インタビュー
「アイドリッシュセブン」6周年を記念した開発者インタビュー。マネージャーたちを魅了するためのゲーム作りの秘訣とは?
バンダイナムコオンラインが配信中のスマートフォン向けゲーム「アイドリッシュセブン」(iOS/Android,以下「アイナナ」)が,2021年8月20日に6周年を迎えた。ゲーム内で展開する個性豊かなアイドルたちの成長する姿やキラキラとした楽曲はもちろん,数々のコラボやアニメ,ライブなどのメディアミックス展開でもマネージャーたちを魅了し続けている本作。
本稿では,開発を担当しているG2 Studiosから,チーフディレクター・井上良一氏,開発ディレクター・橋本 啓氏,運営ディレクター・大塚雅規氏のインタビューをお届けしよう。6周年を迎えての想い,大きく変更したチーム体制についてなど,貴重な話をたっぷりと語っていただいた。
4Gamer:
まずは,8月20日に6周年を迎えられたとのことでおめでとうございます。6周年を迎えられた率直な感想をお聞かせください。
井上良一氏(以下,井上氏):
僕はG2 Studiosに入社してからずっと「アイナナ」に携わっていますが,「この作品は本当にマネージャーさんに愛されているな」と感じていました。マネージャーさんからの応援の言葉がうれしく,その分大きなプレッシャーもあったので,6周年を無事に迎えられて本当に良かったなというのが率直な感想になります。
橋本 啓氏(以下,橋本氏):
この6年常々思っているのは,「アイナナ」はマネージャーさんにすごく支えられ,愛されているゲームだなというところです。たくさんのご意見を頂けるので,開発では前向きに色々な機能を入れられます。それらが6周年でも大きな問題もなく動いていて安心しました。
大塚雅規氏(以下,大塚氏):
6周年を迎えるスマートフォンゲームってなかなかないかなと思ってまして,皆さんに支えて頂けているゲームに参加できたことがとても誇らしく,感謝の気持ちでいっぱいです。
4Gamer:
6周年を迎えて,新たに始められた施策についてお聞かせください。
井上氏:
様々な施策のきっかけとなったのは,ステラストーンのショップのリニューアルでした。6年の間で消費増税以外で手を加えることはなかったので変えていきたいと思っていました。
ショップのラインナップを検討しているときに,「見た目も変更したいよね」という話があがり,ショップの見た目を変えるのであればそれに合わせて他の見た目も変更してより良いものにしていこうという方針になりました。そこからステラストーンショップの見た目,オーディション演出,ホーム画面のUIも変更していきました。6周年での変更は,それぞれの変更をすべて繋げた開発になりました。
4Gamer:
リニューアルされた中で,ホーム画面は大幅に変更された印象ですが,どのような意図で斬新なデザインに変更されたのでしょうか。
橋本氏:
元々のホーム画面では,ヘッダー/フッター部分がけっこう場所を取っていたんですね。「アイナナ」のカードは背景も込みですごく綺麗なイラストが多いのですが,ヘッダーに隠れてせっかくのイラストが大きく見えなくなってしまっていました。ですので,そこを変えてもっと魅力的に見せたくて,修正を入れました。
この部分はどういったUIにするかギリギリまで話し合いました。画面上のヘッダー部分はホーム画面以外でも共通で使用するUIなので,色々な画面に影響が出てしまうんです。すべての画面を変えるのが難しいので,現状はホーム画面専用の上の部分のUIとなっています。他の画面との違和感が出ないように,なるべくテイストを揃えています。フッター部分も他の箇所に影響が出ないよう,場所を取らないように修正を行っています。そのような意図で今回はホーム画面のリニューアルをしました。
4Gamer:
ここまでの大幅な変更は,6周年で初めてなのでしょうか。
橋本氏:
UIに関しては1周年のタイミングで,大幅に変えたことがあります。それを含めると共通UI部分の大きな変更としては,2回目になりますね。
4Gamer:
今後もマネージャーさんのことを考えて,UIの変更は有り得そうですね。
橋本氏:
そうですね,もちろんあると思います。やっぱりゲームのトレンドは随時変わりますし,使いやすくなったとか,逆に使いにくくなったといった意見も色々頂きますので,それに応じて変えていく可能性はあります。
変更といえば,今回のリニューアルで元々ホーム画面にあったフレンドボタンを無くし,代わりにアイドルフォルダを設置しています。フレンドボタンは,フレンドの申請が来たら赤いNewマークがついて,更新をお知らせするものでしたが,分かりづらさを解消する修正を行う予定です。
6周年の施策といえば,5周年のときに実装された「#ナナカメ」が期間限定なのがとても惜しく思っています。
井上氏:
「#ナナカメ」を担当したのは僕だったのですが,一瞬,別のアプリで出そうかみたいな話もありました。ただ,ゲームから外れた展開をしすぎるのもちょっと違うなと思い,ゲーム内に取り入れました。
アイドルとマネージャー,ストーリーとライブを楽しむゲームなので,それをしっかりと楽しんでいただきたいなと思っています。
ですが,お問い合わせで「#ナナカメ」をもっと楽しみたいというお声をいただければ,今後の参考にもしやすくありがたいです!
4Gamer:
「#ナナカメ」をもっと使いたいというマネージャーさんも多いと思います!
井上氏:
つくりますかね(笑)。
橋本氏:
つくりましょうか(笑)。
井上氏:
お問い合わせについては,バンダイナムコオンラインさんのほうで要望を取りまとめて頂いています。それを元にどうするかという判断になりますが,マネージャーさんからの要望が多ければ実現もあり得るかなと思います。
4Gamer:
そうなのですね。とてもステキな機能なので,いつでも使えるととてもうれしいです。
このたび,開発・運営チームの体制が変更されたとのことですが,変更された理由を教えてください。
井上氏:
「アイナナ」はまだまだ続くだろうなと思ったのが最初のキッカケでした。
ディレクターを引き受けたとき,ディレクターにタスクが一極集中しすぎていると感じ,,チーム分割という形を取りました。目的は,チームのタスク量を正常に振り分けて,上流工程の意思決定から下の実装反映までを速やかに行えるようにするためです。 1人が運営と開発,両方を見ていくのは時間もかかり属人化する懸念もあるため,タスクを明確に分けて,開発ディレクターの橋本,運営ディレクターの大塚の2人体制にしました。
4Gamer:
では,開発チームと運営チーム,それぞれの役割,業務内容は具体的にはどのようなものになっているんでしょうか。
橋本氏:
アプリをアップデートすると,ゲームに新しい機能が入りますよね。開発チームは,そういった新機能の開発をしています。
具体的には,新機能の企画や開発,開発業務の進行管理などを担当しています。
大塚氏:
運営チームは,マネージャーの皆さんもよくご存じのイベントやキャンペーン,シナリオや楽曲の追加といった,多岐にわたる施策の準備を行っています。
色々やることがあるなかで,誰か1人にタスクが集中するのを避けるため,同じスタッフでも今回はイベント担当,次回はキャンペーン担当といった具合に,作業をうまく分担しながら施策を回しています。
今までは運営をやりながら開発も並行して進める状況でしたが,運営と開発のチームを分けたおかげで,現状は運営に集中して施策の準備を進められるようになりました。ですので,マネージャーの皆さんにより良いものを届けられるようになったのかなと感じます。
4Gamer:
チームを分割するにあたって,人数の割合はどのようになっていますか?
橋本氏:
もともとの運営チームから開発チームを分離させているような形で,運営チームのほうが多いかなと。人数自体は全体的に少し増えましたね。
4Gamer:
チームの分割で円滑になった部分も多いと思いますが,そうなる以前はとても大変そうな印象がありますね。
井上氏:
そうですね。僕は,昨年の11月にアイドルたちが出演するドラマ(イベント)「ダンスマカブル」を担当しました。新しいイベントとして「ポイントミッション制」を作るのと同時に,公開するところまで担当していました。
今は新しいイベントを作るのが開発チームで,それをマネージャーの皆様に届けるというのが運営チームという役割分担にしていますので,あのときは大変でした(笑)。
全部1人でやるのでそれはそれでやりがいがありましたけどね! それでも「ダンスマカブル」は,さすがにみんなに助けてもらいました。
橋本氏:
あと,「アイナナ」はチームの規模感が元々小さかったところから,この6周年に至るまでに徐々に大きくなってきました。
そうなると,今までは1人で把握できていたものが,少しずつ難しくなっていくといいますか……。
4Gamer:
体制を変えたことで,大きなコンテンツに成長した「アイナナ」を安定して運営できる準備が整ったという感じでしょうか。
橋本氏:
そうですね。開発と運営を専業化したことで,それぞれに割り当てられる時間が多くなりました。
井上氏:
開発・運営にそれぞれディレクターがいることで,「イベントを作りながら,オーディションを作る」というように同時進行できるものが増えています。複数のコンテンツや,込み入った内容のものを作りたいときに,同時に進められるようになったのはありがたいですね。もちろん,特定のコンテンツだけに注力するという仕事の仕方も可能になりました。
チームとしての柔軟性が増し,先程おっしゃって頂いたように「準備が整った」という感じですね。
4Gamer:
体制が整って作りたいものをたくさん作ることもできるようになったとのことですが,イベントをハイペースで展開していくことも可能になっていそうですね。
井上氏:
もちろんできるのですが,今年は1つのイベントを長く遊べるよう作り込むほうにシフトしています。ただ,減らしてもいません。間を埋めるようにキャンペーンをやったり,アニメ放映に合わせてアニメ連動イベントをやったり,誕生日のイベントもやりながら新しいイベントもやるみたいな……。ミッションイベントやスコアアタックイベントとか,そういったイベントものは増えてはいないのですが,横でさまざまなものをちょっとずつ追加しています。
4Gamer:
アニメやコラボにも合わせてイベントを出していくと。
井上氏:
そうですね,せっかくコラボしていますので。個人的には,やっぱりリプトンとのコラボがうれしかったですね!
4Gamer:
マネージャーさんの反響も大きかった印象がありますね。
井上氏:
うちの社内でも,「リプトン買ったよ!」という人もいましたし,「アイナナ」を担当したいという人も増えましたね。
クロネコヤマトさんやリプトンさんとのコラボなどは,バンダイナムコオンラインさんで考えられているので,僕らもマネージャーの皆さんと同じように楽しんでいます!
4Gamer:
新たに変わった体制での運営の中で意識されていることはありますか?
井上氏:
常日頃から意識しているのは,チーム内のみんなが気持ちよく働けているか,笑って仕事を出来ているかどうかです。みんなが気持ちよく働けていれば,パフォーマンスが上がってゲームにもより良いものを実装していけると思います。
あとは,僕の信条でもありますが,ゲーム作りは良いサイクルを作ることが必要だと考えています。Twitterでもマネージャーさんからの応援の声をたくさん頂けていまして。それによって,またみんなが楽しくゲームを作れます。マネージャーさんの存在も含まれている,そういうサイクルが大事だなと考えています。ですので,僕はG2 Studiosのチーム内でみんなが笑えているかというところに注目しているといいますか,常日頃,気になって仕方ない部分です(笑)。
橋本氏:
一番はマネージャーさんの視点です。
先程,井上も言っていましたが,Twitterやいろいろな場所で反響をすぐ受け取ることができます。新しい機能を入れていく中で,その機能がマネージャーさんにとって本当にうれしい機能なのか,それとも逆に使いづらい機能になってしまわないか,毎回すごく意識しています。そこを知るために,常にマネージャーさんの意見を見ながら,「この機能はちゃんと使われているのかな?」という部分はすぐにキャッチアップできるように,すぐに直せるように……普段からそういう風に気をつけています。
あとは「アイナナ」は色んな施策が常に走っていて,そこの施策に合わせた開発というものが必要になるので,入れたい開発や修正が山のようにあるんですよね。そこはやっぱり優先順位を決めていかないと,一番いいタイミングで一番いい機能が出せなくなってしまうので,そういった優先順位を決めることにはすごく気を使っています。
大塚氏:
体制が変わったのが今年の4月からなんですね。コロナ禍真っただ中,リモートワークをしているメンバーが8割という状況で,運営に関わっているメンバーとリモートでコミュニケーションを取らなくてはならないと。そんな中,チャットだけでなく通話でも密なコミュニケーションを取るよう心がけました。普通に出社しているときより,もしかしたら人と話しているんじゃないかなと思うぐらい,1日ずっと通話を繋いで話すみたいなことが増えたなぁと感じています。
その工夫もあり,リモートでもしっかりと仕事が回るようになりましたし,イベントや施策の準備も円滑に進められています。
私たちは施策を届けるというところで最前線に立っている部署であると感じています。マネージャーさんに楽しんで頂ける内容にしていくのが1番大切なことで,どうしたらいいのかというのは常に社内でも話し合っています。そのなかでも,ゲームバランスは結構難しいところだなと思っています。できればすべてのマネージャーさんに楽しんで頂きたいという想いはありつつ,ちゃんとゲームとして成立するようなバランスというのも考えながら,実際に触りながら調整を掛けて,リリースまで準備しています。
4Gamer:
さまざまな新機能やコラボでさらに魅力を増してきている「アイナナ」ですが,今後実現したいこと,楽しみにしてほしいことをお聞かせください。
井上氏:
やっぱりチーム内のメンバーの話になってしまうのですが,みんなのレベルアップですね。
仕事ではあるので,どうしても熱意だけではうまくいかないことも多々あります。なので,先程挙げたサイクルをもっと大きくいい形にしていきたいと思っていますし,これは実現させるつもりです。
ゲームに関することは,まだ話せないところが多いですが,すでに来年の仕込みも進めていまして,できるだけ新しいものをお見せしたいと思っています。長く続いているからといって,新しく出てきたゲームに負けてるわけではない!ということを見せたいので。IDOLiSH7の単独ライブやTVアニメ3期の第2クール,メインストーリー第5部などが発表済みですが,それに合わせてゲームも進化させるつもりですので,楽しみにお待ち頂ければと思います。
橋本氏:
ゲームとして一番楽しんでいただける部分は,イベントなのかなと思っています。ですので,より普段のイベントを楽しめるようにしたいですし,遊びやすいように調節することも考えています。
あとは,そういった新しい機能の追加だけではなくて,既存の機能の中で,使いづらいものをより使いやすくしたり,そういった調整もしたいなと思っています。
大塚氏:
6年と長く続いているからこそ,今のトレンドにそぐわない点は,どうしても出てくるのかなと思っています。ですので,そういった点を改善し,より多くのマネージャーさんにとって遊びやすいゲームにしていきたいなと考えています。
2人の話と重複するかもしれないんですが,自分もイベント周りでまさに今,より分かりやすいように改善をしている最中です。
今までは結構複雑で分かりにくかった部分を,より直感的に分かりやすくするような改修を今後もしていきたいと思っています。そして,実際にマネージャーさんに触っていただいたものの反響を見て,また調整をしていくということも今後行っていきますので,その辺りは真摯に対応していきたいです。
4Gamer:
より分かりやすく,というのがキーワードな感じがしますね。
大塚氏:
そうですね。普段ゲームをやらない人でも遊べるよう,より分かりやすく,遊びやすくというところを重視していかなければいけないなと常々感じています。
4Gamer:
では,最後にゲームを楽しみにしているマネージャーの皆さんにメッセージをお願いします。
井上氏:
今,「アイナナ」はとても良い状態かなと私は思っています。皆さんの応援の声も頂いていますし,チームの体制を変更して,それも軌道に乗っている。
これから7周年に向けてさらに盛り上がっていくタイミングです。6周年記念で公開されたPVにて,最後に“STEP to 7”と一瞬映っているのを見たときに,僕は感動しました。これからより盛り上がっていくということは,より頑張らなくてはいけないということですし,最近段々と慣れてきているはずなのに,段々とプレッシャーも大きくなってきているなぁというのが本音です(笑)。気を引き締めて,7周年に向かって走っていければと思います。頑張ります!
橋本氏:
「アイナナ」はアプリ内外ですごくいいサイクルができていると思うんですね。マネージャーさんに楽しんで頂いて,いろいろな意見を頂ける。その意見を元に新しい機能を考える。それについてまた意見を頂けるというサイクルができていますので,それを今後も崩さず,期待に応えられるように,新機能の開発や仕様の改善をしていきたいと思っています。
大塚氏:
「アイナナ」は,色んなメディアミックス展開をしてるなぁとあらためて実感しています。その勢いに負けないようにゲーム内も盛り上げないといけないなと思っています。「アイナナ」の7周年,ちょうど「アイナナ」の「ナナ」にかかっている年でもありますので,より盛り上げられるように頑張っていきたいと思っています。今後ともよろしくお願いします!
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