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[CES 2014]AMDは正式発表直前のKaveriを強烈アピール。2014年は飛躍の年になるか?
イベントのテーマは「Enabling Today, Inspiring Tomorrow」。1月14日の正式発表が予告済みの新世代APU「Kaveri」(カヴェリ,開発コードネーム)が登場し,AMDが長年にわたって研究開発してきた「Heterogeneous System Architecture」(以下,HSA)がいよいよ立ち上がる2014年は,AMDにとって飛躍の年になるのだろうか。一部は速報記事ですでにお伝え済みだが,イベントの内容をあらためて紹介してみたい。
Kaveriは総合性能で競合を凌駕する
もっとも,Kaveriの概要は2013年11月に開催された「AMD Developer Summit 2013」(略称,APU13)でおおむね明らかになっている(関連記事)。なので基本的にはおさらいとなるが,Su氏の話に沿って,Kaveri関連の話題をまずはまとめておこう。
Kaveriは,第3世代Bulldozerマイクロアーキテクチャである「Steamroller」(スチームローラー,開発コードネーム)ベースのCPUコアと,最新世代のGPUアーキテクチャである「Graphics Core Next」(以下,GCN)を統合したAPUとなる。
Su氏の言葉を引けば,「Steamrollerは既存のCPUコア(※筆者注:Piledriver世代)に対してIPC(Instructions Per Clock,クロックあたりの命令実行数)で20%の性能向上を果たし,よりCPU負荷が高いアプリケーションに対応できるようになる」「Kaveriにはハイエンドグラフィックス,たとえばHawaii(=Radeon R9 200シリーズ)と同じ技術を用いたGPUが統合されている。ご存知のように,これは新世代の据え置き型ゲーム機のグラフィックスにも用いられており,Kaveriのグラフィックス能力は飛躍的に向上している」とのことだ。
さらにSu氏は「何より重要なのは,Kaveriが世界で初めてHSAをサポートする製品になることだ」と強調している。すでに発表されているとおり,GPUとGPUがメモリ空間を完全に共有できる「hUMA」や,GPUタスクを自在にディスパッチできる「hQ」のサポートは,Kaveriで始まるのだ。
それに付け加える形で,Intelの「Core i5-4670K」に対し,Kaveriが「3DMark」で約187%のスコアを叩き出すとしつつ,PC総合ベンチマークである「PCMark 8」のスコアが重要だともSu氏は述べていた。いわく「OpenCLによって,Kaveriではビジネスプロダクティビティのアプリケーションでも性能が向上する。プロダクティビティやWebブラウジング,ビデオチャットといった,今日(こんにち)のアプリケーションの性能をバランス良く計測するPCMark 8のスコアが,競合より20%以上高い」。要は,現行世代のアプリケーションでも十分な性能が得られるというわけである。
TOMB RAIDERではKaveriで30fps以上のフレームレートを達成でき,十分にプレイアブルだとアピールされた |
LibreOfficeのCalcがKaveriに最適化されており,アクセラレーションを有効化すると,演算速度が7倍以上になるという |
それを意識してかSu氏は続けて,Kaveriに最適化されたアプリケーションをいくつか紹介してみせた。たとえば,「TOMB RAIDER」が安定的に30fps以上のフレームレートを実現する。あるいは,オープンソースのオフィススイート「LibreOffice」がKaveriに最適化され,表計算「Calc」では演算アクセラレーションを有効化すると,無効化時と比べて7倍以上の性能が得られるといった具合だ。
というわけで,間もなく正式発表されるKaveriへの期待は高まる。Su氏が主張するように,ゲームだけでなく一般的なアプリケーションでも競合の製品と戦えるのであれば,かなり面白い製品となるのではなかろうか。
今年後半に登場する薄型ノート&タブレット向けのSoC
「Mullins」「Beema」の概要も語られる
Su氏は,将来の製品に関する言及も行っていた。氏がとくに力を入れて説明していたのは,開発コードネーム「Mullins」(ムリン)および同「Beema」(ビーマ)という,2つのSoC(System-on-a-Chip)製品である。
Mullinsが「Temash」,Beemaが「Kabini」の後継製品として2014年に登場する予定なのはすでに予告されているが(関連記事),Su氏はそれらについて,「極めて低消費電力で,完全な機能を備えたSoCになる」と予告している。GCN世代のGPUが統合されることで,「主要なアプリケーションにおいて,競合製品に対して高い性能を示す」と,ベンチマークの結果も示してみせた。
「このように,Mullinsは競合に対して200%以上,Beemaは300%以上もの3D性能を持っている。これはGCNによるものだ」とSu氏は述べ,この高いグラフィックス性能を活かす,次世代のタブレットプラットフォームをAMDとして研究していることを明らかにした。
その例として紹介されたのが,ポータブルゲーム機にもなるタブレットである。Mullinsを搭載し,1920
Windows 8.x搭載タブレットの市場はBay Trail-Tの登場でようやく立ち上がってきたところで,Temash搭載のWindowsタブレットは少数派だ。3D性能の高さを武器に,MullinsがWindowsタブレット市場に食い込めるのか,ゲーマーとしては興味を持って見守りたいところである。
ノートPC向けGPUも新しい型番ルールに
第1弾として「Radeon R9 M290X」以下3製品が登場
イベントでは,AMDでグラフィックス部門を統括するMatt Skynner(マット・スキナー)コーポレート副社長は,冒頭で,ノートPC向け新型GPUを発表した。
それによると,投入されるのは「Radeon R9 M290X」「Radeon R7 M265」「Radeon R5 M230」の3製品。Radeon R5型番のGPUが発表されたのは今回が初めてとなる。
Skynner氏によれば,複数のOEMから搭載製品の発売が予定されているとのことで,イベントでは下記のとおり製品が紹介された。
さらにSkynner氏は,Radeon R7 260搭載の「Steam Machine」と,FirePro搭載の「Mac Pro」も誇らしげに紹介している。
Mantleは,すでに3つのゲームエンジンで採用され,5社が20以上のタイトルで実装を進めているとのこと。残念ながら依然としてMantle版Battlefield 4の具体的なリリーススケジュールは明らかにならなかったが,こちらも引き続き注目していきたい。
というわけで,今年のAMDを占うカギは,まず「Kaveriがどうか」だろう。期待どおりの3D性能に加え,Su氏が強調したように一般的なアプリケーションでもライバルと伍せるかどうかは,14日には明らかになるはずだ。
次世代ゲーム機の心臓部を担うAMDが,KaveriでPC市場でも今より存在感を見せるようになれば,AMDにとって2014年が飛躍の年と言われるようになるのも夢ではない。AMDの動きは今やゲーム業界とも密接に関連しているだけに,ゲーマーとしても大いに注目していきたいところだ。
AMDのCES 2014ページ(英語)
- 関連タイトル:
AMD A-Series(Kaveri)
- 関連タイトル:
Beema,Mullins(開発コードネーム)
- 関連タイトル:
Radeon R9・R7・R5 M200
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