連載
Hearthstoneで勝ち抜くためにいますぐあなたが学ぶべきこと 第9回:春にやってくる変革に備えよう
デッキ構築について説明するという連載の性質上,ゲームの遊び方の説明は一切いたしません。すでに遊び方を理解している人が,対人で勝ち抜いていくためのデッキ作りのイロハを中心とした連載となりますので,ご了承ください。
2016年2月3日,Blizzard Entertainmentは,「Hearthstone: Heroes of Warcraft」(PC / iOS / Android)において新フォーマット「スタンダード」の導入を発表した(関連記事)。これまでの対戦フォーマットは「ワイルド」という別フォーマットとして扱われ,今後は公式世界大会でも「スタンダード」形式が採用されるとのことだ。新たに採用される「スタンダード」フォーマットでは,「ナクスラーマスの呪い」と「ゴブリンvsノーム」のカードは使用できないとのことで,これまでの環境は大きく変化することになるだろう。
今回の連載では,スタンダードが導入されると環境がどのように変化するのかについて考察してみた。スタンダードの導入は,2016年春にリリースされる新たな拡張セットと同時に行われるとのことで,新環境は新拡張の内容,そして既存カードの調整がどのように行われるのかによるところが大きい。とはいえ,現環境のカード群だけでもまったく考察ができないわけではないので,新環境の「スタンダード」に参戦してみようという読者の方々は,ぜひとも参考にしてみてほしい。
「Hearthstone」カードリスト
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※カード名にカーソルを合わせると日本語版のカードがポップアップします。近頃のHearthstone:どーも,最近は世界選手権に出るためのシーズンポイント稼ぎに必死なルネです。12月,1月と必死になったおかげで12ptを獲得し,なんとか日本予選には出られそうですよ! 1月には別の記事のデッキガイドで紹介したZooデッキを使ってTOP100入りしました。Zooは,ハースストーンを始めてから最初にレジェンドに到達したデッキでもあるので,とても感慨深いです。そして,現環境で非常に強く,基本も身につき,しかも安いと良いことづくめ。初心者の方にはとくにイチオシのデッキですよ!
キーカードが消滅する流行のデッキ
スタンダードで使えなくなる「ナクスラーマスの呪い」,そして「ゴブリンvsノーム」に属するカードは,現在流行しているデッキのほとんどに採用されている。そのため,これらの拡張が使えなくなることで,パワーが大幅に落ちてしまうデッキは少なくない。では,具体的にどのようなカードが使用できなくなるのかを紹介していこう。
「ナクスラーマスの呪い」に収録されている上記の3枚は,登場してから長いこと多くのデッキで活躍してきた中立ミニオンだ。たとえば,ネルビアンの卵や呪われた蜘蛛は,全体除去に弱いZooウォーロックやシークレットパラディンといったデッキにおいて,それらに対する優秀なカウンターであったし,盤面を取りつつ秘策を張れるマッドサイエンティストは,秘策を多様するテンポメイジ,フリーズメイジ,フェイスハンターなどのデッキで重宝されてきた。
これらは,試合の中で大きな役割を果たしてきたカード群であっただけに,これらのカードが使えなくなるというのは,採用していたデッキにとっては大きな痛手だ。
前述のデッキをもう少し掘り下げてみよう。まずは,デッキガイド編の第1回でも紹介したZooウォーロックだ。このデッキにとって悩ましいのは,インプァクトとヴォイドコーラーという強力なヒーロー専用カードが使えなくなることだ。インプァクトは,Zooタイプのウォーロックデッキであれば必ず採用されると言っても過言ではないパワーカードだし,ヴォイドコーラーは,ドゥームガードやマルガニスなどの強力なデーモンカードを場に出してテンポをとっていくデーモンZooのキーカードであった。これらがなくなることは,Zooにとって大きな弱体化を意味する。
失ったカードの穴は,ラスガードなどのグッドスタッフで補えないわけではない。ただ,ネルビアンの卵,呪われた蜘蛛,ロウゼブなどが採用できなくなることは,スペルによる全体除去への耐性が大きく落ちることも意味する。新拡張で登場するカード次第ではあるが,これまでより厳しい立場になることだけは間違いないだろう。
そして,Zoo以上に痛手となるのはパラディン系のデッキだ。というのも,今回フォーマット落ちするシールド・ミニロボ,兵役招集,コグハンマーは,それまで弱いヒーローだったパラディンを一躍スターダムにのし上げたパワーカードだったからだ。これらを失うことで,再びヒーローとしての格が大幅に落ちてしまう可能性は否めず,兵站将校のフォーマット落ちもミッドレンジパラディンにとっては大きな痛手。
影響が少ないのはマーロックパラディンぐらいのもので,シークレットパラディン,並びにミッドレンジパラディンの2デッキは,ラダーから姿を消してもおかしくないレベルの弱体化と言っても過言ではない。
また,パラディンほどではないにせよ,パトロンウォリアーもデス・バイト,不安定なグールなどの消滅によって大きな影響を受けるだろう。とくにデス・バイトのフォーマット落ちは,4ターン目のデス・バイト,5ターン目のぐったりガブ呑み亭の常連&内なる怒りという必勝ムーブができなくなることを意味する。
さらに,この2つのカードが使用できないと,狂瀾怒濤を用いたカードドローもしづらくなり,動きが相当鈍くなるはずだ。パトロンウォリアーはトップメタの一角として存在していたが,春の拡張で相性の良いシナジーカードが新たに出ない限りは,パラディンと同じく使用率が大幅に落ちることはほぼ間違いないだろう。
「ゴブリンvsノーム」のフォーマット落ちによって,メカのカードがほとんど使用できなくなってしまうメックメイジは,もはやデッキそのものがなくなってしまう。そして,テンポメイジ,フリーズメイジといったデッキ群も,これまで大きな役割を果たしていたマッドサイエンティストがフォーマット落ちしてしまうのが痛い。とくにメイジの秘策は,ほかのヒーローと比べてマナコストが重いため,秘策が必須なフリーズメイジはともかく,テンポメイジで秘策を採用しようとする人は少なくなるだろう。
とはいえ,キリン・トアのメイジなどの代替案もあるので,Zooウォーロックやパラディンに比べると致命的というほどの弱体化ではない。手動操縦のシュレッダーについてもウォーター・エレメンタルで代用可能なので,以前より若干立場を落としつつも,環境には存在し続けるデッキになるだろう。
主に大きく影響を受けるデッキは上記のデッキで,それらの多くはアグロタイプ(速攻型)であることが分かるはずだ。そのため,恐らく新環境は現環境よりも試合の展開が遅くなり,その分ミッドレンジ/コントロール型といった,中盤以降に強いデッキの台頭が予想される。
新環境によって台頭してくるデッキとは?
では具体的にどのデッキが台頭してくるのか予想を立てていこう。
新環境の最右翼と言って良い存在がミッドレンジドルイドだ。スタンダードの導入でミッドレンジドルイドが使えなくなるのは,手動操縦のシュレッダーとドクター・ブームくらいであり,前者はチルウィンドのイェティやセンジン・シールドマスタ,後者は戦の古代樹といったカードに差し替えれば,デッキパワーが大きく落ちることもない。また,現環境で相性の悪かったデッキが軒並み大きな弱体化を受けているため,相対的に上方修正を受けていると言っても良い。
ただ,公式の発表によると一部の既存カードにも調整が入るようなので,周囲のデッキの弱体化を考えると,ドルイドのキーカードである練気,自然の援軍,獰猛な咆哮あたりのカードが弱体化を受ける可能性はある。ただし,それらが大きく弱体化されない限り,スタンダード導入後は,ドルイドを中心とした環境になることはほぼ疑いないだろう。
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ミッドレンジドルイドの対抗馬として有力なのはコントロールウォリアーだ。これまで乱闘に対する強烈なカウンターとなっていたネルビアンの卵,ロウゼブといった存在が環境からいなくなり,苦手としていたアグロ系のデッキに対応しやすくなったため,相対的にデッキパワーが上がったといえる。
また,ドクター・ブームの穴をオブシディアン・デストロイヤーで埋められるのも大きい。ここのところはパワーカードに押されてやや存在感が薄めだったコントロールウォリアーではあるが,新環境では昔のような大きな存在感を示すデッキになるだろう。
また,アグロは弱体化し,それでいて自分は受ける影響が少なく,相対的に強さが増すという点からみると,ミラクルローグが台頭してくる可能性も考えられる。骨董品のヒールロボ,手動操縦のシュレッダー,ティンカーの刃研ぎ油といったカードは消滅するが,それらは他のカードで代用可能だ。さらに,天敵であるネルビアンの卵やロウゼブがいなくなり,千刃乱舞による全体除去が決まりやすくなったのは大きな追い風といえる。墓荒らしとガジェッツァンの競売人によるミラクルローグ旋風が再び起きてもおかしくなく,新環境における台風の目として大いに期待が持てる。
全体的に弱体化を受けたアグロデッキの中でも,アグロシャーマンは比較的影響が少ないヒーローだ。フォーマット落ちするカードはバリバリぐらいしかなく,これも他のカードで代用可能である。現時点でもトップクラスのパワーを持つデッキなだけに,新環境でも引き続き暴れ回る存在になる可能性は高い。
とくに,新環境で存在感を高めるであろうローグに対する強烈なカウンターになるのも大きく,アグロデッキにおける急先鋒として今後も大きな存在感を示していくことだろう。
このほか,弱体化の影響が比較的少ないデッキとしては,レノロック,ハンドロックといったところも挙げられる。骨董品のヒールロボがいなくなるのは痛いが,アグロデッキが全体的に弱体化していることを考えると,相対的にはダメージは少なめだ。
ヴォイドコーラーが使えなくなることから,いわゆるデーモン型のハンドロックは組めなくなるが,今後も活躍し続けるアーキタイプになるだろう。
このままアグロデッキの存在感が薄まれば,レノロックではなく,旧来のハンドロックがスタンダードになる可能性も十分に考えられる。スタンダード導入後に猛威を振ることになりそうなドルイドに弱いのがネックだが,ドルイドに何かしらの調整があればトップメタに食い込んでもおかしくないポテンシャルを十分に持っている。
ドラゴンプリーストやコントロールプリーストといった,まったく弱体化の影響を受けないデッキも存在する。フォーマット落ちするキーカードはなく,トワイライトの守護者などのグッドスタッフは軒並み環境に残るので,現在より存在感を強めてもまったくおかしくはない。もっとも,ドラゴンプリーストはお得意様にしていたアグロデッキの弱体化で,狩り場がなくなってしまうのがネックなので,環境的にはコントロールプリーストのほうが浮上する可能性は高いか。
「探検同盟」で新たに登場した埋葬は対コントロールデッキに対して大きな威力を持つため,環境的にも今まで以上に存在感を示すカードになるだろう。
パラディンのデッキでは,唯一ほとんど弱体化の影響を受けていないマーロックパラディンが今後の中心となるだろう。今回フォーマット落ちしたパラディンの主力カードは,マーロックパラディンにおいては元々それほど採用されておらず,大いなるマーク・アイらのマーロックを活かした七つの鯛罪コンボは健在。新環境で台頭してくるコントロール型のデッキに対しても強いため,コントロールキラーとして活躍すると予想される。
そのほかのパラディンデッキは,新環境に適応できるかも怪しいレベルなので,その意味でもマーロックパラディンにはひと頑張り見せてもらいたいところだ。
新環境は,ナクスラーマス以前のものに近くなる?
総括としては,予想される環境の変化は以下のとおりだ。
・Zooウォーロック
・シークレットパラディン
・ミッドレンジパラディン
・パトロンウォリアー
・テンポメイジ
・メックメイジ
・フリーズメイジ
■新環境で台頭してくるデッキ
・ミッドレンジドルイド
・コントロールウォリアー
・ミラクルローグ
・アグロシャーマン
・ハンドロック
・ドラゴンプリースト
・コントロールプリースト
・マーロックパラディン
今はやりのフリーズメイジは,比較的影響が少なめではあるものの,得意とするデッキが減り,苦手なデッキが新環境で台頭してくるため,相対的に弱体化すると予想している。また,ドラゴン系のデッキは現環境ではあまり存在感を示せていないが,こちらも苦手なパワーカードのフォーマット落ちによって,新たに台頭してくる可能性も十分にある。
全体的に見て新環境では,ナクスラーマスで大量に登場した断末魔ミニオンが減り,全体除去が強くなるので,ナクスラーマス以前に近い環境になるとも言える。当時は,全体除去が強力なデッキ――つまりはミラクルローグ,ハンドロック,コントロールウォリアーといったデッキが強力な立ち位置にいたが,その時の環境に近いものになるはずだ。ミッドレンジ/コントロール系のデッキを好むプレイヤーには待望の環境といえるだろう。
ただし,これはあくまでも現在の材料から予想できる範囲での話なので,既存カードの調整,そして新拡張で登場する新たなカード次第で新環境の様相はまったく異なるものになる可能性も否定はできない。少なくとも,弱体化を受けるデッキは構成を変える必要が出てくるので,新環境にいち早く順応するという意味でも,台頭してきそうなデッキを今のうちに練習しておくと,一歩先んじて勝利を重ねていくことができるかもしれない。
著者紹介:ルネ
カードゲームやボードゲームの攻略・レビュー記事をメインに担当するフリーライター。第1回ドミニオン世界選手権優勝,第4回ドミニオン日本選手権優勝,その他複数のアーケードカードゲームで全国ランキング入りなどの経歴を持つ。Hearthstoneでは,AmericaサーバのLegendランク2位まで到達,およびGAMERS LEAGUE Season#1でSemifinal進出経験あり。主にアナログのカードゲーム/ボードゲームが大好物だが、コンシューマ,アーケードからソーシャルゲームまで,ゲームと名がつけば何でも食いつく雑食系。
「Hearthstone: Heroes of Warcraft」公式サイト
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(C)2017 BLIZZARD ENTERTAINMENT, INC.
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