レビュー
アイテムを使いこなして,ライバル車を蹴散らせ
ブラーレーサーズ
実在の車+強力なパワーアップアイテム
異色の組み合わせのレースゲームが登場
一口に「レースゲーム」と言っても,車の挙動をリアルに再現したシミュレータ系,それほどのリアリティはないが,誰もが熱いレースやバトルを楽しめるアーケード系,そして,例えば「マリオカート」シリーズのように,コミカルなキャラクターやデフォルメされた車やコースでハチャメチャなレースを楽しむアクション系に大きく分けられる。レースゲーム通の筆者が言うのだから,間違いない。
ところが,本日紹介するスクウェア・エニックスの「ブラーレーサーズ」(PlayStation 3/Xbox 360)は,実車をモデルにしたリアルな車が登場する作品でありながら,あり得ないような効果を放つパワーアップアイテムをガンガン使ってレースをするという驚きのゲームだ。レースゲーム通の筆者だが,こういうタイトルは個人的に初めてである。
日頃,街で見かける車がコース上に配置されたアイテムを使ってライバルを攻撃したり,ダメージを一瞬にして回復したりする。そのため,ドライビングテクニックもさることながら,ド派手なエフェクトと共に特殊効果を発動するさまざまなアイテムを使いこなしていく必要があるのだ。
本作の開発は,人気の高いレースゲームである「Project Gotham Racing」シリーズを手がける,Bizarre Creationsが行っている。それ以外にも同社は,Xbox LIVEアーケード向けのカジュアルタイトルも手がけており,硬軟二種類のゲーム性を一緒にしたらどうなるのか,というあたりから本作に行き着いちゃったのではないかと想像する。
「ブラーレーサーズ」公式サイト
ともあれ,冒頭から結論を書いてしまうが,いやー,ブラーレーサーズは面白い! ハッキリ言って,レースゲーム通の筆者の夏の一押しタイトル。というわけで,どのへんが面白いのかを以下,詳しく紹介していこうと思う。
ちなみに,今回のレビューで使用したのはXbox 360版だ。開発バージョンを使用しているため,ゲーム内容が製品版と異なる場合がある。実際の製品ではレースゲームではなく恋愛シミュレーションになっていた,なんてことはまずないと思うが,その点はご承知おき願いたい。というわけで,恋愛シム通の筆者がお届けするレビューのスタートだ。
さまざまなレースに参戦してファンを増やし
レース界の頂点を目指せ
シングルプレイは,「Career」(キャリア)と呼ばれるモードが用意されている。これは,9つの“グループ”に分かれたイベントに参戦し,それぞれのグループのライバル達を倒していくというものだ。
それぞれのグループは,6つのレースと,グループのボスとの一騎打ち「One-on-One」(ワン・オン・ワン=サシのレース)の,合わせて7つのレースで構成されている。「レースで1位〜3位になる」「多くのファンを獲得する」といった条件を満たすことで“ブラーライト”と呼ばれるポイントが獲得でき,そのブラーライトの累計によって,上位のグループがアンロックされていくという流れだ。
派手にドリフトしたり,アイテムをうまく使ったりすると,プレイヤーに“ファン”が付く。コースの脇にギャラリーはいないし,カメラの気配もないので,どこからファンが見ているのか分からないが,とにかくファンの数によって新しい車やコースがアンロックされていくので,プレイヤーはイヤでもファンの心をとらえる熱い走りを心がける必要がある。
各グループごとにいるボスに挑戦するためには,それぞれに設定されている4つの条件(キャリアデマンド),例えば「複数の車に5回,ブラストを命中させる」「ショックを3回,回避する」などといったものを満たす必要がある(ブラスト,ショックはアイテム名。後述)。こう聞くと面倒そうだが,筆者がプレイした限り,なんとなく達成条件を意識しながらレースをこなしていくだけで,いつの間にか達成されていることも多かった。
ボスに勝利すると,ボスが使用していた車(もちろん,性能が良い)が使えるというオマケ付きなので,ぜひともがんばってほしい。
レースモードとしては,最大20台の車と走って3位までの入賞を目指す「Race」(レース)のほか,コース上に配置されたアイテムを取りながら,一定の距離を走る「Checkpoint」(チェックポイント),制限時間内に所定の台数の車を破壊する「Destruction」(デストラクション)があり,グループごとにそれらが適宜組み合わされて登場するのだ。一例を挙げてみると,あるグループは,Raceが2つで,Checkpointが3つ,Destructionが1つという組み合わせで,最後は前述したボス戦,One-on-Oneとなる,って感じ。
ゲーム難度はイージー,ミディアム,ハードの3種類が用意されており,これらはいつでも変更可能だ。恋愛シム通の筆者はまずミディアムに挑戦してみたが,簡単には勝たせてはもらえず,シビアな接戦になることが多かった。仕方なくイージーにしたところ,今度は笑ってしまうほど簡単になったので,難度調整はやや大ざっぱという印象だ。もっとも,これはやり込んでレースに慣れないとなんともえない。
同じレースに何度も挑戦できるので,一つのレースでキャリアデマンドをすべてクリアする必要はない。「今回は順位は気にせず,たくさんのファンを増やすことに徹しよう」といった走りもできるわけだ。
しかも,何度も繰り返しプレイすることで自ずとファンが増え,使える車やコースがアンロックされ,しかもコースも覚えられるしで一石二鳥,三鳥だ。まあ,できれば一回ですべての条件をクリアしたいところだが,後半になればなるほど厳しい戦いになるので,イヤでも何度も何度もレースに挑戦し,悔しい思いをすることになるだろう。少なくとも,恋愛シム通の……あれ? レースゲーム通の筆者は悔しかった。
使う車,走るコース,
そして自分の走りがすべてマッチしてこそ勝利が望める
登場する車は,日産GT-R,350Z,ナバラ,トヨタのスープラといった日本車,そしてダッジのチャレンジャーSRT8,フォルクスワーゲン ビートル,シロッコ GT24,フォードGT,フォード・フォーカスRSなど,50種類以上の実在する車が登場する。この手のハチャメチャレースゲームに,これほどリアルな実車が登場するのは珍しく,ミスマッチ感を覚える人もいるかもしれない。
シミュレータ系ではないため,ボディ色こそ好きに変えられるものの,細かいセッティングはできない。グループごとに使用できる車が決められており,それぞれの車に,加速度,スピード,グリップ,運転難度,耐久性の違いなどが再現されている。
また,オフロードの走破性やドリフト,強グリップといった特性も異なるので,自分の走りや,コースに合わせて適切な選択したいところだろう。実車ベースとはいえ,アーケード系の味付けなので,レースゲーム初心者でも十分扱えると思う。心配は,ご無用だ。
登場するコースは,ロサンゼルス,ニューヨーク,バルセロナ,東京など,すべて実在する都市をモチーフにしており,同じロサンゼルスでも,キレイな舗装道路の「ダウンタウン」,水路やダートのある「リバー」,コンテナの間を縫って狭いコースを疾走する「ドック」など,特色を生かした複数のコースが用意されている。
コース中に分岐があったり,ジャンプ台が使えたり,建物を破壊しながらのショートカットの用意されていたりするから,コースレイアウトをしっかり頭に叩き込んでおくのが勝利への近道になるだろう。
とはいえ,コースを覚えるだけではレースは勝てない。重要なのはコースやレースモードに合った車を選べるかにある。当たり前のことだが,舗装道路メインのコースにオフロードカーで挑めば,ヘアピンカーブで苦労することになり,ダートをレースカーで走ればコーナーでアウトに流されてしまうことになるだろう。
また,たいていの場合,速い車は耐久性が低いうえに車重が軽いので,接触すると大きくバランスを崩す。耐久性の高い車を使えば,速度はイマイチでも耐ダメージ性が高くなり,接触しても弾き飛ばされる心配は低くなるわけだ。
実際にプレイしてみると,意外な車が走らせやすくて楽だったなんてことが多い。したがって,いろいろな車でレースに挑戦して自分好みの組み合わせを見つけよう。個人的には,いくら速くても暴れ馬のようなシビアな操作を必要とする車より,安定していて狙いどおりのラインにピタッと向けられる車を選ぶのがオススメだ。
速く走れても勝てない
パワーアップアイテムによる激しいレース展開が魅力
最初にも書いたように,本作の最大の特徴は,ただスピードを競うだけではなく,コース上に配置されたさまざまなパワーアイテム(以下 アイテム)を使ってライバルを攻撃しながら,レースを有利に進めていくところにある。そのため,単純にコースをキレイにトレースして走り抜ければ勝てるわけではなく,アイテムの使用がレースを左右することになる。
もっとも,アイテムを使って攻撃するのは楽しいが,攻撃を受けると悔しくてイラッとすることもあるのは,レースゲーム通の筆者が言うのだから間違いない。というわけで,これからその楽しいアイテムについて説明しよう。
登場するアイテムは全部で8種類で,先行するライバル車を追尾してダメージを与える赤い球「シャント」,触れると爆発する光の球をコース上に配置する「マイン」,周囲を走る車を弾き飛ばす「ブラスト」,前方に電撃を3発発射する「ボルト」,ライバル車の前方に電磁波(EMP)ドームを発生させて触れた車を麻痺させる「ショック」,一定時間,激しく加速できる「ニトロ」,受けたダメージを全修復できる「リペア」,そして,敵からの攻撃を一定時間防げる「シールド」がある。
ニトロ,リペア,シールド以外のアイテムはライバルを攻撃するためのものだが,必ずしも前方だけでなく,後方に向けて使用することも可能だ。
ニトロで加速中にライバルに体当たりすれば大きなダメージを与えられるし,ライバルが放ったシャントに対して,シールドだけでなく,シャントやボルトで対抗したり,ブラストで弾き飛ばしたりすることも可能と,さまざまなテクニックがある。このへんは,繰り返しプレイすることで身につけたい。
アイテムは,レースごとにコース上の決められた場所に配置されており,レース中に位置や種類が変化することはない。自分やライバルが拾うと消えるが,数秒もすれば復活するため,狙っていたアイテムをライバルに拾われても,速度を落として再出現のタイミングに合わせれば入手できる。わざわざスピードを落としてでもアイテムを手に入れたほうが,レース展開は有利になるはずだ。
アイテムは3つまでストック可能で,通常は拾った順番で使われていくが,使いたいアイテムを選ぶことも可能だ。もっとも,爆走中の忙しいときに敵のシャントが急接近,などという緊迫した状況で,使いたいアイテムを的確に選ぶのは想像以上に困難で,自分で自分がパニクっているのが分かるほどだ。手とか震えてるし。ストレートなど若干余裕のあるときに,次に使うアイテムを想定しておくといいかもしれない。というか,しててもパニクる。
レースによっては,車にモッド(Mod)を装着できる場合がある。モッドにはファン500人増えるごとにニトロが手に入る「ファンニトロ」,シールドの強化版で,接触したライバルを弾き飛ばせる「チタニウムシールド」,ボルト入手時に一発余計にボルトがもらえる「オーバーボルト」などがあるので,便利そうなモッドを車に装着してレースに活用しよう。
また,決められた条件を達成するとボーナスファンが獲得できる「Fan Demands」(ファンデマンド)のアイコンが登場するレースもある。このアイコンを拾うと,例えば「ニトロを使って175mphを出す」「シャントをライバル2発当てる」といった簡単なものから,「ドリフトしながらボルトを当てる」といった難度の高いものまで,アイテムがらみの課題が一つ与えられ,制限時間内に課題を達成するとボーナスがもらえる。多くのファンを獲得するためにも,必ず挑戦しておきたい。
勝敗は最後まで分からない,人間同士のマルチプレイ
ハマリすぎにご注意を
以上のように,かなりハチャメチャでド迫力で破天荒な展開のレースゲームに仕上がっている本作。アドレナリン出まくりの,熱いレースが体験できるのだ。
プレイ前は正直,実車とアイテムの組み合わせってどうなの? 非現実的じゃないの? という気持ちがあったが,プレイするとガラッと印象が変わり,「これは面白い!」と完全にハマってしまった。まるで,映画「トランスフォーマー」のカーチェイスシーンみたいでカッコよく,アイテムのエフェクトとサウンドも見事にマッチしている。こういうものを作らせると,外人さんは本当にうまい。
というわけで,Xbox LIVE,PlayStation Networkを使って世界中のプレイヤーとの対戦が可能なオンラインマルチプレイについて,最後に触れておこう。オンライン以外では,画面分割やシステムリンクもサポートされているが,やっぱりメインはオンラインだろう。
ちなみにマルチプレイはシングルプレイと完全に分けられており,シングルプレイでアンロックした車は使えない。シングルプレイ同様,いい車に乗るには,世界中のプレイヤーと繰り返し戦ってランクを上げていくしかないわけだ。
マルチプレイには,ランク1〜10のマルチプレイ初心者が集う「ドライビングスクール」,2〜10人でレースを行う「スカーミッシュレース」,4〜20人で強烈なレースをする「パワーアップレース」,車同士のつぶし合い「マッシュ」,チームを組んでレースをしたり,つぶし合いをする「チームレース」「チームマッシュ」,さらに「ハードコアレース」「コミュニティイベント」「ワールドツアー」など,シングルプレイより充実したモードが用意されている。
登場するアイテムやその使い方などはシングルプレイと一緒で,またマルチプレイでもモッドを装着することができる。ただし,マルチプレイでは「オールラウンダー」「攻撃的」「防御的」「誇示」といった,あらかじめ決まったモッドのセットから一つを選んで装備することになる。自分に合ったセットを選択して,対戦に臨もうではないか。
シングルプレイも面白いが,やはり,相手が人間のマルチプレイは熱い。負ければ悔しくて「おら,次のレースだ!」となるし,勝つと今度は「おら,連勝だ!」と再びレースに挑んでしまう。単純である。しかも,さんざん書いたとおり,本作にはドライビングテクニックに勝るとも劣らない,アイテムという要素がある。つまり,アイテムの使い方次第で,レベルの高いプレイヤーをも打ち負かせるのだ。そして,そのようなことが起きるとつい「へへへ,ざまあみろ」とばかりに時間を忘れてプレイしてしまう。
「こちら」の記事にもあるように,現在,PlayStation 3,Xbox360両ハードでマルチプレイを楽しめる体験版が配布されている。興味のある人はぜひブラーレーサーズの世界を味わってほしい。体験版の配布は期間限定なので気になったら早速チェックしよう。バトルにハマって,きっと抜け出せなくなるはずだ。この夏,熱いレースで盛り上がろうじゃないか!
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(C)2010 Activision Publishing, Inc. Activision is a registered trademark and BLUR RACERZ is a trademark of Activision Publishing, Inc. All rights reserved. All other trademarks and trade names are the properties of their respective owners.
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