インタビュー
シリーズの中でも一際異彩を放つ最新作,「龍が如く OF THE END」のインタビューを掲載。ゾンビや銃撃戦になっても,根底に流れる熱い人間ドラマはまぎれもなく「龍が如く」
極道の世界を中心とした人間ドラマと巨大歓楽街「神室町」をリアルに描くことで,“大人のエンタテイメント”として,確かな支持を得てきた「龍が如く」シリーズ。そのシリーズの最新作として登場する「OF THE END」は,なんとゾンビが大量発生した神室町が舞台となる。その概要が発表されたときには,誰もが想像だにしなかった展開に度肝を抜かれたという人も多かったのではないだろうか。
今回4Gamerでは,「龍が如く」シリーズのチーフプロデューサーである菊池正義氏と,「龍が如く OF THE END」プロデューサーの馬場保仁氏の2人にインタビューをさせてもらい,さまざまな話を聞かせてもらった。
開発中のエピソードはもちろん,キャスティングやコラボレーションなど,さまざまな話題についても語ってもらったので,ファンはぜひ最後まで読み進めてほしい。
「龍が如く OF THE END」公式サイト
「OF THE END」は,ナンバリングでもスピンアウトでもない独自のポジションに
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
最初に聞きたいのが,やはり「龍が如く OF THE END」ではなぜゾンビを登場させることになったのかということです。まずは,その理由を教えてもらえますか?
ゾンビにすることで,いろいろなものがイメージしやすかったというのが大きいですね。
ゾンビが神室町に発生して,感染が広がっていって街がパニックになる。そうすると警察や自衛隊が出動する。もちろん東城会も,それを食い止めるためになんとかしようとする……といった感じで,展開をイメージしやすかったんですよ。ゲーム的にもストーリー的にも,収まりどころがいい感じだった,というのが理由の一つです。
4Gamer:
収まりがいいというのは,具体的にはどういった部分なのでしょう?
菊池氏:
ゲーム中では,ゾンビが出現したエリアは自衛隊によって封鎖されるんですけど,それによって,ゾンビがいるエリアと,今までどおりの神室町,その両方を体験できるんですよ。そして,時間の経過とともにゾンビのいるエリアが広がっていくと,封鎖される地域も増えて,マップにも変化が出てきます。そうしたら,ゲーム的に面白いんじゃないかなと考えたんですね。
あと,今までの「龍が如く」のバトルは殴って倒すのが中心でしたけど,ゾンビって殴ってもなかなか倒せそうにないじゃないですか。なので銃撃戦がメインになっていくだろうと。そうすると,バトルの部分も大きく変わっていきますよね。
4Gamer:
企画段階で,ゾンビ以外の選択肢は上がりましたか?
菊池氏:
もちろん,候補はたくさんありました。「龍が如く 見参!」のときにも考えたことなんですが,学園モノだったり宇宙人だったり。そういったいろいろなものを吟味していく中で,今回はゾンビがいいだろうということで決まったんです。
4Gamer:
映画やゲームでゾンビを扱った作品では,救いがないというか,ハッピーエンドではない結末になることが多いですよね。「OF THE END」もそういった感じのストーリーになるんですか?
菊池氏:
ホラー映画が好きな人は,あまりハッピーエンドを望まない傾向があると思うので,ハッピーエンドにすると,「落ち着いちゃってつまんない」って感じになる人もいると思います。
ただ「OF THE END」では,ホラー要素を強調したいわけではないので,そこはちょっと違います。
4Gamer:
では,怖いという要素はあまりないんですか?
菊池氏:
まあ,怖くないとゾンビものらしくないので(笑)。驚かされる部分はあります。
ムービーシーンでゾンビがアップになったときは迫力がありますし,こちらが弾切れのときにゾンビが這い出てきたりすると,かなり恐怖感がありますよ。「モーション凝りすぎなんじゃない?」っていうくらい良い動きしますから。
ただゾンビって,怖いけどユーモラスな部分もあったりしますよね。そのあたりのバランスを取るのが難しかったです。
菊池氏:
あと,グロくなりすぎないように,ということには気をつけています。今までの「龍が如く」シリーズでも暴力表現には気をつけていますが,遊んでいて気分が悪くなってしまっては本末転倒なので。
4Gamer:
「OF THE END」は,いわゆるスピンアウト作品になるんですか?
「見参!」のときは時代劇だったので分かりやすかったのですが,「OF THE END」ではゾンビが出てくるけど現代劇で,時代背景は「龍が如く4 伝説を継ぐもの」の約1年後の2011年4月だし,既存シリーズに出てきた登場人物達が多いしと,「5」と言われても差し支えない設定なので,スピンアウトかどうか,判断しかねる感じなのですが。
菊池氏:
確かに,スピンアウトとは言っていないですね。ナンバリングを付けてないので「5」ではないのは確かですけど,「見参!」のようにまったく違う話かというと,そうでもないですし。
4Gamer:
もしかして,パラレルワールドなんでしょうか?
菊池氏:
それに関しては,次の作品が出たら,そのときに分かるんじゃないかと思います。ゾンビが出現したという設定を引き継ぐかもしれませんし,もしかしたら,なかったことになっているかもしれません(笑)。
ただ,既存シリーズの設定をベースに作っている部分はもちろんあるので,今までの「龍が如く」シリーズを遊んでいただいた方であれば,「OF THE END」でも,これまでのシリーズ同様の楽しみ方はできると思います。
4Gamer:
「OF THE END」を含めて,「龍が如く」シリーズの新作を作っていくうえで,これは絶対に残さなきゃいけないという部分と,ここは変えていこうという部分があると思いますが,その線引きはどこで判断しているんですか?
菊池氏:
最初の「龍が如く」のときから言っていることなのですが,“人間ドラマ”に集約されるのではないかと思います。「龍が如く」は,桐生一馬という男を中心に,さまざまな人達の熱いドラマを描くというのが,シリーズを通してのテーマなので。
4Gamer:
「龍が如く」の場合は,キャラクターやドラマ性が,シリーズを通しての揺るぎないキーワードということですか?
菊池氏:
ええ。「龍が如く」の場合は,それが桐生であったり真島であったり,遥であったりするんでしょうね。
4Gamer:
ゾンビものでどうやって人間ドラマを描くのか,すごく気になるんですが,「OF THE END」のコンセプトは,スムーズに決まったんですか?
私が馬場に「OF THE END」のコンセプトを話した時点で,だいたい決まっていましたね。
先程も言いましたが,ストーリーに関しても,ゾンビが出てくれば人々はパニックになるだろうし,警察や自衛隊,それに,東城会も乗り出してくる。そうなったら,桐生や真島が,なぜそうなったのかということを突き止めるために奮闘するだろう,という目算も立ちますよね。
そういう風にいろいろなことがイメージできるんですよ。プロットは何回か書き直しましたけど,コンセプトがなかなか決まらないということはなかったです。
馬場氏:
結局は,「ゾンビが出てきちゃったから,最終的にはどうするんだ」って話なんですけどね(笑)。ストーリーとしては,分かりやすい話だと思います。
4Gamer:
言い方が適切かどうかは分かりませんが,不思議な展開の仕方ですよね。ナンバリングタイトルと同じ素材を使っているのに,中身ががらりと違うものになっているというのは。
菊池氏:
確かにそうですね。
他社さんやほかのエンタテインメントでもなかなかやらない展開だからこそ,やりがいがあるのだと思いますし,ワクワクするものを生み出せるんだと思います。
4Gamer:
「OF THE END」では,システムががらっと変わりましたが,そのあたりは,シリーズを重ねることでのマンネリ化を避ける,という意図が含まれているのでしょうか?
「見参!」の時もそうだったんですけど,作品ごとに何かしらの新しいチャレンジをしていきたいというのがあって,そのチャレンジが次に繋がっていけばいいなと思っているんです。
今回はアドベンチャーにしろバトルにしろ,細かいレベルから大きなレベルまで入れていますけど,その中のものが,“ネクスト龍が如く”にフィードバックしていければと。
4Gamer:
ということは,たとえば現在発表されている「Binary Domain」(バイナリー ドメイン)も含めた,龍が如くチーム全体のフィードバックにも繋がるということでしょうか?
菊池氏:
いや,「Binary Domain」はあまり関係ないですね。
銃を扱っているということで,「OF THE END」と「Binary Domain」が繋がってるんじゃないかって聞かれることがよくあるんですが,そこはあまり深く考えなくていいと思います(笑)。
4Gamer:
「OF THE END」では,かなり簡単に銃撃戦が楽しめるという話ですが,銃撃戦主体のゲームになったことで,これまでのファンが戸惑う部分も若干あるのではないかと思います。シリーズのファンにも受け入れられるよう工夫したのは,どのような部分ですか?
菊池氏:
「龍が如く」のケンカバトルの魅力って,「ボタンを連打してるだけでも楽しめる」部分だと思うんです。開発チームには,そのレベルで遊べる銃撃戦にしてほしいと伝えました。それはディレクター,プログラマー,プランナーらが試行錯誤しつつ,最終的に今回のような形に仕上げてくれました。
4Gamer:
ということは,一般的なTPSとは全然違うものとして考えたほうがいいんですか?
馬場氏:
FPSやTPSとして考えていただくよりは,今までの「龍が如く」で銃を撃つのがメインになったと考えていただいたほうがいいと思います。
ただ,シューターが好きで「OF THE END」に興味を持っていただける方もいらっしゃるでしょうから,ヘッドショットができるなど,シューター的な要素も取り込んで作っています。
4Gamer:
「OF THE END」では,ガンショットバトルがウリとなっていますが,銃を取り入れる際にこだわった部分はありますか? たとえば銃の造形とか。
銃の造形は,今までの「龍が如く」よりさまざまなバリエーションのものが作れることもあって,スタッフは皆,喜んで作っていましたね。
それと,隔離された神室町を作るというのも,今までとは違う観点からのクリエイティブになったと思います。最初は勢い余って,やりすぎなくらいまで神室町をいじっていましたから。それはさすがに「ちょっと待て,暴動が起きた程度に留めてくれ」と止めましたけど(笑)。
龍が如くの知名度が上がったことで,タイアップ企業との交渉もスムーズに
4Gamer:
「龍が如く」シリーズでは,ゲーム内の登場人物に毎回タレントを起用していますが,そのキャスティングはどのように行われているんですか?
まずはストーリーを考えて,要所要所にマッチしている方を選んでいます。
脚本を書いてる人間が「誰々のイメージでどうでしょう」って提案して決まることも多いですし,例えば「年配の俳優さんで,こういう役柄の演技が期待できる人って誰だろう」と,それこそタレント名鑑をめくりながら,スタッフと相談して決めることもあります。
4Gamer:
声優を起用するパターンもありますが,そのあたりの切り分けは,どのように決めているんですか?
菊池氏:
うーん,それはケースバイケースですね。
例えば遥の場合,最初の「龍が如く」では,キャラクターの実年齢に近い女の子を起用しようと考えて,オーディションをしたことがあるんです。でも,どうもしっくりこなかったというか,お芝居お芝居したものになってしまいそうだという懸念が出てしまったんです。
やはり遥はセリフ量がものすごく多いですし,我々のイメージしているドラマにするには,声優さんのほうがいいだろうということで,釘宮理恵さんにお願いしたという感じですね。
4Gamer:
今回は,タレントも何人かゾンビ役で出ていますけど,オフォーしたときはどのような反応だったんですか?
菊池氏:
テリー伊藤さん,デビット伊東さん,エスパー伊東さんの3人は快諾していただきましたし,そのほかの方々も,ゾンビものだから決まりづらかった,というようなことは特になかったですね。
4Gamer:
タイアップについても,今回はシリーズ最多を記録したということですが,「4」までコラボしていた企業は,基本的にタイアップを継続しているんですか?
菊池氏:
継続している企業さんとしていない企業さんがあります。神室町でお店を構えて商品を売っているような,主要な企業さんはすべて継続しています。
馬場氏:
ゾンビ系なので,飲食店系の企業さんはさすがに厳しいかなと思ったんですけどね。担当者はどんな交渉してるんだろうって感じでビックリしました(笑)。
たぶんこれが,まだ認知されていない初めてのタイトルだったら断られるんでしょうけど,龍が如くがいろいろな方に認知されてきたというのは,ご理解いただけた理由の一つだと思います。
あとは,いろんな企業さんと何作か続けてタイアップしてきているので,信用していただけてる部分があるのではないでしょうか。
4Gamer:
タイアップ企業とのコラボレーションもスムーズだったんですか?
菊池氏:
とくに店舗関係については,最初は難航するかなと予想していたんです。たとえば,わたみん家さんとのタイアップも,最初にお話をしたときは,「俺の煮込丼」のようなことまでできるとは,実は想像してなかったんです。
どの企業さんも理解を示してくれたおかげでスムーズに決まったので,とても感謝しています。
4Gamer:
あと,今回は東京消防庁とのタイアップが実現しましたが,官公庁とのタイアップというのも,すごいですね。
やはり,東京の神室町で火災が起きたとなれば,消防車も出動するだろうということで,こちらから提案させていただいたんです。
先方の担当の方が「龍が如く」をご存じだった,というのはやはり大きかったですね。担当の方は,以前のシリーズ作品をプレイしているときに,ゲーム中で火事が起きたら,「そのうち俺達が出動することになるんだろうな」って思っていらしたそうです(笑)。
タイアップが決まってからは,消防車などのモデリングはもちろん,2台以上出動したときの駐車方法といった細かい部分まで取材して教えていただけましたので,かなりリアルに再現されていますよ。僕らとしても,かなり勉強になりましたね。
4Gamer:
「龍が如く」シリーズでは,こういったタイアップやコラボレーションを積極的に行っていますが,その効果としては,どのようなものを見込んでいますか? ゲームファン以外の層に対しての認知度を高めていくであったり,もっと直接的にいえば,広告収入なども考えられると思うのですが。
認知という意味で言うと,コラボレーションすることで,いろいろな場所・場面で「龍が如く」のPRを展開していけますよね。なので,そういった部分には期待しています。
ただ,「龍が如く」のスタート地点としては,歓楽街の街並みをリアルに表現したいという思いであって,それは今でも重視していることなんです。
「龍が如く」はフィクションでありつつも,その世界にリアリティを持たせるということを強く意識して制作したタイトルです。ゲームの中のコンビニに行ったらサントリーの缶コーヒーが売っていたり,松屋に行って牛めしを食べられたり,少しでも多くそういう場面を増やしていけば,グラフィックス面とは別のリアリティを生む事ができると思うんです。
そういう意味では,ゲーム内にあるすべてのものが実際にあるものだったら一番リアル,というところに最終的には行き着くんだと思います。
龍司だったらなんでもアリ? 最初は全身機械の体になっているという案も
4Gamer:
ストーリーの進行としては,「龍が如く4 伝説を継ぐもの」の時と同じように,4人の話が順番に進んでいくという形になるんですか?
菊池氏:
そうですね。最終的にはその形に落ち着きました。
プロットの段階では「24-TWENTY FOUR-」ばりに,5分に1度主人公が変わるような,話がどんどん進んでいく目まぐるしい展開も考えたんですけど,展開についていけなくなってしまいそうだし,それはさすがにやりすぎだろうということで,やめました。
4Gamer:
主人公が4人というのは,最初から考えていたんですか?
誰にするかまでは決めていなかったんですけど,4人ということは決まっていました。
「4」で採用した,主人公が入れ替わりつつも一つの話が展開していくというスタイルがファンの方々に受け入れられて,またボリューム的にもバランスが良かったので,特に揉めることなく4人に決まりましたね。
4Gamer:
桐生は別として,今回の主人公はすべて過去シリーズに登場したキャラクターから選ばれています。4人の主人公は,今回どのような理由で選ばれだのでしょうか?
菊池氏:
ファンの皆さんが,「こいつでプレイしてみたい」と思っているであろうキャラクターを選びました。桐生一馬はもちろんですけど,真島吾朗,秋山 駿,郷田龍司を選択しているという部分からも,それが汲み取ってもらえるんじゃないかと思います。
4Gamer:
4人の主人公の中で,龍司については,登場のさせ方を決めるのに苦労はありませんでしたか?
菊池氏:
龍司は敵として登場するというプロットもありましたし,プロットごとにまったく違う役どころでしたね。ほかには,記憶がなくなっていたり,コールドスリープから覚醒したりといった案もありました(笑)。
4Gamer:
ちなみに,右腕を銃にするというアイデアは,いつ頃決まったんですか?
菊池氏:
明確には覚えてないんですけど,確か,名越も交えて話し合ったときに決めたと思います。
馬場氏:
主人公4人の武器にそれぞれ特徴を持たせようというときに,龍司ならなんでもありだよねという話が出て,結果的にああなりました(笑)。
中には,ターミネーターみたいな全身機械の体にしようという案もあったんです。それはさすがにやり過ぎだろうということでやめましたが。
4Gamer:
プロットを考えた人も,最初にターミネーターって言っておけば,これぐらい許されるだろうと考えたのかもしれませんね(笑)。
龍司以外のキャラクターは,割とすんなりいったんですか?
菊池氏:
そうですね。設定上,「4」から1年後と時間が続いているので,「4」に登場していたほかの3人については,その後に何をやっているのかということは想像しやすかったです。
ただ龍司だけは,「2」から空白の時間があるので,ある意味どうにでもなるんですよ。だからこそ色んな選択肢がありすぎて,二転三転してしまったんです。
ストーリーでは,龍司の右腕がああなった経緯も明かされるんですか?
菊池氏:
はい。それはちゃんとエピソードとして語られます。
4Gamer:
ちなみに物語全体のボリュームはどれくらいあるんでしょうか?
馬場氏:
メインストーリーだけを進めていけば,だいたい20時間くらいですかね。ただ,実際にプレイしていると,メインストーリーにサブストーリーが絡んできて,寄り道をしてやりたくなることが増えてくると思いますよ。
サブストーリーも含めると主人公一人で20時間くらい,僕も自分でプレイしていて,4人全部をやったら,最終的には100時間あっても足りないくらいのボリュームになっているかな,と思います。
4Gamer:
今回,新要素として,「相棒をつくろう!〜俺の背中は任せた!〜」「ゲイリーズ ブートキャンプ」,そして「神室町アンダーグラウンド」が入っていますよね。中でも「神室町アンダーグラウンド」は,いわゆるランダムダンジョンとなっていますが,これには,長い期間プレイしてほしいという意図が込められているんですか?
馬場氏:
今回は,銃を使うからこその自分を鍛えられる新しい要素が入っています。
「神室町アンダーグラウンド」は,潜るたびにダンジョンが違ったほうが面白いだろうというのと,やり込み要素はたくさんあったほうが楽しい,という二つの意図があります。相棒と一緒に戦うことができる一番分かりやすい場所でもあるので,どんどん潜ってほしいと思います。
4Gamer:
そのほか,「OF THE END」のプレイスポットで変わった部分はありますか?
今までのプレイスポットも一通り遊べるようにしようということで,基本的に,神室町に存在していたプレイスポットはすべて用意されています。細かい事なんですけど,卓球とかも遊びやすくなっています。
今回はストーリーが進行していくと,キャバクラに行くためにゾンビの群れを突っ切って進まなきゃいけなくなってきますので,「アフターに来て」って言われても大変だと思いますよ(笑)。
ただ今回は,キャバクラはあるんですが,「キャバつく」は入っていないんです。
チーム内外のスタッフ交流を活発にして「龍が如く」というIPをもっともっと展開していきたい
4Gamer:
馬場さんは,今回プロデューサーとして「OF THE END」を担当してみていかがですか?
この1年は,「OF THE END」とニンテンドー3DSの「スーパーモンキーボール 3D」の2作をプロデュースしましたが,この2タイトルって,方向性が180度違うので,同時に進行するのは大変でした(笑)。でも,個人的にはとても充実した1年間でした。
私は,今までスポーツゲームを手がけることが多かったんです。スポーツゲームのように,ライセンスを受けて作るものは,それをいかに忠実に,リアルに持っていくかが大変なんですけど,「OF THE END」では,そうではないフレームの作り方をしなければならない。いろいろな事ができる半面,やることが非常に多くて大変なんだということが分かりましたね。
4Gamer:
素人目線だと,タイトルのプロデューサーは,チーム内のディレクター経験者などから選ばれそうな気がするんですが,チーム外の馬場さんが「OF THE END」のプロデューサーに選ばれたのは,どういった経緯だったんですか?
菊池氏:
プロデューサーやディレクターって向き不向きがあるから,皆が皆できるわけじゃないと思うんですよ。ただ,馬場ならきっとできるだろうと思っていました。
また,同じ人間,同じチームでずっとやり続けるのは,確かに効率がいいんですけど,それだと逆にしぼんでいく部分もあると思うんです。
龍が如くチームの外からもどんどん入ってもらって,層を厚くすることで,「龍が如く」というIPをもっともっと展開していけるのではないかと考えていましたし,変えられる部分はどんどん変えていきたいということですね。
4Gamer:
馬場さんは,今まで関わったことのない,しかもシリーズもののタイトルを手がけるにあたって,どういう事を意識しましたか?
馬場氏:
「OF THE END」に関しては,今まで「龍が如く」に関わってきたスタッフがいるので,彼らの常識と,僕のようにやっていないからこそ気付くことを,どうやって折り合わせていくかを考えていく必要があると思っていました。
あとは規模感も把握していなくてはいけないし,「龍が如く」は年1作のペースで進行しているタイトルなので,スケジュールも意識してました。「こんな時期からもうTGSのこと考えるの?」ってこともありましたし,非常に勉強になりましたね。
4Gamer:
開発スタッフにとって,今までの「龍が如く」シリーズとは毛色が異なる「OF THE END」を手がけたというのは,いい経験になったんでしょうか。
菊池氏:
馬場も先ほど言っていましたが,いろいろな場面で,今までに作ったことのないタイプの作品を作るというトライがあったので,いい経験になったと思いますよ。
馬場氏:
クリーチャーを作らせたら,人間を作ってた時よりも,ものすごいものを作るんだ!? というのが分かったスタッフもいましたね(笑)。
4Gamer:
意外なところで才能が発見できたということですね(笑)。
前作発売から約1年での発売ということで,実際の開発期間は10か月くらいだと聞いていますが,制作に難航した部分はありましたか?
菊池氏:
ゲーム的に大きな変更点となるガンショットバトルに関しては,スクラップアンドビルドを重ねたので,悩んでいた時期もありましたね。
4Gamer:
10か月でスクラップアンドビルドを重ねるって,ものすごい話ですよね。
菊池氏:
実は今回,ガンショットバトルはすごく綱渡りだったので,上手くまとまってホッとしています(笑)。
「龍が如く」というIPをさらに広げていくために,いろいろな場面で「龍が如く」を遊べるようにしたい
4Gamer:
龍が如くはすでにブランドとして確立している感がありますし,毎作品ごとに50万本以上販売していると思います。たとえばこれを100万本に届かせるといった,もう一歩を推し進めるうえで,どういった取り組みが必要だと考えていますか?
100万といわず,200万,300万と売れてくれたら嬉しいんですけどね(笑)。
もちろん,ファンの方が減っていかないように,「龍が如く」をどんどん広げていきたいと思っています。
PS3でじっくりやりたいという方には,据え置きで出しているシリーズをプレイしていただければと思いますが,PS3を持っていない人でも,「龍が如く」という世界に触れられるように,さまざまな展開をしています。
PSPの「クロヒョウ」や「龍が如くモバイル for GREE」が,いろいろな場面で「龍が如く」を遊べるようにする意味での“さまざまな展開”の顕れですね。
4Gamer:
ちなみに,1月のPlayStation Meeting 2011では,「龍が如く OF THE END」をNGP(※)で動かしたというデモが公開されました。NGPでの展開も期待していいんでしょうか。
※「PlayStation Meeting 2011」で発表された“次世代携帯型エンタテイメントシステム”(Next Generation Portable,コードネーム)の略称
菊池氏:
あれは……「デモを出しました」という以上の意味はないんですよね(笑)。
4Gamer:
なるほど。では,ステージで名越さんが話していましたが,PS3向けに開発したタイトルをNGPで動かすようにするのは,相当に楽なんですか?
菊池氏:
楽と言うよりは,「動かせる」というのが率直な意見ですかね。PS3をそのまま携帯ゲーム機にしたものではないので,さまざまな手は凝らしていかなければいけないですし。ですが,他のものに比べたら,ハードルは低いと言っていいと思います。
4Gamer:
昨今のゲーム業界では,開発費の高騰が問題になっていますよね。NGPも開発費が相当高いという話を聞くので,たとえばPS3とNGPでマルチ展開しやすくなると,開発費削減というか,より広い展開を行えるなどの解決策には結びつくんじゃないかと思うのですが。
菊池氏:
NGPは携帯端末ではかなりハイエンドなので,それを突き詰めていくと,当然お金もかかるのは確かです。そういう展開は十分考えられると思いますし,開発コストや収益の面で,そういう手を打ったほうがいい,というタイトルも少なくないとは思います。
ただ,ユーザーさんが求めているのは,必ずしもハイエンドなゲームばかりではないと思うんですよね。ハイエンドではないものが入り込む余地も,十分にあるとは思いますよ。
4Gamer:
それでは最後に,読者に向けてのメッセージをお願いします。
馬場氏:
「OF THE END」は,ゾンビが出てくる事やガンショットバトルが大きな特徴となっているのですが,基本はシリーズのテーマでもある「大人のエンタテイメント」を軸にしているものですので,安心してお買い上げいただいて,ご自身の目で確かめてほしいですね。
菊池氏:
ガンショットバトルになったことや,ゾンビが出てくるということで,今までの龍が如くと違うという印象を持たれた方も多いと思います。しかし,仕上がりはまぎれもなく「龍が如く」だと思っていただいていいと思います。
もちろん新しい面白さや爽快感は詰め込んでいますけど,これまで「龍が如く」で体験してきた面白さは別の形で実現されていますので,シリーズを楽しんでいただけた方であれば安心して遊んでいただけます。ぜひよろしくお願いします。
4Gamer:
ありがとうございました。
「龍が如く OF THE END」は,既存のシリーズ作品とはかなり趣を変えた「ガンショットバトル」になっている。これを「龍が如く4 伝説を継ぐもの」から約1年で完成させる(※東日本大震災の影響で発売が延期される前は,2011年3月17日発売予定だった)という,龍が如くチームの開発力には舌を巻くばかりである。
アクションの難度が高くなっていることを心配する人もいるかと思うが,PlayStation Storeで配信されていた本作の体験版や,各地で開催された店頭体験会でプレイした人なら,インタビュー中に菊池氏が言っていたように,シリーズ経験者なら確実に楽しめる難度に調整されたゲームに仕上がっていることを確認できたはずだ。
むしろ,ゾンビものだからこそ実現できたであろう,今までの龍が如くにない新鮮な体験ができたのではないだろうか。
インタビューを最後まで読んでくれたのであれば,「龍が如く OF THE END」は奇をてらったように見えはしても,これまでのシリーズと同様に“熱い人間ドラマ”がその根幹に流れていることを,菊池氏と馬場氏の言葉から,感じ取ることができたのではないだろうか。発売日の6月9日までは残すところあと5日である。「龍が如く OF THE END」をプレイできる日を楽しみに待ちたい。
「龍が如く OF THE END」公式サイト
(2011年3月2日収録)
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