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  • アトラス
  • ヴァニラウェア
  • 発売日:2019/11/28
  • 価格:新価格版:7678円(税込)
    ※2022年8月4日に発売予定

    通常版:8980円(税別)
    限定版「プレミアムボックス」:1万4980円(税別)
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「十三機兵防衛圏」ディレクターの神谷盛治氏にメールインタビュー。なぜロボット? なぜ“13”? 謎多き作品の気になるところを聞いた
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印刷2019/11/12 18:00

インタビュー

「十三機兵防衛圏」ディレクターの神谷盛治氏にメールインタビュー。なぜロボット? なぜ“13”? 謎多き作品の気になるところを聞いた

画像集 No.001のサムネイル画像 / 「十三機兵防衛圏」ディレクターの神谷盛治氏にメールインタビュー。なぜロボット? なぜ“13”? 謎多き作品の気になるところを聞いた
 アトラスが2019年11月28日に発売を予定しているPlayStation 4用ソフト「十三機兵防衛圏」は,「オーディンスフィア」や「朧村正」Wii / PS Vita),「ドラゴンズクラウン」PS3 / PS Vita)などの作品で知られるヴァニラウェアが制作するSFアドベンチャーだ。「機兵」と呼ばれるロボットに乗り込み,人類の存亡をかけた戦いに身を投じる13人の少年少女の物語が描かれる。

 3月14日に「プロローグ版」関連記事)が発売,10月30日には「序盤まるごと体験版」関連記事)の配信が始まり,謎の多い世界観や物語,会話をキーワードに物語が展開するアドベンチャーパート,RTS(リアルタイムストラテジー)とタワーディフェンスが組み合わさったSLGバトルなどに注目が集まる本作。そんな本作を手掛けるヴァニラウェアの代表で,本作のディレクターを務める神谷盛治氏メールインタビューを行った。
 「オーディンスフィア レイヴスラシル」PS4 / PS3 / PS Vita)のロングインタビュー以来(関連記事),ひさびさ登場となる神谷氏に,開発の経緯や制作時のエピソード,1980年代への思い,そして「なぜファンタジー作品のイメージが強いヴァニラウェアがSFを?」といった気になる点を聞いてみたので,本作が気になる人はもちろんヴァニラウェアのゲームファンにもぜひチェックしてほしい。

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「十三機兵防衛圏」公式サイト



なぜロボットモノ? なぜ主人公は13人?

謎多き「十三機兵防衛圏」の気になるところを聞いた


4Gamer:
 ファンタジーのイメージが強いヴァニラウェアですが,なぜ今回は現代〜未来を舞台とした作品を作ろうと決めたのでしょうか。また企画はいつごろ立ち上がったものなのか,なにがきっかけだったのかを教えてください。

神谷氏:
 アトラスさんに企画の承認をいただいたのが2013年初頭です。当時はまだ「ドラゴンズクラウン」の制作中で,スケジュールでは2013年春までに完成,発売する予定でしたが,ご存じのとおり開発は遅れていまして。
 あり得ないとは思いつつ……万が一,本当に春でプロジェクトが突然ぷっつり終わったら,資金難で会社がいきなり飛ぶので,次の企画を立案しなければと慌てていました。
 僕は「ドラゴンズクラウン」のイベント絵をずっと描き続けててヘロヘロで,反動で次はファンタジーでないものをと妄想したのが「十三機兵防衛圏」でした。女子高生とか動かしたかったんですよ。

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 複数人のザッピングで事件が描かれる「SF全部のせのタイムリープ」。その物語の構想は前々からありました。そのころの素案は,主人公は7,8人で超能力バトルものでした。「十三機兵防衛圏」となった今も,大筋のプロットはその構想の物語のままで,ラストシーンも全く同じです。
 承認は相当早くいただいていた「十三機兵防衛圏」ですが,「朧村正」のDLCを2014年夏まで作っていて,その後「オーディンスフィア レイヴスラシル」を2015年の夏前までやっていたので,実質のスタートはそのあとになります。

 2015年秋に「オーディンスフィア レイヴスラシル」の販促を盛り上げるためにという理由で「十三機兵防衛圏」のPVが初公開されましたが,そのとき作られたばかりの実験素材を全て出したのがあのPVで,中身はまだ全然ありませんでした。初公開を恐怖で震えながら見ていました。


4Gamer:
 なぜ今回は“ロボット(メカ)モノ”になったのでしょうか。これまでは「ドラゴンズクラウン」のようなテーブルトークRPGの影響を感じるファンタジー作品がありましたが,ウォーシミュレーションといったテーブルゲームやそのほかのジャンルでなにかインスパイアされたものはありますか。

神谷氏:
 ロボットを戦闘のモチーフに選んだのには理由があります。「十三機兵防衛圏」がもともと某社さん向けの企画だったからです。
 当時某社の担当さんから求められていたのは,アニメやおもちゃなんかに展開の可能性のある国内向けの作品でした。海外受けを考えなくていいのと,販売目標もそれほど高くなくプロジェクト規模も手ごろ……その提案は「ドラゴンズクラウン」という4年も引っ張ったプロジェクトの渦中にある僕には,かなり魅力的に見えました。ブランド的に某社さんとならロボモノもありかなと。デザインしたロボがプラモデルとかになったら嬉しいし……なんて考えてました。

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 ロボットをやるなら,映画「ロボ・ジョックス」(※)みたいな重厚なデザインにしたいと思っていたんですよ。それでロボのコンセプトは重機ロボです。ギャップを味にしようと,キャラクターや世界観は油臭さとは真逆の少女漫画風にと考えました。

※日本の特撮作品のように描かれた巨大ロボットバトルが展開する,1990年公開のアメリカ映画

4Gamer:
 タイトル名と主人公の人数であるところに,“13(十三)”という数字へのこだわりがあるように感じます。この13という数字はいつ,どの段階で本作における重要な数字となったのでしょうか。そして,なぜ主人公を13人に定めたのかを教えてください。

神谷氏:
 「十三機兵防衛圏」の立案は「ドラゴンズクラウン」制作の熱い時期にしたので,企画用の絵もなかなか用意できませんでした。
 僕は,どんなに忙しくても年賀絵だけは1枚描く! と自分に課していますので,この企画の絵を2013年の年賀絵として描くことにしました。無謀にも年賀絵1枚で某社の担当さんにプレゼン営業したのです。
 なにせ公開しちゃう物なので,おおっぴらに次の企画とも書けなくて2013年の“13”にかけたタイトルにしました。もともと7,8人と主人公は多い構想だったので,13人でも大差ないかと安易に決めました。その判断の結果,のちに悶絶することになるのですが(笑)。

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 某社の担当さんの受けも良く,なんだかトントン拍子で話が進みそうなところでハタと思い出しました。アトラスさんが「ドラゴンズクラウン」を救ってくれたときに(詳しくは[こちら]),次の企画があったら優先的に見せてくださいねという約束があったことに……。慌ててアトラスさんに連絡を取って「ロボだしアトラスさんのカラーに合わないし,いらないですよね」と伝えたら……怒られました。
 まあそうですよね,救ってもらった「ドラゴンズクラウン」遅れてたし……。アトラスさんから「すぐうちで承認するので他社とは止めてください」と言われ,その時はいきなり仕事が決まったと驚きました。そしてのちに知るのです。アトラスさんが求めていたのはワールドワイド向けで,それなりの規模のプロジェクトであることを(苦笑)。

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4Gamer:
 「キーワード」を使って物語を紐解くADVパート「追想編」,「ターミナル」を守りながら敵と戦うSLGバトルパート「崩壊編」,謎に満ちた世界観や物語をじっくり確認できるアーカイブパート「究明編」という3つのパートで進むゲームシステムがどのように生まれたのか教えてください。

神谷氏:
 「十三機兵防衛圏」のベースは弊社が過去に作った「グリムグリモア」です。
 「グリムグリモア」の立案時はアドベンチャーパートとRTS(リアルタイムストラテジー)パートの構成で企画されていました。時間が無くてアドベンチャーパートは単なるイベントになりましたが……。
 某社さんはもともとロボットアニメのIPも扱っているし,ロボモノで作るならシミュレーションバトルは不自然じゃない。今度こそはRTSとアドベンチャーで完成形の「グリムグリモア」を作れるのではないか? と,1人で盛り上がっていました。そんなわけでアドベンチャーパートとRTSのバトルパートがあるのは,元が「グリムグリモア」だからです。必然だったのです。

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 「究明編」に関しては……実は僕はまったく関与してません(笑)。開発中盤でスタッフの前納くん(前納浩一氏)が,ADVとRTSとは別に謎を見直し検証できる「まとめモード」が絶対必要だと提案してきたのです。
 そのころ,僕はスクリプト地獄で泥沼にいたので,「それどころじゃない」「分からんけど任した」といった感じで全てをスタッフに委ねました。その「なぞまとめ」は,そのあとさまざな実験の上で形を変えながら,最終的に「究明編」となります。僕が見たのは完成してからで,よくできていて驚きました。確かにこのゲームには必要なモードでした。

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4Gamer:
 「追想編」について詳しく聞かせてください。会話をキーワードにさらに新しい会話をして物語を進めるという「クラウドシンク」のアイデアは,いつ生まれたものなのでしょうか。

神谷氏:
 「クラウドシンク」は,ワールドワイド向けに変更になったと知ったとき,もっと根底から進化させねば,世界では見てももらえないぞと,ADVを全てキャラの劇でやろうと決めたころにノリで出来たものです。
 一般的なアドベンチャーのコマンド「調べる」や「アイテム」などを,キーワードという形でひとまとめにして表現してみました。キャラクターの内面をも表現しやすい少し変わったシステムになったのではないかと思います。全てをキーワードにまとめたことでデータ管理が楽になるのではと,ちょっと期待したのですが,そんなことは全然なかったですね。むしろ大変でした(苦笑)。
 キーワード合成で新たなキーワードが生まれる,なんてほかにもさまざまなアイデアはありましたが,仕組みの可能性について検証する時間が足りなかったのが少し悔やまれます。

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4Gamer:
 続いて「崩壊編」について聞かせてください。ファンタジーと同様に「ヴァニラウェアといえば2Dアクション」とイメージするゲームファンは多いと思います。
 そういった意味で今回のSLGバトルは意外だったのですが,これは最初から構想にあったものなのでしょうか。それとも,ゲームデザインを進めていくうえでたどり着いたものなのでしょうか。

神谷氏:
 僕を含めヴァニラウェアの何人かの古参スタッフは,「スタークラフト」の大ファンでいつか面白い独自のRTSを作りたいという野望があります。初めの挑戦が「グリムグリモア」で今回は2回目になるわけです。
 ただ「グリムグリモア」を作ったとき,日本では本当にRTSの受けが悪いと分かったので,まだ日本人にも馴染みがあるタワーディフェンスをベースにしたRTSを構築しようと考えました。
 さらにイージス艦のCICの情報画面で行うミサイル防衛戦闘風にできたら格好いいな,とか,情報画面を花火のようにきれいな戦闘画面に描ければ女性でも触ってもらえるのではないか?(そんなわけない)なんていった願望要素で走り出したのがあの戦闘です。
 仕様からプログラムまで担当してくれた大西さん(大西憲太郎氏)とデータを作ってくれた小林くん(小林 諒氏),UIを作ってくれたシガタケくんには頭が上がりません。最終的にヴァニラウェアで一番ゲーム性の高い,自信のあるゲームシステムになりました。

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4Gamer:
 キャラクターや背景は「これぞヴァニラウェア」と感じさせる美麗なグラフィックスでした。これまでの「オーディンスフィア」や「ドラゴンズクラウン」といったファンタジーや「朧村正」のような和風グラフィックスでの技法や表現と違う点,現代を描くうえでこだわった部分などがあれば教えてください。

神谷氏:
 今回,僕はディレクションに専念しようと思いまして,キャラクターデザインは僕より断然絵のうまい,平井さん(平井有紀子氏)と木田さん(木田恵美可氏)に任せております。ふわっとした指示しかできませんでしたが,かなり魅力的なデザインに仕上げてくれました。
 背景は空間色を同系統にしたり,独特なタッチの塗りを試してもらったりしましたが,最終的には背景チームのセンスに助けられたといった感じです。3Dを構造に使ってみたりと実験も多く,今までのタイトルより背景1つ1つに制作時間もかかっています。そのぶん独特かつ良い雰囲気の背景になりました。

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 背景の扱いも「朧村正」や「オーディンスフィア」とは根本的に違いました。恥ずかしいことにスクリプトを組み込み,ADVのシーン制作が始まってから気が付いたのですが(苦笑)。
 描かれているのが建造物のせいか,独特な味のせいか……汎用背景として使うことができないのです。「歩道橋のある交差点」を使うとき,さっきの交差点とは違う別の「歩道橋のある交差点」と言い張っても,どう見てもさっきと同じ場所なわけです。全てが固有の場所なんです。「隣の交差点」を新しいグラフィックデータとして用意しない限り,シナリオを変える必要が生じました。
 背景も相当な数を用意しましたが,1ショットのシーンのためにいちいち背景を作っていたら,それこそ膨大な工数になります。こうして元々想定していたシナリオは,その都度作り直すことになりました。

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4Gamer:
 戦中,1980年代,2020年代,そしてさらにその先の未来と,あらゆる時代で主人公たちの行動が描かれますが,その人数の多さはもちろん,時系列もかなり複雑なものになっているのではと感じます。
 シナリオ制作はかなり大変だったのではないかと思うのですが,制作期間はどれくらいだったのでしょうか。また,苦労した点や「ここは想像以上にうまくいった」といった話があれば教えてください。

神谷氏:
 当初,「オーディンスフィア」の時と同様に,僕が脚本だけ書いて,それをほかの人にスクリプトで組み込んでもらおうとしていました。
 ところがさまざまな問題が噴出。必要なグラフィックも膨大になったりで,どの作り方が正解かを探して実験が続き,なかなか仕様が定まりませんでした。うまくいかない原因を探るために僕自身が,スクリプトそのものを触り始めたのが2017年の2月です。
 そこで判明したのは「成立しない」問題です。「成立しない」の要素はいくつかあるのですが,その1つがキャラの演技力です。スクリプトで組んでキャラクターに演技させてみると,妙に違和感がある。おかしいんです。
 例えば……ある事件で三浦慶太郎が謝るというシーンがあるとして,心から謝っている台詞があります。三浦の基本アニメは腰に手を当てている。偉そうに口だけで謝っている三浦……キャラに合わない……。微妙なニュアンスでシーンが成立しないんです。解決するには三浦が反省している基本アニメを全てのモーションで作るか,設定やシナリオを変えるか。

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 立ち位置の問題も要素の一つです。背景は前景を持っているので,演技して絵になる立ち位置はおのずと決まってきます。立ち位置が少ない背景に5人ほどを並べたシーンはかなりおかしな絵面になりますし,喋る順番での立ち位置も背景ごとに正解があり,体当たりで試して探すしかありません。
 解決方法は,シーンに対応した背景を増やすか,シナリオを変えるか。グラフィックの制作工数には限界があります。どちらで対応した方がいいか,その判断ができるのはスクリプトと台詞変更でさまざまに試したうえで,最終的にプロットを変更できる人物。つまり僕がスクリプトを組みながら,成立するまでシチュエーションとセリフを何度も何度も作り直し,それでも成立しないならシーンごと別のプロットに作り直すか,工数と相談しながらグラフィックに頼るかを決める……そうやって作るしか解決法がないのが,そのとき分かったんです。

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 3年間,1人籠って全てのスクリプトを書いてました。本当に絶望的な作業量でした(笑)。社員はだめだけど,社長だけは昼夜なくこき使ってもブラック会社にはならないのです。むしろみんなが休んでくれていると,その間に自分の遅れ分を取り返せてるようで,ほんのり幸せな気分になります。
 そんな泥沼からついに這い出て,みんなが仕上げてくれたこの作品をあらためて見たとき……その全てが想像以上に出来上がっていました。艦長不在の船でみんな頑張ってくれていたのです。

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4Gamer:
 会話に出てくる映画,ビデオの貸し借り,ヤンキー,ブルマ……と,とくに80年代の描写にこだわりを感じ,さまざまなオマージュも垣間見えます。プロローグ版を遊んだ限り,ゲームとしても1985年という舞台が中心にあるように見えましたが,この“80年代への思い”を聞かせてください。

神谷氏:
 主な舞台を80年代にしたのは,単純に僕がそのとき,リアルタイムで学生だったからです。
 僕もいい年なので,今の学校事情は全くわかりません。今の学校を描くと,シナリオに嘘くささが出るのではと懸念しました。80年代の学校生活なら,体験しているのでシーンが素直に頭に浮かびます。

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 それにあの時代は,自分にとっていろいろな物が輝いていた青春時代です。そのキラキラを作品に盛り込もうと決めました。少女漫画というモチーフも,今の少女漫画ではなくその時代にキラキラと見ていた少女漫画で,ロボも近年の「パシフィックリム」風ではなく懐かしの「ロボ・ジョックス」風なわけです。
 そして理由のもう1つ。携帯電話が無い時代である必要がありました。じゃないとキャラクターを移動させて,会話する理由を作るのが大変になりますよね(笑)。

4Gamer:
 最後に発売を待つゲームファンや読者にメッセージをお願いします。

神谷氏:
 主人公が13人いて,ザッピングとランダム時系列で謎が謎を呼ぶ展開。そんな物語をアメリカのドラマみたいな感じで作ったら面白くならんわけない。
 どうして誰もやらないの? と思っていましたが,作ってみてわかりました。誰もやらんわけです,めちゃくちゃ大変です。時間もかかり,アトラスさんにも大迷惑をかけてしまいました。何年も前に期待をかけていただいたお客さんも呆れたことと思います。
 しかしおかげで,かなりとんがった作品に仕上がりました。僕の人生でこれほど大変なシナリオを作ることはもうないんじゃないかな。50時間以上のボリュームがあるこの作品。最後までプレイしていただけたら,これほどの幸せはありません。
 「十三機兵防衛圏」なにとぞよろしくお願いいたします。

画像集 No.020のサムネイル画像 / 「十三機兵防衛圏」ディレクターの神谷盛治氏にメールインタビュー。なぜロボット? なぜ“13”? 謎多き作品の気になるところを聞いた

「十三機兵防衛圏」公式サイト

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