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[TGS 2011]最新作「FIFA 12」の開発を指揮するEA Canadaの牧田和也氏に,今回の特徴をあれこれ聞いた
このたび4Gamerでは,牧田氏に話をうかがう機会を得て,FIFA 12がどう変わったのかを直接聞かせてもらった。本稿では前作からどのような部分が変わったのかについて,牧田氏のコメントと,筆者のプレイフィールを交えてレポートしていこう。
目指したのはリアルなサッカー
プレイヤー・インパクト・エンジンが実現した表現とは
グラフィックスやアニメーションもより滑らかになり,リプレイなども洗練された印象を受けた。なお,余談になるが,今年のサッカー界においてはウェイン・ルーニーが植毛をしたことが話題になったが,それはゲーム内でも再現されているとのこと。牧田氏は「僕達のほうが,実際の植毛より自然に再現できたかもしれません(笑)」という,強烈なギャグ(?)も披露していた。
実際に遊んでみて,とくに「プレイヤー・インパクト・エンジン」という物理エンジンの搭載が,変化として大きく感じられる。サッカーゲームに本格的な物理エンジンを搭載することで,大袈裟な言い方ではなく,本当にサッカー中継をテレビで見ているかのような,そんな錯覚を覚えるほどの挙動になっているのだ。
プレイヤー・インパクト・エンジンの目立った効果としては,選手が接触したときの表現を改善できたという点が挙げられる。例えばどの方向からどんな力が働いたか,それによりどういうリアクションを取るかが異なるのだが,これらの処理が物理計算によって行われているのである。
サッカーはご存じのとおり,2チームで22人もの選手が出場する。それだけ多くの選手がフィールド上にいるが,この人数の多さゆえに,サッカー用物理エンジンの開発は混迷を極め,2年もの歳月を要したという。
牧田氏によると,プレイヤー・インパクト・エンジンを取り入れた当初は,とにかく選手がバタバタ倒れてしまい,ゲームとして成立しなかったそうだ。だが調整に調整を重ねた結果,“サッカーの動き”が再現されるようになり,力の大小によって選手が転んだり,つまずいたりといった異なるリアクションをするようにもなった。
また,プレイヤー・インパクト・エンジンの導入により,選手の“怪我”の判定でリアリティが増すという副産物も生じた。物理エンジンが導入されたことにより,衝突時のスピードやどういった角度でぶつかったかなど,さまざまな条件が作用し,怪我の症状が変化するという。これは選手のリアクションからでも判断でき,軽い怪我なら足を引きずる,重傷なら痛みで立ち上がれないといったことが起こる。
これにより,キャリアモードで選手が怪我をすると,その選手にどう対処すべきか考える必要が生じるようになった。怪我の度合いでスタメンから外すか,次の試合がとても大事なら多少は無理をさせてでも起用するかなど,戦略にも影響を与えるという。
FIFAシリーズでは,これまで「オートプレス」という,ボタンを押しっぱなしにすることでタックルをするシステムがあったが,これは守備が単調になる傾向があったという。そこで今回「タクティカルディフェンス」という新システムが導入された。
これは選手同士で距離をとり,相手にプレッシャーを与えて前に行くのを阻むといったスタイルのディフェンスシステム。実際に触ってみた印象としては,距離をとりつつドリブラーにプレッシャーを与えていると,敵が「突破口はないか」「パスできる味方はいないか」といった,AIながら人間臭い動きを見せるのだ。これには非常に驚かされた。
牧田氏は「本作を初めて遊ぶ人でも2,3試合プレイするとこのシステムの良さを実感でき,どうすれば一番効果的なディフェンスになるかを考えてプレイするようになるんです」と話す。また,「ドリブラーへどう対処するか駆け引きを楽しめますし,そこがまた面白くなりました。大きな変更なので,調整は相当手間をかけてやりました」と,満足いく仕上がりになったことをアピールしていた。
前作「FIFA 11」ではクリスチアーノ・ロナウドの独特のドリブルであったり,メッシがボールを持つと,抜群のキープ力を見せ奪いにくくなったりなど,選手の個性がゲーム内でも表現されていたが,今回はそこをさらに発展させ,「プロプレイヤーインテリジェンス」というシステムが取り入れられた。
このシステムにより,AIがほかの選手の特性を理解できるようになったそうだ。一例を挙げると,FCバルセロナはパスが非常に洗練されているが,そういったプレイがゲーム内でもしっかり再現できるのだという。個々の選手を見ても,長身のピーター・クラウチがチーム内にいると,彼の背の高さを活かして高いクロスボールを送る傾向が増すとか,ダビド・ビジャがいるなら,クロスを上げるよりもショートパスを送り,ドリブル突破からシュートさせるように動かすとかいった具合に,チーム全体の戦術が変わってくるのだという。
今回は残念ながら,1人の選手を操作してゲームを楽しめる「BE A PRO」モードを試せなかったが,こちらは自分以外の選手はAI制御になるので,より進化した動きを実感できるはず。これまで以上にリアルなサッカー体験ができそうだ。
また,大きなトピックスとしては,これまで日本のプレイヤーが遊べなかった「Ultimate Team」が搭載された点だろう。このモードは選手アイテムを集めてドリームチームを作成できるモードだが,プレイヤー同士でアイテムを交換したり,オークションで競り合ったりなどできる。データはサーバで管理されており,ゲーム機以外にPCからでもアクセスできるので,ゲームを起動せずにチームを作ることができるのだという。
牧田氏によると,前作「FIFA 11」でこのモードを遊んでいる人は全世界に300万人ぐらいいるそうだ。最初は無料でスターターパックをもらえるのだが,追加のアイテムパックを買うためにリアルマネーを投資するプレイヤー多いそうだ。
オンライン対戦はディビジョン制によるマッチングを実現
ソーシャル的な楽しみ方も導入した
今回牧田氏は,そういった苦い経験をなくすために,「ディビジョン制」を導入することを決めた。ディビジョンは10に分かれており,最初はみんな同じラインからスタートとなる。そして対戦成績によってポイントが加算されていき,一定ポイントが溜まれば上位のディビジョンに移行されるという仕組みになる。これにより上級者はどんどん上に行けるし,そうでなければ,自分のペースでじっくり遊ぶことができるというわけだ。
また,対戦成績の表示にも対応する。これは相手のゲーマーカードを見た際に確認できるそうで,「何勝何敗した」「ゴールをいくつ決めた」など各種データを確認できるとのこと。
本作からの大きな要素としては,「EA SPORTS FOOTBALL CLUB」が挙げられる。これは試合をしていくことでポイントが溜まっていき,それを使ってプレイヤー同士でレベルを競えるそうだ。画面上には「友達がレベルアップした」とウィジェットによって表示されるなど,ユーザーの対抗意識をあおるようなシステムも取り入れられている。
また,「チャレンジ」というコンテンツも予定されている。これは牧田氏の構想では,ゲームが発売されたら週に2回ほど,実際の試合で起きた出来事をダウンロードコンテンツとして配信しようというものだ。「2010 FIFA ワールドカップ 南アフリカ大会」で同様のコンテンツが配信されていたが,「FIFA 12」でも導入されるようだ。
そのほかに,「SUPPORT YOUR CLUB」というコンテンツもある。これはゲーム開始時に自分が好きなチームを選択し,クラブ同士の順位を競おうというもの。例えばマンチェスター・ユナイテッドに50万人のファンが参加したとして,そこからポイントを集計し,ファンの数で割った1人あたりの平均ポイントを算出し,その数値で順位を決めるのだ。
1週間ごとにリセットされるそうだが,バーチャルの中とはいえクラブの順位が日々変動し,その週のチャンピオンを決められるというのは,なかなかアツそうだ。なお,ランキングは世界全体のほか,イングランド・プレミアリーグ,スペイン・リーガエスパニョーラといったリーグごとの表示にも対応される予定だ。
短い時間ながらデモを触ってみて,さまざまな進化を遂げた「FIFA 12」は,牧田氏の掲げる「リアルなサッカー」をしっかり再現できているように感じた。現在PlayStation NetworkやXbox マーケットプレースにて「FIFA 12」の体験版が配信されている。こちらではFCバルセロナやACミラン,マンチェスター・シティなどを使ってエキシビションマッチを楽しめるが,「FIFA 12」で導入された新システムをすべてチェックできる。
最後に牧田氏からファンに向けてのメッセージをいただいたので紹介しよう。
「『FIFA』シリーズは,サッカーのガイドブック的な存在にもなれたと思いますし,本作を通じてサッカーの新しい魅力を理解してもらいたいです。『FIFA 12』はチームの試合の展開とかを見ていても楽しめますし,ぜひ一度触ってほしいですね。何か気になるところがあったらフィードバックをもらえると嬉しいです。こちらも改善できるよう,努力していきたいと思います」
- 関連タイトル:
FIFA 12 ワールドクラス サッカー
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