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“アレ”はいつ? 新コンセプト「ミリタリークラス」を打ち出したMSIに聞く,2009年夏〜秋の国内グラフィックスカードロードマップ
今回は,MSI-Jのマーケティング部 部長である石岡宣慶氏と,営業部 デスクトップソリューション営業課 課長の陳 明期氏から得られた情報をまとめてお伝えしたいと思う。
「Military Class」を国内展開するMSI
〜その定義を確認
Military Classは,極めて品質の高い部材を積極的に採用することで耐熱性を上げ,高負荷環境でも長期間に亘(わた)って安心して利用できることを謳うもの。米国防総省の定める,いわゆるMIL規格のうち,「MIL-PRF-39003L」に準拠するという。
Military Classのキーワードは,以下の3条件を満たしたグラフィックスカードにのみ与えられるとのことだ。
リーク電流の低さに定評のあるタンタル(Tantalum)を用いたコンデンサ。「搭載すなわちオーバークロック耐性の向上,というわけではないが,縁の下の力持ちとして,電源周りの安定化に寄与する」(石岡氏)。
2.SSC(Solid State Choke)
高周波フィルタとなるチョークコイルを,鉄の中に埋め込んで固めたもの。物理的に振動がなくなるので,いわゆる「コイル泣き」がまったく発生しないほか,発熱も減るとされる。「同じ巻き数なら,通常のチョークコイルと比べて通過特性は37.5%高い」とは石岡氏の弁。オーバークロック耐性の向上に効果があるとのことだ。
3.アルミ固体電解コンデンサ(Solid Capacitor)
低発熱,高効率で,破裂や液漏れの心配がないコンデンサ。各社のミドルクラス以上のマザーボードやグラフィックスカードで,最近は当たり前に搭載されているので,MSIの独自機能というわけではないが,「最近のトレンドを見るに,固体コンデンサにはせざるを得ない」(石岡氏)という。
MSIによるMilitary Class製品の測定結果レポート |
Military ClassとMilitary Class Conceptの違い |
陳氏いわく,「(グラフィックスカードは)これまで,搭載するクーラーで選ばれてきたが,これからはカードの品質で選ばれるようになる」。MSI-Jでは,今後同社が出荷していくグラフィックスカードのうち,ミドルクラス以上,かつオリジナルデザインの製品では,積極的にMilitary Class仕様を採用していく意向だ。
なお,従来モデルや下位モデルでも,三つの条件のうち2.と3.をクリアしたものは「Military Class Concept」(ミリタリークラス コンセプト)として訴求されていく予定になっている。
直近のグラフィックスカードロードマップを確認
ATI Radeon HD 4770の状況,そして次世代GPUは?
一般的なヒートパイプと比べて60%厚いSuperPipeでは,パイプ自体を使った熱移動も行われるという石岡氏の図示 |
Cyclone,そしてすでに搭載製品が流通している「Twin Frozr」クーラーは,いずれもリファレンスクーラーよりも18℃前後“冷える”とのこと。冷却能力は同等で,前者はAMD製,後者はNVIDIA製GPU搭載製品で主に採用される |
まずAMD製GPU搭載モデルからだが,COMPUTEX TAIPEI 2009の会場で展示されていた,新型GPUクーラー「Cyclone」(サイクロン)搭載モデルが,7月末以降,順次登場の予定になっている。
Cycloneは,「N285GTX SuperPipe 2G OC」などの限定モデルで採用されていた8mm径のヒートパイプ「SuperPipe」と,6mm径のヒートパイプ,そして100mm角相当のファンを組み合わせた大型のクーラーだ。
一般に,ヒートパイプというのは,「(銅など)熱伝導製の高い素材を用いたパイプに,熱によって揮発しやすい液体を入れ,両端をそれぞれ加熱/冷却して,液体をパイプ内で循環させることにより,熱伝導性を上げる」目的で使われるが,SuperPipeでは,太くて厚い銅製パイプそのものの熱伝導性も利用し,冷却能力をさらに引き上げているという。
ただし,それに先だって,Cycloneクーラーより若干小型の「Cyclone S」を搭載した「ATI Radeon HD 4870」搭載製品,「R4870 Cyclone S 1G」が,8月上旬にも国内市場へ投入される見込み。Cycloneシリーズの名を冠した製品としては,こちらのほうが先の発売となりそうだ。
AMD製GPUといえば,深刻な品不足の続く「ATI Radeon HD 4770」(以下,HD 4770)も気になるところだが,陳氏は「8月には潤沢に流通するようになる」と断言。MSIオリジナルデザインの製品も,8月には出荷が可能になるという見通しを示す。
また,COMPUTEX TAIPEI 2009の会場で展示していた,GDDR3メモリを組み合わせたHD 4770カードは,8月下旬以降に市場投入の予定という。
そして,なんといっても気になるのが,AMDの次世代GPUだ。
次世代GPUに関しては,海外を中心に,「『ATI Radeon HD以降の命名ルールにそのまま倣う形で,モデルナンバーが従来より1000引き上げられる』とは限らない」という噂が流れているが,この点について陳氏は,「そろそろ製品型番が最終決定しそうだ。ある程度は伝え聞いているが,まだ話せない(笑)」と,どちらとも取れる発言で含みを持たせていた。
Windows 7のリリースをターゲットに,AMDも製品化を急いでいるはずなので,新シリーズのモデルナンバーや登場時期が明らかになるには,もう少しだけ時間が必要かもしれない。
限定版のGTX 285「SuperPipe」第3弾を予定
GT 220&G210はサウンドコントローラ内蔵?
GT 220とG210は最近,NVIDIAの公式Webサイトで「OEM向け」とされつつ情報が掲載されたことで話題を集めた製品。NVIDIAのデスクトップPC向けGPUとしては初めて40nmプロセス技術により製造され,かつ,初めてDirectX 10.1対応を果たすと見られているが,MSIはそんな両GPUを,自作PC市場にも投入するというわけだ。
陳氏によると,北米市場における搭載グラフィックスカードの店頭価格はGT 220が60ドル,G210が35ドルになる見込みで,順に「GeForce 9500 GT」,「GeForce 9400 GT」をそれぞれ置き換えるとのこと。また,「サウンドコントローラを内蔵する」(陳氏)そうで,あらためてNVIDIAが公開しているリファレンスカード(と思われる製品)のイメージを見てみると,たしかにS/PDIF入力コネクタは用意されていなかった。
……以上,この夏は端境期かと思いきや,MSIはなかなかに意欲的な製品ラインナップを用意しているようである。
「DirectX 11時代が年内にも幕を開ける」といっても,DirectX 10すら主流とはなり得ていないこの状況で,一気にゲームタイトルの移行が進むとは思われない。それだけに,品質重視で,長く使えるグラフィックスカードを手に入れたいというのであれば,MSIの新製品を待ってみるのも悪くなさそうだ。
おまけ:P55マザーボード
今回はグラフィックスカードの話をしに行ったのだが,「Intel P55 Express」(以下,P55)マザーボードも見せてもらえたので,最後に写真とスライドで紹介したい。
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Copyright(C)2008 NVIDIA Corporation
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