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信長の野望・創造 with パワーアップキット公式サイトへ
  • コーエーテクモゲームス
  • 発売日:2014/12/11
  • 価格:信長の野望・創造 with パワーアップキット通常版
    パッケージ版:10800円+税
    ダウンロード版:9239円+税
    信長の野望・創造 パワーアップキット通常版
    パッケージ版:5800円+税
    ダウンロード版:5143円+税
    TREASURE BOX(with パワーアップキット):15800円+税
    TREASURE BOX(パワーアップキット単体):10800円+税
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今度は「信長の野望」14タイトルを一気にプレイ。着実に進化を続けてきたシリーズの歴史を振り返る
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印刷2016/03/23 00:00

プレイレポート

今度は「信長の野望」14タイトルを一気にプレイ。着実に進化を続けてきたシリーズの歴史を振り返る

信長の野望・嵐世記(2001年)


 「信長の野望・嵐世記」(以下「嵐世記」)は,前2作におけるシムシティ型の箱庭路線ではなく,国盗りゲームへと戻った作品である。

画像集 No.041のサムネイル画像 / 今度は「信長の野望」14タイトルを一気にプレイ。着実に進化を続けてきたシリーズの歴史を振り返る

 本作にはさまざまな特徴があるが,最初に指摘できるのはアクション管理の大幅な見直しだろう。
 これまでの「信長の野望」シリーズにおいては,例えば開墾を進めたかったら,開墾コマンドを選び,担当させる武将を選んで実行する,というのが基本的な流れだった。このことは一枚マップ上に施設を配置していく将星録や烈風伝でも基本的に同じで,作りたい施設と,その作業を行う武将のセットでコマンドを入力することになっていた。

 嵐世記においては,そういった個々のコマンドとしての「開墾」「商業」といった選択肢は存在せず,代わりにそれらの事業に対して「奉行」を割り当てるというシステムになっている。奉行は自動的に開墾や商業発展を進めていくので,その都度指示を出してやる必要はない。これは「三國志」シリーズでも見られたスタイルだ。

各種内政は「奉行の割り当て」で実行
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 任命できる奉行の数は,大名のパラメータによって変化する。優秀な大名であれば,より多くの奉行を任命でき,信長の場合なら7人だ。だが,行うべき事業は大きく分けて農業・商業・築城(普請)の3種類あり,各事業に1人ずつ割り当てたとしても,2国をカバーするのが精一杯。急いで開墾を進めたいから3人配置する,とかいったことをしようものなら,あっという間に人数が足りなくなる。

 ここで登場するのが,「軍団」である。天翔記と同様に,自勢力をいくつかの軍団に分けると,軍団ごとに奉行の枠が発生する(枠数は軍団長に据えた武将のパラメータによって決まる)ので,全体の奉行数を増やせるのだ。
 だがもちろん,軍団を分ける(あるいは手の届かない部分が発生する)リスクが発生するので,悩みどころである。

 嵐世記では知行システムも採用されているので,軍団の編成をはじめ,配下武将のマネジメントは非常に重要になった。

グラフィックスの色使いはシリーズ作品の中でもかなり独特
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 もうひとつ興味深いのは,戦国大名以外の勢力が存在することだ。
 これは寺社や国人衆,忍者衆に朝廷などさまざまで,なかでも寺社と国人衆は軍事力としてかなり強大で,彼らに一揆を起こされると,最悪,国が滅びることもある。逆に言うと,彼らを味方につけられれば,かなり心強いのだ。

 かくしてプレイヤーは,彼ら諸勢力とどう付き合うかも考えねばならないのだが,人によっては「面倒くさいことをするくらいなら,捻り潰してしまえばいい! 足りない兵力は自前で用意する! さあ拳で交渉だ!」と考えがちだ。筆者は特にそういう傾向がある。

 が,嵐世記において,これら各種勢力のうち,国人衆以外は永遠不滅の存在である(国人衆も武力での駆逐は不可能)。このためプレイヤーは否が応でも彼らとうまく付き合っていくことを考えねばならない。戦乱の世であっても,暴力は決して万能ではないのである。

国人衆との交渉はとても重要
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 最後に重要なポイントとして,本作では合戦が完全リアルタイムでの進行,いわゆるRTSになったことを挙げておこう。視認範囲などもきちんと設定されており,グラフィックスのテイストも相まって「Age of Empires」などを思い出してしまい,実に懐かしい。15年前のタイトルなのだから,懐かしくて当たり前ではあるが。

 そして本作以降,「信長の野望」シリーズの戦闘は,リアルタイム進行が基本となる。「昔はよくプレイしていたけど,21世紀に入ってからは触っていない」という人なら,“信長の野望=ターン制の静かなゲーム”というイメージを持っているかもしれないが,信長の野望は結構忙しいゲームに進化しているのだ。

「Age of Empires」を彷彿とさせる戦闘画面。戦闘のバランスは若干大味だ。敵AIをハメ気味に殺すこともできるが,その方法を理解するまでは結構大変
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信長の野望・蒼天録(2002年)


 「信長の野望・蒼天録」(以下,蒼天録)は,信長の野望シリーズで初めて,「部下」の立場(具体的には軍団長と城主)でプレイできるようになった作品だ。

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例えばこのように,信長配下の城主である柴田勝家でもプレイ可能
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 基本的なゲームシステムは,「嵐世記」を継承しながらバランス調整が加えられたものになっている。前作ではいささか過激すぎたり,アンバランスだったりした部分を,改善・改修したというイメージだ。

 ゲームは政略と軍略でフェイズが分かれており,政略は季節に1回,軍略はリアルタイムでの進行となる。
 政略画面は各季節の冒頭に発生し,内政や外交に関するさまざまな指示を出す。それが終わると1季節分の時間がリアルタイムで進行する。軍事モードとでもいうべきもので,部隊を出して移動させるのはこちらだ。

こちらは政略画面
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 内政は担当官(奉行)を決めるだけでいいスタイルとなっていて,嵐世記を継承している。これは劇的にクリック数を減らしてくれるので,個人的には非常にありがたいシステムだ。

奉行に任命する武将を選択する。ワンボタンでの「オススメ配置」も可能で,これならさらに楽だ
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 戦闘ユニット同士がぶつかったときの合戦もリアルタイムで進行する。
 システムとしては左・中央・右の3ラインを使った戦闘で,それぞれのラインには基本的に1部隊しか出せないと考えてよい。敵の兵科との相性や消耗度を見ながら,ローテーションでうまく部隊を出していく必要がある。

 なお,従来のシリーズ作品でしばしば見られた「とりあえず兵士の数だけドッカリ用意しておけば,まあ勝てるでしょ」というバランスではなくなっていて,合戦でのマイクロマネジメントはかなり重要になっている。
 加えて,実際に戦争を仕掛ける前に,調略で敵の内部を崩したり,外交で敵を孤立させたりといった工夫も欠かせない。正面決戦に注力するより,事前の根回しが重要というバランスは,戦国時代における戦いそのものと言える。

部隊をローテーションさせて戦うリアルタイム合戦
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攻城戦もリアルタオムでユニットを動かして戦う
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 ただ,お金が事足りるようになってくると,筆者のようなプレイヤーの場合は「調略にはあまり期待できないから,忍者を送って暗殺しちゃえ」といった展開になりがちかもしれない。嵐世記同様,暴力ですべてを解決できるゲームにはなっていないが,暴力で解決できるものがあるなら,それが一番手っ取り早いのだ。

 城主プレイは,一見「できないことが多くなった大名プレイ」だが,下剋上を狙うようになると,途端に考えるべきこと,やるべきことが増える。そういう意味では,本作はまず大名プレイでゲームに慣れた後にドラマチックな下剋上を目指して城主でプレイするのが最も楽しめる遊び方かもしれない。

柴田勝家での政略フェイズ
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風評を流すなど,できることは多い
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信長の野望・天下創世(2003年)


 「信長の野望・天下創世」(以下,天下創世)は,将星録で始まったシムシティ的な要素を復活させた作品となる。

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 ともあれ最初に言及すべきは,本作から信長の野望シリーズは3Dグラフィックス化した,ということだろう。直線とベタ塗りにCUIで始まった信長の野望は,ここでついにポリゴングラフィックスの世界へと入っていく。

 ゲームシステムとしては完全なターン制で,マップは3D化したが1枚マップではない。マップ構造としては,領地(城)の連絡関係を示す(だけの)大きな2Dマップがあり,それぞれの領地ごとに3Dの「町並み」マップがあるという形だ。戦闘が発生したときも,専用の3Dマップに移行する。

領地が3Dマップで表示される。時代が一気に進んだ感じだ
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戦闘はまた異なる3Dマップでプレイ
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 本作のターン進行はほかのシリーズ作品と違い,1年が8つのターンに分かれている。
 アクション管理は,街の発展や他国の情報収集といったコマンドを実行できる回数が,具体的な数字で表示される形となっている。例えば初期の信長なら,行動回数は4回だ。

 なおコマンドは,大名本人がいる城でしか実行できない。他の自領においては,その地を治める城主に委任することとなる。また,コマンドによっては,1ターンで終了しないものもある。何かを開発したり,建設したりするときは,基本的に複数ターンかかると思っていいだろう。

委任の方針はきめ細かく設定可能
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 さて,本作において最も大きな特徴となるのは,「街並みの作成」だ。
 本作では城下(および城内)が3Dグラフィックスのマップで表現されており,城下に,どんな建物を建てるか,あるいは田畑として利用するのかといったことを,プレイヤーが自由に設計できる。まさにシムシティ感覚である。

 配置できる建物の種類は多い。はっきり言えば,こういう細かな作業が苦手な人にとっては,見ただけで「うっ」と来る,そんな画面である。
 だが実際にプレイすると,それぞれの地域に特殊な建物を建てるのは確かに重要だが,それよりもまず各地域に「投資」を行い,地域を発展させるのが大事だというのが分かってくるはずだ。投資を行うUIは実にシンプルなので,簡単に進められる。細かな特殊建造物に手を出すのは,ゲームの大まかな流れを掴んでからでも遅くない。

グリッド内に建設するオブジェクトを指定できるが,グリッドに対して「投資」するだけでもOK
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 むしろ本作での壁になるのは,戦闘ではないかと思われる。
 本作の戦闘も完全にリアルタイムの戦闘,つまりはRTSだ。そもそも完全リアルタイムという段階で(そして参加部隊それぞれにショートカットキーが用意されている段階で),人によってはハードルが高くなるかもしれないが,本作における戦闘の難度は,このシステムを採用した作品の中でもなかなか高い。

 それならばそれで,戦闘を委任してしまうということは可能だ。だがこの委任AIがあまり賢くないので,戦力に相当の差をつけない限り,完全委任すると頻繁に苦杯を舐めることになる。

 筆者の個人的な感触としては,天下創世はまず合戦の練習モードでRTSパートをきっちりつかんでから,しかるに本編を始めるべきゲームだ,という印象である。筆者はこのあたりの練習を一切せずに「2倍で寄せれば余裕だろ」と斎藤龍興軍に攻め寄せたが,まるで歯が立たなかった。

戦闘はなかなか難しい。攻城戦も当然3Dグラフィックスとなった
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信長の野望・革新(2005年)


 「信長の野望・革新」は,「天下創世」で始まった3Dグラフィックス化に加えて,ゲームのリアルタイム化をさらに推し進めた作品となっている。箱庭系1枚マップを採用した「信長の野望」として,これまでの作品から良い要素をうまく取り込んでおり,「烈風伝」をより綺麗に仕上げた,という印象の作品だ。

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3Dの1枚マップ。10年前のゲームだが,今でも十分に綺麗
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 前述したように本作は1枚マップの作品で,「烈風伝」のように,内政も戦争もすべては同じマップの上で行われる。

 内政は烈風伝と同じく,マップ上にさまざまな建物を配置することで行うことになるが,烈風伝で自分の城の周辺にのみ配置できたのに対して,本作ではマップ上に拠点となるものをまず配置し,その周辺に拠点の性格に沿った建物を配置していく,という流れになっている。
 例えば「農村」を配置すると,その周辺には田畑が配置できるようになり,「職人町」を配置すれば,その周辺には各種研究施設や工房が配置できるようになる……といった仕組みだ。

農村の周囲に水田を「配置予約」し,続いて作業を行う武将を指定する
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 戦争もまた,1枚マップの上で完結する。内政で使うものと同じマップの上を軍事ユニットが移動し,そのままそのマップ上で戦闘するのである。

 また本作では,技術開発という要素が大きくクローズアップされた。技術開発専用の村を作る(職人町を中心に,専用の建物を必要数建造する)ことで,一定の金を払うと武装のアップグレードや内政の効率化が図れるのだ。

技術開発も重要だ
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 ゲーム進行は完全にリアルタイムとなっており,プレイヤーは自然に移り変わる季節の中で内政の指示を出し,外交を行い,戦闘を行っていくことになる。

戦闘も1枚マップの上でリアルタイム進行
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 こうして書くとえらく忙しいゲームに思えるが,本作は実際,なかなか忙しい。中盤以降,相対する敵が増えれば増えるほど,入力量は増大しがちだ。だがピュアなRTSほど忙しいわけではなく,イメージとしてはParadox Interactiveの歴史ストラテジーくらい,といったところだろうか。無論,いつでもポーズは可能だ(スペースバーを叩くとポーズがかかるのは,いろいろとありがたい)。

 本作でひとつだけ気になるのは,軍事ユニットのパスファインディング(経路の取り方)がいささか甘いところだろうか。どう考えても被害が拡大するルートを選んで移動してしまうことがままあるので,わりと細かく指示を与える必要がある。
 ともあれ本作において,現代的な「信長の野望」の基礎は完全に仕上がったと考えてよいだろう。

姫武将も作れる
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信長の野望・天道(2009年)


 「信長の野望・天道」は,「革新」の路線を引き継ぎながら,タイトル名通り,「道」という要素に強く注目して構成された作品となっている。

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 天道の基本的なゲームシステムは,「革新」とほとんど変わらない,3Dの1枚マップを用いたフル・リアルタイムのゲームだ。内政は建物をマップ上に配置することで行い,戦闘もまたそのマップ上で行われる。

街づくりのUIは「革新」とほぼ同じ
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 「革新」において,街並みの作成は,コアとなる施設を(城の影響範囲内なら)自由に配置できた。だが「天道」では,コアとなる施設がマップ上に固定されており,そのままでは中立の村落でしかない。プレイヤーの城と,そのコア施設が道でつながって初めて,プレイヤーはその村落を支配できるのである。

 この「道の敷設」は,プレイヤーがマップ上で自由に行える。村と城をつなぐだけでなく,前線に軍隊を素早く送るために道を引く,敵の移動を阻むため道を撤去するなど,さまざまな形で活用できるのだ。

「道」の造営がゲームにおいて非常に重要な位置を占める
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 道の敷設という要素が加わった一方で,簡略化された部分もある。コアとなる施設はその種類が減ったし,徴兵や鉄砲の購入を委任して自動的に行うこともできるようになった(前作でも徴兵は委任できたが,本作では「誰にやらせるか」まで決定できるため,運用に柔軟性が生まれている)。

 さて,この「道の敷設」という,ある意味でマップデザインに関わる部分をプレイヤーに委ねてしまうという大胆な挑戦を行った本作だが,それだけに,元となるマップは非常に慎重なデザインとなっている。山岳などの配置はより厳しくなり,通行不能(道を引くことも当然できない)なルートも巧妙に配置されている。

 これはこれで,適切な抽象化と言えるだろう。「無理すればできたかもしれない」程度の可能性であれば,「まったくできなかった」として潰してしまうのも,ストラテジーゲームのデザインにおいては重要な判断だと思われる。

浅井と織田は美濃で接しているが,六角と織田は山岳に阻まれ,隣接していない
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 ちなみに「天道」は,歴史イベントの効果がかなり大きい。筆者は歴史イベントとしての「桶狭間」が起きる以前の段階で,数的に今川氏を上回る兵と装備を整えて勝負に挑んだが,今川義元はおそろしく強く,「とてもかなわない」と思わされた。
 この精強極まりない今川義元が膝を屈するというのが,「天道」の歴史イベントである。

今川義元と正面決戦すると,泣きそうなくらいに強い
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敦盛踊りまくった信長が見事に勝利。これが歴史イベントの力だ
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 これはシリーズ全体についての話となるが,このあたりの「武将をどう評価するか」というのも,信長の野望を遊んでいくにあたっては面白いところだろう。
 古い作品においては,今川義元は惰弱な武将と評価されており,「東海一の弓取り」を思わせる強さはまるでなかった。このため織田家は今川を上回る兵力を揃えなくとも(当然ながら歴史イベントに頼らずとも),今川義元軍を正面撃破できたのである。

 だが「天道」での今川義元は,時代を代表する名将の一人として描かれているし,実際にとても強い。こういった「解釈の違い」は,歴史ストラテジーゲームを遊びこむにあたっての大きな楽しみだろう。

 「道」という,既存作品でそれほど重要視されていなかった要素を前面に打ち出し,歴史イベントをより強力にした「天道」からは,開発者の信じる歴史観とでもいうべきものが伝わってくるような気がする。

ゲーム開始時に,どの国と同盟しているかを教えてくれる。「革新」からの仕様で,小さいことだが,これが結構便利
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信長の野望・創造(2013年)


 「信長の野望・創造」は,革新・天道と発展してきたシステムに対し,それを根底では引き継ぎつつ,古い「信長の野望」の持つシステムもまた意識した作品である。

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 創造においても,ゲームは1枚マップの上で進行するし,基本的にはリアルタイムのゲームであると言える。
 だが創造では,1か月に1回,「評定」と呼ばれるイベントが発生する。そして外交や内政の指示は,この「評定」のタイミングで,まとめて実行することになる。

「評定」のタイミングで内政や外交を行う
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戦闘は1枚マップの上でリアルタイム進行
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 これは一見すると「でも結局リアルタイムじゃない?」と思うかもしれないが,大きく違う。
 革新と天道では,内政を考えるタイミングと,戦争を行うタイミング,そして外交を考えるタイミングは,すべてシームレスだった。極論で言えば,激しい決戦を行っている裏で,何らかの技術研究が完成したら,いったんそこでポーズをかけて,次の技術開発をどうするか考える――そういったテンポで進行するゲームだった。
 だが創造では,リアルタイムで進行する1か月は事実上戦争に集中する1か月として進行し,内政や外交は「評定」という「ターンの頭」でまとめて実行することになる。これによって,プレイ感としては内政と戦争が切り分けられているのだ。

評定の冒頭では,「報告」が入る
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 RTSに慣れた人ならば,革新や天道のように「複数のことを同時に考える」ことにも慣れているだろう。だが,すべてのゲーマーがそうであるわけではない。「創造」のシステムは,リアルタイム性が持つダイナミズムを保ったまま,内政や外交を考えるタイミングを独立させることで,プレイヤーが並行して考えなければならない状況を一気に減らすことに成功している。

 さて,内政が事実上のターン制ということになると,「では行動回数をどう縛るのか?」という疑問が発生する。恒例のアクション管理システム問題である。
 創造においては,このアクション管理を,「労力」によって表現している。要は働く人口が多ければ,それだけ多くのアクションが実行できる,という発想である。これは従来の武将のステータスに依存するアクション制限と比較すると,革命と言っていいほどの根源的な変化だが,詳しくは後述する。

街道の強化を行うところ。画面上に,工事に必要な労力と,残り労力が表示される
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 創造の内政は,革新や天道と同じく,街づくりのシステムである。だが創造は,悪く言えば「少しずるい手」を使うことで,革新や天道ですら拭えなかった面倒さを解消している。
 創造においても,内政の成果たる建造物は,マップ上に配置される。だがプレイヤーは,直接1枚マップを触るのではない。開発を行おうとすると,その城固有の「開発用ミニマップ」がフォーカスされ,そこをクリックして建物の配置や土地の開発などを行っていくのである。これによって1枚マップを拡大したり縮小したり回転させたりしながらプレイする手間はなくなり,かつ,1枚マップ上での街づくりというニュアンスは残された。

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開発したい城を選んだら,次に開発する地域を選び,続いて建てる建物を選ぶ。なお筆者はこのあたりまで全部委任してます
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 また個人的に「創造」で非常に優れていると感じるのは,「委任」コマンドの柔軟性である。
 極端な話をすると,プレイヤーは評定を完全に委任してしまうことが可能だ。「街づくりなんてやりたくないんじゃ!」という場合は,そのあたりを全部委任してしまえばいい。

 とはいえ,「面倒だとは思うけど,内政を全部委任したいわけでもない」という気持ちだって,当然湧き上がってくる。特に外交や調略といった行動や,資金がショートしてきたときの商取引といった行動は,プレイヤーが積極的にマネジメントしたい範囲にあることが多い。

 創造では,ここにおいて,評定のタイミングで「まずプレイヤーが直接マネジメントしたいことを,すべて入力」し,続いて「それ以外のアクションをすべて委任する」という,「ワガママな委任」が可能となっている。要は「重要なことは俺がやる,あとのことは良きに計らえ」プレイが可能なのだ。

 結果として創造では,将星録で作られた箱庭的ゲーム性を引き継ぎつつも,それらをすべて「委任」に押し付けてしまえば,純粋な国盗りゲームとしてプレイすることも可能だ。さすがは30周年に相応しい,非常に洗練された,ハイブリッドなゲームと言えるだろう。

大名画像の右下にある「評定委任」を押せば,「あとは良きに計らえ」で評定が終わる。便利。とても便利
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戦闘が忙しくて集中力を切らしたくない場合は,評定そのものを完全に委任してしまえる
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 ちなみに,創造は別の側面においても,30周年に相応しい,革命的な作品である。
 前述した通り,創造においてアクション数は労力によって縛られる。これはつまり,アクション数がその土地の人口によって縛られる,ということでもある。

 ここまで見てきたように,信長の野望シリーズは「戦国群雄伝」以降,アクション数はほぼ常に武将に依存してきた。それはときに武将の数だったり,武将の行動力だったり,あるいは軍団長のスペックに依存したりもしたが,行動回数が武将に依存するというところでは,変わることがなかったのだ。

 だが創造は,武将を用意しつつも,その行動回数は人口,つまり土地で縛っている。これは「全国版」までに見られた「1国1行動」の発展版と言ってもよい。驚くべきことに,創造という最新作は,プレイヤーのアクション数管理という,ゲームのかなり根底的なところで,凄まじい先祖返りを果たしていたのだ。

もちろん新要素も多く,「政策」もそのひとつ。どんな政策が実施可能かは,大名の政治的姿勢に依存する
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 そして実際のところ,このことは現代的な歴史観――英雄が時代を変えるのではなく,その時代の状況にうまく(あるいは結果的に)適応した人物が英雄として名を残す――に沿った見解である。

 結局,戦争するなら人口が多いほうが有利であるのは言うまでもない。織田信長は才能ある統治者であったが,彼が勢力を大きく伸ばせた要因から「人口が多い地域を支配する大名だった」ということを外すのは難しい。

 長い戦国時代,織田信長のような才能を持つ統治者は,ほかにもいたかもしれない。だが最も戦争に向いた土地に生まれた人物,つまり織田信長が,最終的に,戦国時代を終わらせる戦争を行える人物となった。夢がないといえば夢のない解釈だが,ストラテジーゲームの考え方としては,実に的確で現実的な考え方であろう。

 そういう意味で,創造は大きな先祖帰りをすると同時に,新しい時代の「信長の野望」を作っていく,その大きなステップとなったと言うこともできる。

日本全図から地域図,そして領地全図へと,マウスホイールを回すだけでシームレスに拡縮できる。状況の見通しは非常に良い
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まとめに代えて


 1983年の初代「信長の野望」から,2013年の「信長の野望・創造」まで,14作品をプレイして最も強く感じたのは,「信長の野望」というシリーズは,過去の作品が作った流れを大事に守りつつ進化してきた,ということだ。
 「三國志」シリーズもまた,過去の作品をお手本としながら進歩してきた作品だが,「信長の野望」に比べると,毎作品ごとに大胆な変化を加えてくることが多い。一方で「信長の野望」は,30年かけて大きく変貌したとはいえ,より短期的なスパンにおいては,「前の作品が切り開いた道」を大きく外れないよう,丁寧に,慎重に進んでいるという印象が強いのだ。

 これが実際にどういう形で現れたかというと,まったくの私事になるが,この「信長の野望」連続プレイにおいて,マニュアルを参照する必要はほとんどなかった(将星録で行き詰まり,少し確認した程度)。「三國志」の連続プレイにおいては,ほぼ毎回マニュアルを熟読する必要があったのに比べると,大きな差である。

 とはいえ,「信長の野望」が何も変わってこなかったわけではない,ということは,ここまでお読みの方ならお分かり頂けるだろう。信長シリーズは信長シリーズで,着実に変化を繰り返してきた。

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 個人的には,そうやって慎重に進んできた「信長の野望」が,30周年記念作品となった「創造」において,「戦国群雄伝」以降堅持してきた英雄史観と真っ向衝突する,「人口が多い土地だから有利」というシステムを,ゲームのかなり基礎的な部分に,さりげない形で仕込んできたという事実には,興奮を隠せない。

 その一方で,最新作となる「信長の野望・創造 戦国立志伝」が,「武将プレイ」という英雄に注目するシステムを搭載することからは,過去の作品やそのプレイヤーを大切にする「信長の野望」シリーズの伝統はなお生きているとも感じる。

 果たしてこれからの30年で,「信長の野望」はどのように変化していくのだろうか。願わくば30年後に,あと14作ほど追加してマラソンプレイしてみたいものである。


●「全国版」から「創造」まで,信長の顔グラフィックス変遷

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全国版
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戦国群雄伝
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武将風雲録
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覇王伝
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天翔記
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将星録
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烈風伝
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嵐世記
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蒼天録
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天下創世
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革新
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天道
創造
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