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カズキヨネ氏&ぷらなりこ氏が語る,女性に愛される魅力的な男性キャラクターのつくりかたとは? ジークレスト主催セミナー
2019年9月3日,ジークレストがおくる女性向け作品の開発者向けセミナー「Girls Game MEETS」が開催された。今回のセミナーは「たくさんの女性に愛される魅力的な男性キャラクターのつくりかた」と題し,イラストレーターのカズキヨネ氏と「夢王国と眠れる100人の王子様」(iOS / Android。以下,「夢100」)のアートディレクターを務めるぷらなりこ氏による貴重な制作秘話などが語られた。セミナー終了後の懇親会では,カズキヨネ氏によるライブドローイングも実施されたので,本稿ではそれらの模様をお届けしよう。
「魅力的な男性キャラクターのつくりかた」
登壇者:
カズキヨネ氏(イラストレーター)
ぷらなりこ氏(「夢100」アートディレクター)
「Girls Game MEETS」では,これまでにも「長く愛される女性向けIPづくりの秘訣」や「女性向けゲームの世界観設計&運用秘話」をテーマに,ゲームクリエイター向けのセミナーが実施されている。
今回は,「薄桜鬼」や「緋色の欠片」など人気女性向けゲームのキャラクターデザインを担当してきたイラストレーター,カズキヨネ氏と,「夢100」のアートディレクターを務めるぷらなりこ氏が揃って登壇とあり,女性向けコンテンツの関係者はもちろん,イラストレーターにとっても注目のセミナーとなっていただろう。
■質問1.イラストの制作フローは?
セミナーは,いくつかの質問に沿って登壇者が答えるパネルディスカッション形式で行われた。最初の質問「イラストの制作フローは?」に対し,ぷらなりこ氏は「『夢100』の場合はキャラクタープランナーから細かい世界観やそれぞれのキャラクターに合った衣装案が伝えられたあとに,素体やポーズラフを進めていく」と回答。それから清書し顔を整え,線画でクリーンアップしつつレタッチして終了となる。ただ,いくつかの作業を同時進行して行うため,全体の流れでは1か月半ほどをかけて制作していると話した。
一方カズキヨネ氏は,フリーランスになってからはすべての工程を自分で描いて納品をするため,線画におこす人や塗る人を気にせずに,100%自分だけで消化できるようになったと語る。制作時間に関しては,あまり得意ではない「塗り」に一番時間がかかるそうだ。
作業を人に渡す場合には,バケツ塗りで失敗のないように線をしっかり繋げるなど,やや機械的なところに気をつけているのだという。また,ラフをクライアントに提出してから「おそらくリテイクはないだろう」と判断した場合は,リテイクを待たずにそのまま完成まで作業を進めていくこともあるとのこと。
それは描いてから時間を置いてしまうと「腐る」,つまり「その時は良く見えたのに……」という状態になることがあるためらしい。なおイラスト制作は主に「SAI」と「Photoshop」を使用しているそうで,最近始めた「クリスタ」は,ぷらなりこ氏も便利で優秀だと話していた。
■質問2.好き/嫌いな製作工程は?
カズキヨネ氏は,先ほどの質問で述べたとおり構図を決めてラフを描くのが好きで,塗りが一番苦手らしい。これにはぷらなりこ氏も驚いたそうなのだが,カズキヨネ氏曰く,苦手だからこそ少しでも“プロっぽい”絵に見えるように頑張っているのだそうだ。いつも思うのは,「この絵,プロっぽく見えるかな……?」だそうで,仕事の絵は趣味のものとは分けて考えられていることがうかがえた。
ぷらなりこ氏は,逆にラフがあまり好きではなく,作業工程としては仕上げで光を入れるときが好きと語る。ライティングを設定して髪の毛を透かせたり,細かいところを調整するのが一番楽しいとのことだ。「夢100」はかなり制作レギュレーションがしっかりとあるのだが,キャラクターの覚醒後のイラストはきらびやかに見せる必要があり,たくさん効果を入れられるため楽しいという。このことから,ふたりは「一緒に仕事をしたらちょうどいいのでは?」と話し,笑いが起きていた。
■質問3.キャラクターデザインの方法とは
続く「世界観やキャラクターの性格など,様々な要素があるなかで参考にしている部分は?」との質問にカズキヨネ氏は,クライアントによってオーダーが異なり,髪の色やごく細かいところまで設定が決められている場合と,最低限の設定のみで作業に入る場合があると話す。
前者の場合は注文通りのものを制作して反応を見るが,後者の場合は「このキャラクターはこう生きてきたのでは?」と想像しながら作っていくそうで,どちらでもやりやすいが,どちらかといえば自分の好きな色などを設定できる自由度の高い後者が好きとのこと。
ちなみに,カズキヨネ氏は「ツノ」が好きでよく生やしてしまうそうだ。以前,前者のタイプの仕事があった際,「今回は角を生やさないでください」とオーダーがあり,思わず笑ってしまったと語っていた。
なお,自分で色や設定を決める際は,服などはあとからどうにでもできるので,顔の形と髪型,目と肌の色など首から上を最初に決めるのだそうだ。そして,全体的なバランスを見るために,いくつかのキャラクターをすべて2頭身で描いて並べ,バランスを見ると話していた。
■質問4.魅力的な男性キャラクターを描く上で気をつけていることとは?
この質問にカズキヨネ氏は,「当たり前のことではあるが,女性向けなら格好良く,男性向けの場合は可愛らしく作ることを心がけている」と語る。一方ぷらなりこ氏は,このキャラクターが自分で選んだ服であることを念頭に置きつつも,より魅力的に見えるようフェチを取り入れたり,色から受けるイメージも重要なので,何色ベースでどんな印象のデザインか分かりやすくすることも心がけているのだそうだ。
また,女性向けの場合は「手」の仕草が色気を出すのに重要で,「骨」と「筋」も,男らしさが出る場所ではないかと語った。さらに,男性キャラクターの場合は筋肉も大切な部分だが,あまりにも盛りすぎると逆にウケが悪くなるので,ちょうどいいバランスになるよう気をつけているのだという。
ちなみに,カズキヨネ氏は前述のとおり「ツノ」が好きだそうだが,そのきっかけは「薄桜鬼」もだが,さらに前,「緋色の欠片」で鬼を題材に使った際に「目覚めた」のだと明かしてくれた。
■質問5.作品のターゲットによるイラストの描き分けとは?
作品によりテーマやターゲットは異なるが,カズキヨネ氏は,タイトルごとに塗りの雰囲気を変える試みをしているのだそうだ。なぜなら,和モノや伝記系と,学園モノなどで同じ塗りは適用できないと考えているからだという。
したがって,タイトルごとに世界観やジャンルに合った塗りを提案しており,逆にクライアントから「こういう塗りがいい」と言われた場合は,それを研究して仕上げることもあると語る。
また,和と洋の違いとしては,和紙っぽいものなどのテクスチャーを使用すると一気に和風っぽくなり,色を原色に近くしてハイライトをパキッとさせると,洋風になると考えているとのこと。以前,洋風のイラストを描いた際は,西洋絵画などを参考にし,厚塗り方向にいってみたこともあるそうだ。
■質問6:インプットの方法は?
普段の生活でカズキヨネ氏は,電車に乗った時に前の人の足元などをじっと見てしまうと話した。理由は,スーツを着ているサラリーマンの足元のスラックスのたわみや,シャツのシワの入り方,女性ならスカートのドレープなどを観察し,イラストに活かすため脳裏に焼き付けているからだそうだ。
一方ぷらなりこ氏は,「写真や映像作品などを観て,光の入り方のきれいなものを知見としてためておく」と語った。その際,Pinterestには参考になるものが多数あるので,よく見ているとのこと。コスプレイヤーの写真もライティングがものをいう作品も多く,キャラ愛にあふれているので,そちらも参考にすることがあるのだそうだ。
■質問7:普段どのようにイラストの練習をしているか?
イラストが上手くなる秘訣としての質問だが,カズキヨネ氏は,まったくないわけではないが,練習としてイラストを描くことはあまりないと語った。昔から現場で叩き上げてもらったため,実践で鍛えられてきたのだそうだ。
ぷらなりこ氏は目的がないと練習はなかなか続かないタイプで,自分も現場で経験を積みながら勉強していく状況だったと語った。しかし,いずれにしても両者とも「数をこなしてできるようになった」のが共通の見解であり,イラスト上達を目指す人にはぜひ参考にしてほしい。
カズキヨネ氏によるライブドローイング
講演のあとには登壇者と参加者による懇親会があり,今回の特別な趣向としてカズキヨネ氏によるライブドローイングが行われた。スクリーンに映し出される制作過程に目を奪われつつ,あちこちで様々なクリエイター同士が交流する姿が見られた。それではさっそく,ライブドローイングで見られた貴重な制作過程をお届けしよう。
すべての色付けは難しいため,こちらが完成イラストとなった。ここまでの時間は約30分強といったところだろうか。描き始めから素早い見事な筆さばきで,来場者からも大きな拍手が沸き起こっていた。
ジークレストでは,次回もまた新たなセミナーを考えているとのこと。ぜひ今後も情報を追っていきたい。
(C) GCREST, Inc. All rights reserved.
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