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MSIの「GTX 980Ti LIGHTNING」を試す。新しいフラグシップグラフィックスカードは誰のためのものか
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印刷2015/11/12 05:00

レビュー

MSIの新しい「LIGHTNING」グラフィックスカードは誰のためのものか

MSI GTX 980Ti LIGHTNING

Text by 宮崎真一


GTX 980Ti LIGHTNING
メーカー:MSI
問い合わせ先:アスク(販売代理店)サポートセンター 03-5215-5652(平日10:00〜12:00および平日13:00〜16:00)
実勢価格:11万1000〜11万7000円程度(※2015年11月12日現在)
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 MSIのLIGHTNINGは,もう何年もの間,世界中にいるエンスージアスト(enthusiast,熱狂者。日本語では「マニア」の意に近い)にとっての定番グラフィックスカードの1つとして君臨してきた。その2015年秋における最新モデルとなるのが,「GeForce GTX 980 Ti」(以下,GTX 980 Ti)搭載の「GTX 980Ti LIGHTNING」だ。
 2015年11月現在,GTX 980 Ti搭載カードは,ブランドにさえこだわらなければ税込9万円くらいから購入できる。その状況にあって,GTX 980Ti LIGHTNINGの実勢価格は11万1000〜11万7000円程度(※2015年11月12日現在)と,最安値比で軽く2割以上高価なわけだが,果たしてLIGHTNINGの最新モデルにそれだけの価値はあるのだろうか,テストを通じ,その実力と使い勝手に迫ってみたい。


動作クロックはリファレンスより20%以上高く,さらなる高みを目指すための機能もあり


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GTX 980 Ti GPU
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カード全景
 GTX 980 TiがどんなGPUかという話は,発表当時のレビュー記事を参照してもらうとして,さっそくGTX 980Ti LIGHTNINGの仕様をチェックしていこう。
 過去のLIGHTNING製品と同様に,GTX 980Ti LIGHTNINGもメーカーレベルで動作クロックが大きく引き上げられたクロックアップモデルとなっている。具体的には,ベースクロックが1000MHzから1203MHzへ約20%,ブーストクロックがは1075MHzから1304MHzへ約21%。後述するテスト環境で,GPUコアクロックは1404MHzまで上昇したことも付記しておきたい。
 なお,組み合わせられるGDDR5メモリも,リファレンスの7008MHz相当(実クロック1752MHz)からGTX 980Ti LIGHTNINGでは7096MHz(実クロック1774MH)相当へと,約1%ではあるものの,クロックが引き上げられていた。

 その外観は,端的に述べて非常に大きい。GTX 980 Tiのリファレンスデザインだと,カード長が実測約268mm(※突起部除く)で,クーラーは2スロット仕様なのに対し,GTX 980Ti LIGHTNINGは,基板の時点で長さは同290mm。3スロット仕様の大型クーラーを搭載した全長は同330mmと,堂々の(?)30cm超えだ。

カードは巨大。3スロットで全長330mmというのは,PCケースを間違いなく選ぶだろう
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カードの全体をチェックしてみたカット
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補助電源コネクタと付属の変換ケーブル
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 補助電源コネクタは6ピン×1+8ピン×2という構成。リファレンスと比べると8ピンが1基増えたような形になっており,そのすべてに正しく電力を供給できなければ起動しない。ただし,製品ボックスには6ピン−8ピン変換ケーブルが1本付属しており,これを使って6ピン×2+8ピンで給電した場合には,動作に支障はなかった。強烈なオーバークロック設定を行ったりするのでなければ,6ピン×2+8ピン構成による最大375W供給で問題ないというわけだ。

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基板部にあるDIPスイッチで,標準と液体窒素冷却用のVBIOSを切り替えられる
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クーラー部は,黄色で「OC」(Over Clockの略)と縁取られたデザインとなる
 ちなみにGTX 980Ti LIGHTNINGでは,いま述べた「強烈なオーバークロック」に向けた要素が用意されている。本製品の場合,SLI用ブリッジの近くにあるトグルスイッチで,2つあるグラフィックスBIOS(以下,VBIOS)の機能を切り替えられるのだが,本機の場合,標準のVBIOSとは別に,「GPUクーラーを取り外して,液体窒素でGPUを冷却し,それによってより高いオーバークロックを実現する」ためのVBIOS「LN2」を選択できるのである。
 GPUクーラーの取り外しは自己責任であり,取り外した時点でメーカー保証は受けられなくなる。にも関わらず,製品ボックスに液体窒素冷却用のヒートシンク基板が付属しているというあたりは,GTX 980Ti LIGHTNINGという製品の立ち位置を明確に表している――ゲーマー向けというよりも,GPUオーバークロック競技者向け――といえるのではなかろうか。

製品ボックスに付属の液体窒素冷却専用ヒートシンク。名称は「Extra Heat Sink for LN2」のようだ
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Torx Fan(上)と,ヒートシンク部を横から見ると分かる,放熱フィン部にある小さな凹凸(下)。これらによってエアフローの最適化を実現しているという
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 さて,そのGPUクーラーは,最大700WのTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)に対応できるという,MSI独自の「TriFrozr」(トライフローザー)。エッジの傾斜が異なる2枚のブレードを交互に配置した90mm角相当のファン「Torx Fan」(トルクスファン)を3基搭載するのが特徴だ。Torx Fanは,MSIのゲーマー向けグラフィックスカードでよく採用される「TwinFrozr」クーラーにも採用されているので,「ああ,あれか」と思う人も多いだろうが,このTorx Fanと,放熱フィン部の突起加工とにより,ファンの下にあるヒートシンクに対するエアの拡散度合いが向上し,より効率的な冷却を行えるというのが,MSIの言い分である。
 ファンは,GPU負荷が低くなり,発熱も下がったときには回転が停止するという,最近のトレンド的な機能にも対応していた。

LIGHTNINGロゴと,その左右にある4本のラインが光る
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 なお,TriFrozrクーラーでは,側面のにある「LIGHTNING」ロゴ部が「Mystic Light」という機能によって8色で点灯し,その点灯の仕方もソフトウェアで変更できるそうなのだが,テストを実施した11月6日時点では,MSI製オーバークロックツール「Afterburner」(Version 4.1.1)にも,ゲーマー向けの簡易オーバークロックツール「Gaming App」(Version 5.0.0.16)にも設定機能が用意されておらず,色は標準の黄色で光るままとなっていた。どうやら,色はGaming Appから変更できるようなので,対応版の早期リリースを望みたいところだ。



見るからに豪奢な基板とクーラー


TriFrozrクーラーを取り外したところ
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 前段でお断りしたとおり,GPUクーラーの取り外しはメーカー保証外の行為だが,今回はレビューのため,特別に取り外して,TriFrozrクーラーと基板をより細かくチェックしてみよう。
 まずはGPUクーラーからだが,ニッケル製のGPU枕を貫くような形で,8mm径が3本と6mm径が2本で,計5本のヒートパイプが放熱フィンに伸びるような構造になっているのが分かる。さらに基板は,メモリチップや電源部を覆うヒートシンク兼補強板がほぼ全体を覆うような格好になっている。

ファンと放熱フィン,GPU枕部(左)と,基板を覆うヒートシンク兼補強板(右)
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GPU用電源部のクローズアップ
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 補強板の下にある基板は,MSIによると10層構造。電源部はGPU用が12フェーズ,グラフィックスメモリチップ用が3フェーズと,かなり豪華な仕様だ。採用する部品は,MSIが独自に定める品質規格「Military Class 4」に合致したものとなっており,MOSFETには,ドライバICなどを統合し,60Aまでの電流をサポートする「DrMOS 60A」を採用するほか,電源周りには「Hi-c CAP」や「Super Ferrite Choke」「Dark CAP」といった,MSI製グラフィックスカードでお馴染みの,高耐久部品が揃っている。

基板の下と上にあるヒートシンク兼補強板を取り外したところ
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 なお,基板の後方側には,GPUとメモリ,PLLの電圧を測定できる「V-Check Point」があり,コネクタケーブルも3つ付属する。ゲーム用途で役に立つようなものではないが,オーバークロック設定時に動作状況を事細かにモニタリングしたいようなケースでは役立つだろう。

 なお,メモリチップはSK Hynix製「H5GQ4H24MFR-R2C」(7.0Gbps品)だった。先述のリファレンス比で約1%高いクロックは,メーカーレベルのオーバークロックによって実現されていることになる。


カード定格以上のOCはLN2モード前提か。空冷でのオーバークロックではあまり上がらず


外部出力インタフェースはDisplayPort 1.2×3,HDMI 2.0×1,Dual-Link DVI-I×1
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 テストのセットアップに入ろう。今回,比較対象としては,GTX 980 Tiと,そのさらなる上位モデルとなる「GeForce GTX TITAN X」(以下,GTX TITAN X)の両リファレンスカードを用意。グラフィックスドライバには,テスト開始時点の最新版となる「GeForce 358.87 Driver」を用いている。そのほかのテスト環境は表のとおりだ。

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 テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション17.0準拠。ただし,時間的都合により,「Crysis 3」と「GRID Autosport」のテストは省略している。
 解像度は,GTX 980Ti LIGHTNINGの立ち位置を踏まえ,2560×1600ドットと3840×2160ドットの2パターンを選択した。

 なお,テストにあたって,CPUの自動クロックアップ機能「Intel Turbo Boost Technology」は,マザーボードのUEFI(≒BIOS)から無効化している。これは,テスト状況によってその効果に違いが生じる可能性を排除するためだ。

Afterburnerからオーバークロック設定を行ったところ,ブースト最大クロックは1454Mhzに到達して安定動作した
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 ……と,ここで,テストに先立って,TriFrozrクーラーを搭載した「標準状態」のGTX 980Ti LIGHTNINGでオーバークロックを試しておこう。オーバークロックにあたっては,Afterburnerを使ってコアクロックを引き上げつつ,すべてのテストが問題なく動作したことをもって「安定動作」と判断することにして,上限を探っている。
 さて,結論から言うと,GTX 980Ti LIGHTNINGのGPUコアクロックは,カードの定格比で50MHz高い,1253MHzまでしか上がらなかった。このときのブースト最大クロックは1454MHz。これ以上の設定を行うと,ゲームアプリケーションが異常終了したり,システムがフリーズしたりしたので,ここが限界ということになるだろう。

 では,Afterburnerからコア電圧を高めたり,電力制限を緩めたりするとどうなるか。試しに前者を+50mV,後者を122%(※いずれもAfterburnerの上限)に設定したが,すると,+50MHzでもアプリケーションが異常終了するようになってしまった。
 おそらく,適切な値を詰めていけば,もう少し高い設定も不可能ではないと思われるが,少なくとも空冷での伸びしろはあまりないという理解でいいのではなかろうか。

 また,Afterburnerからメモリクロックを変更できなかったことも指摘しておきたい。先のGaming Appも含め,周辺アプリケーション側の対応が十全でない点は,早急になんとかしてほしいところである。

※注意
 AfterburnerなどのGPUカスタマイズツールを用いたオーバークロック設定はメーカー保証外の行為です。最悪の場合,グラフィックスカードをはじめとする構成部品の“寿命”を著しく縮めたり,壊してしまったりする危険がありますので,本稿の記載内容を試してみる場合には,あくまで読者自身の責任で行ってください。本稿を参考にしてオーバークロック動作を試みた結果,何か問題が発生したとしても,メーカー各社や販売代理店,販売店はもちろん,筆者,4Gamer編集部も一切の責任を負いません。


GTX 980 Ti比でおおむね15%程度スコアが高いGTX 980Ti LIGHTNING


 以下,オーバークロックで安定動作した状態を「GTX 980Ti LIGHTNING@1253MHz」と表記し,この状態のスコアも示すことを断りつつ,テスト結果を見ていきたい。

 グラフ1は「3DMark」(Version 1.5.915)の総合スコアをまとめたものだ。GTX 980Ti LIGHTNINGはGTX 980 Ti比で12〜15%程度高いスコアを示し,GTX TITAN Xよりも6〜9%程度高いところにいる。リファレンスクロック比で20%高いベースクロックに設定され,それを大型クーラーで冷却できるという,GTX 980Ti LIGHTNINGのメリットが出ているといえそうだ。
 GTX 980Ti LIGHTNING@1253MHzにおけるオーバークロックの効果は,GTX 980Ti LIGHTNING比でプラス約2%。これを意味があると見るかどうかは人それぞれだと思うが,体感できるような違いでないのは確かである。

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 続いてグラフ2,3は「Far Cry 4」の結果となる。
 Far Cry 4でも,GTX 980Ti LIGHTNINGのスコアは,比較対象と比べて明らかに高い。GTX 980Ti LIGHTNINGのスコアは対GTX 980 Tiで112〜119%程度,対GTX TITANで109〜114%程度と,いずれも3DMarkよりギャップが広がっている。とくに4K解像度における対GTX 980 Tiのスコアは,ベースクロックの違いをほぼそのまま反映したような格好であり,興味深い。

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 その傾向はテスト結果をグラフ4,5にまとめた「EVOLVE」でも同様だ。GTX 980Ti LIGHTNINGは,GTX 980 Tiと比べて13〜23%程度高いスコアを示している。GTX TITAN Xとのスコア差も8〜9%程度と,Far Cry 4ほどではないにせよ,十分に大きい。

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 「Dragon Age: Inquisition」(以下,Inquisition)の結果がグラフ6,7となるが,ここでGTX 980Ti LIGHTNINGとGTX 980 Tiのスコア差は12〜14%程度。3DMarkに近い結果となった。Inquisitionのような描画負荷が高いタイトルでは,最後はメモリ性能勝負となりがちなだけに,メモリクロックが近しい両製品では,GPUコアクロックほどのスコア差にはなりにくいということなのだろう。

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 グラフ8,9は「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド ベンチマーク」(以下,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチ)の結果だが,今回取り上げているGPUにとっては描画負荷が低すぎることもあって,相対的なCPUボトルネックが生じ,スコアが全体的に丸まり気味だ。少なくとも「標準品質」のスコアはほぼそんな感じなので,今回は「最高品質」のスコアを見ていきたいと思うが,すると,GTX 980Ti LIGHTNINGはGTX 980 Ti比で16〜17%程度,スコアが高い。
 さすがに,3840×2160ドットだと,スクウェア・エニックスが示す指標の最上位「非常に快適」のラインは大きく下回ってしまうが,平均で44.4fps出ているので,プレイアブルと述べても言いすぎではない。

※グラフ画像をクリックすると,平均フレームレートベースのグラフを表示します
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消費電力は妥当。クーラーの冷却性能・静音性はともに優秀だが,コイル鳴きが気になる


 さて,GTX 980Ti LIGHTNINGはクロックアップモデルあることに加えて,補助電源コネクタが3基も用意されており,消費電力の高さが懸念されるが,実際はどうか。ログの取得が可能な「Watts up? PRO」を用いてシステム全体の消費電力を測定,比較してみたい。

 テストにあたっては,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイの電源がオフにならないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時としている。

 その結果はグラフ10のとおり。アイドル時におけるGTX 980Ti LIGHTNINGのスコアは66Wと,GTX 980 Ti比で若干高いが,これはカードの豪華な仕様を考えると致し方ないところだろう。
 一方のアプリケーション実行時だと,GTX 980Ti LIGHTNINGはGTX 980 Tiと比べて20〜44W高かった。ただ,クロックアップによる性能向上率を考えると,消費電力増大率が5〜12%で済んでいるというのは,そう悪くもない。

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 TriFrozrの冷却性能も確認しておきたい。ここでは3DMarkの30分間連続実行時点を「高負荷時」とし,アイドル時ともどもAfterburnerからGPU温度を取得することにした。なお,テスト時の室温は24℃。システムはPCケースに組み込まず,いわゆるバラックの状態に置いてある。
 カードごとに温度センサーの位置やファン回転数の制御方法は異なるうえ,前述のとおり,GTX 980Ti LIGHTNINGの場合はアイドル時のファン回転が停止する仕様なので,横並びの比較にはまったく意味がないが,それでも,高負荷時の温度が70℃以下というのは,立派と言っていいように思う。大型クーラーはきっちり仕事をしているわけだ。

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 最後は,気になる動作音について。
 今回は,マイクをカードと正対する形で30cm離した地点に置き,PCをアイドル状態で1分間放置した状態から,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチを最高品質の1920×1080ドットで4分間実行した,計5分間を録音し,サウンドファイルとして下に置いてみた。
 聞いてみてもらうと分かるが,再生開始後1分は,グラフィックスカード側のファン回転が止まっているため,それ以外の動作音のみだ。ベンチマークの開始後20秒くらい(≒再生開始後1分20秒前後)からファンの回転が始まり,その音が次第に大きくなっていくが,その音量は比較的小さく,このクラスの製品としては,静音性がかなり高い。伊達に3スロット仕様で300mm超級サイズのクーラーは搭載していないということだろう。

SOUND PLAYER:このブラウザは未対応です。PCをご利用ください。
※再生できない場合は,Waveファイルをダウンロードのうえ,手元のメディアプレイヤーで再生してみてください。

 気になったのは,Far Cry 4の起動後,メニュー画面が表示されるまでの間に,コイル鳴きが聞こえたこと。ゲームをプレイし始めるとコイル鳴きは止んだのだが,描画負荷の状況によってはコイル鳴きが発生するというのは,懸念点だと言わざるを得まい。
 もっとも,Far Cry 4以外のタイトルでコイル鳴きは発生しておらず,実際,上で掲載したサウンドファイルにおいてもコイル鳴きは確認できない。


ゲーマー向けではなくオーバークロッカー向け

オンリーワンな仕様を魅力だと感じるならアリ


製品ボックス。開けるとなかなか豪華な内箱が出てくる。内箱は二段構造で,上にグラフィックスカード,下に液体窒素冷却用ヒートシンクプレートなどが入っていた
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 というわけで,GTX 980Ti LIGHTNINGを見てきた。その性能は文句なしに高い。シングルGPUで最高性能を求めるゲーマーにとって,十分に満足の得られる製品だとまとめることができるだろう。
 ただ,本稿の序盤でも指摘したとおり,GTX 980Ti LIGHTNINGで充実しているのは,ゲーマー向け機能ではなく,LN2モードをはじめとしたオーバークロック関連の仕様のほうだ。LEDイルミネーションも満足に制御できない状態が(少なくとも国内発売のタイミングで)放置される一方,標準で液体窒素冷却専用のヒートシンクが付属するあたり,MSIが誰をターゲットにしているかは明らかと言っていいのではなかろうか。言い換えると,液体窒素冷却などを大前提に,オーバークロック競技で使えるグラフィックスカードを探しているという人こそ,購入を検討すべき製品であり,そういう用途においては,大いに魅力的な製品ということになるのではなかろうか。

 一方,ゲームメディアとしての立場だけで語らせてもらうのであれば,「液体窒素冷却用の追加要素」という,明らかにゲーム用途で不要な部分のコストを負担することへの抵抗があるかどうかが重要なポイントになる。得られる性能と静かさを,余分な要素が載った実勢価格と天秤にかけて,割高すぎはしないと判断したのであれば,購入して後悔することはないとまとめておきたい。

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MSIのGTX 980Ti LIGHTNING製品情報ページ

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    GeForce GTX 900

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