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GeForce GTX 600
  • NVIDIA
  • 発表日:2012/03/22
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「GeForce GTX 650」レビュー。1万円台前半で買えるKeplerはコスト重視型ゲーマーの福音となるか
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印刷2012/09/18 00:00

レビュー

GK107搭載,109ドルのKepler GPUはコスト重視型ゲーマーの福音となるか

GeForce GTX 650
(MSI N650GTX TransThermal PE OC)

Text by 宮崎真一


N650GTX TransThermal PE OC
メーカー:MSI
問い合わせ先:エムエスアイコンピュータージャパン 03-5817-3389
実勢価格:1万3000〜1万4000円程度(※2012年9月18日現在)
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 去る日本時間2012年9月13日22:00,NVIDIAから,Kepler世代のミドルクラス市場向けGPU「GeForce GTX 660」(以下,GTX 660)と「GeForce GTX 650」(以下,GTX 650)が発表になった。
 そのうちGTX 660のレビューはリリースに合わせる形でお届けしているが,一方のGTX 650はその時点で「後日あらためて行う」としていた。それは,レビュワー向けドライバが事前に用意されておらず,GTX 650対応のドライバが登場するのを待つ必要があったためだが,発表に合わせてGTX 650にも対応した公式最新版グラフィックスドライバ「GeForce 306.23 Driver」が無事公開されたので,ここにテスト結果をお伝えしてみたいと思う。

 今回テストに用いるGT 650カードは,MSIの「N650GTX TransThermal PE OC」だ。


GTX 650は「GT 640のGDDR5版」

MSI製カードは“スライド式クーラー”に注目


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GTX 650 GPU。刻印は「GK107-450-A2」なので,3桁数字部分はGT 640の「GK107-301-A2」より149大きいことになる。13億トランジスタを集積するダイのサイズは,デジタルノギスで計測した限り10.72(W)×11.51(D)mmだった
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GTX 650のブロック図
 GTX 650がどんなGPUなのかは13日の発表時点に細かくお伝えしたので,ぜひそちらを参照してほしいが,簡単にまとめると,「GeForce GT 640」(以下,GT 640)のグラフィックスメモリをDDR3からGDDR5へと変更し,それに伴って動作クロックも引き上げたものである。

 「GK107」コアのフルスペックである384基のCUDA Coreを搭載し,128bit(64bit×2)メモリインタフェースと組み合わせてきているところは,GT 640と完全に同じ。ブーストクロックが設定されないのも同じである。
 その一方,GPUコアクロックはGT 640の900MHzから1058MHzへと約18%,メモリクロックは1800MHz相当(実クロック900MHz)から5000MHz相当(実クロック1250MHz)と約178%,それぞれ引き上げられている。メモリ仕様の大幅な引き上げによって,メモリバス帯域幅がGT 640の28.9GB/sから80.0GB/sへ,実に約2.8倍のジャンプアップを果たしているのが最大の見どころということになるだろう。

 GTX 650は「GeForce GTX 550 Ti」(以下,GTX 550 Ti)や「GeForce GTS 450」(以下,GTS 450)などを置き換え,GTX 660 TiとGT 640の間を埋め,「Radeon HD 7750」(以下,HD 7750)対抗になるということで,以上のGPU,そしてHD 7750の上位モデルである「Radeon HD 7770」(以下,HD 7770)と,主なスペックを比較したものが表1である。
 なお,13日掲載のニュース記事内でもお伝えしたとおり,AMDはこの夏にHD 7750のGPUコアクロックを従来の800MHzから900MHzへと引き上げている。その点はご注意を。

※発表当初,HD 7750のリファレンスクロックは800MHz,公称典型消費電力は55Wとされていたが,北米時間8月29日付けで仕様変更があり,リファレンスクロックが900MHzへ引き上げられたため,今回はそちらを記載している。また,GTX 560は「リファレンスクロックがない」とされているため,主要なクロック帯を示した
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MSI製のGTX 660カード「N660GTX Twin Frozr III OC」(左)およびZOTAC International製のGT 640カード「ZOTAC GeForce GT 640」(右)と並べたところ。後者はカード長がGTX 650のリファレンスと同じ145mmなので,N650GTX TransThermal PE OCの長さがよく分かる
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 さて,冒頭でも紹介したとおり,今回テストに用いるGTX 650カードは,MSIの日本法人であるエムエスアイコンピュータージャパンから貸し出しを受けたN650GTX TransThermal PE OCだ。製品名から想像できるように,GPUコアクロックがリファレンスより66MHz高い1124MHzに設定されている。
 カード長は実測で約230mm(※突起部除く)なので,NVIDIAがリファレンスとして示している5.7インチ(約145mm)と比べると8cm以上も長い。一方,PCI Expess補助電源コネクタは6ピン×1と,リファレンスどおりだ。GT 640と同様,SLIがサポートされないため,SLIブリッジコネクタは用意されていない。

PCI Express補助電源コネクタは,マザーボードに差したとき,マザーボードと平行の向きにケーブルを接続する仕様だ。搭載するグラフィックスメモリ容量は1GBだが,カード背面にはメモリチップ4枚分の空きパターンが見えるので,容量2GBモデルが用意されている可能性はある
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N650GTX TransThermal PE OCにはオプションファンが付属。電源はカードの側面に用意された4ピン端子から取る仕様だ
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 そんなN650GTX TransThermal PE OCを語る上で忘れてはならないのがGPUクーラーだ。一見,100mm角相当のファンを搭載する,何の変哲もないクーラーといった印象なのだが,「TransThermal」(トランスサーマル)と名付けられたこのクーラーには100mm角相当のファンがもう1基付属しており,これを標準ファンの上に重ねて装着したり,あるいは,ファン付きのカバー部を本体後方へスライドさせると,空いたスペースに装着したりできるようになるのである。
 具体的にどうなるのかは下に示した写真を見てもらったほうが早いのだが,MSIは前者を「Double Airflow Mode」(ダブルエアフローモード),後者を「Dual Fan Mode」(デュアルファンモード)と呼んでおり,前者のほうがより高いGPU冷却効果が得られ,後者のほうが広範囲をまんべんなく冷却できるとしている。

追加のクーラー(左上)とDouble Airflow Mode(右上)。下段左はDual Fan Mode用にクーラーのカバ―部をスライドさせたところで,右下が最終的にDual Fan Modeにした状態だ。Double Airflow Modeではカードが3スロット仕様となり,Dual Fan Modeではカード長が実測264mm(※突起部除く)と標準状態から34mm長くなる
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GPUクーラーを取り外したところ。TransThermalクーラーはなかなか複雑な仕様になっている
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 GPUクーラーの取り外しはメーカー保証外の行為であり,取り外した時点で保証は受けられなくなる。なので以下,本稿の記載内容を読者が試す場合はあくまでも自己責任で行ってほしいが,GPUクーラーを取り外してみると,GPU用の“枕”部分からは2系統のヒートパイプが伸びているのが分かる。気になるのは片方が熱伝導シートで電源部まで覆っているところで,どうやって熱移動しているのかと思う人もいるだろうが,MSIはS字型ヒートパイプの採用をアピールしていたりもするので,何らかの手段が講じられているのだろう。

N650GTX TransThermal PE OCの基板
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 基板側に目を移すと,まず,電源部は3+1フェーズになっているように見える。MSIが「Military Class III Components」(ミリタリークラスIIIコンポーネント)と呼ぶ電源部品群,具体的にはタンタル型固体電解コンデンサ「Hi-c Cap」(Highly-conductive Polymerized Capacitor)や一般的なチョークコイルよりも効率がよいとされるチョーク「SFC」(Super Ferrite Choke)などが搭載されているのも目を引くところだ。
 グラフィックスメモリチップはSamsung Electronics製の「K4G20325FD-FC04」(5Gbps品)で,4枚実装することでグラフィックスメモリ容量1GBを実現している。

N650GTX TransThermal PE OCの電源部に寄ったところ(左,中央)。MSI独自の品質規格「Military Class III」と,今回のMilitary Class III Componentsは別なので注意したい。右は搭載するメモリチップ。5Gbps品なので,メモリのスペックはチップの仕様どおりということになる
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ドライバはGTX 650のみ306.23を利用

HD 7750は900MHz動作でもテスト


 今回テストに用いるGPUは,先ほど表1で紹介した製品だ。
 主役となるN650GTX TransThermal PE OCは,前述のとおりメーカーレベルのクロックアップモデルで,かつ,追加ファンを取り付け可能なTransThermalクーラーを搭載するため,今回は,カードの定格クロックで,よりGPU冷却能力が高いとされるDouble Airflow Modeにした状態を「MSI GTX 650」,デフォルトのシングルファン仕様で,EVGA製のオーバークロックツール「Precision X」(Version 3.0.3)から動作クロックをリファレンス相当にまで下げた状態を「GTX 660」と書いて区別する。

GTX660-DC2T-2GD5
メーカー:ASUSTeK Computer
問い合わせ先:テックウインド(販売代理店) info@tekwind.co.jp
メーカー想定売価:2万5980円前後(※2012年9月18日現在,発売日未定)
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 GTX 660のレビューでも用いたASUSTeK Computer製カード「GTX660-DC2T-2GD5」など,ほかにもいくつかメーカーレベルでクロックが引き上げられたものがあるのだが,それらはすべてPrecision Xからクロックをリファレンス相当にまで下げている。それでもGTX660-DC2T-2GD5はオリジナル基板とクーラーの採用によってブーストクロックがリファレンスより高めに出ると予想されるが,こればかりはカードの仕様によるものなのでご了承のほどを。
 なお,GTX 560について,NVIDIAは「リファレンスクロックが存在しない」という立場を取っているため,コアクロックとメモリクロックともに,主要なクロック帯の一番下であるコア810MHz,シェーダ1620MHz,メモリ4004MHz相当(実クロック1001MHz)を採用している点もお断りしておきたい。

 さらに,前段で述べたように,HD 7750では8月の時点でリファレンスクロックが800MHzから900MHzへと引き上げられているため,今回はコアクロック800MHzと900MHzの両方でテストを行い,前者を「HD 7750-800」,後者を「HD 7750-900」と表記して区別することにした。
 ただし,HD 7750-900設定を行うと,今回利用した玄人志向製カード「RH7750-E1GHD」ではオーバークロック動作となる。そのため,「3DMark 11」(Version 1.0.3)など一部のテストでは不正終了し,テストが満足に行えなかった。テストが完走しなかったものはHD 7750-900のスコアをN/Aとしているので,こちらも注意してほしい。

外部出力インタフェースはDual-Link DVI-D×1,Dual-Link DVI-I×1,mini HDMI×1。十分な性能が出ると保証されるわけではないが,物理的には3D Vision Surroundへ対応する
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 そのほかテスト環境は表2のとおり。GTX 650のテストには前述の306.23ドライバを用いているが,そのほかのGeForce搭載製品では,GTX 660のテストで用いたレビュワー向けの「GeForce 306.02 Driver」を用いている。なので,ドライバのバージョンが異なることになるが,NVIDIAは306.23ドライバを「306.02にあった『OpenCLが動作しない問題』を修正したもの」としており,実際,一般公開された306.23ドライバのリリースノートを見ても,性能面の違いは言及されていないので,3D性能については横並び比較しても問題ないと考えている。
 一方,Radeon用にはテスト開始時点の最新版となる「Catalyst 12.8」を用いた。

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 テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション12.2準拠。GTX 650はエントリーミドルクラスのGPUで,かつ「(グラフィックス設定さえ調整すれば)1920×1080ドットでプレイアブルなフレームレートが得られる」とされていることを想定し,解像度は1600×900ドットと1920×1080ドットの2つを選択している。
 また,テストに用いたCPU「Core i7-3960X Extreme Edition/3.3GHz」では自動クロックアップ機能「Intel Turbo Boost Technology」の効果がテストによって異なる可能性を考慮して,マザーボードのUEFI(≒BIOS)から同機能を無効に設定している。

 なお,ここまで述べてきたテスト環境および方法は,GTX 660のそれと完全に同じだ。なので,GTX 660のテスト結果は同GPUのレビュー記事から流用している。この点もご了承のほどを。


GT 640より圧倒的に速いが,GTX 660には歯が立たず

GTX 550 TIと同程度の3D性能のGTX 650


 では,テスト結果を順に見ていこう。
 グラフ1は3DMark 11における「Performance」と「Extreme」,両プリセットにおける総合スコアをまとめたものだ。
 GTX 650のスコアはGT 640より27〜36%高く,HD 7750-800に対しても11〜15%高いところにある。置き換え対象となるGTX 550 TiやGTS 450に対してもセーフティリードを築いている点や,MSI GTX 650はGTX 650より5%高いスコアで,クロックアップの効果がある点も確認できよう。

 ただ,対GTX 660だとスコアは半分以下。勝負になっていないどころの騒ぎではない。また,対HD 7770でも86〜87%程度に留まっており,「6ピン補助電源×1仕様の低価格カード」同士の比較では分が悪いのも見て取れる。

※グラフ画像をクリックすると,Performanceプリセットのスコア基準で並び替えたグラフを表示します
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 グラフ2,3は,「S.T.A.L.K.E.R.: Call of Pripyat」(以下,STALKER CoP)の公式ベンチマークアプリケーションから,最も描画負荷の低い「Day」テストシークエンスの結果を抜き出したものである。
 GTX 650とGT 640では,アンチエイリアシングやテクスチャフィルタリングを適用していない「標準設定」だと38〜40%程度のスコア差が,4xアンチエイリアシングと16x異方性フィルタリングを適用した「高負荷設定」では63〜65%程度にまで広がっているのが見どころだ。GDDR5メモリの搭載によってメモリバス帯域幅がGT 640比で約2.8倍へ拡張されたプラスの影響がはっきり出ている印象を受ける。
 HD 7750-800に対して11〜22%程度高いスコアを示せているだけでなく,HD 7750-900とも互角以上に立ち回っているのも要注目といえよう。

 ただし,GTX 660にはやはりダブルスコア以上の大差で完敗。GTX 560の約67%に留まり,GTX 550 Tiに対しても数%しか高いスコアを示せていない。

※グラフ画像をクリックすると,解像度1920×1080ドットのスコア基準で並び替えたグラフを表示します。以下,グラフ15まで同
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 同じくSTALKER CoPから,最も描画負荷の高い「SunShafts」シークエンスのテスト結果がグラフ4,5となる。全体的な傾向はDayの結果を踏襲する一方,HD 7750-900に置いて行かれ,HD 7750-800に対するリードが失われ気味なのは気になるところだ。

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 続いて,STALKER CoPほどには描画負荷の高くない「Battlefield 3」(以下,BF3)のテスト結果がグラフ6,7となる。
 BF3では3Dアプリケーションに強いKeplerアーキテクチャがSouthern Islandsアーキテクチャよりも有利なのだが,果たしてGTX 650はHD 7770といい勝負を演じられている。ただ,GeForceファミリー内での力関係はSTALKER CoPとあまり変わっておらず,GTX 650のスコアはGTX 660の半分以下。GTX 560の69〜73%程度だ。「GTX 550 Tiより数%上」という点も,STALKER CoPと同じである。

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 メモリ負荷が低く,シェーダプロセッサの性能やテクスチャフィルタリング性能がスコアへ素直に反映されやすい「Call of Duty 4: Modern Warfare」(以下,Call of Duty 4)だと,倍速のシェーダクロックを持つGTX 550 Tiに,GTX 650が届かない(グラフ8,9)。ただ,高負荷設定の対HD 7750-900と互角以上にわたりあっているあたりからは,GPUコアクロックの高さは相応に威力を発揮している気配も感じられる。

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 高解像度テクスチャパックの導入によってメモリ周りの負荷が極めて高くなっている「The Elder Scrolls V: Skyrim」(以下,Skyrim)の結果がグラフ10,11だが,ここだとCall of Duty 4とは別の理由でGTX 650がGTX 550 Tiに置いて行かれる。スコアが対GTX 550 Tiで90〜93%程度に留まる理由は一にも二にもメモリ周りのスペック差,具体的にはROPユニット数やメモリインタフェース&メモリバス帯域幅だろう。
 また,スペック上は劣っていないはずのHD 7750-800と比べてもスコアが93〜99%程度に留まっている点も指摘しておく必要を感じた。

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 グラフ12,13は「Sid Meier's Civilization V」(以下,Civ 5)のテスト結果である。
 Civ 5のテストでは3D性能だけでなくGPGPU性能も見るため,3D性能特化型のGK10xコアを採用したGPUはスコアが振るわない傾向にあるのだが,その割にGTX 650のスコアはHD 7750-800比で97〜105%程度に踏みとどまった。GTX 550 Tiに対してもわずかながら高いスコアを示している点や,メモリ周りのスペックで圧倒するGT 640に対して高負荷設定で最大80%高いスコアを示している点も見逃せないところだ。GK107コアを採用するグラフィックスカードとして,GTX 650は,GT 640よりもバランスが取れているといえるかもしれない。

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 GPUの総合的なスペックが比較的素直にスコアへ反映されやすい「DiRT 3」だと,グラフ14,15に結果をまとめたとおり,GTX 650とGTX 550 Tiはほぼ互角。GTX 650は,HD 7770-900にこそ若干届かないものの,HD 7770-800に対しては優位に立ち回っている。
 ……AMDのHD 7750仕様変更がGTX 650対策であるなら,DiRT 3ではその効果を「GTX 650以上のスコア」という形で,はっきり確認できるわけだ。

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消費電力はGT 640より最大25W高い

ただしGTX 550 Tiよりは60W以上低い


 先の表1,そしてニュース記事でお伝えしているとおり,GTX 650のTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)は64Wで,GT 640の65Wより1W低く設定されている。「TDP=実消費電力の目安」ではないので,別にNVIDIAがスペックをそう設定してきたこと自体に問題はないのだが,数字だけ見る限り,GTX 650でGT 640より消費電力が下がる要素はまったく見当たらない。また,NVIDIAは3Dアプリケーション実行時の典型的な消費電力はGTX 650で50W台に留まるとも述べていたりするが,実際のところはどうなのだろうか。
 今回も4Gamerのグラフィックスカードレビューでお馴染み,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体での消費電力を測定し,比較してみることにした。

 測定にあたっては,ゲーム用途を想定したうえで,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定。そのうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時としている。

 その結果がグラフ16だ。アプリケーション実行時で比較すると,GTX 650はGT 640よりも4〜25W高い値を示した。GPUコアクロックとメモリクロックが高められていること,そして,今回利用したN650GTX TransThermal PE OCのカード設計を踏まえると,妥当なレベルだろう。いずれにせよ,GTX 650とGTX 640を比較するうえで,TDPのスペック値は消費電力の目安としてまったく参考にならないので,その点は憶えておきたい。

 一方,対HD 7750-800ではほぼ同じレベル。GTX 550 Tiと比べた場合にはアイドル時で13W,アプリケーション実行時で60〜74Wも低く,これはプラス評価してよさそうだ。
 なお,Radeon勢は,PCの無操作状態が長く続いたときにグラフィックスカードのディスプレイ出力が無効化されるように設定すると,「AMD ZeroCore Power Technology」(以下,ZeroCore)により電力供給が大幅に低下する。ZeroCoreが有効なときの消費電力はHD 7770が80W,HD 7750-900&800が79Wまで下がっていたので,実運用上のアイドル時消費電力は依然としてRadeon勢に軍配が上がるはずである。

※そのまま掲載すると縦方向のサイズが大きくなりすぎるため,簡略版を掲載しました。グラフ画像をクリックすると完全版を表示します
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 最後に,3DMark 11の30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともどもGPU温度を測定した結果を,グラフ17として示しておきたい。テスト時の室温は24℃で,テストシステムはPCケースに組み込まず,バラックに置いている。
 GPU温度の測定にあたってはTechPowerUp製のGPU情報表示ツール「GPU-Z」(Version 0.6.4)から取得するが,GTX 650だけはGPU-Zを用いるとリファレンス相当にまで下げたクロックがカードの定格に戻るという現象が発生したため,GTX 650だけはPrecision Xから測定する。

 GPUの温度がどう取得されているのかは不明のうえ,搭載されるGPUクーラーも異なり,GTX 650では測定ツールすら異なるので,横並びの比較にはまったく向かないのだが,それでも,N650GTX TransThermal PE OCはシングルファンモードで動作させたGTX 650が,高負荷時に50℃台前半と,かなり低い温度を示した点は特筆してよさそうだ。エントリーミドルクラスのグラフィックスカードとして,N650GTX TransThermal PE OCの冷却能力は合格点を与えていいのではなかろうか。
 ただ,Double Airflow Modeにして3スロット仕様のグラフィックスカードとしても,温度が1℃しか変わらなかったのは気になった。MSIが製品ボックスで謳っている公称値でも3℃しか変わらないので,妥当といえばそれまでかもしれないが,TransThermalクーラーは,基本性能が優れる一方で,追加ファンうんぬんのところはあまり期待しないほうがいいのかもしれない。

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 気になる動作音は,毎度筆者の主観であることを断った上で述べると,高負荷時に,エントリーミドルクラスとしては大きめの印象を受けた。ファンを追加しても動作音にはさほど変化がなかったため,出荷状態で冷却性能重視の設定がなされていると見るのが妥当ではなかろうか。
 なお,ファンの回転数はシングルファンで990〜1650rpm。Double Airflow Modeでは1050〜1620rpmの範囲で変化していた。


「超低消費電力版GTX 550 Ti」と捉えるべきか

「GTX」の安売りには疑問も


N650GTX TransThermal PE OCの製品ボックス
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 以上の結果から,GTX 650の3D性能はGTX 550 Tiと同程度と見るのが妥当だろう。先に筆者はGT 640を「非力」とまとめたが,GTX 650なら,たしかにグラフィックス設定次第で,最新世代のゲームもプレイできるだけの性能は確保できているといえる。GTX 550 Tiの超低消費電力版が登場してきたという意味で,相応の価値があるとまとめられそうだ。
 3Dオンラインゲーム用のグラフィックスカードをなるべく低コストで手に入れたいというときにはよい選択肢となるだろうし,N650GTX TransThermal PE OCのようなクロックアップモデルであれば,フレームレート面でのさらなる上積みも望めるだろう。

 とはいえ,PCI Express補助電源コネクタ6ピン×1仕様のカードと見たとき,HD 7770より優れているとは言えない。また,たしかにHD 7750,とくに従来のスペックだったコアクロック800MHz版のHD 7750に対してスコアは優勢ながら,HD 7750には,補助電源コネクタなしで動作するというアドバンテージがある。なら価格はというと,発売当初におけるGTX 650搭載カードの実勢価格はリファレンス仕様採用モデルで1万〜1万2000円前後(※2012年9月18日現在)であり,短くない間,市場で揉まれてきたRadeon HD 7700シリーズほど安価でもなかったりする。
 端的に述べて,「GTX 650でなければならない理由」を挙げるのが難しいのだ。

 付け加えるなら,1つ上の上位モデルたるGTX 660が,Fermi世代のハイエンドモデルたるGTX 580と互角の勝負を演じていたのに,GeForce GTX 600シリーズ内の型番で10下がっただけのGTX 650が,GTX 660比で半分以下の性能になってしまい,GTX 560にすらまったく歯が立たないというのは,ユーザーの感覚的に納得できないところがある。NVIDIAは現在,同社がゲーマー向けGPUと位置づける製品に「GTX」型番を付けるようになっているが(関連記事),SLIブリッジコネクタ非搭載のGPUを“GTX扱い”していいのだろうかという疑問も残る。今回の「GDDR5版GK107」は,GTX 650ではなく,“GT 650”などといった,「GT」型番にすべきではなかったか。

 価格がこなれ,かつ,補助電源コネクタを持たないモデルが登場してくれば評価が変わってくる可能性があるため,現時点で最終的な判断を下しにくい製品ではあるのだが,少なくとも現時点だと,GTX 650は微妙な存在だ。GT 640とGTX 660の間にあった大きなギャップを埋める製品が登場したこと,それ自体は,素直に喜んでいいと思われるが。

NVIDIAのGeForce GTX 650製品情報ページ

エムエスアイコンピュータージャパンのN650GTX TransThermal PE OC製品情報ページ

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    GeForce GTX 600

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