な店長に対して暴力をふるっても,脅迫は成立する。自分の好きなスタイルで攻めるといいだろう。
逆に,自分のテリトリーに別のマフィアグループが攻撃をしかけてくることもある。そんな場合には,車を飛ばして敵対勢力を直接撃退する以外に,ファミリーを派遣して戦わせることも可能だ。ただしファミリーを派遣すると,自分と共に行動する味方が減ることになるので、いざというときに不利になることがある。
本作では,部下達に“爆破”や“金庫破り”などのスキルが設定されているので,誰をお供にするか,あるいは誰を派遣するか,という判断が常に求められる。
金庫破りのスキルを持つ部下をテリトリーの防衛に派遣すると,自分が金庫を見つけても放置するしかない。部下の人数を無尽蔵に増やすことができないという仕様が,ここで意味を持ってくるのだ。
テリトリーからさまざまなボーナスが得られる点も,ゲームプレイの魅力を高めている要素。マップを見ると分かるのだが,本作の世界はいくつかのエリアに区切られている。区切られたエリアごとの店舗をすべて自分の傘下に収めると,エリアに応じたボーナスが得られるのだ。ボーナスの内容は,所有弾丸数が増えたり,収益が一気に良くなったりと様々。それらを考慮すると,なおのことテリトリーの防衛に関して頭を悩ませることになる。
ファミリーを一人でも送り込めば防衛しやすくなるが,そうするとマイキャラが危険にさらされる。警備員を雇ってテリトリーの守りを固めることも可能だが,当然出費がかさむので,収益が減少してしまう。プレイヤーはまさに,ファミリーのドンとしてさまざまな選択を要求され,ファミリーにとって最も有益な判断を下さなければならないのだ。
このゲームはただのミッションクリアタイプの箱庭ゲームではなく,ゲームの中の人物を演じることが,このゲームの最大の目的であり,魅力といっていいだろう。もちろん,ストーリーミッションを最後までこなすとエンディングを迎え,プレイの一区切りにはなるのだが,マフィアとして一生懸命仕事をしていると,エンディングなどどうでもよくなってくる。それくらい,マフィアとしての日々の仕事は忙しいし,面白いのだ。この,ゴッドファーザーならではの喜びや苦労を,ぜひとも味わってもらいたいものだ。
比較されるがゆえに出てくる不満点
まず,ゲームをプレイしてすぐに感じる不満は,ジャンプができないこと。普通にプレイする分にはさほど不便というわけではないものの,やはり,ちょっとした障害物を飛び越えたいときにイライラすることがある。良くできた箱庭だからこそ,自分の好きに歩き回りたいし,裏道的なルートを探したくなるのだ。
とくに,GTA4ではジャンプの使い勝手が良く,ちょっとした障害物やフェンスなどを乗り越えるアクションなども用意されているので,これを体験している人からすれば,まず不満に挙げられる点だろう。加えるなら,箱庭ゲームが人気になっている理由の一つともいえる,“リアルな箱庭世界を自由に散策できる”という部分が,ジャンプ不可という仕様のおかげでかなりスポイルされているということは間違いない。
また,重箱の隅を突くようで申し訳ないのだが,落下モーションの不自然さも気になった。GTA4にしてもセインツ・ロウ 2にしても,吹っ飛ばされるモーションがあるからこそ,車に撥ね飛ばされたりしたときの“痛々しさ”がリアルに感じられ,感情移入の度合いも高まる。落下に関しても同様だ。本作では,少し高い建物から落下するときに,直立不動のまま落ちていくので,やや興ざめなのである(普通にプレイしていると,落下すること自体が稀なので,経験しない人も多いかもしれないが)。
ゲーム序盤では,建物の中や,夜の街での活動が多くなりがちなので,画面の暗さにいきなりくじけてしまう人もいるかもしれない。古のニューヨークだから仕方ないのかもしれないのだが,このあたりはゲームとしての演出でもいいから,もう少し光りがほしかった。
ちなみに筆者は,ゲーム中,夜の街をドライブする際に,かなりの高確率で衝突事故を起こしてしまった。ストーリーが進むと空港からほかの町に移動できるようになるのだが,一番最初のステージであるニューヨークが暗すぎるのは,正直ちょっと辛かった。モニターの輝度をかなり上げている環境ですら,輝度を調節していないほかのゲームよりも格段に暗く見えるほどだ。ここまでくると,雰囲気作りというレベルではないように思えるのだが……。
あえて,一般的な評価とは異なるかもしれない総評を
このゲームは,マフィアの生き様を自分で選択し,そして体験していくという内容だ。同タイプのゲームが存在する中で,筆者があえて本作を選ぶ理由は,その暗い世界が実に魅力的で,そこでの生活がとても刺激的である点だ。当然ながら,手放しで誰にでもオススメできるゲームではないのだが,箱庭アクションとしての完成度はなかなか高いし,世界観やストーリー展開も秀逸。また,マフィアのドンとしてテリトリーを維持/拡大していくマネジメント的な要素も,個人的には大いに楽しめた(金のやりくりがとにかく大変で,やりがいがある)。箱庭アクションファンなら,一度試してみる価値はあるはずだ。
動画撮影機材:トムソン・カノープス HDRECS
動画編集用ソフト:トムソン・カノープス Edius Pro 5
- 関連タイトル:
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