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「Music 4Gamer #2『ワンダと巨像』ピアノ&オーケストラコンサート」をレポート。編曲担当者によるアンコールの楽曲解説も掲載
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印刷2018/03/10 16:27

イベント

「Music 4Gamer #2『ワンダと巨像』ピアノ&オーケストラコンサート」をレポート。編曲担当者によるアンコールの楽曲解説も掲載

 2018年3月9日,「Music 4Gamer #2『ワンダと巨像』ピアノ&オーケストラコンサート」が,東京・渋谷のBunkamura オーチャードホールにて開催された。このコンサートは,「ワンダと巨像」PS4 / PS3 / PS2)の世界を彩る数々の名曲を,ピアノとオーケストラ,そしてコーラスによる生演奏でお届けするというものだ。本稿で公演の模様をレポートしよう。

ワンダと巨像

ワンダと巨像

Music 4Gamer #2「ワンダと巨像」ピアノ&オーケストラコンサート 演奏曲目

<開演前トークコーナー>

出演:大谷 幸氏(作曲家)北原恵一氏(ソニー・インタラクティブエンタテインメント サウンドデザイナー)

司会:野島健児氏(声優)

<第一部>(ピアノ&弦楽オーケストラ)

1.「プロローグ 〜古えの地へ〜」〜「禁断の術」〜「掟」〜「黒い血」〜「蘇生」(メドレー)(作曲:大谷 幸 / 編曲:林そよか)

2.「荒ぶる邂逅 〜巨像との戦い〜」〜「甦る力 〜巨像との戦い〜」(メドレー)(作曲:大谷 幸 / 編曲:林そよか)

3.「湖畔」(作曲:大谷 幸 / 編曲:林そよか)

4.「忍び寄る影 〜巨像との戦い〜」(作曲:大谷 幸 / 編曲:林そよか)

5.「祈り」(作曲:大谷 幸 / 編曲:林そよか)

6.「ワンダの死」(作曲:大谷 幸 / 編曲:林そよか)

<第二部>(オーケストラ)

7.「プロローグ 〜古えの地へ〜」〜「禁断の術」〜「掟」〜「黒い血」〜「蘇生」(メドレー)(作曲:大谷 幸 / 編曲:江口貴勅)

8.「巨像の気配」〜「異形の者達 〜巨像との戦い〜」〜「開かれる道 〜巨像との戦い〜」〜「戦いの終り」〜「偶像崩壊」(メドレー)(作曲:大谷 幸 / 編曲:穴沢弘慶)

9.「荒ぶる邂逅 〜巨像との戦い〜」〜「甦る力 〜巨像との戦い〜」〜「静寂 〜巨像との戦い〜」〜「力への畏怖 〜巨像との戦い〜」(メドレー)(作曲:大谷 幸 / 編曲:江口貴勅)

10.「最果ての地」(作曲:大谷 幸 / 編曲:穴沢弘慶)

11.「背後からの使者 〜巨像との戦い〜」〜「反撃 〜巨像との戦い〜」〜「鳥葬」〜「放たれた番人 〜巨像との戦い〜」〜「絶望との別れ 〜巨像との戦い〜」〜「駿馬」(メドレー)(作曲:大谷 幸 / 編曲:江口貴勅)

12.「儀式の終焉 〜巨像との戦い〜」〜「廃虚の門番 〜巨像との戦い〜」〜「エピローグ 〜残されし者たち〜」(メドレー)(作曲:大谷 幸 / 編曲:穴沢弘慶)

13.「希望」〜「陽のあたる大地」(メドレー)(作曲:大谷 幸 / 編曲:穴沢弘慶)

<アンコール>(オーケストラ)

14.「甦る力 〜巨像との戦い〜」(作曲:大谷 幸 / 編曲:江口貴勅)

 開演前には,主人公・ワンダのボイスを担当した声優の野島健児さんを司会に迎え,作曲家の大谷 幸氏,PlayStation 2版「ワンダと巨像」でサウンドデザイナーを務めたソニー・インタラクティブエンタテインメントの北原恵一氏に,当時の思い出や今回の公演の聴きどころを語ってもらうトークコーナーが設けられた。

左から,北原恵一氏,大谷 幸氏,野島健児さん
ワンダと巨像

 最初の話題となったのは,2月8日に発売されたPS4版「ワンダと巨像」。本作はPS2版をフルリメイクしたものだが,ボイスに関しては2003年に収録されたものをそのまま使用しているとのこと。野島さんは「いつでも当時のままの声を出せますので,新録があるときにはぜひ!」と,大谷氏と北原氏にアピールしていた。

 北原氏によると,「ワンダと巨像」の音楽について考え始めたのは2003年の夏頃だったという。本作の開発に先駆け,ディレクターの上田文人氏やチームのスタッフらとともにパイロットムービーを制作し,どんな音楽が合うのかをさまざまな映画のサウンドトラックなどを聴きながら検討していったそうだ。そんな中,白羽の矢が立ったのが,幅広いジャンルを手がけ,メロディの素晴らしさもモチーフの持ち方も申し分ない曲作りをする大谷氏だったのである。

 大谷氏は「ワンダと巨像」の音楽を手がけるにあたり,「覚悟の裏にある悩みや葛藤,希望と絶望,光と影といった相反するものを,一つの楽曲の中に入れてほしい」というオーダーを受けたとのこと。「矛盾するものを音で表す,救われないものを救うことが好き」という大谷氏は,「難しい注文ではあったが,楽しかった。自分のやりたい音楽を作れるという自由をいただいた」と語っていた。

 また大谷氏は,作曲にあたって事前に資料としてもらっていた「ワンダと巨像」の絵コンテなどをスタジオの壁やピアノなどに貼り,その世界に没頭していたという。
 そうした環境の中,ほとんどの楽曲はスムーズに仕上がっていったが,「ワンダが優勢になったときと,ピンチに陥ったときとで,楽曲が自然に入れ替わる」という技術的なハードルを課せられていたバトル曲の中には,日の目を見ることがないものもあったそうだ。

 大谷氏によると,この技術的なハードルへのチャレンジは非常に難しいものだったそうだが,北原氏は「プレイヤーが今どのような状況にあるかを,音楽でも表現したかった」「ワンダはゲーム中で多くを語らないし,また言葉も造語なので簡単に意味を把握できないから,音楽による表現が必要だった」と説明。
 加えて今回のコンサートのコーラスにも,「ワンダと巨像」のナレーションで使われた言葉が含まれていることが大谷氏から明かされた。

ワンダと巨像

 話題は「ワンダと巨像」の効果音にも及んだ。当時の北原氏は,深夜の公園などで効果音を収録しているときに職務質問を受けたこともあったという。とくに1人で収録しているときに声をかけられることが多かったそうで,それに備えて社名の入った名刺を常に持ち歩いていたそうだ。北原氏は,「今はレコーダーのサイズが小さくなっているので,当時ほど声をかけられることはなくなった」と話していた。

 今回のコンサートについて大谷氏は,「『ワンダと巨像』だけの公演は貴重な体験。それだけに,どんな形で聴いてもらうかを考えました」とし,「例えば,優勢と劣勢が行ったり来たりするバトルを音楽でどうやって再現するか。今回は優秀なアレンジャーに依頼して,構成を変えたり,原曲ではシンセサイザーを使っているパートをオーケストラに変えたりして素晴らしい仕上がりになっています」「オーケストラもピアノもコーラスも素晴らしいです。ぜひ楽しんでください」と語った。

 また北原氏は「14年前に作られた曲が,こうして新しい形で生演奏される機会が設けられたことに,驚くと同時に嬉しい」とコメント。さらに「原曲のレコーディングは楽器のパートごとに行ったので,曲の全貌が明らかになったのはミックスの段階でした。しかし今回のコンサートでは,すべてのパートが同時に披露されます。新しいアレンジも含めて,非常に楽しみです」「『ワンダと巨像』の音楽はシンセサイザーを多用し,その音色で世界観を表現しています。今回のコンサートは,それをすべてオーケストラで演奏するわけですが,シンセの音色をどのように再現しているのかに耳を傾けると,新しい発見があるのではないでしょうか」と話していた。

 コンサート本編は2部構成となっており,第一部は冒頭2曲がピアノソロ,残りの4曲がピアノと弦楽オーケストラという形で演奏された。
 1曲めの「プロローグ 〜古えの地へ〜」から始まるメドレーは,多彩な楽器やコーラスで世界観を表現する原曲を,ピアノだけの演奏で見事に再現。続くバトル曲のメドレーもまた,巨像と対峙したときの不穏な空気と,その巨像に対して優位に立ったときの達成感をピアノのみで表現し,客席を「ワンダと巨像」の世界に引きずり込んでいく。

ピアノは末永 匡氏が演奏
ワンダと巨像

 さらに3曲めの「湖畔」から6曲めの「ワンダの死」には弦楽が加わり,「ワンダと巨像」の繊細で美しく,しかしどこか不安にさせる幻想的な部分をピックアップ。第一部は全部で30分弱と短い構成だったのだが,本作の魅力を伝えるには十分な内容だった。

ワンダと巨像

 コーラスを加えたオーケストラで演奏される第二部は,ゲーム本編のプロローグからエンディングまでを一とおり再現するという構成になっていた。7曲めは1曲めと同じ原曲のメドレーだが,オーケストラアレンジとコーラスによって異なる迫力を展開。8曲め,9曲めのバトル曲メドレーも,不安感と高揚感の反復をオーケストラならではメリハリのある演奏で表現していた。

指揮は柴田真郁氏
ワンダと巨像

 10曲めの「最果ての地」は,ハープとパーカッションによる静かなイントロから,コーラス,オーケストラの演奏という展開。原曲の民族調の雰囲気もわずかに残しつつ,「ワンダと巨像」の繊細な側面を再現した。
 11曲めのメドレーは再びバトル曲主体だが,間に入る「鳥葬」と「駿馬」がアクセントとなった。とくに後者はリズミカルな演奏と壮大なメロディが,強く印象に残る演奏だった。

ワンダと巨像

 コーラスに導かれて始まる12曲めはゲーム終盤のバトル曲二つと,エンディングのメドレーで,ワンダの悲壮なまでの覚悟と救われない運命を強調するかのようなアレンジが施されていた。
 また13曲めもエンディングのメドレーで,ゲームのストーリーとコンサート双方の終わりを感じさせる,少し寂しくもその先の希望を感じさせる演奏が披露された。
 そして客席からの拍手の中,演奏されたアンコールは「甦る力 〜巨像との戦い〜」。力強く壮大な演奏の終了後,会場には文字どおり鳴り止まない拍手が響き渡り,コンサートは幕を閉じた。

ワンダと巨像
ワンダと巨像

 筆者は職業柄,ゲームミュージックのコンサートに足を運ぶ機会もそれなりにあるのだが,そのほとんどは複数IPの楽曲を演奏したり,同一IPでもシリーズの何作かの楽曲を演奏したりというもので,よくも悪くもベスト盤的な,
いいとこ取りの内容である。

 しかし今回は「ワンダと巨像」の楽曲のみが演奏されたことにより,終演後にはゲーム1タイトルを最初から最後までプレイしたかのような充実した感覚を得られた。もちろん,そこには東京交響楽団とピアニストの末永 匡氏による卓越した演奏,原曲の魅力を損なわない的を射たアレンジ,そもそも大谷氏の手がけた原曲が素晴らしいといったほかの要因もあるのだが,それを差し引いてもこれだけの充実感をもたらすゲームミュージックのコンサートというのはなかなかない。本コンサートに来た「ワンダと巨像」ファンは,希有な体験ができたのではないだろうか。

 残念ながら会場に足を運べなかった人には,販売中のKindle版パンフレット(関連記事)で,公演の雰囲気の一端を感じてもらいたい。このパンフレットには編曲担当者による楽曲解説が掲載されているが,アンコールに関してはこの記事で編曲担当者からのコメントを紹介しよう。

 最後はやはりこの曲!!
 交互に差し代わる戦闘曲を,さらにアンコールらしい編曲でお送りします。
 敬愛する作曲家・大谷 幸氏が,そして素晴らしい演奏家達が,心からいいものを創りたい!
と,その物語と自分自身に真摯に向き合った軌跡に触れる機会を頂き,その音楽が与えてくれる感動に“やはり音楽には何かを変える力がある!”という想いをより一層強くすることができました。
 この記念すべき『ワンダと巨像』ピアノ&オーケストラコンサート」に,及ばずながら携わることができた幸運と,愛すべき楽曲達と過ごした楽しい旅の思い出に心から感謝して……。
(江口貴勅)

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「ワンダと巨像」公式サイト

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