テストレポート
PC版「FINAL FANTASY XV」公式ベンチマーク実行速報。美しいグラフィックスと異常なほどの高負荷に注目!?
FFXVベンチは,3月7日発売予定となっているPC版FFXVがユーザーの環境で快適に動作するか否かを推し量るためのものだが,ベンチマークソフトとしてはどのような特徴があるのだろうか。取り急ぎ,手元にあったグラフィックスカード6枚で動かしてみたので,挙動を速報としてお伝えしてみたい。
グラフィックス設定は3つのプリセットのみ。ベンチ初(?)の「Ansel」対応に
テストに先立って,FFXVベンチの概要を簡単に紹介しておきたい。
対応OSは64bit版のWindows 10・8.1・7で,32bit版OSはゲーム本編同様に非対応。グラフィックスAPIはDirectX 11を採用する一方,NVIDIAのSLIやAMDのCrossFireといったマルチGPU構成はサポートしていない。表示周りでは4K解像度とHDR(High Dynamic Range)対応がアピールポイントだ。
使い方はいたって簡単。スクウェア・エニックスの特設ページからダウンロードした「ffxvbench_installer.zip」内の「ffxvbench」フォルダを任意の場所へ解凍(展開)したら,その中にあるインストーラ「ffxvbench_installer.exe」を実行し,あとはセットアップファイルの指示に従っていくだけだ。
インストールが完了したら,Windowsのスタートメニューなどから起動すると,ランチャーが開く。ランチャーの右下にはグラフィックス設定のプリセットと解像度,フルスクリーン/ウインドウ表示を選択するためのプルダウンメニューがあるので,そこから任意の設定を選んで[スタート]ボタンを押せば,ベンチマークテストが始まるという流れだ。
ここで注意したいのはグラフィックス設定プリセットで,FFXVベンチには「高品質」「標準品質」「軽量品質」の3つの選択肢が用意される一方,MMORPGである「ファイナルファンタジーXIV:紅蓮のリベレーター」の公式ベンチマーソフトにあるような,詳細なグラフィックス設定はないのだ。
スクウェア・エニックスは3つのプリセットについて以下のとおり説明しているので,以下,スクリーンショットによる比較ともども,簡単に紹介しておきたい。
- 高品質:NVIDIAのGameWorksを積極的に利用するプリセット。複雑な草の葉の動きを効率的にレンダリングする「Turf Effects」,リアルな毛髪や毛皮の描写を実現する「HairWorks」,火や煙のシミュレーションとレンダリングを行う「Flow」といった機能を活用しているという。また,影の解像度やLoD(Level of Detail)の距離,テクスチャ解像度なども引き上げてあるそうだ
- 標準品質:スクウェア・エニックスの規定する「推奨環境PC」を想定したプリセット
- 軽量品質:光の反射計算やアンチエイリアシング設定を省き,影の解像度やLoD距離,テクスチャ解像度を下げたプリセット
選択できるレンダリング解像度は3840
さて,ランチャーから[スタート]ボタンを押すと,以下のとおり,3つのデモシークエンスが順番に流れることになる。所要時間は6分弱と,ベンチマークソフトのデモシークエンスとしては長い部類だ。
- 主人公であるノクト達4人が車で移動する場面から始まり,その後,チョコボに乗り換える。池に着いたノクトは釣りを始める
- ノクト達4人はニフルハイム帝国の魔導兵と交戦。そこに召喚獣「シヴァ」が登場し,戦闘が決着する
- ノクト達4人がキャンプの準備を始め,たき火を囲んで談笑する
テスト中は画面の左下でスコアがカウントアップしていき,結果表示を兼ねる「たき火を囲んで談笑する場面」になると,画面中央上部に,最終のスコアと,スクウェア・エニックスによる「スコアの見方」が出てくる。
なお,スコアと指標の関係は以下のとおり。ものすごくざっくり言えば,快適にプレイしたいのであればスコア6000以上がスクウェア・エニックス推奨ということになる。12000以上であれば文句なしだ。
- 12000〜:非常に快適
(非常に快適に動作することが見込めるため,高いフレームレートで動作し,より高いグラフィックス設定が可能な余地もあるとされる) - 9000〜11999:とても快適
(とても快適に動作することが見込めるため,高いフレームレートで動作し,より高いグラフィックス設定が可能な余地もあるとされる) - 6000〜8999:快適
(快適に動作することが見込めるため,より高いグラフィックス設定を行っても快適に動作するであろうとされる) - 4500〜5999:やや快適
(標準的な動作が見込めるとされ,余裕を感じる場合は,より高いグラフィックス設定も推奨される) - 3000〜4499:普通
(標準的な動作が見込めるとされる) - 2500〜2999:やや重い
(部分的に動作が重くなるため,グラフィックス設定を下げることが推奨される) - 2000〜2499:重い
(全体的に動作が重くなるため,グラフィックス設定や解像度設定を下げることが推奨される) - 0〜1999:動作困難
(動作に必要な性能を持っていないとされる)
ところで,ベンチマーク「テスト」とは関係ないが,FFXVベンチはNVIDIAのフリーカメラ対応スクリーンキャプチャ機能である「Ansel」に対応していることは,ユニークなポイントとして紹介しておく必要があるだろう。
ベンチマークの実行中に[Alt]+[F2]キーを押すとデモシークエンスに一時停止がかかってAnselが有効になり,[W/A/S/D]キーとマウスの操作でカメラを自由に動かし,かつ,エフェクトを適用できるのだ。これはやってみると非常に楽しいので,NVIDIA製GPU搭載環境であれば,ぜひ一度試してみてほしい。
なお,Anselは[Esc]キーで終了できる。終了すると,ベンチマークテストは何ごともなかったかのように再開するが,「Anselによる一時停止を挟んでも正しいベンチマーク結果が得られるか否か」は明らかになっていないので,Anselを利用した回のスコアは参考にしないほうが安全かもしれない。
GPU計6製品で,ひとまず「高品質」のみテスト
それでは,テストのセットアップに入ろう。今回用意したGPUは「GeForce GTX 1080 Ti」(以下,GTX 1080 Ti),「GeForce GTX 1080」(以下,GTX 1080),「GeForce GTX 1060 6GB」(以下,GTX 1060 6GB),「GeForce GTX 1050 Ti」(以下,GTX 1050 Ti),「Radeon RX Vega 64」(以下,RX Vega 64),「Radeon RX Vega 56」(以下,RX Vega 56)の6製品だ。このうち,リファレンスカードが市販されていないGTX 1050 Tiだけは,メーカーレベルのクロックアップモデルであるMSI製カード「GeForce GTX 1050 Ti 4G OC」を使い,同社のオーバークロックツール「Afterburner」(Version 4.4.2)で動作クロックをリファレンスまで下げて利用しているが,それ以外はすべてリファレンスカード(※GeForceは「Founders Edition」)となる。また,RX Vega 64とRX Vega 56はそれぞれ6つの動作モードを持つが,今回は工場出荷時状態の「Balanced」モードでテストを行うことにしている。
グラフィックスドライバは,GeForceが「GeForce 390.77 Driver」,Radeonが「Radeon Software Crimson ReLive Edition 18.2.1」で,いずれもテスト開始時点の最新版だ。
マザーボードのUEFIならびにOSの64bit版Windows 10では,「Spectre」「Meltdown」と呼ばれる脆弱性に対策するパッチを導入していることもお断りしておきたい。そのほかテスト環境は表のとおりだ。
今回は時間の関係で,テストのプリセットは1つに絞らざるを得ない。そのため,PC版ならではの高画質を期待できる一方,GameWorksべースなのでRadeonにとって不利になることがほぼ見えている高品質のみを選択することにした。この点は時間の都合ということでご了承を。
テストは,高品質プリセットを解像度ごとに1回実行し,その結果をスコアとして採用しつつ,テスト中に別途実行しておいた「Fraps」(Version 3.5.99)で,平均フレームレートと最小フレームレートも取得することにした。テスト解像度は,FFXVがサポートする3条件全部を試している。
高品質プリセットだとGTX 1080 Tiでも最高評価は得られない
テスト結果を見ていこう。グラフ1は総合スコアをまとめたものだが,GTX 1080 TiとGTX 1080がトップグループを形成し,ほかを寄せ付けていない。
ただ,スクウェア・エニックスの示している指標と照らし合わせると,今回のテスト条件中,最も描画負荷の低い1280
なお,前述のとおりPC版FFXVはGameWorksベースのタイトルで,しかも高品質プリセットではGameWorksの独自機能をふんだんに活用していることもあり,Radeon勢はGTX 1060 6GBを若干上回る程度のスコアしか示せていない。今回テスト対象から外したGeForce GTX 1070シリーズがもしグラフに入ってくれば,それを下回るのではないか,といったところだ。今後,AMDドライバチームによる最適化は入ることになると思われるものの,少なくとも高品質プリセットだと,Radeonは相当に苦しい戦いを余儀なくされるのではなかろうか。
続いてグラフ2〜4は,各解像度条件における平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものとなる。
ここで注目したいのは,総合スコアを100分の1にしたものが,平均フレームレートと近似しているということだ。まだサンプルが少ないので断言まではしないが,FFXVベンチを実行して,総合スコアが得られた場合,それを100で割ることにより,おおよその平均フレームレートを探ることができるかもしれない。
一方,最小フレームレートに目を移すと,最小60fps以上をクリアするには,平均90fps以上,つまり上のざっくり計算式に従うとスコア9000――スクウェア・エニックスの示す指標で言う「快適」――レベルが必要ということになりそうだ。
RX Vega 64とRX Vega 56は,平均フレームレートこそGTX 1060 6GBを上回っているものの,最小フレームレートは1920
4C4Tと4C8Tのスコア差は3%ほど。快適なゲームプレイには4コア以上のCPUが望ましいか
FFXVベンチにおけるCPUのコア数とスレッド数でスコアがどう変わるのかも,速報版なので簡単なものになるが,確認しておこう。
ここでは,今回のテストシステムで採用している「Core i7-7700K」に対し,マザーボードのUEFIから動作クロックを維持したままコア数とスレッド数を変更することで,4コア8スレッド(4C8T),4コア4スレッド(4C4T),2コア4スレッド(2C4T),2コア2スレッド(2C2T)の状態を作り出し,それぞれで高品質プリセットの1920
グラフ5はその総合スコアをまとめたものだが,4C8Tに対して4C4Tは約97%,2C4Tは約87%,2C2Tは約70%という結果になった。4コアCPU同士の比較だと,「Hyper-Threading Technology」の影響はあまり大きくないものの,2コアだと効いてくるというのが分かる。
平均と最小のフレームレートはグラフ6にまとめたとおりだ。平均フレームレートは,GPUのテスト時と同じく,総合スコアを100分の1にしたものと近いスコアに収まっているが,ここでより注目すべきは,総合スコアで6000を超えている2C2T条件で最小フレームレートが22fpsにまで落ち込んでいることのほうだろう。
PC版FFXVをプレイするにあたって組み合わせるべきCPUは,最低で2コア4スレッド,できれば4コア4スレッド以上のCPUが欲しい,といったところだろうか。
最後に,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,ベンチマーク実行中におけるシステム全体の消費電力も測定し,記録された最大値をスコアとして採用することにした。その結果がグラフ7である。
何か特別な結果が出ているわけではなく,「ハイエンド市場向け製品の消費電力はやはり高い」といったことを再確認できる。
高品質プリセットは事実上,ハイエンドGeForce専用か? Radeonはドライバ最適化と標準品質に期待
以上,駆け足で確認してきたが,現時点で言えることは,以下の2つに集約されると考えている。
- 高品質プリセットの描画負荷は異常なほど高い
- GameWorksベースであるがゆえ,GeForceへの徹底した最適化が目立つ
前者については,GTX 1080 Tiを搭載しても最小60fpsを確保できるのが1920
一方,GameWorksベースなのでRadeonが不利なのはいかんともしがたいが,それだけにAMDがどこまで最適化できるかは,向こう1か月の注目ポイントということになるだろう。GameWorksの固有機能を活用しないであろう標準品質では,あるいはもう少しよい勝負に持ち込める可能性もあるので,そちらにも期待しておきたいところだ。
スクウェア・エニックスのFFXVベンチ配布ページ
- 関連タイトル:
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Radeon RX Vega
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