インタビュー
「真・三國無双6」プレミアム体験会後の開発陣インタビューを掲載。シリーズ最新作は“無双らしい”面白さに原点回帰した“全部入り”の作品だ
より綺麗に,より多くのキャラを。3D立体視も含めて「全部やろう」とチャレンジ
話は変わりますが,本作は3D立体視に対応していますよね。これは個人的なイメージですが,今はまだPS3での3D立体視の利用環境は,プレイヤーにとってハードルが高いなと思っているのですが。
鈴木氏:
3D立体視については,今現在,日本に市場がどれだけあるかはひとまず置いておいて,今後広がっていく可能性があることに着目しています。
というのも,東京ゲームショウ 2010の出展用に,真・三國無双5の3D立体視対応版を作りましたが,私自身が3D立体視による臨場感のインパクトを実感しましたし,多くのお客様からも「凄い」という感想をいただいているからです。ですので,これは演出として使わない手はないだろうと考えていました。
4Gamer:
まずは可能性から検討したわけですね。
鈴木氏:
プロデューサーという立場上,市場の有無などを考慮して損得勘定をしなければなりません。しかし今回は,特徴として臨場感を謳っているのだから,3D立体視は絶対に対応すべきだろうと,ほぼ私の独断で決めました。ディレクターの宮内に「3D立体視やるから!」って(笑)。
宮内氏:
私もクリエイター側の人間なので,3D立体視対応版を見て「面白いな」と思っていたんですよ。「目が疲れるかどうか」「市場があるかどうか」という話の前に,パッと見て「うわあ,何これ?」という生々しい感覚があったんです。
4Gamer:
理屈よりも,感覚に説得されてしまった。
そうですね(笑)。これを言われたタイミングも絶妙だったんですよ。
まず,今作ではシェーダーを細かく切り替えて,従来の無双シリーズでは実現できなかったグラフィックス表現を実現しています。それは,技術的に詳しい方なら,処理コストの面で「破綻してしまう」と思ってもおかしくないレベルに達しているはずです。
こういった表現は,従来作だと「無双だから」という理由で,最初から諦めていたんですよ。「それをやれば良くなるのは分かっている。でも無双だから,そこに力を入れるのではなく,キャラを1体でも多く表示しましょう」と決断していたんです。
しかし今回は,そういった「諦める」という考え方を止めて,最初から「全部やろう」ということにしたんです。すなわち「綺麗にして,しかもキャラをいっぱい出そう」ということです。こうしてテンションが高まってきていたときに,プロデューサーの鈴木から「3D立体視もやれ」と言われきたんですよ。
4Gamer:
なるほど。そのまま勢いに乗ったわけですね。
宮内氏:
はい。テンションが高いまま,「やりましょう!」と(笑)。
そうして最初に3D立体視を試したときは処理落ちが激しかったんです。それでも映像が抜群に生々しくて,久しぶりにワクワクしましたね。「これは,ぜひ何とかしよう」と,力を入れて取り組みました。
4Gamer:
宮内さんをはじめ,開発チームが「全部やる」と決意したのには,何かきっかけがあったんですか?
宮内氏:
最初から,鈴木が「原点回帰で,昔のお客様を呼び戻そう」「無双だからと諦めるのは止めよう。全部入りで行こう」と言っていたんです。私は,それをより分かりやすい形でチームに伝えました。それは最初から最後まで,一貫していましたね。
鈴木氏:
当然ながら,プロデューサー/ディレクターは売上を考えなければなりません。昨今のゲーム市場では,シリーズものというと弊社作品に限らず,売上をほぼ下げているという背景があります。ですから,「これが最後」という覚悟を持って全部を出し切り,売上を伸ばしたいという強い気持ちがあります。
一方の,現場の開発スタッフには売上を気にして欲しくはありません。なので,私達が「全部やろう」と言い続けることで,方向性がブレないようにテンションを高めていく必要があったんです。
宮内氏:
あとは海外からのプレッシャーもあります。質の高いゲームがどんどん出てきて。我々開発チームも悔しいのですが,プレイヤーとして鳥肌を立てながら遊んでいるわけです。
そのとき考えるのは,「作り方が違うからしょうがない」ではなく,つねに「俺達も,ああいうものが作りたい」「何とか並ぶものを作りたい」ということなんです。「技術的に追いつかないよ」と諦めるのではなく,「全部入りでチャレンジして何とかしよう」と。
4Gamer:
「クロニクルモード」では,プレイヤー二人で協力プレイができますよね。これは昨今の海外の,いわゆるオンライン協力(Co-op)プレイを意識したのでしょうか。
宮内氏:
そこは少し意味が違いますね。昨今のオンライン協力モードというよりは,従来の二画面分割による協力プレイの延長線上にあるものとして提供しています。これまでは二人で一つのテレビを使ってプレイしていましたが,今回はそれぞれの家でオンラインを介して,同じことができるようにという感じですね。
例えば兄弟のお客様で,かつては一つ屋根の下で一緒に遊んでいたけれども,時が経って社会人になり,今やそれぞれの生活があるとするじゃないですか。それでも真・三國無双6なら,オンラインでまた一緒に遊べるというようなイメージです。ボイスチャットにも対応していますので,ぜひ活用して欲しいですね。
開発チームとしては「そういうお客様もいらっしゃる。ならば入れよう」という,これもまた全部入りの考え方に基づいて提案しました。
かつての無双プレイヤーにも届くよう,大きく展開したタイアップ
4Gamer:
最後に,本作のプロモーションについて教えてください。真・三國無双6では,これまでよりも大きくタイアップ展開をしていますが,やはり10周年だからということでしょうか?
そうですね。それに加えて,先ほど宮内がいったように,かつて無双シリーズを遊んでいたお客様にアピールしようという意図があります。
無双シリーズは,過去に何作かプレイしたあとに,離れてしったお客様がたくさんいます。そこで今回,従来のようにゲーム関連メディアを通じて現役プレイヤーの方やPlayStation 3ユーザーに向けてアピールするだけでなく,かつてのお客様に向けた展開をしようと考えたんです。
しかし,かつてのお客様というと,PS3を持っていなかったり,あるいは持っていてもあまりゲームには関心がなかったりします。そこで,そういった方に真・三國無双6を知っていただくために,情報が行き渡る土台を広げようと,これまでにないタイアップを企画したわけです。
4Gamer:
なるほど。KinKi Kidsは無双シリーズが好きだから,ソニーの液晶テレビ「BRAVIA<ブラビア>」は3D立体視に関連する商品,ドラマ「三国志 Three Kingdoms」は当然ながら三国志繋がりと,それぞれタイアップの理由がよく分かります。ここに,カバヤの板ガムが入り込んでいるのは,ちょっと意外でしたが。
鈴木氏:
食玩は過去にもやったことがあるのですが,タイアップ形式は初めてですね。今回,タイアップを決めたのは,カバヤさんの3Dチェンジングカードの出来が非常によかったからなんです。私自身,欲しいと思えるものに仕上がっていますので,ぜひ全24種類,集めてみてください。
4Gamer:
店頭で見かけたらぜひ(笑)。あと,「吉本無双」も,おそらく現役プレイヤーだけでなく,より広い層にアピールするための取り組みですよね。
鈴木氏:
そのとおりです。最初にタイアップ企画を話し合ったとき,吉本興業さんが箇条書きでいくつものネタをピックアップしてくださったんです。吉本さんは「こんなにふざけて大丈夫ですか?」とおっしゃっていたのですが,私達にはより多くの人にアピールしたいという意図がありましたから,「もっとネタにして,ふざけても大丈夫です」とお願いしました。
4Gamer:
発表されているのは,テレビCMと吉本無双のサイトでの展開ですよね。
鈴木氏:
そのほか,吉本芸人さんのブログで取り上げていただいています。一般の方がご覧になる機会が多いので,大きなアピールになっていると言えますね。
当初,芸人さんの中からどなたに出演していただくか決めるために,吉本さんにヒアリングしてもらったのですが,予想以上に多くの方が無双シリーズのファンということで,収拾がつかなくなってしまったなんてこともありました。
「吉本無双」公式サイト
4Gamer:
吉本無双のメンバーは,その中の選りすぐりなわけですね(笑)。本日(2月19日)に公開された吉本無双の公式サイトの展開が楽しみです。さて,もう一つ今日の体験会で,シリーズ過去作(真・三國無双3/4)のコスチュームをダウンロードコンテンツとして,なんと無料配信すると発表されましたね。
鈴木氏:
毎回,コスチュームのデザインにはかなり手を加えているんですよ。そこでお客様それぞれの好みもありますから,歴代デザインも配信したほうがいいでしょう,と考えました。有料コンテンツとしての配信も考えたのですが……もう「無料でいきます!」と発表しちゃいましたね(笑)。
4Gamer:
正直,驚いたというか,太っ腹だなーなんて思いました(笑)。
鈴木氏:
ですが,これは無料のサービスじゃないとおかしいだろうという,私の感覚的なものもあるんですよ。
4Gamer:
シリーズファンには,とても嬉しい発表だと思います。それでは,最後に真・三國無双6に期待する読者に向けて,メッセージをお願いします。
宮内氏:
真・三國無双シリーズ10周年ということもあって,開発チームは過去最高の規模とテンションで取り組みました。まさに“力を集結した”作品です。今回は,長く遊んでいただけるよう,ダウンロードコンテンツの充実も図っています。いつ購入しても,タイミングを逃すということがないようにしていますので,実際に遊んだ方は,多くの方に薦めていただけると幸いです。
鈴木氏:
コンセプトに“シネマティック一騎当千”を掲げ,没入感にこだわり,全編通してシームレスに楽しめるようにしました。お話自体は三国志ですから,皆さんご存知のエピソードも多いかと思いますが,演出面では“人の死”もしっかり表現するなど,没入できるストーリーに仕上げています。過去に無双シリーズを遊んだことがあるという方も,この機会にぜひもう一度遊んでみてください。
4Gamer:
本日は,ありがとうございました。
真・三國無双のリリースから10年。正直な話,長く続いているシリーズで,しかも派生展開が多いこともあり,ともすれば「無双の新作がリリースされる!」というアナウンスがあっても,「ふーん,また出るのか」という冷ややかな反応も少なからずあるだろう。
しかし,プロモーションムービーやデモプレイを一見すれば,「今度の無双はちょっと違う」と感じ取れるのではないだろうか。それはインタビュー中でも言及されているとおり,これまでは「コンセプトが違うから」という理由で見送られるような要素も,開発チームが「全部入り」を実現するという熱意のもとで仕上げられた作品だからだろう。
鈴木氏がアピールするとおり,イベントからプレイへのシームレスな移行は極めて自然で,従来のように暗転したりロードに入ったりして中断されるといったことはない。それでいて実際にプレイした手触りは,これまでの無双シリーズのイメージを裏切ることなく,新たな攻撃と多用できる無双乱舞,あるいは武器変更によってプレイスタイルの幅が大きく広がり,ひいては爽快感も増している。
こうして文章にしてみると,「これまでも同じようなことを言ってなかった?」と思うかもしれない。しかし,今回はその次元が違うのだ。インタビューの内容やスクリーンショット,動画などから少しでも違いを感じた人は,実際にプレイしてみると想像以上の違いの大きさに驚くのではないだろうか。シリーズの現役ファン,かつての無双プレイヤー,あるいはまったくの新規層と,ぜひ多くの人に,開発陣が全部を入れたと話す「真・三國無双6」に触れてみていただきたい。
「吉本無双」からライセンスの二人も参戦。「真・三國無双6」プレミアム体験会をレポート。真・三國無双3/4のコスチュームも無料配信に!
「真・三國無双6」公式サイト
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