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TITAN
  • NVIDIA
  • 発表日:2013/02/19
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税込約39万8000円で国内市場に登場した「TITAN V」レビュー。Volta世代のGPUはゲームでどれだけ速いのか
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印刷2018/03/03 00:00

レビュー

税込39万8000円の「Volta」はゲームでどれだけ速いのか

NVIDIA TITAN V

Text by 宮崎真一


 2018年2月,NVIDIAのAI研究者向けグラフィックスカード「NVIDIA TITAN V」(以下,TITAN V)が国内で発売となった。
 TITAN Vは,GPUアーキテクチャ「Volta」世代のGPUを搭載するPCI Express x16接続型拡張カードとして史上初めてグラフィックス出力に対応することで大いに注目を集めてきたが,北米の直販ページ「NVIDIA Store」における価格は2999ドル(税別)と,極めて高価。NVIDIAの国内代理店である菱洋エレクトロの直販価格も39万8000円(税込)で,一般のゲーマー向けとはとても言えない設定だ。

NVIDIA TITAN V
メーカー:NVIDIA
問い合わせ先:菱洋エレクトロ(販売代理店) NVIDIAグラフィック製品に関するお問い合わせ
直販価格:39万8000円(税込)
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 とはいえ,GeForce Driverを導入でき,ゲームでも利用できるとなれば,Volta世代のGPUに秘められたゲーム性能が気になるという4Gamer読者は多いことだろう。今回,菱洋エレクトロから実機を貸し出してもらうことができたので,AI研究者向けグラフィックスカードがゲーム用途でどの程度の性能を発揮できるのか,詳しく見ていきたい。

NVIDIA TITAN Vの製品ボックスはまさかの白色。白い箱の上に金文字で「TITAN V」と入っている(左)。右はボックスを開けたところだ
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GTX 1080比で2倍のCUDA Core,そしてTensor Coreも集積し,HBM2と組み合わせたビッグGPUを搭載


TITAN VのGPU。刻印は「GV100-400-A1」だった。GPUパッケージ上でGPUダイを囲むようにHBM2があるのも分かる
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 TITAN Vは,Volta世代のGPU「GV100」を搭載するグラフィックスカードだ。GV100は,TSMCがNVIDIA専用に用意した12nm FinFETプロセス技術「12nm FFN」(FFN:FinFET NVIDIA custom)を用いて製造されており,そのダイサイズは815mm2と,極めて大きい。言うまでもなく,NVIDIA史上最大のプロセッサである。

 Voltaアーキテクチャで,CPUで言うところの「コア」に相当するミニGPUクラスタ「Graphics Processor Cluster」(以下,GPC)は6基構成となる。これは「GeForce GTX 1080 Ti」(以下,GTX 1080 Ti)や「NVIDIA TITAN Xp」「NVIDIA TITAN X」が採用するGPUコア「GP100」と同じだ。

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 しかし,GPCあたりの演算コアクラスタである「Streaming Multiprocessor」(以下,SM)は,GP100の10基に対してGV100では14基に増加している。GV100でもGP100でもSMあたりの32bit単精度浮動小数点演算(FP32)プロセッサ(=CUDA Core)数が64基,64bit倍精度浮動小数点演算(FP64)プロセッサの数が32基というのは変わっていないため,総CUDA Core数で比較すると,

  • GV100:6(GPC)×14(SM)×64(CUDA Core)=5376
  • GP100:6(GPC)×10(SM)×64(CUDA Core)=3840

ということで,規模としては1.4倍という計算である。
 歩留まり向上のためGV100では4基のSMが無効化されているので,総CUDA Core数は5120基に減るものの,同様にGTX 1080 TiやTITAN Xも2基のSMが無効になって総CUDA Core数は3584基に減っているため,規模感は依然として約1.4倍になっている(※GP100のフルスペックであるTITAN Xpとの規模差は約1.3倍に縮まる)。
 ちなみに5120基というCUDA Core数は,「GP104」コアを採用する「GeForce GTX 1080」の,ちょうど2倍だ。

 GV100では,SMあたり8基の「Tensor Core」(テンサーコア)を搭載し,フルスペックで664基,TITAN Vでは640基を利用可能になっている点にも注目しておきたい。Tensor Coreは行列同士の積和算を行うための専用プロセッサで,ゲーム用途では少なくとも今のところ無用の長物だが,このTensor Coreを搭載することも,GV100のGPU規模を大きくしている一因であることは押さえておきたい。

GV100のSM概要。かなりの部分をTensor Coreが占めている。「Tensor Coreとは何か」という話は西川善司氏による解説記事を参照してほしい
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 GV100は容量128KBのL1キャッシュを持ち,そこから96KBまでをキャッシュメモリとして利用可能となった点もトピックだ。要するに,「L1キャッシュとキャッシュメモリを,目的に合わせて柔軟に使い分けられるようになった」わけである。
 なお,6基のGPCで共有するL3キャッシュの容量はフルスペックだと6MBだが,TITAN Vでは一部が無効になって4.5MBとなっている。

CUDA Toolkitに含まれる「DevQueryDrv.exe」を実行したところ。L2キャッシュ容量が4.5MBだと確認できる
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GV100が採用するHBM2はDRAMダイを4つ重ねた4層構造で提供されるが,それが原因なのかどうか,パッケージは従来のGeForceと比べて厚くなっている
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 また,本段落の冒頭で示した写真でも分かるように,GV100ではグラフィックスメモリとして「High Bandwidth Memory」(広帯域幅メモリ)の第2世代モデルである「HBM2」を採用した点もトピックとなる。
 TITAN VにおけるHBM2のメモリバスインタフェースは3072bitで,メモリクロックは1.7GHz相当となるため,メモリバス帯域幅は652.8GB/s。これはGTX 1080 Tiの484GB/sに比べると約35%も広い。

NVIDIAコントロールパネルの「システム情報」からGPU情報を確認したところ
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テスト中のTITAN VのコアクロックをAfterburnerで追ったところ,1770MHzまで上がっていた
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 そんなTITAN Vの主なスペックを,GTX 1080 TiおよびGTX 1080という,現行世代のGeForceと比較したものが表1になる。TITAN VのGPU動作クロックはベース1200MHz,ブースト1455MHzで,GeForceと比べると抑え気味というのが見てとれるだろう。
 なお,後述するテスト環境において,MSIのオーバークロックツール「Afterburner」(Version 4.4.2)からコアクロックを追ってみたところ,ブースト最大クロックは1770MHzに達するのを確認できている。

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大規模な電源回路が目を引く基板デザイン。カード上にNVLinkインタフェースあり?


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 以上を踏まえ,入手したTITAN Vの実機を見ていこう。
 カード長は実測約267mm(※突起部含まず)で,これはGTX 1080 TiやGTX 1080のFounders Editionと同じ。ポリゴンをイメージしたと思われる,三角形状の凹凸が付いた外排気クーラーの外装もそっくりだ。ただ,その外装は銀ではなく金になっているため,見ためはやや豪華な印象である。

70mm各相当のブロワーファンを備えた2スロット仕様のGPUクーラーと,背面全体を覆うバックプレート採用のグラフィックスカードという意味で,TITAN VはGTX 1080 TiやGTX 1080のFounders Editionととてもよく似ている
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GTX 1080 TiやGTX 1080のFounders Editionでは通電時にカード側面の「GEFORCE GTX」ロゴが緑に光るが,TITAN Vは金色で,かつLEDイルミネーションは埋め込まれていない。SLIをサポートしないため,「スロット間が詰まったマザーボードでSLI構成をとるときのエアフロー確保用ギミック」としての,バックプレートのカード後方寄り部分を取り外せる機構もない
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 補助電源コネクタはGTX 1080 Ti Founders Editionと同じ8ピン+6ピンという構成。外部出力インタフェースも同じくDisplayPort 1.4×3,HDMI 2.0b(Type A)×1だ。

補助電源コネクタ周り(左)と外部出力インタフェース部(右)
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 GPUクーラーの取り外しはメーカー保証外の行為であり,取り外した時点でメーカー保証は失効することを断りつつ,今回はレビューのため,特別にクーラーを取り外して基板を見ていきたい。

バックプレート(左)そしてGPUクーラー(右)をそれぞれ取り外した例
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GPUクーラーのパッシブヒートシンク部を取り出してみた。お馴染みの「Vapor Chamber」(ヴェイパーチャンバー)構造を銅製ヒートシンクに組み込んだタイプだ
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基板全景。HBM2の採用によりメモリチップの実装面積は減ったが,その分をほぼまるまる電源回路に回したような外観だ
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 基板上で最もインパクトのある存在が巨大なGPUパッケージであることは論を俟(ま)たないが,個人的にはそれ以上に,基板上のメモリチップを省略することで生まれた余裕にこれでもかと電源回路をおごっているところに驚かされた。ざっくり,全体の7割は電源部と言っていいのではなかろうか。
 冷静になって確認してみると,VRMはGPUパッケージを挟み込むような形で16+2フェーズ分あり,GPU用と思われる部分のMOSFETには,ドライバICを1パッケージに収めたスマートパワーステージモジュール(=Driver MOSFET,DrMOS)であるON Semiconductor(旧Fairchild Semiconductor)製の「FDMF3170」を,フェーズごとに1基実装する仕様になっている。

VRMは,GPUパッケージを挟んで外部出力インタフェース側に7つ,その反対側に9つの計16フェーズ,さらにグラフィックスメモリ用に2フェーズが用意されているという豪華な仕様である。この写真は「9+2」部分に寄ったところだ
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GPUとインタフェースとの間に並ぶ,7フェーズ分のVRM。面積を電源部でフル活用している印象がある
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基板裏面にはチップタンタルコンデンサも多数実装。かなり大がかりな電源部であることが見てとれる

謎の接続端子。2系統あるようにも見える
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 TITAN Vの基板でもう1つ興味深いのは,クーラーに覆われ,そのままでは利用できないような状態で,PCI Express x16インタフェースのちょうど反対側にも端子があることだ。Tesla V100と基板を共通化しているために残っているのだとすれば,NVLink用ではないかという気もするのだが,TITAN Vでこの端子が“生きて”いるのかも含め,NVIDIAは何も語っていない。


GTX 1080 Ti,そしてCUDA Core数で揃うGTX 1080 SLIと比較。CUDA 9.0ベースのテストも軽く


 テスト環境のセットアップに入ろう。
 今回は,GTX 1080 Tiのほか,2枚合計でのCUDA Core数がTITAN Vと同じ5120基になる,2-way SLI構成のGTX 1080も,比較対象として用意した。現行のGeForce最上位モデル,そして,GTX 1080のユーザーがもう1枚買い足したケースと比較することで,Volta世代初のグラフィックスカードが持つ実力に迫ってみようというわけである。

 利用したグラフィックスドライバは,テスト開始時の最新版である「GeForce 390.77 Driver」。テスト終了とほぼ同時にRelease 390世代の,より新しいドライバが出てしまったが,タイミングの都合ということでこの点はご了承を。
 そのほかのテスト環境は表2のとおりだ。マザーボードのUEFI(=BIOS)。そして64bit版Windows 10 Proに対しては,俗に「Spectre」「Meltdown」と呼ばれる3つの脆弱性に対する修正を適用している。

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 テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション21.0に準拠。解像度はTITAN Vのスペックを前提に3840×2160ドットと2560×1440ドット,1920×1080ドットの3つを選択した。

ccminerを用いてVertcoinのマイニングを行っている様子。ここではLyra2REを用いているが,TITAN Vでは安定して92MH/s前後のハッシュレートが出ている
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 また,ゲーム用途からは離れるが,TITAN Vというグラフィックスカードの立ち位置を踏まえ,CUDA 9.0ベースのテストとして,マイニングツールである「ccminer」(Version 2.2.4)で実際に仮想通貨マイニングを行ったときの性能も比較してみたいと思う。

 ccminerは多くの仮想通貨のマイニングに対応しており,マイニングツールとしてCUDA 9.0にもいち早く対応を果たしている。さすがにマイニングではTITAN Vが持つTensor Coreを利用していないようだが,それでもCUDA 9.0に対応したことで,マイニングに用いるアルゴリズムのうちいくつかは高速化を果たしているという。
 そこで今回は,CUDA 9.0で高速化したとされるアルゴリズムの中から「Feathercoin」という仮想通貨のマイニングに用いられる「Neoscrypt」,「Maxcoin」のマイニングに使う「Keccak」,「Vertcoin」のマイニングで用いる「Lyra2RE」の3つを取り上げ,マイニング開始から30分後のハッシュレートをスコアとして採用することにした。

 テストは,PCでマイニングを行うにあたって一般的に利用される「プールマイニング」で行い,複数のユーザーが協力してマイニングを行う場となる「プール」には,上で挙げた3つをはじめ,多くのアルゴリズムに対応した「MINING POOL HUB」を利用している。
 実際には日時やアルゴリズムによってDiff値(難易度)が動的に変化するため,今回のテストも,厳密には横並びの比較にならない。しかし,Diff値が急激に変化することはそれほど多くないため,今回の結果からある程度の傾向は見えてくると考えている。


GTX 1080 Tiをおおむね圧倒するTITAN V。不安定なSLI次第ではトップに立つ


 順にテスト結果を見ていきたい。
 グラフ1は「3DMark」(Version 2.4.4264)の「Fire Strike」における総合スコアをまとめたものだ。TITAN VはGTX 1080 Tiに対して12〜23%程度高いスコアを示す一方,GTX 1080 SLIの81〜87%程度という位置に甘んじてもいる。
 前段でもお伝えしているとおり,TITAN VとGTX 1080 SLIでは総CUDA Core数が揃っているので,3DMarkのSLI最適化度合いと,両者の間にあるGPUコアクロックの違いがこのような結果を生んだという理解でいいのではなかろうか。

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 続いてグラフ2はそのFire StrikeにおけるGPUテスト結果「Graphics score」を抜き出したものとなる。
 Graphics scoreにおけるTITAN Vのスコアは,対GTX 1080 SLIで77〜79%程度,対GTX 1080 Tiで119〜126%程度となり,総合スコアと比べて,GTX 1080 SLIからの「引き離され度合い」が大きくなっている。CPUのスコアへの影響がなくなったことで,GPUコアクロックの違いが色濃く出たということなのだろう。

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 3DMarkのDirectX 12ベンチマークである「Time Spy」,その総合スコアはグラフ3に,Graphics scoreはグラフ4にまとめた。
 ここで注目したいのは,総合スコアでTITAN VがGTX 1080 SLI比90〜97%程度にまでスコア差を詰め,GTX 1080 Tiに対しては28〜35%程度とスコア差を詰めていることだ。DirectX 12タイトルではGPUアーキテクチャが同じ場合は規模勝負になりやすいので,この結果はさもありなんといったところである。

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 グラフ5〜7は「Prey」の結果だが,解像度2560×1440ドット以下の条件ではCPU性能が相対的なボトルネックとなり,平均フレームレートは140fps強で頭打ちの傾向を見せる。2560×1440ドットのGTX 1080 Tiだけは有意にスコアが下がるので,その意味だと「TITAN VとGTX 1080 SLIは立派」ということになるが,ともあれ,きちんとスコア差の出る3840×2160ドットを見てみると,平均,最小フレームレートのいずれもTITAN Vがトップに立った。平均フレームレートで言うと,GTX 1080 SLIに対しては約5%,GTX 1080 Tiに対しては約43%高いスコアだ。高解像度でスコア差が広がるのはメモリバス帯域幅の違いによるものだろう。

 GTX 1080 SLIのスコアが伸び悩んでいるのは,3DMarkほどにはPreyがSLIへ最適化されていないためだと思われるが,それでもTITAN Vが最も高いスコアというのは衝撃的である。

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 それに対し,ゲーム側がSLIへきちんと最適化できている場合,TITAN Vは動作クロックなどの理由でGTX 1080 SLIから置いて行かれることの好例となったのが,グラフ8〜10にスコアをまとめた「Overwatch」である。ここでTITAN Vは,GTX 1080 Tiに対して23〜26%高いスコアを示す一方,GTX 1080 SLIに対しては74〜82%程度に留まった。

 ただ,ここで注目すべきは力関係よりむしろ,1920×1080ドット条件で,TITAN Vの平均フレームレートが240fpsを超えてきたことのほうかもしれない。2018年3月時点で,最も垂直リフレッシュレートの高いゲーマー向けディスプレイは240Hz対応だが,Overwatchの1920×1080ドット,「ウルトラ」プリセットで“240Hzを賄える”単体グラフィックスカードがついに出てきたというのは感慨深い。

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 そもそもSLIに対応していないゲームを前にするとどうなるか。それが分かるのが「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」(以下,PUBG)である(グラフ11〜13)。1920×1080ドット条件では相対的なCPUボトルネックによってスコアが丸まりつつある一方,それ以上の解像度条件だと,GTX 1080 SLIは最小フレームレートの落ち込みが大きく,平均フレームレートも振るわない。そしてこうなると,GPUの規模で比較対象を圧倒するTITAN Vの独擅場だ。
 Preyと同様,高解像度になるにしたがって平均フレームレートでGTX 1080 Tiとのギャップを広げていき,3840×2160ドット条件ではGPUの規模にほぼ等しい約40%のスコア差を付けている点は要注目と言えるだろう。

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 グラフ14〜16にスコアをまとめた「Middle-earth: Shadow of War」(以下,Shadow of War)でも,傾向はPUBGをおおむね踏襲しているのが分かる。
 SLIが逆効果になって振るわないGTX 1080 SLIを尻目に,TITAN VはGTX 1080 Tiに対して平均フレームレートで17〜35%高いスコアを示した。ちなみに,ベンチマークレギュレーションが合格ラインとする「最小30fps」を3840×2160ドット条件でクリアできているのは,ご覧のとおりTITAN Vだけで,ここからもHBM2による高いメモリバス帯域幅の恩恵が感じ取れよう。

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 「Tom Clancy’s Ghost Recon Wildlands」(以下,Wildlands)のテスト結果がグラフ17〜19だ。
 WildlandsではGTX 1080 SLIが再び息を吹き返し,結果として,TITAN Vのスコアはその88〜91%程度に落ち着いた。対GTX 1080 Tiでは105〜111%程度で,やはり,高解像度ほどスコア差は広がっている。

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 続いてグラフ20は「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」(以下,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ)の総合スコアとなる。
 FFXIVはSLIに対応するため,スコアとしては2番手になるが,GTX 1080 Tiに対して6〜30%程度高いスコアを示し,3840×2160ドット条件で1万の大台を超えてきたのは立派だ。

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 グラフ21〜23はFFXIV紅蓮のリベレーター ベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものだが,ここで注目したいのは,GTX 1080 SLIで最小フレームレートが明らかに落ち込んでいることだ。平均フレームレートを見ただけだと問題ないように見えて,実プレイ時にカクついたりすることがあるのは「SLIあるある」なのだが,ここでもその傾向は出ているというわけである。
 翻って主役のTITAN Vは,3840×2160ドットで平均約70fps弱の最小40fps強。「FFXIVを4Kで満足にプレイできるGPU」がとうとう登場したと言ってしまってよさそうだ。

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 グラフ24〜26は「Forza Motorsport 7」(以下,Forza 7)の結果だが,Forza 7もSLIに対応していないため,GTX 1080 SLIはGTX 1080のシングルカード動作的なスコアに落ち付き,結果としてTITAN Vのスコアが抜きん出た格好になっている。対GTX 1080 Tiでは,平均フレームレートで4〜14%,最小フレームレートでは安定的に42〜43%高いスコアだ。

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 性能検証の最後はccminerの結果だが,ここでSLIは意味をなさないので,「2基のGTX 1080を並列動作させたもの」と捉えてほしい。
 Lyra2REのみスコアの数字が残る2条件と比べて大きく異なるため,見やすさの観点からグラフ27,28の2つに分けたが,NeoscryptとKeccakだとTITAN VはGTX 1080 Tiに対して32〜36%程度高いスコアを示すものの,GTX 1080×2に対しては86〜94%程度に留まり,GPUコアクロックの違いがスコアに与える影響を感じさせる。

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 一方,Lyra2REではTITAN Vが逆転を果たし,GTX 1080×2に対して約11%高いスコアを示した。
 Lyra2REでTITAN VがGTX 1080×2を上回っているのはなかなか衝撃的だが,ではなぜ,TITAN Vが上回ったのだろうか。想像の域を出ないものの,NVIDIAはGV100で,1クロックで同時に仕掛けられるデータスレッド数を2倍にしているので,それがLyra2REの処理で奏功したのかもしれない。

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消費電力はおおむねGTX 1080 Tiと同じ。ただ瞬間的に300Wを超える頻度が高い


 TITAN Vの消費電力と,クーラーの冷却能力もチェックしておきたい。
 グラフ29は,「4Gamer GPU Power Checker」(Version 1.1)を用いて,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ実行中におけるカード単体の消費電力を測定したものになる。なお,4Gamer GPU Power Checkerはシングルカードの消費電力計測に特化したシステムなので(関連記事),GTX 1080 SLIのスコアがない点はご了承を。

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 さて,波形を見てみると,TITAN V,GTX 1080 Tiともに,消費電力はおおむね200W台を推移していると分かる。このグラフデータから中央値を求めたグラフ30を見ても,TITAN Vの消費電力はGTX 1080 Tiとだいたい同じということが言えるだろう。
 ただ,あらためてグラフ29に戻ってみると,300W超級のスコアを示す頻度は,GTX 1080 Tiと比べて,TITAN Vのほうが明らかに高い。どちらもTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)は250Wだが,消費電力的にはTITAN Vのほうがやはりシビアという理解でよさそうだ。

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 参考までに,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用い,システム全体の最大消費電力で比較したものがグラフ31だ。テストにあたっては,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイの電源がオフにならないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時としている。
 GTX 1080 SLIはPUBGやForza 7でSLIがうまく機能していない影響が出ているものの,全体としては頭一つ抜けた印象だ。

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 続いては金色のGPUクーラーが持つ冷却能力だ。ここでは3DMarkの30分間連続実行時点を「高負荷時」とし,アイドル時ともども,TechPowerUp製GPU情報表示ツール「GPU-Z」(Version 2.8.0)からGPU温度を取得することにした。テスト時の室温は約24℃。テスト環境は机上に,いわゆるバラックの状態で置いているが,その結果がグラフ32だ。

 温度センサーのデータ取得方法がテスト対象のすべてで同じとは断言できず,横並びの評価にあまり意味はない。その点はくれぐれも注意してほしいが,TITAN Vの搭載するクーラーは,現行世代のGeForceを搭載するFounders Editionと同様の温度制御をしていると信ずるに足るデータが出ている。アイドル時だけは若干高めなので,ひょっとするとファン回転数の制御周りは何か異なっている可能性もあるだろう。
 というのも,筆者の主観であることを断ってから続けると,ファンの動作音に大きな違いを感じなかったためだ。TITAN Vの動作音はGTX 1080 Ti Founders Editionと変わらない印象で,もっと言えば,それほどうるさくは感じない。

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価格対性能比の観点からはとても勧められないが,史上最速のグラフィックスカードであることは間違いない


 以上,TITAN Vのテストを行ってきたが,TITAN Vの評価よりも先にしなければならないのは,一昔前と同じようには,2-way SLIの効果が得られないことへの指摘のほうではなかろうか。それこそWindows 7〜8時代だと,世界規模の主要なタイトルはかなりの割合で2-way SLIに対応していたが,いまやNVIDIAが開発に関わっていたり,マーケティング活動を共同で行っていたりするようなタイトルですら,SLIに対応していないものが増えてきているのだ。
 「GTX 1080カードを持っているなら,あと1枚購入して,SLIで性能ブースト」と気楽に言うことはできなくなってきている。この点は押さえておきたい。

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 そのうえでTITAN Vだが,まず,「GTX 1080 Ti比で最大4割程度速い」「GTX 1080 Ti比で,どんなに甘く見積もっても3倍以上高価」という2つの事実を踏まえるに,価格対性能比の観点からゲーマーに勧めるのは無理と言わざるを得ない。
 ただそれは,テストする前,もっと言えば北米市場の直販価格が明らかになった時点ですでに分かっていたことであり,今さらそんなことを言っても始まらないだろう。2018年3月時点における史上最速のグラフィックスカードはTITAN Vであると理解したうえで,遠く足音の聞こえだしてきている次世代GeForceの登場を待つというのが,一般的なPCゲーマーの正しい姿勢かもしれない。

NVIDIAのTITAN V製品情報ページ

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    TITAN

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    Volta(開発コードネーム)

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