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「Radeon RX Vega 64」レビュー。ついに登場したVegaは,AMDと一緒に壮大な夢を見たい人向けのGPUだ
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印刷2017/08/14 22:00

レビュー

Vegaは「AMDと一緒に壮大な夢を見たい人」向けのGPUだ

Radeon RX Vega 64
(Radeon RX Vega 64リファレンスカード)

Text by 宮崎真一


RX Vega 64空冷版リファレンスカード
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 日本時間2017年8月14日22:00,AMDの新世代GPU「Radeon RX Vega」がレビュー記事解禁時刻を迎えた。
 Radeon RX Vegaシリーズには,「Radeon RX Vega 64」(以下,RX Vega 64)と,「Radeon RX Vega 56」の2モデルがラインナップされ,前者にはリファレンスデザインレベルで簡易液冷と空冷の2モデルが存在するため,合計3モデル展開となるが,今回,解禁に間に合う形で入手できたのは空冷仕様のRX Vega 64リファレンスカードである。

製品ボックス。Radeon RXのタグライン(=キャッチコピー)である「Bring Gaming to Life」(人生にゲームを)の文言が入っている
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 「Graphics Core Next」(以下,GCN)アーキテクチャはそのままに,演算ユニットのブラッシュアップを図り,さらにメモリ周りの仕様を大幅に変更してきたのがRadeon RX Vegaにおける最大の強化ポイントとなるわけだが,果たしてそれらはゲーム用途で何をもたらしてくれるのだろうか。Ryzen Threadripperに続き,凝りに凝った製品ボックスで届いた,空冷版リファレンスカードの実力を探ってみたい。

届いたリファレンスカードの製品ボックスは,外装カバーを外すと6面に展開する。そこにはグラフィックスカード入りの小箱とは別に,もう1つ小箱があり,さらには冊子と,アクリルキューブが入っていた
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グラフィックスカード入り小箱はこんな感じ。ケーブルなどは付属していないので,このデザインで店頭に並ぶことはないと思われる
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もう1つの小箱の中には,RX Vega 64と思しきGPUのモックアップにシール4枚,そしてリストバンド(?)があった
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小冊子。フォトブックのような感じでRadeon Vegaの大まかなスペックや動作システム要件などが記載してあった。秘密の情報みたいなものはなし
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こちらがアクリルキューブ。Radeon RX Vegaのロゴマークが中で浮いたようなデザインだ。これは純粋な記念品ということのようである


最新世代のGCNアーキテクチャを採用。動作クロックの向上と新メモリシステムの搭載がトピックとなるRadeon RX Vega


Radeon RX Vegaは14nm LPP FinFETプロセス技術を用いて製造されるGPUで,486mm2のダイに125億トランジスタを集積する
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 AMDはRadeon RX Vegaに関する情報を半年以上にわたって小出しにしてきた。その製品概要は7月31日掲載のニュース記事,技術概要は西川善司氏の連載バックナンバー「新設の『プリミティブシェーダ』を搭載し,Radeon RX Vegaはどこへ行く?」「AMD,次世代GPU『Vega』における4つの技術ポイントを公開。HBM2はキャッシュで使う!?」に詳しいので,詳細はそちらをチェックしてもらえればと思うが,本稿でも要点をまとめてみよう。

Radeon RX Vegaのブロック図
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 冒頭でも簡単に触れたとおり,Radeon RX VegaはGCNアーキテクチャに基づくGPUだ。ただし,GCNアーキテクチャの世代は,バージョン番号こそ未公開であるものの新しくなっている。とくに重要なのはDirectX 12のFeature Levelが競合のGeForce GTX 10と同じ12_1になったことだろう。AMDによると,Radeon RX Vegaは「Shader Model 6.0+」仕様となり,DirectX 12 APIのサポート能力で競合を大きく上回ったとのことだ。

DirectX 12との互換性が最も高いGPUと,AMDはRadeon RX Vegaを位置づけている
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Radeon RX Vega GPU(のサンプル品モックアップ)。写真で大きなGPUダイの右隣に見える2つのブロックがHBM2である
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 細かなアーキテクチャ面では,プリミティブシェーダ(Primitive Shader)の新設やピクセルエンジン(Pixel Engine)の改良など,いろいろ新しくなっているが,中でもゲーム用途で注目したいのは,広帯域幅メモリ「High Bandwitdh Memory」の第2世代モデルである「HBM2」の採用だろう。HBM2では,Fiji世代の「Radeon R9 Fury X」(以下,R9 Fury X)が採用していた「HBM1」と比べて,1ダイあたりの容量とピンあたりの伝送速度がどちらも2倍になっているのが特徴だ。

HBM2とHBM1およびGDDR5の比較
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 しかも,これを従来型のグラフィックスメモリではなく,必要なデータだけをキャッシュする「High Bandwidth Cache」(以下,HBC)として扱うというのが,Radeon RX Vegaにおける大きなトピックとなる。技術面の詳細は西川善司氏の解説記事に譲るが(関連記事1関連記事2),ものすごく簡単に紹介すると,Radeon RX Vegaが新たに採用したキャッシュコントローラ「High-Bandwidth Cache Controller」(以下,HBCC)は,高速なHBCと,HBCと比較して相対的に遅いシステムメモリやストレージデバイスなどを使い分けることができるようになっている。
 「効率が求められるときはHBCを,容量が求められるときはそれ以外のメモリを用いることにより,グラフィックスメモリ時代とは異なる利便性をもたらそうという技術」といったところか。

HBCCの概要。Radeon RX VegaのHBC容量は8GBながら,システムメモリやSSDなどを駆使することにより,仮想メモリ空間は最大512TBを確保できる。ちなみにHBM1を採用していたR9 Fury Xはグラフィックスメモリ容量4GBという仕様がネックだったが,Radeon RX Vegaではそもそもキャッシュメモリ容量が8GBあるので,その点は安心だろう
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NCUのブロック図
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 ちなみにGCNベースなので,AMDが「Stream Processor」と呼ぶシェーダプロセッサ16基をひとかたまりとした実行ユニットを4つ束ね,キャッシュやレジスタファイル,スケジューラ,テクスチャユニットとセットで演算ユニット「Compute Unit」を構成する仕様は,Polaris世代以前のGPUと変わらない。

 ただし,Radeon RX VegaのCompute Unitには,2つの新要素が入った。1つは,32bitレジスタに入れた,2つの16bitデータ――専門用語で「Packed Data」と言う――に対する実行効率が2倍になったことだ。今後,対応アプリケーションが出てくれば,32bit幅では過剰精度な処理を16bitへ落とし込むことで,見た目への影響を最小限に留めたまま性能を向上させることができるというのが,AMDのGPU部門であるRadeon Technologies Group(以下,RTG)の言い分である。
 もう1つは,より高い動作クロックへの対応で,この2点を実現したRadeon RX Vega世代のCompute Unitに対し,RTGは「Next Generation Compute Unit」(以下,NCU)という名を与えている。

Next Generation Compute Unitの「効能書き」
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 さて,ここからはRX Vega 64の採用するVega 10 XTX GPUコアの仕様を簡単にまとめてみたいと思うが,Vega 10 XTXは,NCUを16基束ねて“ミニGPU”的な存在である「Shader Engine」とし,そのShader Engineを4基搭載する仕様となっている。そのため,総シェーダプロセッサ数は,

  • 16(Stream Processor)×4(NCU)×16(Shader Engine)×4(全体)

で4096基という計算だ。実のところこの数と構成自体は,GCN 1.2世代の「Fiji XTX」コアを採用するR9 Fury Xとまったく同じである。

 先ほど,メモリ周りのアーキテクチャがまるで変わったという話をしたが,Vega 10 XTXの場合,メモリインタフェースは2048bitだ。Fiji世代と比べると半分だが,前述のとおりデータ転送効率は2倍になっているため,事実上,同等と述べていいだろう。
 キャッシュメモリとグラフィックスメモリを横並びで比べることに意味があるとは思えないが,一応お伝えしておくと,RX Vega 64のキャッシュメモリ帯域幅は484GB/sで,数字だけで比較した場合,R9 Fury Xのグラフィックスメモリバス帯域幅比で約95%。競合の「GeForce GTX 1080 Ti」と同じ,そして「GeForce GTX 1080」(以下,GTX 1080)と比べた場合は約151%という規模になる。

 RX Vega 64空冷モデルの動作クロックはベースクロック1274MHz,ブーストクロックは1546MHz。R9 Fury Xがブースト最大クロック1050MHzだったのと比べると,NCUの採用効果は大きいということになるだろう。
 また,ここで注意してほしいのはRX Vega 64空冷モデルのブーストクロックが「最大」ではないこと。AMDによると,Radeon RX Vegaにおけるブーストクロックは「負荷が掛かったときの平均動作クロック」(the boost clock represents the typical average clock speed one might see while gaming)とのことなので,ブーストクロックの扱いは,競合のGPUと同じ感じになったという理解でよさそうだ。実際,詳細は後述するが,空冷モデルのRX Vega 64で動作クロックは1630MHzまで上がったのを確認できている。

 表1は,そんな空冷版RX Vega 64の主なスペックを,従来製品および競合製品と比較したものだ。

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リファレンスカードはGTX 1080 Founders Editionと同サイズ。動作モードは合計6種類!?


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 簡単に……と言っておきながら長くなってしまったが,ここからは入手したRX Vega 64のリファレンスカードを見ていこう。
 カード長は実測で約268mm(※突起部含まず)。同196mmのR9 Fury Xと比べるとざっくり70mm長くなっているが,R9 Fury Xは簡易液冷仕様なので,長さを比較するのはナンセンスだろう。事実上のGTX 1080リファレンスカードである「GeForce GTX 1080 Founders Edition」と同じサイズと紹介したほうが,ピンとくる読者は多いように思われる。

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 RX Vega 64リファレンスカードの外観は,「GPUクーラーが全体をすっぽり覆った箱」的で,カード背面も補強用と思しきバックプレートが基板のほぼ全体を覆っている。熱をPCケース外へ吐き出す役目を負うブロワーファンは70mm角相当。補助電源コネクタは8ピン×2という構成で,2連コネクタのすぐ近くには,GPUコアの負荷状況インジケータ「GPU Tach」(※Tachは「Tachometer」の略で,要するにタコメータ)が並んでいる。
 GPU Tach自体はR9 Fury Xが搭載していたのと同じで,2つ並んだDIPスイッチにより,インジケータLEDの色を赤と青の2色から選べる点も変わっていない。

黒に近いグレーのクーラーに,赤い「RADEON」ロゴが映える外観。カード表面はGPUクーラーが,背面はバックプレートが覆っているため,まさに黒い箱といったところだ
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GPU Tachは,すぐ近くにある2連DIPスイッチにより,オン/オフの切り換えと赤と青の色選択が行えるようになっている。右の写真は実際に色を切り換えてみた例
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Dual BIOS Toggle Switch
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 基板上ではもう1つ,側面の外部出力インタフェースに近いところに,2つあるグラフィックスBIOS(以下,VBIOS)を切り替える「Dual BIOS Toggle Switch」があるのも確認できる。
 RX Vega 64リファレンスカードの場合,このスライドスイッチで切り換えられるのは消費電力の上限だ。外部出力インタフェース側にスイッチの入った工場出荷状態だと,消費電力の目安が220Wなのに対して,逆側にスイッチを入れるとこれが200Wに下がる。セカンダリVBIOSは省電力指向という理解でいいだろう。

 面白いのは,RX Vega 64の場合,Radeon Settingsの「WattMan」から,「Turbo」「Balanced」「Power Saver」という,3つの「Power Profile」を選択できること。これにより,ユーザーは場面やゲームタイトルに応じて電源設定を切り換えられるようになっているのだ。つまり,RX Vega 64は,スライドスイッチも入れると,合計6つもの動作モードを備えているのである。

Power Profileの変更用スライドバー。カスタマイズできる「カスタム」のほかに3つのPower Profileから選択できる。日本語版だとPower Profileが「パフォーマンスプロファイル」,Turboが「ターボ」,Power Saverが「Power Save」といった具合に,微妙に原語と異なる表記なので要注意
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 下に示した画像は,「RX Vega 64と『Radeon RX Vega 56』における,VBIOSとPower Pofileの関係」を示したものだ(※出典:AMD)。空冷版RX Vega 64だけでも,150Wから253Wまでの範囲があり,簡易液冷版RX Vega 64や,下位モデルであるRadeon RX Vega 56でも同じように設定できることが分かるだろう。

AMDがRX Vega 64のレビュワーズガイドで示している,Power Profileの詳細。空冷と簡易液冷でそれぞれ異なる設定になっており,上は303Wから下は150Wまで、その設定は幅広い
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 ちなみにグラフ1は,後述するテスト環境において,プライマリVBIOSを選択したうえで,BalancedとTurboという2つのPower ProfileでGPUコアクロックがどう変動するかを見たものになる。
 テストに用いたアプリケーションは「3DMark」(Version 2.3.3732)の「Time Spy」で,クロックは「GPU-Z」(Version 2.2.0)で追っているが,たしかにTurboのほうが,前述した最大動作クロックである1630MHzに達している時間が多かった。

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 外部出力インタフェースは,DisplayPort 1.4×3,HDMI 2.0b×1という構成。最新世代のGPUということで,当然のようにHDMI 2.0をサポートしている。インタフェースが横並びで,“2階建て”になっていないのは,排気孔のスペースを確保するためだろう。

 なお今回,AMDはカードの分解を許可していないため,基板全体などを見てもらうことはできない。この点はご了承を。

こちらはAMDの公式画像素材。内部構造の雰囲気を掴んでもらえればと思う
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TurboとBalanced,2つの動作モードでテスト


 以上を踏まえて,テストのセットアップに入ろう。今回,比較対象には表1でもその名を挙げたR9 Fury XとGTX 1080 Ti,GTX 1080の3製品を用意した。主役であるRX Vega 64側は前述のとおり6つの動作モードを持つため,本来であればすべての動作モードで性能と動作モードをチェックすべきだが,RX Vega 64カードが筆者の手元へ届いたのはレビュー解禁の4日前で,あまりにも時間がなさ過ぎるため,今回はプライマリVBIOSのTurboとBalancedでのみテストを行うことにした。

Radeon Settingsからハードウェアとソフトウェアの各情報をそれぞれ表示させたところ。HBCは「広帯域のキャッシュ」として認識されている
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 Radeonのテストに用いるグラフィックスドライバは,AMDから全世界のRX Vega 64レビュワーに配布された「17.30.1051-170807a-316784E-CrimsonReLive」だ。「Radeon Software Crimson ReLive Edition 17.7.2」の「Display Driver Package」バージョンが「17.30.1041-170720a-316391C-CrimsonReLive」なので,レビュワー向けドライバは17.7.2をベースにRX Vega 64のサポートを加えたものという理解でいいのではなかろうか。
 なお,レビュー解禁の2日前になって,より新しい「17.30.1051.1001-170811a-317001E-CrimsonReLive」も配布されたが,さすがに時間がないのと,このバージョンはWattManを用いてオーバークロックを行うときの挙動を改善するものという説明があったので,オーバークロックを行わない今回のテストでは影響が少ないであろうという判断から,利用は見送っている。

 そのほかテスト環境は表2のとおりだ。

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 テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション20.0に準拠。ただし,機材トラブルが発生したため,グラフィックスカード単体の電力測定は宿題とし,今回はシステム全体の消費電力測定のみとさせてもらえれば幸いだ。
 テスト解像度は,RX Vega 64がハイエンド市場向けということもあり,3840×2160ドットと2560×1440ドット,1920×1080ドットの3つを選択している。


GTX 1080と同等かそれに迫る性能を発揮。高負荷条件でポテンシャルがキラりと光る


 以下,グラフ中に限り,RX Vega 64のテストで用いた2つの動作モードを「RX Vega 64(Turbo)」「RX Vega 64(Balanced)」と表記することを断りつつ,3DMarkからテスト結果を順に見ていこう。

 グラフ2はDirectX 11世代のテストである「Fire Strike」における総合スコアを,グラフ3はそこからGraphics scoreを抜き出したものだ。
 端的にまとめるなら,RX Vega 64のスコアはGTX 1080とほぼ同じ。総合スコアだと最も負荷の高い「Fire Strike Ultra」で若干高いスコアだが,Graphics scoreだと全体的に高めのスコアで推移しているのは興味深い。とくにBalanced設定のRX Vega 64がGraphics scoreで最大約4%に広がっているのは目を惹くところだ。
 TurboとBalancedのスコア差はほぼないと言っていいレベルだが,Graphics scoreを見る限り,若干の違いはある。

 なお,対R9 Fury Xのスコアは総合スコアで23〜29%高かった。

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 同じ3DMarkから,DirectX 12世代のベンチマークテストであるTime Spyの結果をまとめたものがグラフ4,5となる。ここでも総合スコアと,そこから抜き出したGraphics scoreを並べているが,全体の傾向としてはFire Strikeと同じ傾向と言っていいだろう。RX Vega 64のスコアは,おおむねGTX 1080と同等だ。
 ただ,細かく見てみると,Time Spyでは若干ながらGTX 1080が優勢。RX Vega 64はTurboであってもGTX 1080にはわずかに届かない。

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 グラフ6は「Superposition Benchmark」(以下,Superposition)の総合スコアだが,RX Vega 64のスコアは対GTX 1080で85〜93%程度となった。描画負荷が高まるほどスコア差を詰めていることから,競合よりも高負荷環境に強いことが分かる一方,同じ3Dベンチマークソフトでも,3DMarkと比べると知名度で譲るようなものに対してはまだ最適化が進んでいないことも指摘できよう。
 R9 Fury Xとのスコア差が,高負荷条件になればなるほど縮んでいることからすると,最適化が必要なのはHBCC周りということになりそうである。

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 Superpositionにおける平均および最小フレームレートをまとめたものがグラフ7〜9で,全体的に,総合スコアと見比べて違和感のないデータが出ていると言える。

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 では実際のゲームではどうのか,グラフ10〜12は「Prey」の結果である。
 Preyでは「最高」プリセットでも,1920×1080ドットで相対的なCPUのボトルネックによるスコアの頭打ちが(R9 Fury X以外で)生じてしまっている。そこでそれ以外を見ていくことになるが,RX Vega 64の平均フレームレートは,対GTX 1080で90〜96%程度。2560×1440ドット条件における最小フレームレートが有意に低いのは少々気になるが,これだけでその理由を語るのは難しそうだ。
 対R9 Fury Xだと平均フレームレートは12〜15%程度高い。またTurboとBalancedの間のギャップは2〜3%程度となった。

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 続いてグラフ13〜15は「Overwatch」のスコアだが,本タイトルはレギュレーション20世代で採用するタイトルのうち,最もRX Vega 64のスコアが振るわないものの1つとなった。
 ここまでのテスト結果から,RX Vega 64は高負荷状況においてGTX 1080と同等かそれに迫る性能を発揮できる傾向が見えていたわけだが,それは逆に言うと,描画負荷の低い局面では性能を発揮しづらいということでもあり,それが,描画負荷の低いOverwatchで顕著に出てしまっていると言えるだろう。
 よりフレームレートが高く出るTurboで比較してみても,RX Vega 64の平均フレームレートは対GTX 1080で84〜90%程度。最小フレームレートは79〜83%程度だ。「描画負荷が高くなるほど実力を発揮する」という,これまでの傾向とも異なっているので,多分にドライバの最適化が足りていないのではないかと思われる。

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 グラフ16〜18は「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」(以下,PUBG)の結果だが,こちらでもRX Vega 64のスコアは芳しくない。PUBGは比較的描画負荷が高めなタイトルだけに,「描画負荷が高まるほどRX Vega 64が優勢」の傾向に従って,GTX 1080とのスコア差は詰めているが,最も詰まった状態でも平均フレームレートは77〜79%程度である。
 PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDSが採用するゲームエンジン「Unreal Engine 4」はGeForceへより強く最適化されていることで知られるが,その影響が出た可能性はあるだろう。いずせにせよ,Overwatchとは異なる理由でスコア差が出ている印象を受けた。

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 「RX Vega 64が高負荷条件でGTX 1080とよい勝負を演じる」好例となったのが,グラフ19〜21にスコアをまとめた「Tom Clancy’s Ghost Recon Wildlands」(以下,Wildlands)である。
 Wildlandsだと,RX Vega 64のTurbo設定は,1920×1080ドット条件でこそGTX 1080の後塵を拝するものの,2560×1440ドットでスコア差を詰め,3840×2160ドットでは94〜97%程度のところまで持ってきている。
 RX Vega 64同士で比較すると,TurboとBalancedとのスコア差は2〜3%程度。R9 Fury Xに対しては37〜47%程度高いスコアを示した。

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 NVIDIAのGameWorksを用いて作られたタイトルということもあり,もともとRadeonにとっては厳しいテストで,今回もやはり厳しい結果となったのが,グラフ22に総合スコアを示した「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」(以下,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ)だ。ここでRX Vega 64のスコアは対GTX 1080で87〜89%程度。R9 Fury Xと比べるとスコアで2桁パーセントの改善を見せているのが救い,といった感じである。

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 FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチにおける平均および最小フレームレートをまとめたものがグラフ23〜25だが,ここで注目したいのは最小フレームレートだ。とくに2560×1440ドット以下の条件でRX Vega 64はGTX 1080に大差を付けられてしまっており,「ゲームレベルの最適化の壁」が厚いことを感じる。

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 DirectX 12ベースのタイトルでも描画負荷が高めな「Forza Horizon 3」におけるテスト結果がグラフ26〜28だ。
 Forza Horizon 3におけるRX Vega 64のスコアは今回テストした中で最も良好と述べて差し支えなく,対GTX 1080で平均フレームレートは数%,そして最小フレームレートは2560×1440ドット条件で26〜27%程度,3840×2160ドット条件ではダブルスコアという結果を叩き出している。
 将来的なRX Vega 64の可能性が見えるグラフと言っていいのではなかろうか。

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消費電力はGTX 1080比で100W以上高く,高クロック動作の代償は小さくない


 表1で示したとおり,RX Vega 64の公称典型消費電力は295Wと,R9 Fury Xの275Wから20W上がった。NVIDIAはTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)しか示していないため,単純な比較は行えないが,それでも「GTX 1080のTDPは180W」という字面(じづら)だけ読むと,数字にはかなりの違いがあるように思える。
 本稿の序盤で軽く触れたが,電力測定にあたっては,「4Gamer GPU Power Checker Version 1」に機材トラブルが発生したため,本稿ではレギュレーション19世代までと同じく,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の消費電力を比較してみたい。

 テストにあたっては,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時とした。
 その結果はグラフ29のとおりだ。まずアイドル時は,14nm LPP FinFETプロセス技術の効果なのか,R9 Fury X比で10W低い。GTX 1080と比べると8W高いものの,ここは素直に評価していいのではなかろうか。

 一方,各アプリケーション実行時を見てみると,RX Vega 64のスコアは,対GTX 1080でTurbo設定時に162〜196W,Balanced設定時に118〜143W高いという結果になった。R9 Fury Xに対してもかなりのスコア差を付けているので,「NCUの採用により高クロック化を実現」したことの影響は大きいと言わざるを得ないだろう。RX Vega 64は間違いなく電力喰いのGPUである。

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 では,それだけ高い消費電力を,RX Vega 64の空冷仕様でしっかりと冷却できているのだろうか。GPUごとに温度センサーの位置も温度の取得方法も,当然ながらGPUクーラーも異なるため,横並びの比較にはまったく適さないとお伝えしたうえで,3DMarkにおけるFire Strike Ultraの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともどもGPUの温度を取得することにした。
 なお,GPU温度の取得には基本的にGPU-Zを用いるが,バージョン2.2.0のGPU-ZだとRX Vega 64の温度を取得できなかったため,RX Vega 64の2条件だけはRadeon SettingsのWattManを用いている。
 テスト環境は,PCケースに入れることなく,いわゆるバラックの状態で室温24℃の環境に置いた。

 結果はグラフ30のとおりで,RX Vega 64の高負荷時における温度はTurboで85℃,Balancedで80℃。やや高めではあるものの,空冷仕様のリファレンスクーラーとしてはまずまずの冷却能力を持っていると述べていいだろう。ただ,Turboで常用したいのであれば,カードメーカー各社のオリジナルデザイン採用モデルが出揃う予定となっている9月を待ったほうがいい気もする。

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 ちなみにRX Vega 64が採用するリファレンスの空冷クーラーの動作音だが,このクラスの製品としてはかなり静かな印象を受けた。グラフ30でアイドル時の温度が高めなのが気になった人もいるのではないかと思うが,これはファンの回転数を落として静音性を稼いでいるからという理解でいいだろう。
 筆者の主観であることを断ったうえで述べると,RX Vega 64のファン動作音は,さすがにR9 Fury Xの簡易液冷クーラーには敵わないものの,GTX 1080 Founders Editionとはいい勝負といった印象である。


RX Vega 64はAMDと一緒に壮大な夢を見たい人のためのGPUだ


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 以上のテスト結果から,レビュー解禁時点におけるRX Vega 64の性能は,ベストケースでGTX 1080と同程度と言っていいだろう。明らかにドライバ側の最適化が足りていないと思われる部分や,GCNというアーキテクチャもしくはゲームエンジン側が原因でスコアが振るわない部分がある一方,高負荷環境において強みを発揮する傾向にある点は,RX Vega 64の持つアドバンテージの1つと言える。

 明確なマイナスポイントは,消費電力が競合製品と比べて圧倒的に高いことだ。VBIOS切り換えやPower Profileを活用できるとはいえ,工場出荷時設定でGTX 1080より軽く100W高いというのは,やはり看過できない。

 また,国内価格もハードルとして立ちはだかる。原稿執筆時点で,AMDの日本法人である日本AMDから価格の情報は得られていないが,すでに発表されているSapphire Technology製の空冷版リファレンスデザイン採用モデルは税込で8万円弱という金額になる見込みだ(関連記事)。

 北米市場におけるメーカー想定売価が499ドル(税別)というのはGTX 1080と同じだが(関連記事),そのGTX 1080を搭載するグラフィックスカードは,発売から時間が経ったこともあり,2017年8月14日時点の実勢価格でいえば,カードメーカー各社のオリジナルデザイン採用モデルが6万円台後半から購入できるようになっている。つまり,レビュー解禁時点におけるRX Vega 64は,「ベストケースでGTX 1080相当の性能を持ち,消費電力はざっくり100W高く,北米市場における搭載カードのメーカー想定売価は同額なのに,国内価格は1万円以上高い」GPUになってしまっているわけで,現時点ではかなり人を選ぶと言わざるを得ないだろう。

 その意味でRX Vega 64は,HBM2やプリミティブシェーダといった大規模な刷新を入れてきたRTGの心意気や思想といったものに共感する人が,将来的なドライバの最適化や,ゲームとキャッシュシステムの互換性向上によって“化ける”ことを期待して選ぶGPUと言えるかもしれない。
 少なくとも,2017年8月中旬時点におけるハイエンド市場向けGPUとして,RX Vega 64が十分なポテンシャルを持っているのは確かだ。国内価格の初値で購入するのはお勧めしないが,カードメーカー各社のオリジナルモデルが登場し,店頭価格がGTX 1080カード並みになってくるであろう2017年冬のボーナス商戦期には,ドライバの最適化なども相まって,GTX 1080の対抗馬としての魅力がかなり出てくるのではないだろうか。

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Radeon公式Webサイト「Radeon.com」


関連記事:もう1つのVega,「Radeon RX Vega 56」性能速報

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