インタビュー
アンデルセン童話をモチーフにした「絶対迷宮 秘密のおやゆび姫」。本作を手がけた風之宮そのえ氏に制作へのこだわりを聞いてみた
アンデルセン童話の世界をモチーフにした,女性向けの恋愛アドベンチャーゲームとしては非常に珍しい本作のストーリーは,突然体が小さくなってしまったおやゆび姫が,幼なじみのマッチ売りを始めとする仲間達と旅をするなかで,自らの秘密や恋を知っていく……というもの。
今回は,花梨エンターテイメントのプロデューサーで,本作では企画原案を務めた風之宮そのえ氏に制作のこだわりについてインタビューしてきた。
なお,インタビュー中には若干のネタバレ要素が含まれているので,ゲームを未プレイの人はご注意いただきたい。
「絶対迷宮 秘密のおやゆび姫」公式サイト
職人を集めた工房のように
じっくりこだわって作品を制作
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。本作は,2010年の「絶対迷宮グリム 七つの鍵と楽園の乙女」(以下,絶対迷宮グリム)から,5年ぶりぐらいとなる絶対迷宮シリーズの新作となりますが,久しぶりに絶対迷宮シリーズを手掛けることになった経緯を教えてください。
風之宮そのえ氏(以下,風之宮氏):
ユーザーさんからは,絶対迷宮グリムの続編を,という声も多かったのですが,内容的に完結してしまっているので,もし続編を作る機会があったら,同じ童話ものでも次はアンデルセン童話かな? と思っていました。
グリムの制作のあと,構想はあったのですが,同時に新作も作りたいという気持ちもあり,そのまま続編を作るよりも少し寝かせてからのほうが良いと考え,別のタイトルを制作することにしました。気がつくと,ずいぶん長い間お待たせしてしまったと思います。
4Gamer:
そもそも花梨エンターテイメントさんは,1年に1作品程度と,非常に寡作なメーカーですが,そのあたりにも作品作りへのこだわりがあるのでしょうか。
風之宮氏:
そうですね。ほかのメーカーさんだとシナリオは外注するケースも多いようですが,やはりアドベンチャーゲームはシナリオが一番の核になってくるので,自分の目の届くところでシナリオを書いてもらい,話し合い,原画さんやほかのスタッフの意見も聞き,時に自分で手を入れて直したり,部分的に執筆したりしています。さらに,原画,背景や彩色のチェックも……といった形でやっていくので,どうしても1年くらいかかってしまいますね。
4Gamer:
シナリオやイラストなども含めて自社の中で完結させるような形だと,確かに時間がかかりそうですね。
風之宮氏:
ええ。“商品”だと割り切ってしまえば量産できると思います。1年に数タイトルとか……。でも,今お話ししたように目の届くところでやりたいという気持ちがあるので。自分の場合は,割り切ったほうが逆にストレスが溜まってしまうんです。
以前,開発会社で働いていた時には,3か月間で1本作っていたんですよ。
4Gamer:
それは今とは対照的ですね……。
風之宮氏:
どう考えてもいいタイトルが作れないんですよ。ダメなタイトルをひたすら量産して一体何になるのかを考えてしまい……。
起業当時は2年,現在はだいたい1年で,できるだけこだわった作品作りをしようと。数をたくさん出していくというよりも,職人を集めた工房のような感じで1作1作に丹精を込めて作っていければいい,と思っています。
4Gamer:
ファンの立場からすると,もうちょっと頻繁に花梨さんの作品で遊びたいという声もあると思うのですが……。
風之宮氏:
年に2本くらいは作りたいと思ったこともありますが,いいシナリオという部分がどうしてもネックになってしまい,中途半端なものを作っても逆にがっかりさせてしまうと思うんです。
うちのスタッフや,ゲームに出演されるキャストさんの中には,学生時代に絶対迷宮グリムなどフルコンプしていましたっていう人もいました。
4Gamer:
なにしろ,5年も前の作品ですからね。
風之宮氏:
本作を発売したあと,感想を読んでいると,お子さんのいらっしゃる方が「グリムを遊んだときはまだ学生だった」みたいなことを書かれていたので,ずいぶん経ったんだなと実感しました。自分にとっては,つい先日のことのようなんですけどね。
4Gamer:
花梨さんの作品でユーザーから最も支持されているところは,どこにあると考えていますか。
風之宮氏:
企画とシナリオだと思います。
いい企画がないといいシナリオを練ることはできないし,いいシナリオがあると,絵描きさんもすごく想像力が膨らむと思うんですよ。さらに,いい絵といいシナリオがあれば,キャストさんもいいお芝居ができると思っています。
4Gamer:
相乗効果ということですね。そういえば本作の初回豪華版のパッケージも文字どおり豪華というか,凝った作りで驚きました。
風之宮氏:
あとは,ダウンロード販売が伸びていく中で,あえてパッケージを買ってくれる人に,手にする喜びを感じてほしかったので,ちょっと無理をして箔を入れました。箱もうちがPC向けゲームで使っていた箱をPS Vita用に厚みをつけて新規で作りました。
同時に,日常ではデータで絵や版下を作っているスタッフのみんなにも,手に触れるプロダクトの良さや感動を味わってほしいと思いました。
4Gamer:
これを購入した人の満足度は高いと思います。
風之宮氏:
喜んでもらえたら嬉しいですね。
たとえ売り上げ本数には関係なくても,ユーザーさんの心には残ると思うので,それが次の作品を出した時につながってくるのであれば,多少無理をしてでも世界観を大事にしたいと思いますね。
童話の世界に神話の世界も絡めて
広がりのある世界を作り出す
4Gamer:
秘密のおやゆび姫ですが,なぜアンデルセンをテーマに選んだのか教えてください。
風之宮氏:
恋愛が絡んでくるゲームなので,前作のキャラが出てきて,恋愛に絡まなかったら残念だし,絡んで来たら来たで,あれっ前作のヒロインは? となるので,心機一転して,アンデルセン童話をモチーフにすることにしました。
お馴染みのキャラクターも多いのですが,小さなおやゆび姫の大きな冒険って素敵だな……と考え始め,ほかの登場キャラや世界を考えていくうちに思考が止まらなくなり,その案で制作を開始することに。
4Gamer:
アンデルセン童話のなかから登場人物を選んでいくときに,どういった狙いでキャラを配置していったのか教えていただけますか。
風之宮氏:
たとえば,おやゆび姫のストーリーに出てくる花の王子やツバメは,外せないキャラですが,そうしたキャラだけで固めると,世界が狭くなってしまうので,みんなが知っている童話のキャラをなるべく入れていくようにしました。そうするうちに,氷姫がいるから雪の世界に行ってみようとか,人魚姫がいるから海中の世界に行ってみよう……という感じで世界も出来上がっていったんです。
さらに,童話の登場人物だけだと意外にキャラ性が広がらないので,なるべくファンタジーらしいオリジナルキャラとして,竜騎士や狩人も入れることにしました。
4Gamer:
キャラを配置していくうちに世界が膨らんできて,ストーリーもそれに沿って作られていったんですね。
風之宮氏:
ガリヴァーのようなほかのお話や,昔のアニメや漫画が好きなので,そういったもののパロディも入れています。
4Gamer:
前作でもそういった表現がありましたが,ファンタジー世界なのにネットが炎上するといった,ちょっと面白い雰囲気が入っているのも特徴的ですよね。
風之宮氏:
完全に童話だけにしてしまうと,堅苦しくなってユーザーさんが入りにくくなってしまうので,ちょっと崩すところも入れたほうが,エンターテイメントとして楽しめるかなと。
4Gamer:
この世界に電気はあるんだろうかと考えてしまいます。
風之宮氏:
電気ウナギから電気とってるのかな,みたいな(笑)。冗談ですが。
そういえば映画「フランケンシュタイン」では電気ウナギで装置を起動していたんですよね。
4Gamer:
なるほど。謎が1つ解けました(笑)。基本的な設定は童話がモチーフになっていますが,ストーリーはかなりアレンジされていて,最初はゆったりとしたペースで仲間が増えていきますが,二周め三周めと進んでいくと,後半のほうは怒涛の展開になりますよね。
風之宮氏:
そうですね。童話だけだと小さな世界にまとまってしまうので,神話も絡めて世界を広げていきました。
絶対迷宮グリムの時は,ヴォーダン(オーディン)と戦うという着地点を設けましたが,さまざまなキャラのルートで同じような展開になってしまい,すごく後悔したので,今回はそうならないよう,キャラによってさまざまな世界や冒険,戦いを取り入れています。
4Gamer:
風之宮氏:
人魚姫のストーリーはちょっと大変でした。童話のストーリーが一番のクライマックスだったので,そのあとに旅をする落としどころが思い浮かばず,何度もプロットやシナリオを書き直しました。最終的に,あの国は王が不在だなあと思い,それを取り戻すことが彼女のカタルシスになると思いました。
逆に氷姫は,雪の女王のストーリーをなぞれるので,比較的作りやすかったです。
4Gamer:
私も氷姫が一番のお気に入りでした。
あと,ヌードキングですが……イラストだけを見たときは,これは絶対に変態だろうと思ったんですけど,ゲームの中ではかなり過酷な運命のキャラですね。
風之宮氏:
ネタ的なキャラは,それをネタにしちゃいけないっていうのが僕の中にありまして。たとえばみんなが「あ,裸じゃないか」って言ってしまうと,それで終わりですが,そこは誰も気にしないで,何事もなく進んでいくほうが,「誰か突っ込めよ!」って逆に面白い。ラスボスは着飾ることよりも真っ裸のほうが,むしろ怖いかなと。なので,そこはあえて触れずに進んでいくようにしました。
4Gamer:
物語の黒幕に裸の王様を持ってこようというのは,かなり変化球だったんじゃないかと思いますが……。
風之宮氏:
とはいえ,裸の王様と一緒に旅するっていうのは……アレですよね(笑)。それでも裸の王様は外せないと思ったので,ラスボスにしました。
4Gamer:
裸の王様は過去のエピソードだとちゃんと服を着ていますが,悪落ちすると裸になりますよね。あれは一体なぜなんでしょうか?
風之宮氏:
4Gamer:
裸の王様は別のキャラのルートで戦う時には鎧を着ていますが,実は見えないけど着ている設定ということですか?
風之宮氏:
そうです。おやゆび姫以外のキャラには裸に見えますが,おやゆび姫には鎧が見えています。彼女には裸には見えていないんです。彼女が1回攻撃すると「ああ,あんな鎧を着ていたのか」と分かるようになります。
4Gamer:
これでまた1つ謎が解けました(笑)。
世界中を冒険している感覚を味わえる
多彩なビジュアルと童話風音楽
4Gamer:
今回の作品を開発するにあたって,ヨーロッパのロケに行かれたそうですが,どのあたりをロケされたのですか。
風之宮氏:
今回はほかの作品の取材も兼ねてフランスに1週間滞在しました。田舎町を見てみたかったので,コルマールにも足を伸ばしました。
4Gamer:
それらの写真をゲームの背景などに活かすことはあったのでしょうか。
風之宮氏:
はい。本作は,リアルな背景というよりは童話をイメージした背景なので,コルマールで撮った写真を参考に,建物を童話風に落とし込んでもらいました。また,木組みの家は概観の資料や写真は多いのですが内部は意外に資料がなく,そういったところも分かるように,すべて写真に収めてあります。
4Gamer:
本シリーズの背景は,すこし丸っこい独特な感じですが,童話を意識してですか?
風之宮氏:
こういう背景って,ある程度童話的なコンテンツに触れていないと描けないんですよ。簡単そうに見えますが世界が体に染み込んでいないと描けないので,けっこう難しい作業です。
4Gamer:
それらも全部,社内のイラストレーターさんが手掛けているんですよね。
風之宮氏:
むしろ社内だからこそできることだと思います。内部の人と話し合いながら,書籍や前作を参考に,こういう感じにしようというコンテを描いてもらいつつ相談しています。さらに,実際に描いてもらったものを見て,ちょっとずつ調整して進めていくような形でやっています。
今回,テイストを変えようか何度も描き直してもらいながら決めていったんですけど,もし外部の人だとやり取りが大変だし時間もかかりますよね。
4Gamer:
本作の背景はかなりの枚数がありますが,通常の乙女ゲームではそんなにたくさん使わないですよね。
風之宮氏:
開発中に背景はどんどん増えて,最終的には膨大な量になってしまいました。実装した背景は,200枚を越えています。でも,本作は旅もの,冒険ものなので,背景がいつも同じだと雰囲気が出ないので,必要な量だったと思います。
4Gamer:
また,本作にはタッチの違うイラストがたくさん出てくるのも,見どころの1つになっています。
風之宮氏:
タッチが変わると視点が変わるので,視覚的な鮮度も上がります。シナリオも長いので,最後まで飽きないように,常にユーザーさんを惹きつけていきたいなと思って。
4Gamer:
スチルなども相当な枚数ですよね。
風之宮氏:
僕もあんなに増えると思っていませんでした。気がついたら差分がどんどん増えてしまって……。NGを出したかったのですが絵が素敵なので,まあいいかなと。原画のしろまさんも頑張り屋なので,どんどん描いて速度も速くなっていって。でも,もうちょっとコントロールしないと,この先はかなりしんどくなるかもしれません。バランスが大切ですね。
4Gamer:
でも,そこまでこだわって作れるのも,一作に時間をかけているからこそではないかと思います。
風之宮氏:
ええ。ただ,今までは1年に1本だったんですけど,今回は1年7か月くらいかかっちゃったので,これはまずいなと。一応これでも会社なので,制作費と売り上げのバランスを考えないと……。せめて年1本は死守しないとヤバイですね。
4Gamer:
もう一つ印象的だったのが音楽でした。非常にムードがあると感じたのですが,どういったこだわりがあるのでしょうか。
風之宮氏:
ただ,制作が間に合わず,キャラソンと一部BGMを別の方にお願いしました。その方もまた大好きな作曲家さんで,さらに両者の相性も良く,作品の幅も広がったので,個人的にはむしろ良かったと思っています。
結果,サントラにすると,20曲以上で2枚組のボリュームに。経営者としてはいかがなものかと思いますが,質も充実していて,自分としては満足度は非常に高いですよ!
4Gamer:
本作の音楽は,それだけ取り出してじっくり聞いてみたいと思える出来でした。
風之宮氏:
やはりBGMやSEなどの音楽の力は,作品の質,感情表現や世界観にすごく関わってくるので。また,挿入歌が流れると悲しくなったり,熱くなったり……と心を動かされるので,今作では2曲入れました。
ゲームと同時にサントラCDも発売しましたし,8月からは2キャラずつキャラソンを収録したCDを出していくので,そちらもぜひ手に取ってもらいたいです。
男性プレイヤーにも遊んでほしい
冒険と恋愛,別れと成長の物語
4Gamer:
本作は,女の子同士の恋愛が1つの特徴になっていると思うのですが,それを入れようと思ったのは前作の女の子同士の友情エンドが好評だったからですか?
風之宮氏:
評判自体は良かったので入れたかったのですが,本作では百合をどこまで踏み込むかをスタッフと相談して決めました。原画さんと「百合はどこまでOK?」という話をして,キスでも全然いけるということだったので,本格的に百合エンドを1つの推しポイントに決めました。
4Gamer:
前作もそうですが,冒険ものということで男性プレイヤーでも楽しめるストーリーになっていますね。
風之宮氏:
むしろ男性にも積極的に遊んでほしいなと思っています。
恋愛のための恋愛ゲームになると,結局フェチズム勝負,刺激勝負になるので,それはやりたくないんです。できれば冒険のなかで出会いや別れがあって,恋をして……という感じで,自然な流れの中で愛し合っていくものを作りたい。そうすれば,恋愛は男女共通の価値観ですし,性別に関わらず作品を評価してもらえると思います。
いい作品って,子供向けであっても,大人が見ても面白いじゃないですか。
4Gamer:
本作のテーマは,冒険と恋愛と別れですか?
風之宮氏:
本作はビルドゥングスロマンを作りたかったので,冒険成長ものだと思います。最初は,ただの小さい村の女の子と男の子だったおやゆび姫とマッチ売りが旅をしていくなかで,さまざまな出会いや別れ,生と死を経験し,やがて自分達の社会的な役割に気づいていく……といった,キャラクターの成長劇です。プレイヤーもゲームを遊ぶことで,一緒に成長を分かち合えるように意識しました。
最近のアニメは話数が少ないせいか,そういったストーリーのものは多くないので残念です。僕自身はそういう作品を見て育ってきましたので,ユーザーさんにも同じように感じてほしいなと思っています。
4Gamer:
キャラの成長もそうですが,今のお話にあったように本作では途中で人が死んでしまったり……と厳しい現実も盛り込まれていますね。
風之宮氏:
はい。生きるということは,残酷なんだなというのも逃げずに表現したかったんです。そうでもしないと小さな村に住んでいたおやゆび姫達を旅立たせるのは無理だと。
また,子供だけで旅をするのは,ただ楽しいだけではなく,危ない目にもあったりするというのを入れていきたいなと思っていました。
4Gamer:
絶対迷宮シリーズは,この先どういった形で展開される予定ですか?
風之宮氏:
何かしら,新しい童話ものを作ることになると思います。ただ,続けてやっていくと,ルーティンワークになってしまうので,しばらくは別のストーリーの作品を作りつつ,アイデアを練っていきたいです。でも,今回は幸いなことにまだ掘り下げ切れていないストーリーがあるので,何かの形で出せればいいなと。
4Gamer:
今回のおやゆび姫でやり残したことはありますか?
今回,必要なものは無理してでも入れました。
僕の中で本作は原点回帰なんです。人を育てるためには口を出さずに見守るとか失敗させるとか,チェックをすると直したくなるからあえて見ないとか,そういう方法論がいい加減イヤになってしまって。
なので今回は,自分で直接ペンを取って,イチから全部プロットを切って,ほかの人に書いてもらったものもすべて見直したり,アイデアを出し合ったり,顔を合わせて話し合ったりしました。そういう過程が物作りには大切だと思います。
また,自分でもシナリオを2ルート書いたので,その中に入れたいものは入れました。でも直接書くと,キャラに対する思い入れも強くなりすぎてしまってダメですね(笑)。
4Gamer:
満足のいく仕上がりという感じですか?
風之宮氏:
不安で仕方がないです。どのくらい,この物語が受け入れられるのか毎日心配で夜中にゲームを起動させていました。
4Gamer:
ユーザーさんの声は,もう届いたりしていますか?
風之宮氏:
とりあえず,百合が好きな人は喜んでくれているようでほっとしました(笑)。あとは,共通ルートが長いので,好きなキャラになかなか会うことができないという声も聞きますが,冒険ものなので,そこは冒険して出会ってくださいと。
4Gamer:
確かに仲間が揃っていくまでが長いですからね。
風之宮氏:
花の王子や白鳥のナイトは,なかなか会えないので,根気よくプレイしてもらうしかないですね。裸の王様も,最後の最後にならないとクリアできないので……。
4Gamer:
不思議に思っていましたが,風之宮さんは男性なのに乙女ゲームの業界にずっといらっしゃいますよね。
風之宮氏:
僕はこっちのほうが楽しく作れるんですよ。たとえばうちではBLのゲームも作っていますが,マフィアもので,恋愛があって銃撃戦があって……といった内容で,男性同士のほうがしっくり来るんです。むしろ何人もの女子高生が,銃で撃ちあっていたりすると,そちらのほうがいびつに感じてしまいます。作品としてうまく昇華できているものもありますが,本来はそういうものを自然に書くほうが,難度はずっと高い気がします。
それと,学生の頃から好きなアニメや漫画は女子人気の高い作品が多かったので,自然な流れかなあと納得しています。
4Gamer:
確かに,男の子らしさや女の子らしさっていうのは,物語では大事な要素ですよね。
風之宮氏:
本当は,男の子と女の子を半々くらいのバランスで入れた作品を作れるといいとは思っているのですが,ターゲット層を考えると,なかなか難しいですね。
うちはずっと女性向けでやってきたので,そのスタンスを守りつつ,「これ,男でも意外に遊べるなあ」というニュートラルな女性向けゲームというものを作るのが,比較的良いバランスなのかもしれません。
4Gamer:
では,花梨エンターテイメントさんの今後の予定をお聞かせいただけますか。
風之宮氏:
まだ詳しくはお話できませんが,以前発売したタイトルのリニューアル版を出したいなと思っています。
4Gamer:
それは楽しみですね。ちなみに,11月に開催されるAGFに出展されるようですが……。
風之宮氏:
はい。AGFでは,本作のグッズと,リニューアル版を出すタイトルのグッズがお目見えする予定です。
4Gamer:
最後に,読者に向けてコメントをお願いします。
風之宮氏:
秘密のおやゆび姫は,弊社の15周年記念作品として,頑張って作りました。僕が好きなものがたくさん詰め込まれていますし,もちろんスタッフみんなの“好き”が詰まっている作品です。その中の1つでもユーザーさんの心に響けば嬉しいです。
今,手に取って遊んでくださっている方には,何度もプレイして,お気に入りのキャラや場面を見つけてほしいです。過去に1つでも弊社の作品に触れた方には,この機会に本作を改めて手に取っていただき,花梨の新たな魅力を再発見していただけたら,こんなに嬉しいことはありません。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
オープニングムービーなどで使われたゾートロープ |
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「絶対迷宮 秘密のおやゆび姫」公式サイト
(2015年8月4日収録)
(C)2001-2014 Karin entertainment.