インタビュー
【PR】「余分なことを落としていくと,シューティングゲームを作ることが最適解」――モスの姿勢や哲学,そして新作の情報などをまとめて聞いた
「カラドリウス」で撒いた種への反応
4Gamer:
「カラドリウス」「カラドリウスAC」にはそういった思いが込められているかと思いますが,リリース後の反応はいかがでした?
駒澤氏:
たくさんの方から賛否両論,温かい声援から厳しい声まで,さまざまなご意見をいただきました。そのこと自体,非常にありがたかったです。
星野氏:
厳しい意見もありましたが,基本的には楽しんでいただけたという手応えがあります。AC版は実験的に,家庭用版よりも難度を低く設定したこともあって,「初めてゲームセンターでシューティングゲームをクリアすることができました。メーカーの人達にしてみれば取るに足らないことかもしれませんが,僕にとってはゲーセンに十数年通っている中で,すごく嬉しい出来事でした」といった声もありましたね。
4Gamer:
ああ,それは聞いているこちらも嬉しくなってしまうようなエピソードですね。そういう“楽しい経験”を味わってもらうことで,プレイヤーを育てる種まきをしているわけですね。
星野氏:
カラドリウスでは,そういったライトな方達が気軽に触れられるように,ヤスダスズヒト先生に描いていただいたキャラクターや,ストーリーの導入,そして結果的に一番のウリになってしまった「羞恥ブレイク」といったフックを用意しました。
それを見て「お,どんなゲームなんだ?」と足を止めてプレイしてもらえたなら,狙い通りといえます。
4Gamer:
厳しい意見というのは,そうした“開かれた”部分に寄せられたものでしょうか?
星野氏:
いや,主にゲームの操作であったり難度に対するものが中心です。モスとしてコンシューマでのリリースが最初というところで,プレイヤーの意識を見誤ったところもあります。
シューティングゲームは歴史がある分,目の肥えた方達がいらっしゃるので,「なるほど」と納得せざるを得ないような,開発者ですら気付かなかったご指摘など,さまざまな声を寄せていただきました。
そういったご意見は,次の作品にフィードバックしていこうと考えています。ご意見をいただけること自体が嬉しいことですので。
駒澤氏:
カラドリウスについては,“完全新作のシューティングゲームをリリースする”こと自体にはご賛同いただけたと思っています。おかげさまで結果も出て,次につながってきています。規模は小さいかもしれないですけど,そうしたギャンブルに勝っていかなければ成長はありませんし,何より忘れられてしまいますから。
4Gamer:
カラドリウス発売前のインタビュー(関連記事)で駒澤さんが「焼き直しばかりで響くものがない」とおっしゃっていたことを思い出します。
駒澤氏:
それは当時の状況をよく表していて,どのメーカーさんもお金をかけて新作シューティングゲームを作れない状況だったんです。それはうちだって例外ではありませんでした。
いくらシューティングゲームがシンプルだといっても,作り始めれば数千万円規模の予算は必要になりますから,それを担保して作るぶんの体力が,各社ともなくなっていた時期だったんですよね。
それでリメイクばかりになってしまって……。そうなるとヒット作も生まれませんし,結果的にシューティングゲームのプレイヤー離れの原因の一つにもなってしまっていたと思います。そうした負の連鎖から抜け出すためには,新しいモノを定期的にリリースするしかない,というのが,我々の出した結論なんです。
4Gamer:
なるほど。
駒澤氏:
とはいえ,そんな中でも,MAGES.の盛 政樹さんが作っている「バレットソウル -インフィニットバースト-」には感心しましたね。
何より,キャラバン(ゲーム大会)を行っているのがいい。商品の豪華さや,それを誰が獲得したかとかの話ではなくて,プレイヤーがスコアで競い合うというイベント性が大事だと思うんです。お金をかけて作るのは極論誰でもできますが,買った人に対して金額分の楽しさを提供できているのかが大事で。
もちろんタイトル自体もブランニューということで,見るべき価値のあるものだと思います。
4Gamer:
作品単体だけでなく,それを取り巻く環境作りを含めて,評価できるということですね。
駒澤氏:
ええ。もともとシューティングゲームって,スコアを介したコミュニティという側面もあったんですよね。かつてはゲームセンターというローカルなスペースで行われていたことが,最近ではインターネットに移行しているだけで。
4Gamer:
そういった意味でも,キャラバンの実施によるコミュニティの活性化を評価されているわけですね。
ところで,カラドリウスに対して国外からは,どんな反応がありましたか?
駒澤氏:
「雷電IV OverKill」が北米やヨーロッパでリリース済みで,多くのプレイヤーさんに楽しんでもらっていることもあってか,カラドリウスについても“モスの新作シューティング”として問い合わせをくださった業者さんはいましたね。ただ,羞恥ブレイクをはじめ,シューティングゲームにおける枷(かせ)をいろいろと外していますので……現時点で,具体的に海外でリリースする予定は立っていません。
でも,シューティングゲームというジャンルが,世界規模でプレイヤーを抱えていることは,間違いないですよね。
4Gamer:
確かに海外メーカー,とくにインディーズメーカー製のシューティングゲームは,ダウンロードタイトルとしてよく見かけますね。そうしたタイトルと比較されることについては,どう思われますか?
駒澤氏:
ことゲームにおいては,プロであろうがインディーズであろうが関係ない,面白ければそれでOKだと思っています。極端な話,僕がモスという会社を経営しながら,インディーズ作品をリリースしたっていい。だから線引なんてものはないですね。
ただ,組織で作っていると,その過程でたくさんの意見が出たり,たくさんの人の目によるチェックがなされていたりといったメリットがあると思うんです。食品でいうところの安全性みたいなものですかね。面白くしようと手間暇かけて作っている分,お値段はお高めになりますが,僕らは良い商品を間違いなく届けられるように頑張っている……と思っていただければ。
星野氏:
インディーズというか,日本で言う同人ゲームの中にはレベルの高いものがあって,遊んでいて冷や汗の出るようなものもあります(笑)。ただ,スタッフはプロとしての意地やプライドを持って,「今回モスが考えて作ったたモノがこれです」という,後に引けない状態で送り出しているんです。
同人の場合はコスト度外視で作られている方もいますが,逆にウチは人件費やコストを考えたうえで,それでもこれだけキチンとしたものが提供できます,というのがプライドでもあります。
4Gamer:
ヘタなモノを出してしまっては,それこそ「次を出す」ことができなくなってしまいますし。
星野氏:
そのプレッシャーもありますね。そこが一番楽しいところでもあるんですけどね(笑)。
リリース間近! 「カラドリウス ブレイズ」の見どころは?
4Gamer:
さて,間もなく発売日を迎える「カラドリウス ブレイズ」ですが,これをPlayStation 3向けにリリースしようという構想はいつからあったのでしょう?
駒澤氏:
できればXbox 360版と同時発売したかったんです。発売時期がズレることでのしわ寄せも当然生まれてしまいますし。
でも正直なところ,ブランニューのタイトルを複数プラットフォームに向けて,同時に開発・発売するというのは,弊社の作り方では難しいんですね。ほかのメーカーなら,それを理由にプロジェクトを中止にすることもあるかもしれません。でも僕らは,シューティングゲームを出し続けていかなければならない。そこで,このタイトルを世に送り出す方法を考えに考えて,まずはXbox 360で出した……というのが経緯です。
星野氏:
日本に関してはPlayStation 3のシェアは高いですから,より多くのゲームファンにカラドリウスを知ってもらうという意味では,必然でした。発売時期がずれてしまったことは申し訳ないのですが,開発チームとしては決してサボっていたわけではなく,Xbox 360→AC→ブレイズと,ずっとカラドリウスを作り続けていたんですよ。
4Gamer:
ちなみに,カラドリウス ブレイズをPlayStation 3でリリースするにあたって,Xbox 360版のプレイヤーから反発の声などはありませんでしたか?
駒澤氏:
ありましたね。実際,「PlayStation 3で完全版かよ!」といった声があるのは理解しています。ですが,僕らの使命としては,常にその時点でより良いものを実装していかないといけないんです。新しいアイデアがあるのに,Xbox 360版を遊んでくれた方ががっかりするから……という理由で同じ内容にするというのも,いやらしい話だと思うんですよ。
4Gamer:
確かにそうですよねぇ。
駒澤氏:
発売時期がずれてしまったことは申し訳ないんですけど,その分,新しい要素は追加しています。それを喜んでいただけるのか,それとも「No」と言うのかは,プレイヤーさん次第ですから。
星野氏:
ゲーム開発って,ある意味プレイヤーさんとの対話だと思っているんです。僕ら的にはこれがいいんじゃないかと実装してみたアイデアが,まったく響かないかもしれないという不安は,常につきまといますしね。
だからこそ,キチンとしたベースを確立したうえで,プレイヤーさんに「最高!」と言ってもらえるようなアイデアを,積み上げていくだけです。
4Gamer:
となると気になるのは,カラドリウス ブレイズからの新ステージや新キャラクター,新システムについてです。どういう狙いで実装したものなのか,教えてください。
星野氏:
ステージに関してはシンプルに,新しい遊びを提供したいという点からです。キャラクターについては「エレメントシュート」が一つのウリでしたので,カスタマイズを使えばより深く,新鮮な気持ちで遊んでもらえると思います。
新システムの「シンクロプレイ」については,実は開発後半まで実装されていませんでした。ただ僕の中では,新しい遊びを入れたいとずっとモヤモヤしているものがあったんですよ。
4Gamer:
それはどういうことでしょう?
星野氏:
1P,2Pキャラクターの組み合わせで変化するシナリオを,どうにか1人で遊ぶお客さんにも楽しんでもらえないかと考えていたんです。1人で2機を操作するダブルプレイでは,ハードルがあまりにも高すぎます。かといってキャラクターを切り替える形では,同時に2人のキャラクターを出せません。2PがAIで勝手に攻撃してくれるというのも考えたんですが,シューティングゲームのだいご味である,自分で敵を倒す楽しさをそいでしまう。
そこで,1Pの動きを2Pがトレースする仕組みを導入しました。それがデバッグ開始の一週間前ぐらいで(笑)。
4Gamer:
ギリギリになってアイデアが降りてきたわけですね(笑)。
星野氏:
はい。急きょプログラマーに頼んで試作してみたところ,想像以上に楽しかったので,実装することに決めました。本来の予定にない作業だったので,自分がデバッグやチェックをする作業が増えて泣きを見ましたが(笑)。
4Gamer:
(笑)。
星野氏:
先日のイベントでシンクロプレイの説明をしたときには,「面白そうじゃん」というポジティブな意見をいただけたので,リリース後の皆さんの反応が楽しみです。
今回の試みで,シューティングゲームにも,まだそうした新しい遊びを試せる余地が残っているんじゃないかという思いは,より強まりましたね。
4Gamer:
さまざまな方向性を模索したうえで,シンプルなアイデアにたどり着くという流れば興味深いですね。
星野氏:
シューティングゲームである以上,大きな骨組みは変わらないんですよ。でも,30年を超える歴史を持つジャンルで,時代やプレイヤー,プラットフォームも変わっているのに「シューティングゲームはこうだから!」と凝り固まっていたらしょうがないと思うんですね。
もっと違う遊びや表現を模索したいですし,商品として提案できれば……と思っています。
4Gamer:
これまでのノウハウがあったうえで,新しい発想にも取り組めるというのは,モスならではの強みだといえそうですね。
星野氏:
そうですね。駒澤が「スケジュールや予算はビタイチ譲れん」とはいわず,開発現場を信頼して任せてくれているのが大きいです。
4Gamer:
ちょっと気が早いかもしれませんが,カラドリウスに関しては「2」のような先々の構想はありますか?
駒澤氏:
カラドリウスのコンセプトとして,キャラクターや壮大なストーリーがあります。そういった部分は企業として育てていこうと思っているんですが,すべてはカラドリウス ブレイズ発売後の反応を受けてから考えたいですね。
既成概念に捕らわれない「雷電」(仮)
4Gamer:
先日発表されたXbox One用タイトル「雷電」(仮)についても聞かせてください。現状,イメージボードが1枚と「既成概念にとらわれない」というキーワードが明らかにされているだけですが……。
駒澤氏:
ぶっちゃけ発表時は,中身がそんなに決まっていませんでした(笑)。でも,この1か月の間に急速に仕様が固まりつつあります。
星野氏:
現場的にはバリバリと作業が進んでいます。
4Gamer:
おお,それは朗報ですね!
駒澤氏:
具体的なスケジュールは後日発表しますが,2015年のどこかで発売したいと考えています。中身については,いろんな意味でのターニングポイントになると思っています。
ここにきて雷電の新作を出すということは,雷電そのものを進化させていかなければ新たな訴求は生まれません。またXbox Oneという新しいプラットフォームが持つ,新しい機能をうまく使って,新しい形の雷電を提供していきたいと考えているんです。
4Gamer:
Xbox One用であるということには,重要な意味があるのでしょうか?
星野氏:
ええ,重要ですね。現場としては“どこまでが雷電なんだ”というアプローチをしています。どこを変えてはダメで,どこは変えるべきかという論議は日々行っています。「雷電だからこうじゃないと」という考えもいったん白紙に戻して,よりプレイヤーに訴求するためにはどうしたらいいかを考えているところです。
とくに今回は次世代機ということもあってマシンパワーがありますから,いろんなことができます。イメージボードを作ったのもハッタリではなく,ビジュアル的なクオリティを高めるために必要なものだからなんです。
4Gamer:
いろいろと気になる話が出てきました……。
星野氏:
目指すところは他社さんから「シューティングゲームの開発ハードルが上がったじゃないか!」と言われるようなモノです。
「さすがXbox One」「さすが雷電」という評価を受けられるモノでなければ,出す意味がないというぐらいの意気込みで制作中です。
4Gamer:
タイトルが(仮)となっていますが,ナンバリングでない可能性もあるということですか。
駒澤氏:
ええ。その可能性も含めた(仮)です。
星野氏:
最終的にナンバリングになるかもしれないですけど,そこにとらわれることがないように進めよう,という意識もあっての(仮)ですね。
4Gamer:
面白さを追求していった結果,最終的に雷電シリーズではないものになる可能性というのはありますか?
駒澤氏:
それは,ないです。あくまで雷電シリーズの正統な最新作というスタンスで制作しています。ちょっと遠回しな言い方になりますが,僕らがやりたいことの意思や意図をプレイヤーさんに対して,より早く分かりやすく提示する方法が,結果的に雷電だったと思っていただければ。
星野氏:
雷電はセイブ開発が作ったI,II,DXと,我々が作ったIII,IVがありますが,III以降はポリゴンとなったことで大きな変化があります。今回の雷電(仮)も,それぐらいに大きく変化をさせるタームだと思っているんです。
シューティングゲームを取り巻く状況も大きく変わっているので,より一層の力をいれて取り組んでいます。
駒澤氏:
「シューティングゲームっていいね!」と内容でもセールス面でも言ってもらえるよう,最新ハードでもジャンルの存在感を示すことができればな,と。そうじゃないと今後,僕らもシューティングゲームを作れなくなってしまうかもしれませんから。それだけに,組織としても,業界におけるジャンルとしても,重要な一石となるよう頑張っています。
4Gamer:
根掘り葉掘り聞きたいところですが,それは別の機会に取っておきたいと思います。ちなみに,Xbox Oneをプラットフォームに選んだ理由というのは?
駒澤氏:
先ほどのカラドリウス ブレイズの話に立ち返りますが,作れる可能性を追いかけた結果ですね。メーカーとしてプラットフォームを選り好みできるほどの力はありませんし,マルチで開発できるほどの予算もない。
それに弊社の開発スキルを鑑みたうえで,開発から発表する道のりが固められるのは,Xbox Oneだったということです。プラットフォーム性能がどうこうというよりは“良い商品”を作ることに集中したかったんです。
4Gamer:
そういうことだったんですね。
雷電関連でいうと,シリーズ25周年プロジェクトも発表されました。
駒澤氏:
第一弾の雷電(仮)に加えて,具体的なタイトル展開をしていきたいと思っていますが,これもまたあらためてお知らせをさせてください。
雷電は25年の間,多くの方達に遊ばれてきましたし,僕らもその続編を作るためには,その足跡を知る必要がある。若い世代も含めて「雷電ってなに?」ということをアピールして,旧作を含めて遊んでもらういい機会だと思っています。
4Gamer:
プロジェクトはゲームタイトルに限ったものではないんでしょうか?
駒澤氏:
そうですね。イベントなどを含めたいろいろな形で雷電というブランドを広めていければと考えています。
4Gamer:
楽しみにしています。
それでは最後に,モスという会社のこれからをビシッと語ってください!
星野氏:
僕は現場の人間なのでその話しかできないんですけど,モスという会社では,ゲームというエンターテイメントを作り続けていきたいと思っています。そのためには仲間がいてくれたら助かるし,それによって新しいモノが生まれてくると思っています。我こそは,という気概を持った方は,ぜひ公式サイトの人材募集から応募してきてください。
作ったモノがダメ出しされてヘコむこともありますが,それを含めてゲーム開発というのは楽しいものだと思っています。とくにシューティングゲームというジャンルは長い歴史がありますから,他社さんと一緒にそれを広げて,つなげていけるようにしていけたらなと。
何もしなければジャンルがなくなるのは自明の理だと思うので,また20年後に「シューティングゲーム,なくなってないじゃん」と笑えるように頑張っていきたいと思います。
駒澤氏:
シューティングゲームというものに,新しいワクワク感やカタルシスを感じられるような試みを提示して,一定の評価を得られるタイトルを作っていくことが使命だと思っています。
最初にも言いましたけど,いろんなムダをそいでいくほどに会社としてはシューティングゲームを作るべきなんです。おかしな話なんですけど(笑)。
そういう取り組みで少しづつ評価を上げながら,ゲーム開発会社視点を持った“底力のある”メーカーとなるべく,さらに上を目指していきたいです。
4Gamer:
ありがとうございました。今後の展開に期待しています!
今回はゲームの内容そのものよりも,モスという会社がどのような姿勢でゲーム作りに取り組んでいるのかという点に焦点を当てたインタビューとなった。同社がなぜ,シューティングゲームというジャンルに注力し続けているのか,その理由の一端が駒澤氏と星野氏の言葉から垣間見えたように思う。
なお,同社は現在も人材募集を実施中だ。インタビュー中にもあるとおり,実務経験は不問とのことなので,モスでゲームを作りたいという熱意のある方は,チャレンジしてみてはいかがだろうか。
モス公式サイト
- 関連タイトル:
カラドリウス ブレイズ
- 関連タイトル:
雷電V
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