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その実態は「どこよりもためになる」勉強会。ゲーム業界志望者必見のサイバーコネクトツー会社説明会に潜入
この会社説明会では,同社への入社を志望する学生や社会人に向けて,「どうすればサイバーコネクトツー(もしくはゲーム会社)に入ってゲームクリエイターになることができるか」についての解答が,実例とともに披露された。
同社の代表取締役社長である松山 洋氏曰く,一般的な内容ではなく「どこよりもためになる勉強会」という,普通の会社説明会とはひと味も二味も違う同社の説明会についてレポートをお伝えしよう。
独自の戦略が紹介されたサイバーコネクトツーの概要紹介
その一つは,パチスロ関連のお仕事。これは善し悪しの問題ではなく,松山氏個人の「ゲームは子供のためのもの,少年少女の夢」という考えに基づいているとのこと。
もう一つはモバイルアプリで,これは同社が基本的に大人数が関わるゲーム開発を志向していることが理由だそうだ。大きなプロジェクトの一環としてなら検討の余地はあるが,少人数で開発できるような単体のモバイルアプリを手がけるつもりは,今のところないとのこと。
また,2010年7月に開設した東京スタジオについての説明も行われた。
松山氏によると東京スタジオは,福岡本社と強力に連携して「攻めるための前線拠点」であるとのこと。別々の開発ラインを形成するのではなく,福岡本社と共通のプロジェクトに取り組んでいるそうだ。最前線である東京で情報をキャッチし,本拠地の福岡にいち早くフィードバックするのがスタジオの役割だと,松山氏は説明した。
また,東京と福岡との一体感を保つために,お互いの様子をリアルタイムでモニタリングできるシステムを設置していることも紹介された。
そのほかサイバーコネクトツーでは,午前9時出社で徹夜禁止などの社則,関わった全員が納得するまでミーティングを重ねる企業風土,ゲームをはじめ各種エンターテイメント作品に触れることを奨励するライブラリなどが紹介されたが,いずれもゲーム開発に対するサイバーコネクトツーのポリシーと姿勢がうかがい知れる内容であろう。
学生であってもプロと肩を並べる気概を持った情報収集と作品作りを
続いて「プロが見る応募作品と人物像」と題し,アーティスト/プログラマー/ゲームデザイナーの3職種に関して,サイバーコネクトツーが求めているスキルや人物像などが,実際に入社試験で合格/不合格となる例とともに紹介された。
本題に入る前に松山氏は,ゲーム開発にはさまざまな職種が関わっているが,自分の直接の仕事にまつわる知識しか持たないようではダメだと述べる。そして「皆さんは“ゲームクリエイター”になるんです。グラフィックスやプログラム,ゲームデザインは,ゲームを作るための手段でしかない。ゲームを作る人になるからには,すべての知識を持つ義務があります」とまとめた。
また,自分の作品を紹介するポートフォリオの作成にあたっては,まず“やりたいこと”を決めるのが重要であると梅田氏は述べる。その上で,漫然と作品を並べるのではなく,“やりたいこと”が伝わるような内容にするべきであると述べ,実際にサイバーコネクトツーに入社したアーティストのポートフォリオを披露した。
さらに梅田氏は,ライバルは新卒者だけでなく,プロとして活動している人も含まれることに言及し,学生ではあっても,最新ゲームに採用された表現技法は,最低限の知識として身につけておいてほしいと述べた。またそうした情報は,専門誌や専門サイトなどで誰でも入手できることを指摘し,常にアンテナを高く保たなければならないと強調した。
そのほか梅田氏は,研修課題の作成過程を例に取り,キャラクターのモーション作りや映像演出などのポイントを紹介。その中で,多くの映像作品に触れて自分の引き出しを増やし,多くのモノを作ってみることが重要であると述べた。そして,応募前には多くの人に自分の作品を見てもらい,その意見をもとにして求められるクオリティに到達してほしいとまとめていた。
プログラミング能力と数学/3D知識に関しては,書籍「C++の絵本」および「Effective C++」の内容が理解できて,ある程度実行可能であること,そして線形代数の知識があることが具体的な条件として掲げられた。
その条件をクリアするためには大量のインプットが必要となるが,重要なのは,それを実際にゲームとしてアウトプットすることができているかどうかだ。そのバランスは応募作品に現れており,そこから一緒に仕事ができるかどうかを判断するとのこと。渡辺氏は「限られた条件を言い訳にせず,その中でどうするのかをきちんと考えて作品を完成させる人と仕事がしたい」「皆さんの知識や長所をきちんとアウトプットした作品を選んで,応募してほしい」と述べた。
さらに「やる気があるという人はとても多いが,それは形にできなければ伝わらない。そうでなければゲームクリエイターにはなれない」と続け,知識のインプットと,それをアウトプットするスキルの重要性を再び強調した。
最後に渡辺氏は,情報収集の重要性を説き「どこまでも貪欲に情報を収集してほしい。ゲームクリエイターになりたいというのであれば,それなりのアンテナはきちんと張っておくべき」と述べた。
また「どうして分かってもらえないのか」と嘆くのではなく,逆に「どうして自分のアウトプットでは伝えきれないのか」と考え方を変えるべきと述べ,「一緒に仕事がしたいと思える方からの応募をお待ちしています。皆さんの作ったゲームで,業界をさらに推し進めてください」と締め括った。
ゲームデザイナーは何でもできる“知識の化物”でなければならない
ゲームデザイナー部門の説明では,再び松山氏が登壇。松山氏は,ゲームデザイナーを「ゲームを設計し制作を進行する人」と定義づけ,「“知識の化物”でなければ,絶対になれない」「絵が描けない,プログラムも作れないから,何となくゲームデザインがやりたいという人には無理」と前置きとして述べた。
松山氏は,ゲームデザイナーに求められる基礎能力として「高いコミュニケーションスキル」と「高いアイデアのセンス」の二つを挙げた。
ゲームデザイナーの業務は,すべての業種を股にかけ,チーム全員の意思を統一し,円滑に制作を進行することだ。そのためには,プログラマーやアーティストと深く話し合い,相互理解を得られるための知識が必要となる。これが松山氏のいうコミュニケーションスキルである。
もう一つのアイデアのセンスに関しては,「少ない手間で大きな効果を得られる仕様をコンスタントに考えられる能力」,すなわち不可能と思われることをアイデア一つで可能にすることという説明がなされた。
例えば,ゲームに何か新たな要素を付け加えようとする場合に,アーティストやプログラマーがどう考えるかを理解していれば,より具体的な手法を提案できる。松山氏は「具体的なプランを提案し,アーティストやプログラマーに勝算を持たせるために,ゲームデザイナーにはたくさんの知識が必要」なのだと述べた。
また松山氏は,企画書を作るときのポイントとして,「売れそう」「新しい」「分かりやすい」の3点を挙げた。
売れそうかどうかについては,「作りたいものを作るだけならサークル活動。ビジネスである以上,売れるものを作る義務がある。顧客や市場が何を求めているか判断した上で,企画を提案する必要がある」との説明がなされた。
新しさについては,「そうでないと,手に取ってもらえない」「類似のゲームには,皆,興味がない」と述べる。つまり,似たようなものなら先駆者に分があるというわけだ。松山氏は「どこかが,何かが新しい。それが商品力」と続けた。
そして分かりやすさについては,日本人がゲームを購入するきっかけの統計を例に説明がなされた。それによると,およそ70%がテレビCM,20%が雑誌から,10%がインターネット等の口コミの情報とのこと。
松山氏は,わずか15秒のテレビCMや,1〜2ページ程度の紹介記事や広告が購入にどれだけ影響を与えているかに言及し,「“面白そう”の正体は“分かりやすさ”」とまとめた。
「少ない露出でも面白そうと思ってもらえる分かりやすさがなければ,絶対に売れない。そんなゲームは作るだけ無駄」と付け加えた。
また松山氏は,ゲームデザイナーは即戦力が求められるため,圧倒的に経験者のほうが有利になると指摘。新卒のゲームデザイナー志望者はその経験差を埋めるため,企画書だけでなく,より具体的な仕様書やゲーム作品を作って沿えることが望ましいと述べた。
またゲーム作品は,一人で作ったものより,チームで制作したもののほうが評価が高くなるとのこと。言うまでもなくゲームはチームで作るものであり,ゲームデザイナーとはコミュニケーションスキルを問われる職種だからである。
さらに松山氏は,「合格した人の企画書を見せてほしいという人は,その時点で負け」「それをしなくても,企画ができてしまうのがゲームデザイナー」と厳しい指摘をする。そのためには,アーティストやプログラマー以上に,各種の雑誌や専門書などで常に最新の情報を収集しておく必要があると松山氏は述べる。
これには漫画誌も含まれているのだが,松山氏は「発行部数の多い漫画誌は,それだけ多くの子どもが目にしている可能性が高い」と説明。つまり,今,どんなゲームが求められているかのヒントがそこにあるというわけだ。
またWord,Excel,PowerPointが使えるのは当たり前として,画像処理や動画処理のソフトが扱えることが望ましいとのこと。
松山氏は,画像が扱えると企画書に説得力を与えることができるだけでなく,アーティストやプログラマーとのコミュニケーションを円滑にする手段にもなると述べた。
最後に松山氏は,「ゲームデザイナーは,何でもできる人」「ゲーム制作の中心となる人だからこそ,たくさんの能力が求められる」と述べ,「他社では事情が違うかもしれないが,サイバーコネクトツーにいるゲームデザイナーはスーパーマンばかり」とまとめた。とはいえ,もちろん各自に得手不得手があるとのことで,「皆さんも自分の得意な分野を持ったゲームデザイナーを目指してください」と締め括った。
ゲームクリエイターになれるのは残酷なくらい“好き”なものがある人だけ
質疑応答も含めて,実に3時間に及んだ会社説明会。その内容は,会場に集まったゲーム業界を志望する学生達に厳しい現実を突きつけるものだったのではないかと思う。正直,松山氏らの指摘は,長いこと社会人をやっている筆者にとっても耳の痛い内容ばかりだった。「中には絶望した人もいるかもしれないが,敢えて厳しい話をした」と述べる松山氏は,その理由を以下のように説明した。
だから今日,皆さんにその答えをお見せしました。皆さんが本当のことを知って,それでもこれから先をがんばれるのであれば,ゲームクリエイターになれると思います」(松山氏)
松山氏は,突き詰めるとエンターテイメントが“好き”だったらゲームクリエイターになれる。しかし残酷なくらい“好き”でないと無理と断言。ツラい思いをしたり,理不尽な目に遭ったりもするが,それでも楽しい,エンターテイメントが“好き”と思える人だけに,ゲームを作ってほしいと松山氏は述べた。
松山氏自身,「そこまで“好き”じゃないとダメなんですか」といわれるケースが多いとのことで,会社説明会では,先手を取ってどこまで“好き”でないとダメなのかを説明しているのだという。
実際,松山氏自身がもサイバーコネクトツーの前身だったサイバーコネクトを設立した当時は,ゲーム開発に関してまったくの素人だったという。しかし,多くのエンターテイメントに触れてきた知識と,嘘偽りのない“好き”という思いを武器に,著しい成長を遂げてきた。
「誰に何をいわれても“好き”でいることを諦めなかった才能集団,それがプロです。今ここにいる皆さんにも,その資格は十分にあります。心のタガを外して,“好き”であることを開放してください。そうすると,どうすればいいのか,自ずと見えてきます」(松山氏)
したがってサイバーコネクトツーの採用面接では,松山氏自ら「何が“好き”か」「それを“好き”でい続けることができるか」を問い,それが一番重要であるとのこと。“好き”なものは,ゲームでなくともかまわないそうだ。
上記の通り,残酷なほど“好き”なものがあれば,その時点でどれだけスキルが足りていなかったとしても,その先で身につけることができると松山氏は信じていると述べる。
「ゲームクリエイターは,99%の努力と1%の才能でできています。その才能というのも,“努力し続ける才能”ですから,結局,全部努力です。その努力の原動力となるのが,“好き”です。“好き”だったら,苦しくないんです。
面接では,その“好き”のスイッチがどこにあるかを確認します。だから,偽物はバレます。本物は5分で分かります。“好き”でいることを我慢しないでください。我慢するような業界じゃないですから」(松山氏)
最後に松山氏は,アイデアとテクノロジーの融合こそが,サイバーコネクトツーの提供するエンターテイメントであると述べる。そしてこの先,同社が“こだわりを持った技能集団”であり続けるため──すなわち,将来の子供達に向けたゲームを作り続けていくために,“新しい若い力”を求めていると述べ,会社説明会を締め括った。
会社説明会といえば,会社の業績や会社の中で実現できることなど,一般的には“夢”を持たせることが多いと言って差し支えないと筆者は考えている。しかしながら,サイバーコネクトツーの会社説明会は,厳しい“現実”を提示しつつも,どうしたらゲームクリエイターになれるのかという“答え”を提示してくれるという,非常に稀有な体験が得られた場であった。
また,サイバーコネクトツーの会社説明会は,「学年・学科不問」と銘打たれている。ここまで記事を読み進めた人なら分かると思うが,就職活動中の学生向けの会社説明会というよりは,ゲーム業界の門戸を叩きたい人に向けた勉強会であり,ゲームクリエイターになるためには何をしたらいいのかを知ることができる,非常に貴重な機会である。
次の会社説明会は名古屋において11月6日に行われるのだが,申し込みの締切は9月30日までとなっている。ゲーム業界で働きたいと思っている人は,ぜひ申し込みをして,ゲームクリエイターになる第一歩を踏み出してほしい。
サイバーコネクトツー公式サイト
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