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世界屈指の盛り上がりを見せるeスポーツ大会「Intel Extreme Masters Sydney」レポート。オーストラリア特有の雰囲気に圧倒されてきた
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印刷2018/05/07 20:14

イベント

世界屈指の盛り上がりを見せるeスポーツ大会「Intel Extreme Masters Sydney」レポート。オーストラリア特有の雰囲気に圧倒されてきた

 豪州時間2018年5月4日〜6日,オーストラリアのシドニーにて「Intel Extreme Masters Sydney 2018」が開催された。Intelがメインスポンサーとなるこのイベントは,「Electronic Sports League」(ESL)を運営するTurtle Entertainmentが2007年にスタートしたもの。
 eスポーツ大会としては世界最大規模であり,ここシドニーでは「Counter-Strike: Global Offensive」の試合が行われた。

 シドニー大会の会場は2000年のシドニーオリンピック時に整備された「オリンピックパーク」の「Qudos Bank Arena」(シドニー・スーパードーム)。シドニー市内から車で30分ほどの場所にある。
 多数の運動施設が立ち並ぶ,いわゆるオリンピック跡地ではあるが,シドニーのそれは運動やイベント施設としての再利用に成功しており,本大会以外にも多数のイベントが開催されていたようだ。

 4Gamerは昨年もIEM Sydneyに参加していたが,筆者自身が参加するのは初めて。国内で開催されているeスポーツ大会は現地で観戦しているが,海外で開催されるeスポーツ大会はストリーミング配信で見るだけで,実際に会場に行ったことはない。そこで今回は海外ならではの空気感を中心にレポートしたい。

会場の入り口には既に長蛇の列ができていた
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 5月4日,日本ではゴールデンウィーク真っ只中だが,オーストラリアはごく普通の平日である。にもかかわらず,Qudos Bank Arenaの前には観客の入場待ちの列が出来ていた。

 オーストラリアはeスポーツ観戦においてはとくに盛り上がる場所で,純粋に試合を楽しむファンが多いらしい。開場前にも関わらず,練習なのか「Aussie Aussie Aussie!」「OI OI OI!!」という掛け声が聞こえてきた。
 この「Aussie(オージー)」と「OI(オイ)」の掛け声は試合中に良く発せられるもので,オーストラリア特有のものとのこと。ここぞという場面では必ずこの掛け声が会場に響きわたる。
 この日に行われた試合は準々決勝。2017年は8チームだった出場チームが今回は倍の16チームとなったため,日程を1日増やし,準々決勝から会場での試合が行われたのだ。

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会場内にはPCメーカーのブースがあり,購入したパーツでPCを組むというコーナーも
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 第1試合は「FaZe Clan」と「Fnatic」という対戦カード。両チームとも屈指の実力を持つ(この場にいるので当然だが)チームで,優勝候補の一角と言われているらしい。
 IEM Sydneyの特徴はその観客のテンションにある。応援するチームが特別に決まっているわけではなく(もちろん決まっている人もいるだろうが),すべての試合を観戦し,すべての試合で応援する。とはいえ応援するチームが決まっていたほうが声を出しやすいのか,試合が進む中で自然と応援するチームに偏りが生まれてくるようだ。
 今回,その流れはFaZeにあったが,Fnaticの素晴らしいプレイにも惜しみない拍手が送られる。一緒に観戦していて実に気持ちがよく,非常に楽しい気分になる。試合が進むにつれ筆者も「Aussie Aussie Aussie!」「OI OI OI!!」の掛け声に参加するようになっていた。

Aussie Aussie Aussie! OI OI OI!!
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 1日めで会場の盛り上がりがピークに達したのは第2試合,地元オーストラリアのチーム「Renegades」対「MouseSports」の対戦だ。さすがに地元チームの声援は1試合めに輪をかけて盛り上がり,キルを取るたび,そしてラウンドを取るたびに大歓声が上がる。
 先に1マッチをMouseSportsに取られていたため,そこからの追い上げを見せるRenegadesの活躍は会場を大いに盛り上げた。聞くところによると,ここまで会場が盛り上がるのはオーストラリアならではらしい。会場の一体感はかなりものだ。

 中でもRenegadesのNifty選手の活躍は会場が酔いしれた。手を上下させる独特のポーズと共にNiftyコールが巻き起こるほどだ。
 試合の結果は延長戦に次ぐ延長戦という,大接戦の末,MouseSportsに軍配が上がった。試合終了時刻は23:00を回ろうかというころだったが,観客はほとんど残っていた。

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ゲームの展示ブース。VRを利用したゲームのほか,「PUBG」や「Fortnite」などのゲームがプレイアブル展示されていた
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人気選手のMeet&Greetイベント。このとき行われたのはオーストラリアのチームRenegadesの選手のもので,長蛇の列ができていた
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 続く5月5日,この日は準決勝が行われた。Fnaticを下したFaZe Clanと準決勝への切符を予選で手に入れていた「Tyloo」の試合だ。強豪FaZeへの応援の声が強いが,Tylooに対しても(それが煽っているのかもしれないが),FPSなどの対戦ゲームでよく聞く「台湾 No.1」という言葉を模して「Tyloo No.1」という掛け声が響いた。オーストラリアの観戦者の特徴は惜しみない応援と,拍手,そして容赦のないブーイングにある。力を発揮しきれてない選手にはときにブーイングが起こり,その選手がキルを取ったときにはしっかりと拍手が起こるのだ。

 選手としては少し心に来るものがあるかもしれないが,無反応よりはマシだろう。選手というより,競技としての「CS:GO」あるいはeスポーツを愛するオーストラリア人の熱意を感じる。
 第2試合は「Astralis」とMouseSportsの試合だ。この試合で勝利したほうがFaZe Clanとの決勝戦に挑む。都合により観戦できなかったが,Astralisが勝利し,決勝への切符を手に入れた。

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 そして5月6日,FaZe ClanとAstralisによる決勝戦だ。この日は日曜日ということもあって,会場には1日め,2日めをしのぐ,沢山の人が訪れていた。
 決勝戦を前に行われたのは「Team U.K」対「Team Australia」のショーマッチだ。この試合がまた非常の面白い。オーストラリアのホームに放り出される,U.Kは完全にアウェイで,喋るたびにブーイングの嵐。多少,プロレス感が漂っていたが,オーストラリアチームへの応援,U.Kチームのアウェイ感は非常に見ごたえがある。
 「ウゥー」と高い声でカンガルーの声真似をする新しい声援も開発されたようで,このノリの良さは見習いたいと思った。

 ショーマッチを終えた後の決勝は興奮も最高潮といった状態。ここまできて,会場にいる人の大半は「良い試合をみて,応援したい」だけなのだ,ということに気づいた。彼らにとってはどっちのチームが勝っても,熱い試合が見られればそれでいいのだと思う。ノリ的にはフィジカルスポーツの観戦と同じで,至極真っ当なeスポーツの楽しみ方だと感心した。


 試合はというと,終始,FaZe Clanが優勢に展開していた印象だ。Astralisも負けじと食い下がり,幾度か延長戦に持ち込むが1試合め,2試合めともにFaZe Clanに取られてしまう。
 3試合めのマップは「Train」で開幕防御側だったAstralisはラウンド勝利という面でリードはするものの,そこは防衛有利のTrainということで,攻守が変わった段階でFaZeが一気に取返し,逆転。優勝の栄冠を手にした。

FaZe Clanが優勝を決めた瞬間。観客総立ちで歓声が上がる
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優勝の盾を手にするFaZe Clanの面々
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 総じてIEM Sydneyは面白いeスポーツイベントだ。この手の盛り上がりが日本のeスポーツ大会でできるかと言われれば,無理と言わざるを得ないだろう。靴にお酒を入れて飲む「SHOEY(シューイ)」なんかはまず無理だし,ファンでもないチームの試合を観戦することもあまりない文化だろう。
 一方で,女性の観戦者という面では日本のeスポーツの方が参加率が高く思えた。IEM Sydneyの男女比は9:1くらいで,女性の姿はほとんど見かけない。一方,日本のeスポーツイベントだともう少し高く,大体どのイベントでも7:3くらいの割合で,女性がいる印象だ。このあたりに,日本のeスポーツのヒントがありそうな気がする。

 IEM Sydneyで感じた素直な感想は,総じて盛り上がり,すべての観客が楽しんでいるということだ。eスポーツをスポーツとしてとらえ,純粋にその試合を楽しんでいる。そうした周りのテンションに合わせて,自分も楽しくなっていく,そうした空気感が存在した。
 この空気感はおそらくオーストラリア独特のもので,真似をしようとしてできるものではないと思うが,日本でも同じようなイベントができれば,それはきっとすごく素敵なことなのだと思う。いつの日か,そんな日が来ることに期待したい。

「Intel Extreme Masters Sydney 2018」公式サイト

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    Counter-Strike: Global Offensive

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