レビュー
ソフトでメロウなタイトルが多い今こそやりたい,本格派フライトシミュレータ
蒼の英雄-Birds of Steel-
KONAMIから2012年3月8日にリリースされる「蒼の英雄-Birds of Steel-」(PlayStation 3/Xbox 360。以下,蒼の英雄)は,第二次世界大戦の空の戦いをモチーフにしたコンバットフライトシミュレータだ。筆者は独身だが歳だけはとっているので,「昔の洋ゲーは,フライトシミュレータが多かったんだよなあ」などと,感慨にひたってみようと思うのだが,どうですか? アドベンチャーとフラシムが主流だった欧米ゲーム業界に,やがてFPSとかRTSとかTPSとか,現在の市場の大多数を占めるゲームジャンルが次々に生まれ,次第にフライトシミュレータはコアゲーマー向けのジャンルになっていったのだが,筆者は相変わらず好きなのだ。
どう考えてもポリゴン100個もないだろうという紙飛行機のような戦闘機を,開発者がF-15 ストライクイーグルだって言うからF-15 ストライクイーグルだと思い込み,一生懸命,心の目で見たことも懐かしい思い出だが,蒼の英雄はそんなかつてのコンバットフライトシミュレータのDNAを熱く引き継ぐ新作タイトルであり,念のためいうと,紙飛行機は出てこない。
開発はロシアのデベロッパ,Gaijin Entertainmentが担当しているが,会社の名前がちょっとくだけた感じで,薄着のアニメ風ギャルが,自分の体よりも大きい剣を振り回して戦う「X-Blades」で鮮烈デビューを飾っただけに,カジュアルなメーカーというイメージを持たれているかもしれない。実は同社は,歴史と伝統を誇る「IL-2 Sturmovik」シリーズの一本,「IL-2 Sturmovik: Birds of Prey」(2009年)を制作した経験もある実力派なのだ。
Microsoftが「Combat Flight Simulator」シリーズの制作を長期間休止しているので,今のところ,第二次世界大戦をテーマにしたフラシムシリーズは「IL-2 Sturmovik」だけになってしまった。そんな状況の中,KONAMIという大きなパブリッシャからコンバットフライトシミュレータの新作が登場したわけで,意外な感じを受けた人も多いはず。
もっとも,制作のアナウンスは2011年5月のことだったが,以降,あまり情報が出てこなくて,ちょっとヤキモキしたりした。それがこのたび,無事発売の運びとなったというわけで,嬉しいなあ。さっそく軽くプレイしてみたので,そのインプレッションを少々。
蒼の英雄は,本格的なフライトシミュレータだ。月並みな表現で恐縮なのだが,「ガチ」ってやつ。どのくらいガチかというと,まず,主人公らしい主人公はおらず,ミッションの合間にはさまる,愛と勇気と裏切りの感動ムービーなどはない。プレイヤーは,一人のパイロットとして,第二次世界大戦の実際の作戦をベースにしたミッションに挑んでいくことになる。成功すれば「ミッション成功」と表示され,失敗すれば,「ミッション失敗」と表示される。しつこいようだが,花束を持った美女が空港で「お帰りなさい。だーい好き」と出迎えたりはしてくれないのだ。ガチでしょ?
しかし,肝心の戦闘については,アーケードだからといって簡単になっているわけではない印象だ。飛行そのものは,例えばアーケードでは失速がなくて無理なマニューバなどもいけちゃうけど,敵機に背後につかれて銃弾を撃ち込まれれば,あっけなく墜落する。ありゃ。……うーん,男の戦いはやはりこうでなくちゃ(強がり)。
雷撃の場合,高度をググッと下げて進路を維持することになり,爆撃行程にある間は,敵艦からの攻撃を受けまくることになる。艦砲がパッパッと黒い花を空中に咲かせる中,アメリカ機で飛ぶ場合,「オーケーだ,ベイビー! ステイ・オン・ターゲット!」と,また日本軍機で飛ぶ場合「よーそろー」と声を出すとその気になれるので試してみよう。イヤならいいです。
急降下爆撃は,引き起こしが遅れると,爆弾じゃなくて本人が突撃してしまうことになるので注意が必要だ。雷撃と急降下爆撃,どちらも普通に飛んでいると命中シーンが見られず,視線をぐるりと回す必要があるが,操作に忙しくてそれどころじゃないので,「ミッション成功」の表示が出て,ああ,オレは作戦に成功したんだと納得する潔い仕様だ。カッコ良すぎる。ただ実を言うと,魚雷なり爆弾なりを投下した際,投下ボタンを押し続けることで,視点が爆弾や魚雷に切り替わって命中までのシーンを見ることができるので,見たがりの人も安心してほしい。とはいえ,その間も自機は飛行を続けているため,敵が吹っ飛ぶ様子に熱中していたら自分の飛行機が何かにぶつかって墜落した,なんてことも起きるかもしれない。痛し痒しだ。
ゲームモードは,「ヒストリカルキャンペーン」「ミッション」「ダイナミックキャンペーン」など,バラエティに富んだものが用意されている。ヒストリカルキャンペーンは,日本もしくはアメリカ合衆国のパイロットとして,真珠湾攻撃に始まる太平洋戦争で,日米ががっぷり四つに組んだ1941年から1942年までを戦い抜くというものだ。ミッションに成功すると,次のミッションがアンロックされるというシステムで,日本の場合,真珠湾に続いて珊瑚海海戦,ミッドウェー海戦,ガダルカナル島の戦いと続いていく。
ミッションでは,南ヨーロッパ戦線,西ヨーロッパ戦線,東ヨーロッパ戦線,そして太平洋戦の4つのキャンペーンが用意されており,例えば南ヨーロッパ戦線の場合,ドイツ軍がマルタ島を急襲した「カレンダー作戦」など,いくつかの任務で構成されるというアンバイだ。
ダイナミックキャンペーンは,「マルタ包囲戦」「ポートモレスビーの戦い」など,歴史的な8つの戦いに参加するというものだ。こちらもそれぞれが複数のミッションで構成されているが,一つのミッションの戦果が次のミッションに影響を与えるところがポイント。例えば,難戦の果てにベテランパイロットの多くが散華してしまった場合,次の戦闘では補充の新兵ばかりになり,作戦遂行がますます厳しくなるとか,そういう感じだ。
こうしたさまざまなモードに,アメリカ,日本,ドイツ,ソ連,そしてイタリアの飛行機乗りとして挑んでいくのだ。
このほか,なくてはならないマルチプレイやミッションエディット機能なども用意されており,短い言葉で表現すると「盛りだくさん」。かな? すべてをひと通り終わらせようと思ったら,相当な時間がかかるはずで,お得感タップリ。言うまでもなく,それぞれのミッションは,単なる空中戦から,緊急着陸,地上の砲台の殲滅と,その内容は実に多彩。
難度もマチマチで,あっけないほど簡単に終わるミッションから,どうやって勝てばいいのこれ? とコントローラを投げたくなってしまうものまで,こちらも多彩。最近のゲームの多くにある,あそこへ行ってアレして,次はここへ行って,コレして,みたいな親切さはやや薄めで,目標などは表示されるものの,ミニマップと自分の周囲を,目を皿のようにして睨みつけなければならない。
グラフィックスは,さすがに最新タイトルだけあって,なかなかハイレベルだ。広大な土地を描かなくてはならないフライトシミュレータの場合,子細に見ると風景は結構ぞんざいに描かれていたりもするが,本作の場合,町並みや森なども,かなり詳細に描かれているという雰囲気だ。また,太平洋戦争の舞台となる広大な海の様子も非常に美しい。海に沈む夕日など,大きな自然の中に包まれていると,人類の闘争などささいな事のように思えるが,敵の弾が命中するとムカッとくる。やりやがったな!
ともあれ,最近の誰でも飛ばせる系のフライトものだと思ってかかると,ちょっと当惑するはずだ。経験者の筆者が言うのだから間違いない。墜とされまくり。うう。
戦果はすべてプレイヤーの技量に係わってくるし,「弾がよく当たる秘薬」をゲーム内ショップで買うなんてことは,もちろんできない(ただし,機体の成長要素は用意されている)。つまり,極めれば強くなり,胸を張ってエースと名乗れるのだ。挑戦のしがいがあるし,上にも書いたように内容は盛りだくさん。興味があればぜひどうぞ。
「蒼の英雄-Birds of Steel-」公式サイト
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