連載
Hearthstoneで勝ち抜くためにいますぐあなたが学ぶべきこと 第5回 マリガンとプレイングで試合を制しろ
デッキ構築について説明するという連載の性質上,ゲームの遊び方の説明は一切いたしません。すでに遊び方を理解している人が,対人で勝ち抜いていくためのデッキ作りのイロハを中心とした連載となりますので,ご了承ください。
Hearthstoneカードリスト
第1回 デッキとマナの関係を理解しよう
第2回 初心者向けHero4名をご紹介
第3回 クセのあるHero5名をご紹介
第4回 メタゲームとはなんぞや
近頃のHearthstone:GvGが出てから環境の変化が目まぐるしく,最近では最新のメタを追っていくのも一苦労。ここ最近で流行ったデッキの中では,オイルローグデッキが面白かったですね。とにかく一度に大ダメージを与えるプレイが爽快。ミラクル死すともローグは死なずといった感じで,かつてミラクルローグデッキを愛好していた身としては嬉しい話です。
「引いたら勝てる」カードを引きにいこう
まず「戦術」についてはじめに話しておきたいのは,ゲーム開始前に行われる手札交換「マリガン」についてだ。ただいらないと思ったカードを適当に捨てるだけのフェイズと思っている人もいるかもしれないが,マリガン道を侮るなかれ。適切なマリガンを行うことによって,適切な初手でスタートできる可能性が高くなり,適切な初手でスタートできる確率が上がれば,それによって勝利できる確率も上がる。適切なマリガンは,勝利を呼びこむための必須科目なのだ。
……とはいえ,どのカードをマリガンすべきかというのは,簡単なようで非常に難しく奥が深い。相手の手札/山札や自分の山札が不確定情報であるこのゲームにおいて,マリガンにおける完全な正解へたどり着くのはほぼ不可能とも言ってよく,得られる情報から可能な限りその正解に近づけていくしかないのだ。そして,その正解への道も,自分のデッキや相手のデッキによって常に変化する。そのことはまず頭に入れておいてほしい。
その上で,どうやって適切なマリガンを行うかについてだが,筆者の場合はまず「1つの基準」に基づいてマリガンを行っている。それは何かというと「引いたら勝てるカードを引いてくる」ことだ。お前は何を言っているんだ,と思われるかもしれないが,実際にこのようなカードが場面に存在することは少なくない。
例えば,前述の「引いたら勝てる」カードを攻撃面から見た場合,Nerf以前のUndertaker,そしてMechwarperあたりが代表格になるだろう。これらのカードは,序盤で展開して返しのターンで除去されることがなければ,そのまま盤面を制圧して勝利することができるポテンシャルを持ったカードで,初期手札に引いてくることで大きく勝利へと近づくカードだ。
「引いたら勝てる」はちょっと誇張しすぎかもしれないが,これらはそれだけのポテンシャルを持ったカードであり,序盤から積極的に攻撃するアグロデッキなどにおいては,まずこれらのカードを「引いてくる」ことが大事になる。そのため,一般的には序盤から展開できる便利な2マナ/3マナといったカードでもあえて捨てて,これらのカードを引くことを優先してマリガンすることがより適切となる場合もあり得るのだ。
逆の立場で考えて,こういった「引いたら勝てる」系のカードに対処するためにはどうすれば良いのだろうか。もちろん,そういったカードに対処する手段はカードプールに複数存在するが,裏を返せば,それらは上述のような動きに対処するために「引かなければ勝てない」カードとなる。具体的にはWarrior ControlにおけるFiery War Axe,DruidにおけるWrath,Innervate,Keeper of the Groveなどのカードになり,「引いたら勝てる」カードの対抗策として,何としてもそれらを引いてくるためのマリガンを行いたいところだ。
より抽象的/大局的な話をすると,想定される相手の動きにいかに対処し,自分の盤面を有利にしていくかを考えながらマリガンを行うべきだ。例えば,Warrior Controlでよく使用されるカードの一つとしてWhirwindというカードがあるが,対Paladinのマッチアップにおいては,このカードはキープする価値が高いカードだ。なぜなら,Paladinデッキのお約束の一つとして「Muster of Battleから1/1のSilver Hand Recruitを並べ,Quartermasterでそれらを3/3ミニオンへと強化する」という動きがあり,その動きに対処するために,全体1ダメージのスペルカードは非常に有用となるわけだ。
では一方で,Mech Mageが相手の場合はどうだろうか? この場合のWhirwindは,キープする価値がそれほど高いカードではない。なぜならMech Mageの主力ミニオンはほとんどがHealth3以上のミニオンで構成されており,全体1ダメージのスペルだけでは,盤面に与えられる影響が非常に小さいものとなってしまうからである。
以上のように,想定される相手の動きに対していかに動くのかを十分に考慮した上で,マリガンで残すカード・引くカードを決めていくべきだ。相手の手札が不確定情報である以上,想定した動きと相手の実際の動きが必ずしも同じになるとは限らないが,より状況に応じた適切なマリガンに近づくことは間違いないだろう。
盤面の有利をとっていくためのプレイング
さてマリガンを終えた後は,実際に手にした最初の手札を元にどのように試合を戦っていくかというフェイズに移る。もちろん適切なプレイングはデッキによって異なるのだが,相手のライフを早期に削り切るということのみに特化したデッキ以外は,基本的には「どうやって盤面を有利にしていくか」を優先したプレイを行うことで,より勝利へと近づく。そのため,Aggro Hunterのようなデッキ以外は,まずいかに有利な盤面を作れるかを重視したプレイングを行うべきだ。
では,どうすれば盤面の有利を取れるプレイングができるのだろうか。それは,マリガンの時と同様に,次のターンに想定される相手のプレイに対し最も有利に対処できる手を打つ……ということを考えたプレイングを行うことだ。
具体的な例を挙げると,例えばZoo対Mech Mageのマッチアップで自分が先手のZoo側だったとして,初期手札の1マナカードがVoidwalker,Flame Imp,Abusive Sergeantの3枚だったとして,最初のドローでKnife Jugglerを引いてきたとしよう。果たして,最初の1マナとして適切な行動はどの1マナミニオンを召喚することだろうか?
ちょっと文章だけで説明するのが難しいが,順番に考えてみよう。
まず当然ながら,ほかのミニオンを強化するという効果を捨ててAbusive Sergeantを出すのは論外である。となると,Voidwalkerを出すのかFlame Impを出すのかという話になるが,ここで相手のMage側がどのような行動を採るのかを考えてみよう。
相手のデッキがMech Mageである以上,序盤からミニオンを展開してくることはほぼ間違いなく,出てくるミニオンはClockwork Gnome,Cogmaster,Mana Wyrm,Mechwarper,Annoy-o-Tron,Snowchuggerあたりが想定できるだろう。こちらのミニオンを破壊するためのFrostboltあたりの選択肢も考えられる。
では仮にこちらがFlame Impを召喚した場合,相手の返しはどのような行動だろうか。まず,Flame Impと1対1で交換ができるClockwork Gnomeあたりは有力で,Mana Wyrm,Cogmasterと一緒に出てくるかもしれない。もしくはコインを使用してAnnoy-o-Tronあたりも有力だろう。仮にClockwork Gnome,Cogmasterという行動を相手がとってきた場合,Zoo側は非常に困ったことになる。というのも,次のターンにVoidwalker,Abusive Sergeantを出した場合,Flame Impが本体のMageを殴ると,返しのターンでVoidwalkerとFlame Impを処理された状態で相手の2マナミニオンを召喚され,盤面アドバンテージをとられてしまう状態になるのだ。
かといって,Flame ImpでCogmasterを殴るという行動をとってしまうと,Abusive SergeantのAttack+2の効果をドブに捨ててしまう結果となり,やはりあまり好ましくない選択となる。もちろん,Knife Jugglerを出すという選択肢は,どちらも処理された上に相手の2マナのMechミニオンを無傷で場に残してしまう可能性が高いので論外である。そのほか,2ターン目のFrostboltの可能性を考えても,1ターン目Flame Imp召喚の選択肢は相手に対処されてしまう可能性が少なくない。
一方で,Voidwalkerを出す選択肢はどうだろうか。Voidwalkerが場に出てきた場合の相手の選択肢はより広がり,2ターン目に死ななさそうに見える2マナ2/3ミニオンをコインで出す,という選択肢がより有力に見えてくる。ここで,相手がMechwarperやSnowchuggerを1ターン目で出してきたらしめたもの。2ターン目にAbusive Sergeant,Flame Impと召喚し,Attack+2効果でAttack3となったVoidwalkerでMechwarperを破壊でき,場には3/2,1/1,2/1の3体のミニオンが残り,大きく盤面のリードをとることができる。
また,前述のClockwork Gnome&Cogmasterという動きについても,2ターン目にClockwork Gnomeを破壊しつつKnife Jugglerを出すという動きで対処できる。相手の出したミニオンがClockwork Gnome&Mana Wyrmだった場合は,1マナ2体を出してMana Wyrmを破壊する動きが良いだろう。ほかの想定される動きについても,初手Voidwalkerは非常に受けが広く,不利を被る相手の動きがほとんどない。よって,「この手札状況で初手で出すべきはVoidwalkerである」という結論が得られる。
もっとも,この初手Voidwalkerが正当化されるのは,手札にAbusive Sergeantがあるためであり,もしこのカードが初期手札に存在しない場合は上述のような動きができないため,初手Flame Impのほうがより有利を得やすい動きとなる。
これはあくまで一例にすぎないが,このように,自分の行動に対して相手が打ってきそうな手はいったいどんな手なのか,それによって盤面はどう動き,次のターンに何ができるのか。それらを考慮し,適切な対処を行うことで盤面の有利を得ることができる。
より突っ込んだ話をすると,相手のデッキが持つ戦略を潰すような手が打てると,より良いだろう。例えば,アグロ系のデッキに対してはライフを温存して戦える展開が望ましいし,アグロ〜ミッドレンジ系のデッキでコントロール系のデッキを相手にするときには,相手が真価を発揮する高マナ域までゲームを進める前に,ある程度の盤面有利を取りつつライフを削っておきたい。どの勝負事にも通じることだが,相手のやりたい事を潰していくことでより自身の勝利に近づくことができる。相手のデッキの戦略を鑑みた上で,相手が嫌がる行動を積極的に採っていこう。
相手のストーリーから手札を読もう
当然の話であるが,仮に相手の手札情報が分かっていれば,より状況に応じた正解の手を打つことができるようになる。そこで,ある程度適切なプレイングができるようになってきたら,相手の手札内容を読むことにも挑戦してみてほしい。しかし,どうやって相手の手札内容を読むのだろうか? これについては,相手のそれまでの行動のストーリーからある程度類推することが可能だ。
単純だが1つ例を挙げよう。
Hunter vs Warriorのマッチアップで,先攻のHunter側が1ターン目にUndertakerを召喚したとしよう。そして,後攻のWarrior側が何もせずにターンエンドした場合,そのストーリーから何が読み取れるか? それは,恐らくその時点でのウォリアー側の手札には「Fiery War Axeは存在しない」ということだろう。放置することでより危険度が増すUndertakerのようなユニットは,可能な限り早いタイミングで除去しておきたいからだ。そしてFiery War Axeがあれば,Undertakerを処理しつつ引き続き武器を構えられるため,盤面の有利は非常に取りやすくなる。にもかかわらず,返しのターンで相手が何も行動しなかったということは「手札にFiery War Axeがなかったから」という結論が導き出される。
むろん,実際にはこれほど簡単に決め付けられないことのほうが多いのだが,こうやって,相手がある行動を採った,もしくは採らなかった理由を考えることで,ある程度相手の手札が類推できる。もし,相手の手札には恐らく重要なカードがないということが濃厚であれば,そのカードがないという前提での思い切ったプレイを仕掛けることもできるようになる。
より難しい技術ではあるが,このようにして相手の与えてくれた情報から相手の手札を読み取ることで,より適切なプレイを行うことができ,それに応じた結果も伴ってくるようになるのだ。もちろんそれを逆手にとって,相手に「このカードが手札にはない」と思わせることで相手のミスプレイを誘うような戦術も可能である。ただし,あくまでそれは相手がこちらの行動から手札を類推してくれることが前提の行動になるので,もしやるならある程度高いランクに行ってからのほうが良いだろう。
数をこなし,プレイの精度を上げていこう
さて,デッキ構築とマリガンとプレイングが適切なものになれば,あとは対戦の数をこなすことが大事だ。もちろん,一朝一夕に急にできるようになるものでもないので,数をこなしていく過程で失敗を省みて,同じ失敗を繰り返さないように意識することで,プレイングの精度は着実に上がっていく。そうしてトライ・アンド・エラーを繰り返して多くの試合をこなすことで,いつかはレジェンドランクへとたどり着けることだろう。
もちろん,レジェンドランクに上がったからといってそこが終わりではなく,むしろそこからが本番と言っても過言ではない。レジェンドランク内の順位を上げることは,レジェンドランクに達することよりもさらに難しく,茨の道となることだろう。しかし,レジェンドランクがこのゲームのランクマッチにおける一つのステップであることもまた事実。まだレジェンドランクに達していない方に対し,この記事が少しでもお役に立つことができれば本望である。
著者紹介:ルネ
カードゲームやボードゲームの攻略・レビュー記事をメインに担当するフリーライター。第1回ドミニオン世界選手権優勝,第4回ドミニオン日本選手権優勝,その他複数のアーケードカードゲームで全国ランキング入りなどの経歴を持つ。Hearthstoneでは,AmericaサーバのLegendランク18位までの到達,およびGAMERS LEAGUE Season#1でSemifinal進出経験あり。主にアナログのカードゲーム/ボードゲームが大好物だが、コンシューマ,アーケードからソーシャルゲームまで,ゲームと名がつけば何でも食いつく雑食系。
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