プレイレポート
「ウォッチドッグス 2」のプレイインプレッション。サンフランシスコを舞台に,ハッカーという名の魔法使いになるのだ
「ウォッチドッグス 2」公式サイト
“オープンワールド+ハッカー”という独創的な組み合わせが,さまざまな特徴を生み出すシリーズの最新作。発売からしばらく時間が経過してしまったが,今回はPlayStation 4版のインプレッションをお届けしたい。
舞台はベイエリア。先端技術の地にはびこる邪悪な企業の野望を阻止せよ
本作の主人公は,24歳の若きハッカー,マーカス・ホロウェイだ。生まれも育ちもサンフランシスコという彼は,ある日,犯罪の濡れ衣を着せられたことをきっかけに,街のすべてのインフラを制御する「ctOS 2.0」に大きな陰謀が隠されていることを知る。開発元であるブルーム・コーポレーションの「人々の生活をより便利で豊かにする」という謳い文句のもと,インフラ制御だけでなく人々の個人情報に至るまでを支配するに至った「ctOS 2.0」だが,そこから得られる膨大なデータを,企業や富裕層向けに悪用していたのだ。
ハッカーをテーマにした作品だけあって,ゲーム全体にハッカーカルチャーがこれでもか,と詰め込まれている。Webやセキュリティ用語はもちろんのこと,会話の各所にWiki,ライブ配信,自宅警備員などの単語やスラングがちりばめられているため,まあ,分からなくてもゲームの進行に問題はないものの,ネット事情に詳しいと一層楽めるはずだ。マーカスが加わることになるデッドセックは,まるで絵に描いたようなカリフォルニアのハッカーグループという感じで,過剰にデジタル加工され,しかもピクセルが大きくてレトロな感じもする犯行声明ビデオなど,雰囲気抜群だ。ゲーム全般に,グラフィックスと音楽のセンスは非常に洗練されている。
“ハッカー”というテーマをゲームでうまく表現していると感じるのが,「フォロワー」の存在だ。デッドセックの目的は,さまざまなミッションをこなして人々の注目度を上げ,ネットのフォロワーを増やしていくことにある。
フォロワーはデッドセックのアプリをPCやスマホなどのデバイスにインストールし,その演算力の一部を提供することで,デッドセックに協力してくれる。分散コンピューティングというヤツだ,たぶん。そして,フォロワーを集めるほど能力が高まるわけで,そのことがデッドセックがミッションに挑む理由付けになっている。
また,フォロワーが増えるにつれて,「リサーチポイント」が手に入り,これを消費することで,マーカスに新たな能力を与え,レベルアップできる。フォロワーは成長システムの重要な要素でもあるわけだ。
デッドセックは,世間の注目度と関心を高めるため,新作映画に登場する車を勝手に改造して街中を暴走させたり,有名IT企業の不正を徹底的に暴いたりする。ハッカーの若者らしく「悪ふざけ」という雰囲気はかなりあるものの,それが結果的にブルームを追い詰めていくことになる。
さまざまなガジェットを使いこなし,パズル性の高いミッションをクリアしよう
上記のように,本作の舞台である2016年のサンフランシスコは,「ctOS 2.0」によって地域全体のインフラがネットワーク化されている。まさに「IoT」(Internet of Things)と呼ばれる「あらゆるものがインターネットにつながる」時代が実現されている。電力や携帯通信網,街角の信号機や監視カメラなど,何もかにもがネットワークに依存しており,これはある意味,ハッカーにとっては天国だ。
マーカスはそれらをハックする能力を持っているため,ミッションでは状況に合わせてさまざまなオブジェクトを操作していくことが重要だ。
例えば監視カメラを乗っ取って建物内部の状況を確認したり,配電盤をショートさせて近くの警備員を気絶させたり,信号機をタイミングよく赤に切り替えてパトカーの追跡を振り切ったり……といった感じ。ミッション以外でも,通行人の収入をのぞき見て,高額所得者のお金をこちらの口座に送金させたりといった「軽いイタズラ」ができたりもする。
ミッションは基本的に,目的地に潜入してデータを盗み出したり,ガジェットを仕込んだりというものが多い。敵の警備員はかなり物騒な連中で,マーカスを発見すると容赦なく銃撃してくる。マーカスは,それなりに強い近接攻撃ができ,さらにパルクールなどもこなす高い身体能力の持ち主だが,それでも敵に囲まれると,割にすぐに撃ち倒される。したがって,基本的に行動はステルスがメインになり,そこにいかにハッキング能力を絡めて効率良く目的を遂行できるかがポイントになるのだ。
ちなみに,筆者がミッション中に最もよく使用したのは,邪魔者のプロフィールを勝手に書き換えて犯罪者や裏切り者に仕立て上げる,「容疑者」と「ギャングアタック」だ。これらを使えば,対象は警察やギャングに追われる身となり,場合によってはそこで大規模な銃撃戦にすら発展する。
プレイヤーはその様子をカメラ越しに悠々と眺めていればいい。そして,混乱の隙を突いたり,誰もいなくなってからゆっくりと目的を果たすのだ。
これらのハッキング作業をより効率的に行えるのが,「ネットハック」モードだ。ボタン1つで切り替えられるこの画面は,操作可能なオブジェクトがハイライトされるだけでなく,敵などのNPCを壁越しでもはっきりと確認できるようになるので,攻略には欠かせない。
また本作では,クローズドな回線で制御されているドアを開くための経路などをパズルのようにつないでいく場面も出てくるので,筆者はミッション中,基本的にこの画面で進めている。ちょっと見にくいけど。
さて,忘れてはいけないマーカスの強い味方が,アーム付きのラジコンカー「ジャンパー」と,ドローンの「クワッドコプター」だ。デッドセックの本拠地「ハッカースペース」に置いてある3Dプリンタで作れるこれらのガジェット。ジャンパーは排気口など,人の通れない狭い通路を抜けてアイテムを回収したり,データを奪ったりでき,クワッドコプターは高い場所から自由に監視や遠距離ハッキングが行えるという優れものだ。
敵の裏をかき,こっそりと目的を果たすためには必須のガジェットで,侵入が制限された場所で自分の分身として活躍してくれる。敵に見つかると銃で撃たれたりもするが,壊れても時間経過で復活するため,割と気軽に使える。
これらのハッキング技術やガジェットを使い,自由なやり方でミッションをクリアしていくのが,本作の醍醐味となる。真正面から乗り込み,銃で解決する方法もあるにはあるが,警察に通報されるとやっかいだし,いくらフォロワーを集めてもマーカス自身の防御能力はそれほど強化されないので危険だ。
通りをうろつく警備員が邪魔なら配電盤でスタンさせるか,あるいは爆発に巻き込むのか,それともギャングに襲わせるか……,これを監視カメラから覗きつつ,じっくり練りあげて実行する。手も足も出ないと思われていたミッションが,やり方をちょっと変えるだけで容易になったりするから面白い。
アクション性はそれなりに高いものの,ハッカーだけに,頭脳を使った戦いがより重要なのだ。
数多くのアクティビティが待っているベイエリアを満喫しよう
上記のように,本作ではサンフランシスコが広いオープンワールドとして再現されている。北は高級住宅地が建ち並ぶマリンカウンティから,南はハイテク産業の中心地であるシリコンバレー,そして東は犯罪率の高いオークランドまで,ベイエリアの主要な地域がゲーム内に作り込まれているのだ。ゲーム世界の広大さを誇るタイトルが多い中,本作が再現している面積はそれほど広いという印象はないが,作り込みはかなり細かく,それぞれの地域の特徴がよく出ている。また,時間や天候の概念もあり,ミッションが進むにつれて,日が暮れたり雨が降ったりする。
そんなオープンワールドではお約束,メインミッション以外にも多くのサブミッションが用意されている。さらに,気分転換にもってこいのアクティビティもかなり充実している。
サブミッションはメインのストーリーに関係したものが多いが,「生活を常にライブ配信しているハッカー仲間に,その危険性を自覚させる」とか「デッドセックをかたるネット荒らしを痛い目にあわせる」といったユーモラスなものも少なくない。後者のネット荒らしは,他人の家に特殊部隊のSWATを突入させる「スワッティング」(SWATting)と呼ばれるどうしようもないイタズラにハマっているのだが,それを逆手に取った痛快な展開が楽しめる。
このあたり,海外のネット事情に詳しい人ほど,楽しめそうだ。
アクティビティとしては定番の,レースミッションやタクシーミッションが用意されている。いずれもシンプルで面白いが,マップの各所に隠された現金やリサーチポイントを集めて回るだけでも,かなりのボリュームがある。
多くは高所やダクトの中,あるいは立ち入り禁止区域の中にあり,スキルやガジェットを駆使して取りに行く必要があるため,探しているとあっという間に時間が経ってしまう。これは,メインミッションの一部を簡略化したような感じなので,本番に向けての腕試しとして探してみるのもいいだろう。
個人的には,「ScoutX」というアプリを使った写真撮影がお気に入りだ。このアクティビティは,サンフランシスコのさまざまなランドマークで自撮りしつつ,指定された対象物を写真に収めると,SNSにアップロードされてフォロワーが増えるというもの。まさにSNSとスマートフォン時代を象徴するような内容で,実際にやっていると,ゲームなのか現実なのかちょっと分からなくなった。まさに「2016年のリアル」といった印象だ。
また,ミッションに挑戦しているとき以外,ほかのプレイヤーが勝手に侵入してくることがある。そのため,例えば貴重なデータを奪われないように,ほかのプレイヤーをうまく排除したり,もしそいつが賞金首として追われるプレイヤーなら,警察と協力して追いかけたりというシチュエーションが発生する。
ほかのプレイヤーの飛び入りを許可するかどうかは,オプション画面で設定することができるが,突発的にほかのプレイヤーとの戦いが始まったときの緊張感は高く,「オンラインプレイをするぞ」と身構えなくてもスムーズに開始できるため,筆者はONのままプレイしている。ドンとこい。
ほかのプレイヤーが侵入してくる頻度はそこまで高くない印象なので,ちょうどいいゲームのスパイスになってると思う。
また,通常のオンラインミッションを任意のタイミングで始めることもできるので,こちらをメインにプレイするのも良さそうだ。クリアすればフォロワーが増えるので,オンでもオフでも,面白そうなミッションから始めてみよう。
広大なオープンワールドで,21世紀の魔法を操れ
有名なSF作家のアーサー・C・クラークは,「十分に発達した科学技術は魔術と見分けがつかない」と述べている。ハッキングはハイテク技術だが,遠く離れた場所から監視カメラを乗っ取り,閉じた扉を自由に開き,可燃性のタンクを爆発させ,有人無人にかかわらず他人の車を自由に操り,そして,面倒な相手に殺気立った警官やマフィアを送り込むといった技は,まるで魔法のようだ。
これらはあくまでゲームでの表現だが,実際にセキュリティが甘いネットワークカメラは,かなりの数がハッキングされていると言われており,すべてが荒唐無稽な作り話というわけではない。近い将来を考えるとむしろリアルであり,ネット社会の恐ろしさみたいなものもプレイ中に感じられる。
上記のとおり,ミッションはパズル性が高く,とくにメインストーリーは力任せでは進めないところも多い。アクションで勝負したい人は少し面倒に感じるかもしれないが,ステルスアクションとトライアル&エラーが好きな筆者は大いに楽しめた。本作はかなり序盤から「好きなようにやってくれ」という雰囲気になるので,ゲームを快適に進めるには,ある程度時間をかけてハッキングに慣れる必要がありそうだ。
リアルなグラフィックスで再現されたサンフランシスコで,マーカスがいろいろなオブジェクトに「現代の魔法」をかけていくのはそれだけで楽しく,これは,ほかのタイトルでは体験できない感覚だ。ハッカーカルチャーでは,優れたハッカーやプログラマーを「ウィザード」と呼んだりするが,マーカスは現代に現れたウィザードなのだ。
ユービーアイソフトの大作らしく,ボリュームも十分すぎるほどあるので,年末年始にじっくりプレイするのにもってこいの一作。サンフランシスコで最先端のハッカー暮らしを楽しみたいなら,せひ手にとってほしい。
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