レビュー
「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア」を快適に遊べるGPUはどれだ? 公式ベンチマークを計16製品で試してみた
ベンチマークに用意された設定は豊富
最高品質と標準品質では見た目がかなり異なる
新生FFXIVベンチ ワールド編のメインメニュー |
一連のテストは概ね5分程度で完走し,最後にスコアが表示される。スコアの指標は公式Webサイト内の「計測スコアとプレイの目安について」(ページの一番下)に掲示されており,それによると3500あれば快適,5000以上でとても快適,7000を超えると非常に快適とされている。つまり,エントリークラスのGPUであれば3500を超えるかどうかがひとつの基準となるし,同様にミドルクラスなら5000,ハイエンドの場合は7000が基準になるだろう。
ベンチのスコア表示画面。この画面からスコアをTwitterでつぶやいたり,スコアや平均フレームレートをファイル出力できる |
ベンチマーク結果はテキストファイルで出力できる |
以上がベンチマークの流れだが,ベンチマークランチャーとなるメイン画面には[設定変更]ボタンも用意されており,これを押すと開く「設定変更」ウインドウからは,グラフィックス設定のプリセットを選択したり,設定項目を細かく調整したりすることができるようになっている。
高品質での各項目 |
詳細設定の細目は,影の表現やテクスチャ品質など多岐にわたっており,これらの設定をプリセットとは異なるものに変更すると,その場合,プリセットの表示は「カスタム」となる。
設定項目はどの程度変わるのか。今回は最高品質と標準品質で比較してみるが,最高品質に設定すると,「描画設定」ではグラデーションや透過光の品質向上,アンチエイリアシングの適用がチェックされ,「影の表示設定」が「すべて表示する」,「テクスチャ品質」も「基本的ななめらかさ」「角度/距離でのなめらかさ」が「高品質」になるなど,(当たり前だが)高画質に寄った設定となる。
これが標準品質になると,「描画設定」はグラフィックス処理負荷を抑えるための項目が選択されるようになり,「影の表示設定」が「自分と背景のみ表示する」,「テクスチャ品質」が「通常品質」「簡易品質」に変わるといった具合だ。ほかにもかなりの違いがあるので,興味のある人は下に示した設定変更ウインドウのスクリーンショットで確認してほしい。
最高品質での各項目 |
標準品質での各項目 |
実際に最高品質と標準品質のベンチマーク画面を見比べたとき,最も分かりやすいのは影だろう。ベンチマークテスト中はプレイヤーキャラクターが登場しないためか,標準品質を選択すると,キャラクターの影が軒並み省略される。
最高品質での影の描写(拡大すると全体を表示,以下同) |
標準品質では影が描写されていない |
次の画面では,地面の描写を見比べてみたい。最高品質だと高解像度のテクスチャが適用されるのに対し,標準設定ではのっぺりとした低解像度のものに変わる。手前に見える門のところで,最高設定のほうにだけアンチエイリアシングが効いている点にも注目してほしい。
最高品質での地面の描写 |
標準品質での地面の描写 |
お次は樹木だ。最高品質と標準品質では,樹木の描写がまったく異なっていると分かる。
最高品質での木の描写 |
標準品質での木の描写 |
ちなみにベンチマーク画面の解像度は,設定画面のプルダウンメニューから選択できる。フルスクリーン表示には対応しておらず,すべてウインドウモードでの動作となる。
GTX TITANを含む16製品でテストを実施
最高設定と標準設定でスコアの傾向を見る
今回用意したテスト環境は表のとおり。GeForce勢は「GeForce GTX TITAN」(以下,GTX TITAN)から「GeForce GT 640」(以下,GT 640)までの,いわゆるKepler世代の9製品。一方のRadeon勢は,「Radeon HD 7970 GHz Edition」から「Radeon HD 7750」までのGCN(Graphics Core Next)アーキテクチャを採用するとなる。合計15製品だ。
ただし,ZOTAC International製の「ZOTAC GeForce GTX 660 Ti」やGIGA-BYTE TECHNOLOGY製「GV-R795WF3-3GD」など一部製品は,メーカーにより動作クロックが引き上げられたクロックアップ品であるため,MSIのオーバークロックツール「Afterburner」(Version 2.3.1)を用いて,リファレンスレベルにまで引き下げてテストを行っている。
用いたグラフィックスドライバは,GeForce用が「GeForce 314.07 Driver」,Radeon用が「Catalyst 13.2 Beta6」だ。本稿の掲載時点では,「GeForce 314.14 Driver Beta」あるいは「Catalyst 13.2 Beta7」と,より新しいドライバがリリースされているが,テスト開始時期の都合上,ひとつ前のリリースになる点はお断りしておきたい。もっとも,GeForce 314.14 Driver BetaにもCatalyst 13.2 Beta7にも「新生FFXIVへ最適化を行った」という言及はないので,大きな問題はないはずである。
※そのまま掲載すると縦に長くなりすぎるため,簡略版を掲載しました。表画像をクリックすると,完全版を表示します |
テスト方法だが,新生FFXIVベンチ ワールド編を何度か動作させてみたところ,スコアにして300程度のブレが生じる場合があった。そこで今回は,それぞれのカードで2回ずつベンチマークを実行して,その平均をスコアとして採用することにしている。
解像度にはアスペクト比16:9で選択できる解像度から1920×1080ドットと1600×900ドット,1280×720ドットの3つを選択。それぞれで最高品質と標準品質のテストを行った。なお以下では,文中とグラフ中ともに,グラフィックスカード名ではなく,「GeForce」および「Radeon」という表記を省略した状態のGPU名で表記する。またそのとき「GHz Edition」は「GE」と略す。
最速はGTX TITAN,最高品質でかなり快適さを
実現するにはミドルレンジ以上が必須
では順にテスト結果を見ていこう。グラフ1は最高品質におけるベンチマークスコアをまとめたものとなる。やはりというか,2013年春時点における最速のシングルGPUであるGTX TITANが頭ひとつ抜けた印象だ。
その一方で,GTX 690はGTX 680にすら届いていない。その理由はベンチマークソフトの公式サイトにも記述されているように,新生FFXIVベンチ ワールド編がSLIに対応していないためだ。公式サイトには,CrossFireを含めて「製品版では対応できるよう鋭意開発中」とも記載されているが,現状,SLIやCrossFireの効果は発揮されないので,この点は押さえておく必要があるだろう。
ウインドウ表示でなく,フルスクリーン表示に対応すれば,SLIやCrossFireの正常動作に期待できるようになると思われるので,この点は今後のアップデート待ちということになるはずだ。
さて,最高品質の1920×1080ドットにおいてスクウェア・エニックスが提示する「非常に快適」とする7000を超えるラインは,GeForceならGTX 670以上,RadeonならHD 7970以上となる。全体的に見て,Radeonのスコアは今一つ伸びきっていない,といったところか。もちろん解像度を下げると,1280×720ドットではGTX 650 Ti以上およびHD 7850以上と,そのハードルはぐっと低くなる。
一方で,HD 7750は1280×720ドットで「とても快適」となる5000を上回るのに対し,GT 640は5000を下回った。GT 640を搭載する環境で「とにかく快適さを求めたい」という場合は,グラフィックス設定も下げる必要がありそうだ。
グラフ2は,最高品質でベンチマークテストを回したときの平均フレームレートをまとめたものである。平均フレームレートとベンチマークスコアは相互関係があるので,傾向やスコア順はまったく同じだ。
なお,スコアを見る限り,「非常に快適」とされるスコア7000を得るためには,平均60fps以上の獲得が必要なようだ。また,平均40fpsあれば「とても快適」,平均30fpsで「快適」ということになる気配である。
続いて,標準品質でのベンチマークスコアをまとめたものがグラフ3となる。ここでは,GeForce勢が最高品質と比べて大きくスコアを伸ばしているのに対して,Radeon勢がそれほど伸びていないのが目を引く。描画負荷が軽過ぎてコアクロックが上がりきっていないのかとも考えたが,TechPowerUp製のGPU情報表示ツール「GPU-Z」(Version 0.6.7)を用いてコアクロックを追ってみたところ,Radeon勢でもコアクロック値に問題は見られなかったので,純粋にドライバの最適化がまだ足りていないということなのだろう。
なお標準品質だと,GT 640でも1280×720ドット解像度でスコア7000を超えてきた。標準品質でプレイする限り,GPU性能にはそれほど神経質にならなくていいようだ。
グラフ4は,標準品質における平均フレームレートをまとめたものだ。1920×1080ドットでも,GTX 650 Ti以上とHD 7850以上であれば平均60fpsを超えている。
最後にログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,FFXIVベンチ ワールド編実行中のシステム全体の消費電力を測定してみた。ベンチマーク実行中に,最も高い消費電力値を記録した時点をスコアとして採用している。
結果はグラフ5のとおり。最も高いスコアを叩き出したGTX TITANではあるが,やはり相応に消費電力も高くなってしまっている。また,GTX 690の消費電力がGTX 680より低いのは,SLIが有効にならないためだ。
一方,HD 7970 GEはGTX 680と,HD 7970はGTX 670とそれぞれほぼ同じ消費電力になっている点も興味深い。
ベンチマークは全体的に軽め
正式スタート前には新ベンチが登場の予定
以上,全体的に現行世代のGPUでは高めのスコアが出ることから,新生FFXIVベンチ ワールド編は,さほど負荷の高くないベンチマークと言っていいだろう。ただし前述したように,見た目でハッキリと分かるぐらい,最高品質と標準品質との差は大きい。もちろん費用の問題があるとは思うが,「ファイナルファンタジーらしいグラフィックス」を堪能したい場合は,「解像度1920×1080ドット,最高品質でスコア7000以上」を目安に,PCのアップグレードを図りつつ,新生FFXIVのサービスインを待つのが正解ではなかろうか。
なお,プロデューサー兼ディレクター吉田直樹氏がさまざまな質問に答えるライブ番組「第5回 FFXIV プロデューサーレターLIVE」では,正式スタート前にキャラメイクも体験できるベンチマークの公開が示唆された。新しいベンチマークがどのようなものになるのかも,楽しみだ。
ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア公式Webサイト
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