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Focus Home Interactiveが,TRPG「クトゥルフの呼び声」のケイオシアムと独占契約を締結。新規パブリッシング計画も次々に発表
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印刷2019/04/12 14:04

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Focus Home Interactiveが,TRPG「クトゥルフの呼び声」のケイオシアムと独占契約を締結。新規パブリッシング計画も次々に発表

画像集 No.001のサムネイル画像 / Focus Home Interactiveが,TRPG「クトゥルフの呼び声」のケイオシアムと独占契約を締結。新規パブリッシング計画も次々に発表
 現地時間の2019年4月10日〜11日,パリに本拠を置くパブリッシャFocus Home Interactiveが,恒例の自社イベント「What’s Next Focus 2019」を開催し,2019年にリリースされる予定のタイトルや,今後のパブリッシング計画の概要などを明らかにした。

 「Call of Cthulhu: The Official Video Games」「Vampyr」といったタイトルで,日本でも知名度を上げつつあるFocus Home Interactiveだが,設立者の1人で,20年にわたって同社を率いてきたセドリック・ラギャリック(Cédric Lagarrigue)氏が2018年3月に辞任し,新たな社長に交代した。
 これは,長らく親しい関係にあったデベロッパのCyanide Studioをライバル企業に買収されことで,Focus Home Interactiveが発売するゲームとしては最も長い歴史を持つ「Pro Cycling Manager」シリーズや「Werewolf: The Apocalypse」シリーズを含め,Cyanide Studioタイトルの販売権を失ってしまったためだ。「コール・オブ・クトゥルフ」の契約はなんとか手元に残したが,同社にとってはかなりの痛手であり,その責任を取っての辞任になるようだ。

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Focus Home Interactive公式サイト


 ラギャリック氏に代わって,2018年4月10日に新社長として迎えられたのが,ゲーム業界で35年のキャリアを持つユルゲン・ゴールドナー(Jurgen Goeldner)氏で,SQUARE ENIXでEidos Interactive担当のCOO(最高執行責任者)として活躍した経験を持つ国際派だ。
 Cyanide Studioを失ったため,例年に比べて出展タイトル数が少ない「What’s Next Focus 2019」だったが,12社におよぶ新規パブリッシング契約を発表するなど,精力的に巻き返しを図っているという印象も受ける。

画像集 No.003のサムネイル画像 / Focus Home Interactiveが,TRPG「クトゥルフの呼び声」のケイオシアムと独占契約を締結。新規パブリッシング計画も次々に発表

 発表されたデベロッパの中には,日本のプレイヤーにもおなじみの会社もあれば,インディーズからの新規参入もあり,かなり期待が持てる。発表された12社は,以下のとおりだ。

■DONTNOD Entertainment
 Focus Home Interactiveとは「Vampyr」に続く提携となる。公開されたアートワークを見る限り,彼らの新作は完全新規IPであるようだ。

■Limestone Games
 以前から公式サイトなどが公開されている,「Aeon Must Die!」の販売権を獲得。同作は,RPG要素を詰め込んだ,ビート・ゼム・アップ系のアクションゲーム。

■Sumo Digital
 「Crackdown 3」「Dead Island 2」の発売を控えているイギリスのベテランデベロッパSumo Digitalだが,「Project Nova」というコードネームの新作をFocus Home Interactiveが発売する。

■Saber Interactive
 血塗られた泥だらけのタイヤ……。「Spintires: MudRunner」「World War Z」でおなじみのSaber Interactiveは,どのような作品を作っているのだろうか。

■Deck 13 Interactive
 「The Surge」シリーズに力を入れていたDeck 13 Interactiveだが,Focus Home Interactiveの下で新規IPの制作に取り組むようだ

■Lightbulb Crew
 フランスとスウェーデンに本拠を置くインディーズ系のスタジオ。Game Developers Conference 2019で「Othercide」というRPGを発表しており,その販売をFocus Home Interactiveが受け持つようだ。

■Asobo Studio
 4年をかけて,「A Plague Tale: Innocence」の開発を終えたフランス・ボルドーのゲームメーカー。彼らの新作は,多くのゲーマーにとって気になるはず。

■Gasket Games
 Relic Entertainmentに在籍した経験を持つ開発者達が新たに設立したスタジオとのことで,「ウォーハンマー」のIPを使った新作RTSになるのかもしれない。

■Saber Interactive
 こちらも「ウォーハンマー」のIPを使用した新作になる予定だが,いくら聞いても,現時点で詳細は教えてもらえなかった。

■Streum On Studio
 「Space Hulk Deathwing」を開発したスウェーデンのメーカーだが,彼らの新作は,「ウォーハンマー」もののシューターになるという

■Passtech Games
 「Space Run」「Master of Anima」でコラボ経験のあるフランス・リヨンのデベロッパだが,新作の詳細は発表されていない

■SNK
 2015年に香港の投資会社に買収されたSNKだが,欧米でのパブリッシングはFocus Home Interactiveと提携したようだ

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ケイオシアムとの独占契約に成功した
ゴールドナー氏の方向性とは


 これに加えて,今回のイベントで最大のトピックになったのが,ボードゲームの出版社であるケイオシアム(Chaosium)と,「Call of Cthulhu」(邦題「クトゥルフの呼び声」)について10年間の独占契約を結んだという発表だった。
 H.P.ラヴクラフト氏が発表した小説「クトゥルフの呼び声」が近いうちにパブリックドメインになることは,2018年11月5日に掲載した連載記事でお伝えしたとおりだが,狂気レベルを表現する「Sanity Level」,いわゆる「SAN値」を導入したのは,TRPG版の「クトゥルフの呼び声」だ。そのシステムに著作権が適応されるかどうかは分からないものの,少なくとも他社のクトゥルフ系ゲームが,「Sanity Level」という単語を使ったシステムを採用するのは難しくなりそうだ。
 いくつかのIPを失ったFocus Home Interactiveにとって,この独占契約は非常に重要な意味を持つだろう。

おだやかな風貌と話し方が印象的なゴールドナー氏だが,社長就任直後から精力的に新規IPの獲得に乗り出すという手際の良さを見せた
画像集 No.005のサムネイル画像 / Focus Home Interactiveが,TRPG「クトゥルフの呼び声」のケイオシアムと独占契約を締結。新規パブリッシング計画も次々に発表

 会場で何人かの関係者に取材したところ,IP拡大のために多くの人員が投入されていたとのことで,新規プロジェクトの獲得や独占契約が新社長であるゴールドナー氏がまず取り組んだことであるようだ。ごく短い時間だったが,そんなゴールドナー氏に話を聞くことができたので,以下に紹介しよう。

4Gamer
 社長に就任されてちょうど1年になりますが,Focus Home Interactiveにとって,大きな変化があった年でもあります。まずは,今回のイベントまでの1年間を総括してください。

Jurgen Goeldner (以下,Goeldner)氏
 グローバル企業で長く働いていたので,私が参加してからの変化は,やはり「国際化」または「多様化」ということに尽きると思います。私自身,ドイツ出身でさまざまなゲーム企業の経営に参加し,SQUARE ENIXではCOOとして新規IPの獲得を担当していました。そのため,Focus Home Interactiveというパブリッシャをフランスに留めておくのではなく,より広い範囲で活動していくことが賢明であると判断しています。
 それは今後のタイトルにも表れており,開発が進行しているものだけでも17タイトルで,モバイルやNintendo Switchなど,プラットフォーム別に数えると実に60作品を超えます。契約企業も,フランス中心だったこれまでの方針を転換し,世界的に良いゲームを探して交渉していこうという姿勢になっています。

なぜここに「サムライスピリッツ」? と思ったが,SNKの欧米でのパブリッシングをFocus Home Interactiveが担当することになったという
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4Gamer
 確かに,イベントホールで「サムライスピリッツ」のポスターを見つけたときは驚きました。

Goeldner氏
 そうそう。そういうことです。SNKのタイトルをパブリッシングできるというのは,本当に良い機会に巡り合えたなあと思っています。SNKが我々の実力に着目してくれたからこそできた契約でしょう。

4Gamer
 Cyanide Studioという,Focus Home Interactiveが長く関係を維持してきた,地元パリのメーカーを失ったことは大きかったですか。

Goeldner氏
 ビジネスの世界ですから,そういったことは起こり得ますし,今後も起こることでしょう。いくつかのIPを失ったのは事実ですが,「Call of Cthulhu: The Official Video Games」は最後までしっかりと作ってくれましたし,そのプロフェッショナリズムのおかげで,前社長の退職を乗り越えて過去最高の収益を確保した1年になりました。
 従業員の解雇は行っていませんし,それどころか,今は人員を増やしているところで,従業員数もすでに過去最大になっているはずです。我々にとって未知の分野だった映画スタジオとの提携による「World War Z」も来週にリリースされますし,「A Plague Tale: Innocence」のような多くのゲーマーが楽しみにしてくれている新作も控えています。DONTNOD Entertainmentと再契約を果たしたことや,Sumo Digitalのような実力あるメーカーと契約することなど,1年前よりも野心的になったと言えるでしょう。

4Gamer
 新規契約数もそうですが,なによりケイオシアムとの10年間の独占契約には驚きました。

Goeldner氏
 そうですね。良いチャンスをつかんだと考えています。クトゥルフ神話がどれほど人気が高いのか,「Call of Cthulhu: The Official Video Games」のおかげで身をもって体験できました。次回作については,今のところ詳しい話はできませんが,今回発表したデベロッパの1つに開発を引き受けてもらうことになるでしょう。

買収されたあとも,Focus Home Interactiveのために開発を継続したCyanide Studioの「Call of Cthulhu: The Official Video Game」
画像集 No.006のサムネイル画像 / Focus Home Interactiveが,TRPG「クトゥルフの呼び声」のケイオシアムと独占契約を締結。新規パブリッシング計画も次々に発表

4Gamer
 流通や販売のデジタル化,プラットフォームの拡大など,欧米ゲーム業界は大きく変化しているようですが,Focus Home Interactiveはどのように対応していきますか。

Goeldner氏
 臨機応変に,というのが答えになるでしょうね。我々はようやくモバイルゲーム市場に参入したばかりですし,これからVRも広がっていくでしょう。VR市場での成功は難しいですが,例えばマーケティングのツールとして活用していくもできます。少し先には新型コンシューマ機も見えますし,GoogleやMicrosoftはクラウドゲーム市場を開拓していくはずです。そんな中で我々サードパーティができることは,可能性のあるプラットフォームやテクノロジーにしっかり投資しておくということなのです。

4Gamer
 Focus Home Interactiveは,初期の段階から「Steam」をうまく使って成長してきたというイメージがあります。でも最近は,例えば「World War Z」でEpic Games Storeと時限独占契約を交わすなど,変化も見られますね。

Goeldner氏
 ええ。モバイルタイトルではApple Arcadeに参入するものもありますし,今回は発表していませんが,Amazonとの協力も行います。さらに,あるIPの映像化について制作会社と話を進めているところなのです。ゲーム産業が面白いのは,ビジネスモデルが常に変化し続け,どんな機会が爆発的に誕生するのか分からないところですね。我々ができることは,デベロッパが苦労して生み出した作品を,そうした変化にしっかり乗せてあげることだと思っています。

4Gamer
 最後に,日本のゲーマーにコメントをもらえますか。

Goeldner氏
 日本で話題になりそうなタイトルは,精力的にローカライズしていきたいと思っていますので,日本のゲーマーの皆さんは,我々の作品にも注目してもらえればと願っています。

4Gamer
 本日は,どうもありがとうございました。

Switch版も展示されていた「Farming Simulator 19」を,投資家達と一緒に眺めるゴールドナー氏
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Focus Home Interactive公式サイト

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