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「グランツーリスモSPORT」,GR Supra GT CUPは来年も継続へ。プロデューサー 山内一典氏にインタビュー
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印刷2019/10/28 17:29

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「グランツーリスモSPORT」,GR Supra GT CUPは来年も継続へ。プロデューサー 山内一典氏にインタビュー

 開催中の第46回東京モーターショー2019にて,10月25日から27日に無料エリアの1つ「FUTURE EXPO」(MEGA WEB)の「e-Motorsports」Stageにおいて,PlayStation 4用ドライブシミュレータ「グランツーリスモSPORT」の「FIA グランツーリスモ チャンピオンシップ2019 ワールドツアー 東京」など,さまざまな大会が実施された。

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東京モーターショーで無料エリアの1つとして用意された「FUTURE EXPO」(MEGA WEB)が会場だったため,東京モーターショー以外の来場者も展示物やレースを観戦できた
画像集 No.002のサムネイル画像 / 「グランツーリスモSPORT」,GR Supra GT CUPは来年も継続へ。プロデューサー 山内一典氏にインタビュー 画像集 No.003のサムネイル画像 / 「グランツーリスモSPORT」,GR Supra GT CUPは来年も継続へ。プロデューサー 山内一典氏にインタビュー

 2シーズン目を迎えたワールドツアー 第5戦のマニュファクチャラーシリーズとネイションズカップが予選から決勝までが3日間通して開催されたほか,トヨタとの共同で実現したワンメイクレース「GR Supra GT CUP」決勝大会や,第74回国民体育大会「いきいき茨城ゆめ国体」に関連した「e-Motorsports都道府県対抗U18全日本選手権」,自動車メーカーが真剣にレースをする「自動車メーカー対抗レース」などが行われた。

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 本稿では,2日目となった10月26日の「GR Supra GT CUP」決勝大会終了後に行われた,ポリフォニー・デジタル代表取締役,グランツーリスモSPORTプロデューサーである山内一典氏(以下,山内氏)へのメディア合同インタビューの模様をお届けしよう。

ポリフォニー・デジタル代表取締役,グランツーリスモSPORTプロデューサーの山内一典氏
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――東京モーターショウ2019は,昨年と比較すると開催される大会も増えて,関わりも深くなっていると感じましたが,どういった経緯でこのような形になったのでしょうか。

山内氏:
 昨年,東京モーターフェスティバルと共催という形で,FIAグランツーリスモチャンピオンシップ アジアファイナルをこのMEGA WEBで行いました。グランツーリスモの大きな目的として,自動車の文化をきちんと維持することや広げること,そしてモータースポーツに参加する人たちをこれまで以上に増やしたい,あるいは減少に歯止めをかけたいという思いがあって,その思いが東京モーターフェスティバルや,この東京モーターショーを開催されている自工会(日本自動車工業会)と一致したことが大きいです。

――FIA公認大会は2年目を迎えましたが,どのような感想を持っていますか。

山内氏:
 2シーズン目が終わろうとしていますが,最初の1年目に気付いたのは「スポーツは何か?」ということです。人は誰でも祝福されたいし,祝福したい。それがスポーツというものの本質だなと思いました。2年目となって,さらに気付いたのは,FIAグランツーリスモチャンピオンシップは,eスポーツというカテゴリの中に位置するものですが,極めてクリーンでフェアなレースやコンペティションが行われていて,そういう意味において,ものすごくレアで,貴重な選手権になってます。
 また,人間は競争が好きなんだとあらためて感じていて,自分自身が進歩することや,学習して一段高いレベルになることが,普遍的な欲求になっていると思います。かつ,それらの競争がフェアに行われているということが大前提で,クリーンでフェアな競争が人を幸せにさせることにも気付きました。

――先ほどGR Super GT CUPが終わりましたが,その感想を聞かせてください。

山内氏:
 ワンメイクレースは車の差がないので,ドライバーの実力がそのままレースに出ます。この1シーズンは,ずっとオンラインで戦ってきて,その上位ランカーたちが世界中から集まって世界一を決めたわけですが,その中で1位になることは,とてつもなく凄いことです。結果を見ると,本当に勝つべくして勝ったというか,やはり年間を通じて一番強い選手が勝った。だから,スポーツというは,そういうところを裏切らないと思いました。

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――来シーズンのチャンピオンシップに向けて,新しい試みなどは考えているのでしょうか。

山内氏:
 今は本当に世界のトップ・オブ・トップみたいなドライバーたちが,極めてハイレベルなところで競い合っていますが,たとえば,今年はこの東京モーターショーに合わせて,国体と関連したe-Motorsports都道府県対抗U18全日本選手権も明日(10月27日)実施します。そういった,トップよりもう少し下のカテゴリのチャンピオンシップもやっていきたいと思っています。やはり,ウィナーはたくさんいるほど良いです。

――昨年はFIAのワールドツアーが始まり,今年は国体があって,ポルシェやGR SuperのCUP戦も始まっています。ほかの自動車メーカーやeスポーツ団体によるeスポーツ活動も行われていて,eスポーツのムーブメントが巻き起こっていますが,これをどう捉えていますか。

山内氏:
 昨年は少し困惑していたところがありました。それは,6年前にFIAとこのチャンピオンシップを構想し,同時にグランツーリスモSPORTを作り始めたときには,まだeスポーツというものが来るとは想像していなかったからです。でも,それはたまたま偶然,世の中のeスポーツというムーブメントと,グランツーリスモSPORTのローンチ,大会の開始が重なっただけだと思っています。

――今回も参加している昨年チャンピオンのイゴール・フラガ選手が,めざましい活躍をしています。山内さんから見てどのような選手でしょうか。

山内氏:
 イゴール選手とは,明日(10月27日)トークイベントを行いますが,一言で言うとすごく魅力的な若者です。日本生まれで,12歳まで日本にいて,それからはブラジルに渡ってレース活動を続けてきた。どこにも希望がないような状態というのを経験しながら,常にポジティブに努力をして乗り越えてきた若者なので,彼から学ぶことは凄く多いです。彼が去年,FIAグランツーリスモチャンピオンシップのワールドチャンピオンになったのは,偶然ではないと思いました。

昨年チャンピオンのイゴール・フラガ選手
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――車好きを増やすという話がありましたが,これまでは車業界の人間は,バーチャルに負けない,リアルに戻そうという対抗意識がある印象でしたが,それが一緒にやっていこうとなったことの経緯を聞かせてください。

山内氏:
 たとえば,GR Supraを例にすると,GR SupraはグランツーリスモSPORT内でローンチをして,大体60万くらいのユーザーが購入しています。そして,そのGR Supraを使ったGR Supra CUPは,単なるワンメイクシリーズということだけではなくて,グランツーリスモSPORTでGR Supraに乗ったプレイヤーたちのフィードバックを基に,次の年のイヤーモデルを作るという野心的な試みでもあります。
 今,トヨタの中で企画されている次のイヤーモデルは,今年のプレイヤーたちから集められた7万件以上のフィードバックなどが反映されて,新しいGR Supraに生まれ変わります。こういった試みは,今後も続けていきます。
 今の時代にスポーツカーが何台くらい売れるものなのか。たとえば,そのライフタイムを通じて1万台以上売れるスポーツカーはそれほどないはずです。でも,グランツーリスモSPORTの中では,60万人がスポーツカーを購入するという経験をして,それがいつか自動車のカスタマーになる。それは良いサイクルだと思います。

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――7万件のフィードバックは,具体的にはどういったものなのでしょうか。

山内氏:
 それは,実車のGR Supra開発チームが作ったアンケートに答えてもらう形式になっていて,ゲーム中の行動分析みたいなものではなくて,GR Supra開発チームがプレイヤーに直接アクセスして,彼らの知りたいことを知るという形になっています。

――そのコラボレーション関係は,今後,どのように発展させていきたいですか。

山内氏:
 僕は自動車が好きですし,どうやったらこの文化を維持していけるのかを常に考えています。だから,こういった試みはほかの自動車メーカーさんにもやってほしいと思っています。

――GR Supra GT CUPは,今後,第2回,第3回と続いていくのでしょうか。

山内氏:
 僕の聞いている範囲では,もちろん来年も開催されます。ですから,今日決定したチャンピオンは,初代ウィナーになります。

GR Supra GT CUP初代王者となったミカエル・ヒザル選手(ドイツ),2位は川上 奏選手(日本),3位は宮園拓真選手(日本)
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――プレイヤーの裾野を広げるという取り組みについて,以前に若年層だけでなくシニア層にも広げたいという話がありましたが,そのあたりの予定はどうなっていますか。

山内氏:
 それはいつも念頭に置いていて,あとはそれをどの順番で実現していくのかという段階にあります。

――今回,国体に協力した感想を聞かせてください。

山内氏:
 実は今回,国体の文化プログラムとしてグランツーリスモが参加するまでは,僕自身も国体というものに対して,それほど関心があったとは言えませんでした。しかし,実際に経験してみると,各都道府県から代表や,そのご家族が集まってきて,そこでeスポーツが行われることは素晴らしいことだと思いました。それがグランツーリスモのようなeスポーツを通じて,これまで以上にポピュラーなものになっていくとしたら,それは素晴らしいことなので,今後もやっていきたいです。

――来年,PlayStation 5が登場し,レイトレーシングやハプティックエンジンという新しい技術が投入されますが,どのような体験ができるようになりそうですか。

山内氏:
 僕はそういうことを話せる立場ではないです(笑)。

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――先ほどのGR Supraの話の続きになりますが,グランツーリスモSPORTでGR Supraを買えば,実車のGR Supraを買わなくても,GR Supraがすごく身近なものになるということでしょうか。

山内氏:
 そうですね。今回のGR Supra CUPのドライバーの一部は,トヨタさんのご厚意で,実車のGR Supraをサーキットでテストドライブしていて,ゲーム中と実車の車の動きはまったく同じだと言っています。言い換えれば,これはグランツーリスモSPORTで車の試乗が可能だということです。

――すでにそこまでリアルに出来ているということですが,PlayStation 5などこれからのテクノロジー進化で,ここを変えたいとか,ここは変えられるという要素はありますか。

山内氏:
 それは複雑な問いです。コンピュータの進化もあるし,それを取り巻く環境や人間社会の変化も同時に起きていて,それが相互に影響し合いながら変わっていっています。まだ具体的には話せませんが,おそらくビデオゲームにおいても言えることで,まして車は,ある意味,社会的な存在なので,そういった車のビデオゲームであるグランツーリスモが,コンピュータやそういった技術を基盤にした社会の変化に合わせて,どう変化していくのかというのは興味深い話題ではあります。

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――今回,リアルイベントの盛り上がりを感じましたが,このようなリアルイベントを今後,どう発展させていこうと考えていますか。

山内氏:
 とくに具体的な目標はないですが,価値のあることや,人が楽しんでもらえていることという手応えは感じているので,一つ一つベストを尽くして,かつ細かい改良をどんどん重ねていくことだろうと思っています。

――先ほど,クリーンなバトルという話がありましたが,スポーツではクリーンな戦いは難しいと感じます。なぜグランツーリスモでは実現できているのでしょうか。

山内氏:
 1つには,グランツーリスモが持っているフィロソフィーや,ブランドイメージをプレイヤーのみなさんが共有しているということだと思います。20年にわたるグランツーリスモのカルチャーのようなものを子供の頃から共有しているというところが大きいのかもしれません。
 先ほど,フェアでクリーンなコンペティションは,必ず人を幸せにするはずだという仮説を話しましたが,リアルなモータースポーツはどうしてもお金がかかるので,原理的にフェアにならず,お金のある人が勝ちやすいという状態になってしまう。これは,ほかのスポーツにおいても,実際に起きていることです。
 グランツーリスモの場合は,たとえばタイヤ1セット分のお金で何年間も遊べるし,何年間も本物のコンペティションができる。そこが大きな違いで,こういった基盤があるから選手たちは心から競争を楽しめると思っています。

――選手たちはもともと友達たちとグランツーリスモを楽しむところから始めて,レベルは高くなっても,その時の気持ちを忘れていないということでしょうか。

山内氏:
 そうですね。自分が向上していく感覚は誰でも持ちたいはずです。でも世の中は案外フェアにできていないから,どこかでイヤになってしまうことは多くある。でも,グランツーリスモでは,それが起きないということがすごく大きいと思います。


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――2016年5月のアンヴェイルイベントで,グランツーリスモSPORTはeモータースポーツタイトルであると宣言されましたが,当時思い描いていたeモータースポーツをどの程度,実現できていますか。

山内氏:
 あのとき申し上げたのは,eモータースポーツタイトルだということではなくて,今後100年のモータースポーツを実現するということだったと思います。それは今でも変わっていなくて,モータースポーツは大体150年くらいの歴史がありますが,もともと貴族のスポーツとしてスタートして,ヨットや登山,北極・南極探検などと似ているところがあります。

 貴族が自分たちのプライドをかけて戦うことがモータースポーツの起源で,それが随分長いこと続いて,1970年の頭くらいに車にステッカーを貼るだけで,コマーシャルなお金が流れてくるという,モータースポーツにとっては例外的な時代が訪れた。でもそれは,僕の想像では1990年台ぐらいには終わっていて,たった20年ぐらいしか続かなかったんじゃないかと思っています。そして,今はリアルなモータースポーツは元の姿に戻ろうとしてるという予感があり,でもそれでいいのか? ということです。

 僕らは,モータースポーツの素晴らしさを知ってしまったし,それは後の世代にも伝えていきたい。だとしたら,そうではないモータースポーツの形を作らないと,モータースポーツはポピュラーなスポーツであり得ないということになってしまいます。それがグランツーリスモSPORTを作った理由です。

――昨日,ジャガー ビジョングランツーリスモが発表されましたが,実在しない車を再現する場合は,乗り心地やエンジン音などはどのように表現しますか。

山内氏:
 当然,車はプロダクションに入る前に,エクステリアやインテリアだけでなく,メカニズムなどのデザインもしていますが,カーデザイナーやエンジニアが考えたデザインをグランツーリスモで再現することが,ビジョングランツーリスモのような車の作り方になります。そういう意味では,実車のデザインと変わりません。

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――電気自動車(EV)のモーター音などは,どのように再現しているのでしょうか。

山内氏:
 電気自動車は,どんな音でも鳴らせるという時代にとっくに突入していて,最近の内燃機関の車もそうなんですが,サウンドデザインはかなり進んでいます。そして,さまざまな仕掛けで実際にエンジンが鳴っている以外の音も混ざっています。それはEVに関してもまったく一緒で,その車をデザインしたデザイナーが鳴らしたいモーター音を鳴らしています。

――今回の東京モーターショーを山内さんはどう感じていますか。

山内氏:
 実は忙しすぎて,会場を回れていないです(笑)。ただ,これまでとは違ったアプローチで開催されていて,それがどんな効果をもたらすのかを楽しみにしています。

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――グランツーリスモのレースが,ワークスのようなお金が動く時代になりつつあります。そうなるとイコールコンディションのためのレギュレーションなどの問題など将来的な不安や悩みはありませんか。

山内氏:
 まだそこまでいっていないですが(笑),そういう悩みは常にあります。ともすれば,そういう変化が訪れてしまうので,それをどうデザインするのかだと思っています。その文化をどう創るかはFIAというよりも,自分たちが決めることなので,自分たちがどういう文化を作りたいのかというところが重要だと思っています。

――先日,ミシュランとのパートナーシップが発表されましたが,その後,グランツーリスモSPORTへの反映はありましたか。

山内氏:
 今後になります。すでに我々が持っているタイヤの物理モデルは,かなり精度の高いものになっていますが,もっと知りたいこともあります,ミシュランしか持っていないようなタイヤの性能検査施設などもあるので,シーズンが終わって少し余裕ができたらミシュランのテクニカルセンターに行って,まだまだ分からないことをミシュランのエンジニアと議論できたらいいなと思っています。

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[2019/09/06 20:42]

――グランツーリスモSPORTは発売後に車の挙動が変わりましたが,ミシュランとの共同により,また変わることもあるのでしょうか。

山内氏:
 あります。タイヤは奥が深いので,永遠に正解に辿り着かないかもしれませんが,少しでも精度の高いものにしたいと思っています。

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――最後に来年の目標をファンに向けてお願いします。

山内氏:
 僕は目標を言ったことはないです(笑)。基本的には目の前に現れた人をハッピーにしたいということだけで,ずっと続けてきているので,大それた夢とか目標はありません。来年もチャンピオンシップは続けていきます。

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