インタビュー
原哲夫氏インタビュー。「マジック:ザ・ギャザリング」のコラボアートを手がけた漫画界の巨匠は,“厨二”の心を忘れずに“かっこいい人 ”への憧れを込めて絵を描く
次元「神河(かみがわ)」ブロックの1200年後を描くこのセットには,サイバーパンク的な要素が取り入れられ,ネオン輝くエキゾチックな和風世界での戦いが繰り広げられていく。
製品発売にあたり,3人の日本人アーティストによるコラボアートが用意され,その第1弾として,原哲夫氏が描いた,伝説のプレインズウォーカー「漆月魁渡(しづきかいと)」が公開されている。
原哲夫氏と言えば,「北斗の拳」「花の慶次-雲のかなたに-」「蒼天の拳」「いくさの子 織田三郎信長伝」などの作品で知られる,レジェンドともいえる漫画家だ。圧倒的な画力はもちろんのこと,“漢(おとこ)が惚れる漢”を活写する,キャラクター作りの巧(うま)さにも定評がある。そんな原哲夫氏に,「漆月魁渡」コラボアートの制作秘話について聞いてみた。
「マジック:ザ・ギャザリング」公式サイト
「できるだけしんどいことをやる」。
“漆月魁渡”コラボアート制作秘話
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
さっそくですが,「マジック:ザ・ギャザリング」のカードイラスト制作の依頼が来たときの感想を聞かせてください。
原哲夫氏(以下,原氏):
世界で最も有名なカードゲームのイラストを描くということで,うれしかったです。SFっぽいアートも好きなので,和とサイバーパンクの要素を持つ「神河」の世界は,ぜひ描いてみたいということで,喜んでやらせていただきましたよ。
4Gamer:
ウィザーズ・オブ・ザ・コーストからは,コラボアートに対してどのような要望がありましたか。
原氏:
まず,漆月魁渡の服装や神河次元の建造物,そして世界観に関する設定資料を頂きました。その上で,「不敵に笑みを浮かべる漆月魁渡,瓦の上を疾走しつつ,刀を抜いて,手裏剣を投げる」という指定があったので,その方向で描き進めていきました。
4Gamer:
かなり細かい指定があったんですね。
原氏:
1枚のイラストなのに,疾走したり,刀を抜いたり,手裏剣も投げたりと入れなければならない要素が多いんですよ。「ちょっとしんどいな……」とも思ったのですが,僕は「自由にしていい」と言われると楽に描いてしまいがちなので,できるだけ面倒な方がいいんです。
4Gamer:
過去にも,指定の多い仕事を受けることはあったのでしょうか。
原氏:
僕は原作があった上で漫画作品を描くことも多いですし,言わば「いろいろな条件がある中で,どれくらい面白くアレンジできるか」をずっとやってきたわけで,このような依頼は慣れてるんですよ。
今回は,カードのテキストでイラストの下部分が隠れるので,上の部分だけでデザインが決まるようにと,構成もかなり考えています。建物などの設定もよく出来ていたので,できるだけ入れ込みたかったのですが,ちょっと時間が足りなくて(笑)。いま見ると,背景がよく見えていないですね。
4Gamer:
『神河:輝ける世界』の世界観はどうでしたか。
原氏:
映画「ブレード・ランナー」的な世界で,和や中華の成分が強めな印象を受けました。資料の設定からはいい刺激をもらったんですが,中でも“鳥居を高速道路のように空中でつなげる”という発想には,こういう切り口もあるのかと唸らされましたね。
また,幻の竜のようなものが泳いでいたり,瓦の建物なのにネオンやLEDが入っていたりする近未来感が凄くいい。衣装にしても,おそらくは僕より若い方が手がけられたんでしょうけど,僕だったら絶対にやらないようなデザインだったので「人のデザインというのは面白いな……」と思いましたね。
4Gamer:
今回のイラストでいちばん苦労されたのはどこですか。
原氏:
苦労したのは,やっぱり瓦ですよ。僕はあまり定規を使わないから,瓦を1枚1枚フリーハンドで描いていくのが面倒でした。しかも苦労した割に,カードのテキストで見えなくなっちゃう(笑)。
背景のビルも,マスキングした上でちゃんと描かないといけないので,これも手間が掛かってます。今までの漫画の制作では,人物だけ描いて,あとはアシスタントさんにお願いすればよかったのが,今回は自分でやって自分にダメ出しをしないといけない(笑)。絵を描く上では当たり前のことなんですけどね。
4Gamer:
「漆月魁渡」の制作には,アシスタントを使われていないんですか。
原氏:
今回のオファーには,「イラストを全部,自分で描いてほしい」という条件もありましたから。自分一人だけでイラストを最初から最後まで仕上げるのは,高校生の時以来なので,もう何十年かぶりでした。
「週刊少年ジャンプ」で,21歳の時にプロデビューしたあとは,編集部がアシスタントを付けてくれましたから,ひとりで全部描く機会は,意外となかったんですよ。
4Gamer:
なるほど。スケジュールの短い週刊誌の連載だとそうなりますね。
原氏:
ですので,かなりの覚悟がいる仕事でした。歳も歳なので,ムチャをすると身体への負担も大きい(笑)。だけど,それでも「やるか!」と覚悟を決めて,今の出来る限りの一番大変な構図で絵を描きました。
いつも,締め切りのギリギリまで手を入れて原稿を渡すようなことをしていた,「北斗の拳」の頃を思い出しました。「もう間に合わない!」ってなりながら,徹夜していたんですよ(笑)。
ただ,20代のころはぶっ通しで20時間くらい描いたり,1週間くらい風呂に入らなくても平気だったけど,今はそうもいかないね。
4Gamer:
締め切りのせいとはいえ,それだけの時間を通して絵を描き続けられるというのは,凄い集中力をお持ちなのだと思います。「北斗の拳」は,「週刊少年ジャンプ」の黄金期を象徴する作品の1つで,僕のような読者にとっては毎週掲載されているのが当たり前でしたが,その陰には並々ならぬご苦労があったわけですね。
その頃の漫画は紙にペンで描いていたと思うのですが,今回のイラストは紙なのでしょうか,デジタルなのでしょうか。
原氏:
紙で,画材はエアブラシを使ってます。僕はエアブラシの世代で,「スーパーリアリズム」の手法で描かれた山口はるみさん※や,メカニカルな女性を描く空山 基さん※といった方々から影響を受けているんです。ですので,エアブラシを使った時が一番雰囲気を出せるんですよ。
そこで,今回もエアブラシを使うことに決めたのですが,あまりに久しぶりすぎて用具が手元になくて……。また買い揃えようといろいろ探したのですが,今はもうバイクを塗り直すのに使うようなモデルばかりで,アート用のエアブラシはなかなか売ってないのです。しかも,性能がよくなったのか小型化していて,強い線がなかなか描けなくて,最初は調整に手間取りました。
エアブラシを用い,リアルな女性を描いたイラストレーター。
※空山 基(そらやまはじめ)
イラストレーター。金属の肌をした,メカニカルな女性のイラストで有名。ソニーのペットロボット「AIBO」のデザインも手がけている。
4Gamer:
ほかにも影響を受けられたアーティストはいますか。
原氏:
僕は,フランク・フラゼッタさん※の絵が好きで,カット割りの部分などは参考にさせてもらったことも多いです。20年くらい前には,アレックス・ロスさん※の人物の塗り方や光の表現にも影響を受けていて,そこは今回のイラストでも,SF忍者的世界観の電飾のような光り方に取り入れていますね。
SFやファンタジーの挿絵で活躍したアメリカのイラストレーター。正確なデッサン力と神話的な雰囲気のイラストで知られる。「北斗の拳」に登場するラオウが,「我が生涯に一片の悔いなし!」の名言とともに最期を迎えるシーンは,フラゼッタ氏の影響を受けているという。
※アレックス・ロス(Alex Ross)
アメリカのコミックス作家。「キングダム・カム」「マーベルズ」といったコミックスで有名。写実的なタッチと卓越したデッサン力。そして「絵にするキャラクターと同じ姿をし,これを写真に撮影してからイラスト化の作業に入る」という手法で知られる。
4Gamer:
デジタル全盛の時代に,あえて紙とエアブラシを使った理由はあるのでしょうか。
原氏:
これからはアート的な方向性で,自分の手で描いた原画を,全て残していきたいと思っていたからです。だから,今回の仕事はいいきっかけになりました。十代の頃を懐かしく思い出しつつ,描くことができました。
4Gamer:
「北斗の拳」のケンシロウがブルース・リーからインスパイアされたという話は有名ですが,漆月魁渡を描くにあたり,実在の人物に影響を受けたところはありましたか。
原氏:
漆月魁渡は,すでにキャラクターデザインが決まっていたので,“実在の人物”からイメージを,といったことはないです。
もともとあるデザインや設定などは守らないといけないし,「不敵に笑みを浮かべる」と表情も決まっている。その上で,僕の絵だと分かるようにしてアレンジできるのはどこだろう……と考えたところ,不敵な笑みに「北斗の拳」のラオウと「花の慶次-雲のかなたに-」の前田慶次の要素を入れることにしました。あと,僕は和風の絵でも,絶対に洋風の要素を入れるんです。そうしないと,絵が決まらないんですよ。
4Gamer:
原先生の絵は独特のタッチで,誰が見ても一発で分かりそうなものですが,その上でなお,独自性を出される工夫があるわけですね。「絵が決まる」というのはどういう感覚なのでしょう。
原氏:
僕の絵における,かっこよさのウリが出ているということですかね。筋肉の付き具合や,「こういう漢になりたいな……」という憧れを表現できなければ描かないかもしれません。絵には,憧れとか,そういったものが入っていないと,キャラクターの魅力が読者に伝わらないと思ってますから。読者に,「こういう漢になりたいな」と思わせなければいけないと。
4Gamer:
その気持ちが込められているからか,原先生の漫画は,男女ともに魅力的なキャラクターばかりですね。今回は1枚のイラストということもあり,漫画における決めポーズのコマを描くのと違ったところはありましたか。
原氏:
漫画の場合は,このイラストのように引いた構図だと表情がよく見えないので,バストアップや腰から上の構図にすることが多いですね。
指定のあった,「不敵に微笑んでいる」「刀を抜く」「手裏剣を投げる」「瓦屋根の上を疾走する」といったいろいろな動きの要素も,漫画だと複数のコマで動画的に動きの流れを表現するので,キャラクターの全体像を捉えた上で,1枚の絵に全部の情報を入れるようなことはあまりやらないかな。
4Gamer:
普段の仕事である漫画では見られない手法なわけですね。背景は描いてみてどうでしたか。
原氏:
描きながら,イメージと違う感じになってしまった部分の調整をすることがありました。背景のお城も,もう少し自分でデザインしたかったかな。描いていくうちに,「自分ならこうしたい」というところがいろいろと出てきたんですよ。しゃちほこを大きくしたり,ここに電飾を入れたり,そこにエネルギーの塊みたいなものを置いてみたくなったり……。でも,すべてがいい経験だったし,楽しかったですよ。
4Gamer:
今回描かれたイラストは,8.8センチ×6.3センチのカードになるわけですが,それについて思うことはありますか。
原氏:
描いたイラストは,F4サイズ(33.2cm×24.2cm)なんですが,元の形から変わって絵が発表されることには慣れてます。漫画には文字が載りますし,単行本ではサイズが変わる。普段からキッチリとしたサイズで描くこともあまりないし,使いたいところを使ってもらえればいい。依頼を請けたら,それに沿って一生懸命描くだけですよ。
4Gamer:
変わることに抵抗はないと。
原氏:
この辺りの感覚は,1人で全てを描くタイプの漫画家さんとは違うのかもしれないです。もともと,半人前だからね。原作付きの絵描きで,いろいろな方と組んで作品を作っていくのに慣れてるからかな。
そうした意味では,料理人に近いんですよ。材料があって,足りないところがあれば足して,美味しいものにしてお出しする。そこに,自分のやりたいことを入れられるなら入れていくのが楽しいところですね。
4Gamer:
料理人ですか。原先生なら,和・洋・中,何でも行けますね(笑)。イラストを描き終えた今の気持ちをお聞かせください。
原氏:
次は,雑魚キャラや悪党を描きたいと思いました。カードの設定には合わないかも知れないけれど,イラストの端っこにいるようなヤツらですよ(笑)。
「マジック:ザ・ギャザリング」や「神河」ですが,ほかのキャラクターたちにしても,デザインがすごく自由で,世界観や方向性が違うのに棲み分けができている。こういった世界を舞台にした,SF忍者による戦隊モノを描きたいなと思いました。
4Gamer:
原先生のSF忍者戦隊モノですか! それは読んでみたいです。「いくさの子」の連載でお忙しいとは思いますが,期待しています。
純粋な憧れを込め,漢の姿を描き続ける
4Gamer:
ここからは,原先生の漫画や仕事に対する考え方を伺えればと思います。
原先生の漫画の大きな魅力の一つとして,先にも話の出た“漢が惚れる漢”が多く登場することがあると思います。
「北斗の拳」なら,ケンシロウ,レイ,ラオウ,トキ,ジュウザ。「花の慶次-雲のかなたに-」なら,前田慶次,直江兼続。そして「蒼天の拳」なら,霞 拳志郎,潘 光琳など,いずれも魅力的な漢たちですが,どうやったらこうした人物を描けるのでしょう。
原氏:
描けていますかね? だとすると,少年時代から,そうした人たちへの憧れがあったからかもしれませんね。僕は,かっこいい人がいると絵に描きたくなるんですよ。だから,小学生のときも,松田優作さんの絵を描いていた。ただ,“自分がそうなりたいのではない”んですよね。ヒーロー像を,絵にしたいという気持ちなのかな。
4Gamer:
憧れが込められているからこそ,その純粋さが読者の心を打ち,「こういう漢になりたい」と思わせるわけですね。
また,かっこいい人物だけでなく,人間臭いキャラクターたちが登場することも特徴ですよね。「北斗の拳」や「蒼天の拳」に出てくる悪党どもには,なんともいえない魅力があります。ところで,先生ご自身は漢たちと悪党,どちらの登場人物に親近感があるのでしょう。
原氏:
「北斗の拳」の世界にいたなら僕は,「そんな所で絵を描いてんじゃねえ!」ってコマの脇で殺されるヤツでしょうね。もしくは悪党から,「お前,絵がうまいからオレの絵を描け!」って,描かされるみたいな(笑)。実際に,小学校の時には,親分みたいなヤツから絵を描くように言われたこともありましたよ。
4Gamer:
世紀末世界で画業を貫くというのも,漢の姿だと思います。
絵を描くということですが,今はネットで資料を集めやすいし,同好の士とSNSで交流できたりと活動がしやすくなっています。その反面,自分の絵と他人の絵を比べやすくなっていて,「自分の絵はヘタだ」とショックを受ける人も多いようです。
そのような時代の中,絵描きの中の漢として,イラストレーターや漫画家を目指す人に向けてアドバイスをお願いできますか。
原氏:
自分と他人の絵を比べるといっても,絵は自由だし,決まりや資格があるわけじゃないから,全然気にすることはないんじゃないですかね。「俺の絵でなんで悪い!」って,出せばいい。
大切なのは,アイデアとか絵に対する思いじゃないかな。気持ちが入っていれば,その絵の良さは伝わると思いますよ。うまくなければ描いちゃいけないなんてことがあるなら,僕なんて描けないです。僕よりうまい人なんていっぱいいるんだから。でも,こんな僕の絵でも喜んでくれる人がいるから,やっていけてるんです。
4Gamer:
思いを込めて喜んでくれる人のために描くと。
原氏:
ほかの人と絵を比べてしまって悩みがちな人も,誰でもいいから絵を見てもらって,喜んでくれる人を見つけることが大事なんじゃないかなと思います。喜んでもらえれば,また描きたくなりますよ。
自分が思っている評価と,他人から見たときの評価は全然違います。思うように描けなかった部分がある絵でも,締め切りだったので仕方なしに提出したら喜んでもらえた,なんてことはいくらでもありますから。
4Gamer:
たしかに。自分も,少しダメだったなという原稿が,「いい記事だった」と言われることもありますし。
原氏:
学生時代,僕は勉強なんかしなくて,ずっと絵を描いてたんです。相撲取りみたいに身体が大きくて,常に竹刀を持ち歩いてる体育の先生に見つかった時なんかは,どうなるかと思ったけど,褒めてもらえて。
お袋も,自分が絵を描いていると嬉しそうにしてたし。大袈裟ですが,絵を描いていれば生きているのを許してもらえるのかなって(笑)。こういう感覚を感じることができれば,絵を描くことを続けていけるんじゃないでしょうか。
4Gamer:
まずは,自分の才能を喜んでくれる人を見つけることであると。原先生は,21歳の時にモトクロス漫画「鉄のドンキホーテ」でデビューされ,今年で画業40年目になります。仕事を長く続けていく秘訣はどんなところにあるのでしょうか。
原氏:
周囲から受ける刺激を大事にするようにしています。あと“厨二”の心も忘れないように(笑)。実は,結構ネガティブな方なので,周囲の人からの励ましも,自分にとっては大事なんです。2000年にコアミックスという会社を作ったのも,仲間がいないと続けられない,自分に足りないところを補ってくれる仲間が必要だからです。大ヒットが出た作家は,消耗した作家でもありますから。
4Gamer:
大ヒットを飛ばした後が続かないという話は,確かによく聞きますね。
原氏:
漫画でヒットを飛ばすと,一生食ってけると思われていたりするじゃないですか。でも,そうじゃないんですよ。ヒットして稼いだと思っていたら,そのほとんどを税金として納めないといけなくて,金なんて残らない。大ヒットしたけど,これからも描かないといけないんだって(笑)。
4Gamer:
描かないといけないのに,アイデアや身体などいろいろなところが消耗している。
原氏:
「花の慶次-雲のかなたに-」を描いていたころは,目も悪くなってきてて,思ったところにペンがいかない。それはものすごい苦しみで,漫画家を辞めるしかないと考えることもありました。
そんなギリギリの気持ちの中で,僕が漫画を描くことを続けられたのは,コアミックスの社長である堀江信彦さんやスタッフたちのおかげでなんです。会社を作って独立すると,僕が描かないと会社が成り立たない。だから頼りにされるし,されれば嬉しいものなんですよ。人間って。若いスタッフたちからエネルギーをもらえれば,僕のやる気も出てきますし。
4Gamer:
頼りにされることが,自身の喜びと活力になっていったと。
原氏:
ここまでやれたのは,いろいろな形で支えてくれたみんなのおかげでしょうね。健康面でも,もうダメだ,と思ったときにいい医療が出てきて,ギリギリで救われたりもしました。それで,もう少しやっていこう,と続けてこられた。
僕らの仕事は娯楽に関するものなので,人の生活に絶対必要というものではないんです。だからこそ死ぬ気でやらないといけないんですよ。ほどほどというわけにはいかない。
趣味なら楽しいんです。けれど,アートの世界は,才能があって死ぬ気でやってるヤツしか生き残れない。絵描きとしての勝負なんで,自分なりの勝ちを探していかないと。
4Gamer:
「蒼天の拳」では,「朋友(ポンヨウ)」という言葉を通して,友情や仲間の大切さが語られますが,原先生が仕事を続けてこられた上でも,朋友の存在が大きかったということなんですね。
原氏:
そうだね,朋友だね(笑)。朋友のおかげで,作家としても人としても生きていられる。描かなかったら,いなくなってたら,死んでるのと同じだから。コアミックスも,「終末のワルキューレ」というヒットも出てますし,設立してよかったなと。
4Gamer:
仕事に対しては,いつも覚悟を持って続けられているわけですね。心を引き締める思いです。では最後に,読者にメッセージをお願いできますか。
僕の描いた「漆月魁渡」ですが,世界で1人でも2人でも喜んでくれる人がいるといいなと思っています。そして,そのカードを使ってゲームも楽しんでいただければ,なおうれしいです。
「マジック:ザ・ギャザリング」や「神河」の世界観は面白く,もう5点くらい描いてみたいです。皆さんからも,ぜひウィザーズ・オブ・ザ・コーストさんに要望を出してください(笑)。
4Gamer:
ありがとうございました。
世界中にファンを持ち,「北斗の拳」の後も次々とヒットを飛ばす漫画界の巨匠は,画業40年にして新たな刺激を求め,真摯に仕事に取り組み続ける,謙虚なアーティストでもあった。
「才能があって,死ぬ気でやってるヤツしか生き残れない」アートの世界で戦い続ける原氏が,1人で描き下ろした「伝説のプレインズウォーカー ― 魁渡」。直筆サイン入りフォイル仕様カードが当たるキャンペーンも行われるので,ファンは見逃さないようにしよう。
「マジック:ザ・ギャザリング」公式サイト
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